魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第166話 妹の後悔

「はあ・・・・はあ・・・・はあ・・・・、ふう・・・・すまないな娘よ。昔の乱暴者のイメージは消したはずなのだが、少し大人気なかった」

 

 

そしてチコ☆タンは少し大声で怒鳴ったためか、怒りをほんの少しだけ静めることに成功し、伸びた角が少しだけ縮み、激しく呼吸をした後、少し冷静さを取り戻した口調で続きを口にする。

 

「ふう・・・・さて、中断してしまったな。では、この小僧共をなぜ知っているか・・・だったな? それは簡単だ。君とは関係なく、彼らは大物だから目をつけていた。そして素性を調べるために、あの日に、ゲートポートを使用した入国者を首都の記録から割り出しただけさ、・・・調べ終えた時はたまげたがな」

 

少し冷静になったチコ☆タンだが美空は声を出せずに震えていた。今まさに、数日前に敗れた時の恐怖が蘇ってきたのだ。しかしチコ☆タンは構わずに続ける。

 

 

「そして君は冒険王の仲間に兄が居ると言ってたね?・・・少し君の素性を調べたら、君の兄とやらは分からないが、サウザンドマスターの息子たちとの繋がりを知ったというわけだよ」

 

「・・・・・・・・」

 

「へ・・・・返事をしないのかい?」

 

「ッ!? ・・・・は・・・はい・・・」

 

 

僅かでも、もう怒らせてはならないと判断したのか、美空は慌てて返事をした。そのためどうにかチコ☆タンの機嫌を損ねるようなことはならなかった。

 

「つまり・・・君は・・・・冒険王・・・そして白き翼とやらたちをおびき寄せるためのエサなのだよ。そして・・・あの男の息子を・・・くく、・・・ズタズタに・・・おおっと・・・それでは賞金が減るな・・・だが・・・」

 

またもや不気味な笑みを浮かべて震えだすチコ☆タン。

それは過去の敗北を思い出してなのか、再び角がスクスクと伸び始め、皮膚に亀裂が走っていく。

だが、美空は軽く微笑んだ。

それは、恐怖で頭がおかしくなったからではない。

僅かな勇気が湧き上がったのである。

それはチコ☆タンが冒険王をおびき寄せると言ったからだ。

まだ確認したわけではないが、もし冒険王の傍に自分の言っている男が居るのだとしたらと思うと、先ほどまで失っていた気力が湧き上がってきた。

 

「アンタに・・・・勝てるんすか? 仲間をいっぱい呼んでるみたいだけど・・・・」

 

再びチコ☆タンは頭を抱えて震えだした。

 

「ア、 アンタに・・・だと? こ、小娘風情が・・・この私に・・・むか・・・向って・・・」

「隊長落ち着けって!?」

「君も挑発するようなこと言っちゃダメだって!? 庇いきれないよ!?」

 

慌てて止めに入るモルボルグランたち。しかし美空は目の色を変えた。ココネも同じである。

そこには力強さと希望が目に宿っていた。

 

「だって、そうじゃん!! サウザンドマスターの息子だよ? それに・・・それにアンタたちは本当に厄介な男を知らないんだ!!」

「君ィ、ダメだってば!?」

 

焦って美空を止めようとするモルボルグランだが、美空の目は変わらない。無謀な意地かもしれないが、美空も言わずには居られなかった。

しかし、意外なことにチコ☆タンはキレるどころか、むしろ笑った。

 

「くっくっく・・・いかにあの男の息子とはいえ、鷹の息子が鷹とは限らない・・・・何よりまだ小僧だ・・・・それに・・・君は少し勘違いしている」

「・・・・何?」

 

美空が表情を変えると、チコ☆タンは不気味な笑みを浮かべて笑った。

 

 

「知らないのなら覚えておくことだ。紅き翼共に勝てなかったというだけで、名を残せなかった伝説候補は山ほどいるんだぞ? この・・・世界にはな・・・」

 

 

その言葉だけを言い残し、チコ☆タンは美空たちに背を向け、この場から姿を消した。

完全に居なくなったのを確認した後、パイオ・ツゥたちは激しく溜息をついた。

 

 

「ああ~~~、怖かった~、隊長があれほど怖いなんて・・・・君も無理しない方がいいネ」

 

「ああ、隊長が人型から真の姿に変身したのは久しぶりだそうだ・・・・そして一度変身してから、人の姿に戻っても、しばらくは精神不安定な状態のために、動く爆弾とされているそうだからな・・・」

 

「まあ、だからあまり本気の力を使わないように僕たちは、いつも罠や作戦で相手を捕らえるようにしてるけど、この間君と戦った時、隊長の中の何かを刺激したらしいね・・・・怒りというより、自分の意思であの時は変身したらしいからね」

 

「といっても、一度変身すれば、蚊に刺さる程度の攻撃でも、ブチキレルからたまったもんじゃないよ。まあ、サウザンドマスターの息子を倒せば、ちゃんと怒りが収まるはずネ」

 

 

仲間である三人も、少し安堵の息を漏らしながら話し合っていた。

 

