魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第164話 出遅れた

「さて・・・・時間も出来たし俺は一度サラのところに行こうと思う・・・お前たちはどうする?」

 

「えっ? サラさんのところですか? ・・・・・そういえば、サラさんって一体何者なんですか? シモンさんと旅をしてたとしか聞いていませんし」

 

「そうよね~、シモンさんがアリアドネーってところで出会って、ずっとサラさんのお父さんとお母さんと一緒に居たんでしょ?」

 

「おまけにナイスバディやし・・・・」

 

 

木乃香が自分の胸に手を当てながら昨晩のサラの姿を思い浮かべる。しかしシモンは笑いながら首を横に振った。

 

 

「ああ、・・・そうか・・・お前たち知らないんだな・・・サラの昨日の姿は魔法で変わっただけで、本当はもっと小さくて、お前たちと同じ年ぐらいだよ?」

 

「「「「えっ!?」」」」

 

「それって、どういうことですか?」

 

「サラたち一家は賞金首なんだ・・・根はいい人達なんだけどな。それで昨日は変装のためにあんな姿をしていたんだよ」

 

「サラさんが賞金首!? それに家族も・・・一体何をしたんですか?」

 

「密入国だってさ。魔法世界を冒険したくて一家揃って進入するなんて、スゴイよな~」

 

「「「「!?」」」」

 

「・・・たしかに・・・・ん? アスナさん? それに刹那さんたちもどうしたんですか?」

 

「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」

 

 

意外なサラの素性にネギは呆気に取られてしまった。しかしアスナ達は、シモンの「家族と共に密入国」という言葉に何かを思い出したように顎に手を置いて唸る。

 

 

「うう~~ん・・・ねえ・・・みんな・・・・」

 

「う、うむ・・・一家揃って密入国・・・もしやとは思うが・・・」

 

「ま、まて楓! 仮に昨日のサラさんの姿が変装であっても、あの二人とはどちらとも似ていない!」

 

「せやけど・・・なあ?」

 

「「?」」

 

 

四人とも、サラに関して何か思い当たることがあるらしく、四人で顔を見合わせた後、アスナが代表して尋ねた。

 

 

「ねえ、シモンさん。サラさん・・・っていうかサラちゃん? サラちゃんのお父さんとお母さんって・・・・・」

 

 

しかしその時だった!

 

 

「シモンくーーーーーんッ!!!」

 

「「「「「・・・・・・・・・へっ?」」」」」

 

 

はるか上空から声が聞こえた。

見上げてみると一隻のセスナ機が真っ逆さまに落ちてきた。

 

 

「えっ・・・・瀬田さん!?」

 

「「「「ええええええーーーーーーーッ!?」」」」

 

 

仰天するアスナ達、しかし飛行船は問答無用で落ちてくる。街の者達も指差ししてその光景に叫んでいた。

 

 

「うおおおおいッ!? 飛行機事故かぁぁ!?」

 

「アブねええ!?」

 

 

しかし飛行船は二転三転、空中で動きながらも、民衆が散り散りに逃げていく中、飛行機は体勢を立て直し、通路にどうにか着地した。

 

 

「あいたたたた~~、いや~、追っ手がしつこくって・・・」

 

「まあ、着地成功だな・・・」

 

 

これだけの大騒ぎを起こしながら、額から掠り傷程度の血だけを流しながら瀬田は笑顔で飛行機から降りてきた。それに続くようにハルカも頭を少し抑えながら、仏頂面で降りてきた。

そしてその二人にシモンが声を掛ける前に、避難していたアスナ達が先に大声を上げた。

 

 

「「「「瀬田さん!? ハルカさん!?」」」」

 

「「「「えっ?」」」」

 

 

ネギとシモンを含めて四人はアスナ達を見ると、瀬田とハルカはタバコを咥えながら、驚いた表情を見せた。

 

「おおお~~!! アスナちゃんたちじゃないか! 君たちも無事にオスティアに来れたんだね!」

「ふっ、無事そうで何よりだよ」

「ちょ、何で瀬田さんたちが、シモンさんと!?」

「おや? 君たちはシモン君の知り合いかい? それは偶然だな~~」

「お前たち・・・瀬田さんを知ってるのか?」

「で、では・・・・ひょっとしてサラさんのご両親とは・・・まさか・・・」

「ちょっ、シモンさんもアスナさんたちも、この人は誰なんですか!?」

 

一人状況が把握できないネギを置いてきぼりにして、アスナ達は目の前の状況を整理していく。

そして答えが出た瞬間、再びそれを遮られた。

 

 

「見つけたぞ! 冒険王だっ!!」

 

「多少手荒でも構わん! 確保するぞ!」

 

 

休む間もなく次々と状況が変わり出した。

瀬田とハルカを追いかけるように、仰々しい甲冑に身を包み武装した兵隊たちがゾロゾロと集結した。

 

「あらら・・・もう来ちゃったみたいだね・・・」

「ふう~~、懲りない連中だ」

「なんだ、こいつ等?」

 

瀬田とハルカは大して慌てた様子もなく、しかし現れた戦士たちにシモンが首を傾げると、ネギが顔色を変えて反応した。

 

「ま、まさか・・・・・彼等は首都の騎士団・・・・」

「ちょっ、不味いじゃない!? 急いで顔を隠して!」

「そ、そうだ・・・お嬢様、早く!」

「う、うん」

「・・・・これは只事ではないようでござるな」

 

ネギの言葉を聞いて慌ててアスナ達も顔を隠すが、どうやら重装歩兵部隊たちはアスナ達を見ずに、巨大な大剣を瀬田とハルカに向けた。

 

「あらら・・・・やっぱこうなるんだね・・・・」

「手荒いな・・・・それに、街中じゃあ銃もぶっ放せないから嫌だね~」

 

溜息をつきながら瀬田たちが一歩、歩み出た。その瞬間、首都の騎士団たちは街の民衆が周りから遠ざかっていくのを確認した後、容赦なく瀬田たちに襲い掛かった。

 

 

「やれ!! 呪文で体勢を崩してから捕獲しろ!!」

 

「「「「了解!!!」」」」

 

「「「ものみな 焼き尽くす 浄化の炎(オムネ フランマス フランマブルガートウス) 破壊の王に して 再生の 微よ(ドミネーエクスティンク ティオニース エトシグヌス レゲネラティオース) 我が手に宿りて 敵を喰らえ(インメアーマヌーエンス イニミークムエダット)!!」」」

 

 

兵士の数人が剣を掲げながら呪文を唱えると、何重もの炎が瀬田たちに向って放たれる。

 

 

「「「紅き焔(フラグランティア・ルビカンス)!!」」」

 

 

しかし対する瀬田たちは避けようとはせず、その場で余裕の態度で構えた。

 

「なるほど・・・タバコの火をつけるのに便利そうだ」

「悪いけど、タバコの火は間に合ってんだよ」

 

その一言だけを言って二人はその場で両手を炎に向けた。

 

「廻し受け!!」

「浦島