「だからって・・・・いくらアンタたちが強いからって、ネギ君たちが・・・・」

 

美空は悔しそうに歯軋りしながら睨み付けるが、状況は変わらない。

 

 

「うう~~ん、残念だけど、こちらも戦力を補強しているよ。隊長が一声掛ければサウザンドマスターに恨みを持つ連中や、名のある拳闘家たちも集結しているからね~~・・・・」

 

「それに、本気になった隊長は容赦しねえ・・・本部から大戦期に使われた巨大兵器や鬼神兵を取り寄せている・・・・正に最強級戦力で、たかが十人程度の相手を蹂躙するつもりだ」

 

「そ・・・・そんな・・・・」

 

 

その言葉を聞いて、美空は激しい絶望に落とされて肩を落とした。

全ては自分たちの身勝手な行動で、友や家族を危険に晒してしまったのだと後悔した。

 

(やばっ・・・私の所為だ・・・私が・・・・バカなことしなければ・・・・・・みんな・・・・・・・兄貴・・・・・・)

 

美空はこの状況をどうすればいいのかと懸命に頭を働かせるが、どうしようもなかった。

ただ、後悔しきれず、涙だけを流した。

しかしその涙も心の中の言葉も、届くことは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその頃・・・

 

ヘラス帝国とアリアドネーの両国の近くに広がる森林と近くにある村。その村はセブンシープ家が治めている村の一つらしく、エミリィも何度か訪問したことがあったそうだ。

そのため謎に包まれていると言われている遺跡とやらもイマイチ要領が得ず、瀬田の話を聞くよりも、とりあえずエミリィの話を聞くことにした。

 

「なんで顔神なんだ?」

「その遺跡の祠に大きな顔の御神体のようなものがあるからです」

「・・・・ようなもの?」

 

よく分からず全員が首を傾げてしまった。

 

「ええ・・・実はその遺跡はそれほど歴史が古いわけではないのですけど、かつてその遺跡を利用していた民がその御神体を崇めて暮らしていたそうです」

「魔法世界の人々が掲げる神・・・・果たしてどんな神様なんだい?」

「いえ・・・それがよくは・・・ただ帝国や他の冒険者たちの調査の結果・・・その遺跡に住んでいた方々は昔井戸を掘るために地中を深くまで掘っていたら発見されたもの・・・ということだけしか分かりませんでした」

「ほう・・・地中から? 昔の人間も僕たちのように穴を掘っていたんだね~」

 

瀬田とシモンが少しシンパシーを見たことも無い先住民とやらに感じた。

 

「はい・・・そして今まで見たことの無いその発掘されたものに、かつての方々はこの世界の創生の頃からの神ではないかと思い、大事にされていたそうですよ」

「でも、おかしくあらへん? 何でいきなり掘り起こしたヘンテコなもんを神様にしたん?」

 

木乃香が訳の分からないといった表情でエミリィに尋ねた。しかしエミリィもよく分かっている様子ではなかったらしく困った表情になった。

 

「さ、さあ・・・私も一度見ましたけど大して興味が沸かなかったもので・・・ですが昔は新しき民と古き民との諍いもありましたし・・・・古き民が何か希望にすがりたかったのかもしれませんわ・・・・」

「なるほど・・・まあ、そういう状況下で見たことも無いものを発見したら、そこに何か意味を見出したくなるものかもしれないね・・・・つまり謎というのは・・・・」

「はい、特にその御神体以外見るもののない遺跡でしたから、調査隊も冒険者も訪れなくなったのです・・・それに辺境ですから・・・」

「えっ!? それじゃあ、解明されていない遺跡って言うのは、ダンジョンが困難とか、途中のモンスターが手強いとかじゃなくて・・・・」

「はい・・・その顔神以外、特に調べる価値がないから・・・・だそうです・・・その顔神も別に宝石がついているとか、マジックアイテムだとかそういうものでもないらしいので・・・・」

 

エミリィの言葉に一同が絶句してしまった。

 

未だ解明されていない遺跡の謎というのは、只単純に地中から掘り起こされた訳の分からないものに、冒険者たちは興味を示さなかったというだけだったのである。

 

魔法世界の冒険者たちでも解明できないということに、何か重要な事を予想していた瀬田は少し顔が引きつっていた。

 

「こ、この分じゃ・・・俺のドリルは要らないかもな・・・」

「ウ・・・ウチは・・・シモンさんと居れればええからな~」

 

木乃香もシモンも、相当大騒ぎをして危ない目にあった結果にしては随分と予想とは違う展開に少し肩を落としていた。

しかし瀬田は直ぐに慌てて笑顔になり、前向きになる。

 

 

「ま、まあ魔法世界の方々が分からない物でも、ひょっとしたら僕たちが分かるものかもしれない!! せっかく来たんだからこの際行ってみよー!」

 

 

瀬田のポジティブな言葉にハルカが溜息をついた。

 

「スマンな、お前たち。こんなアホ亭主で・・・・」

 

一同を乗せたセスナ機は真っ直ぐ目的の遺跡へと向っていた。

 


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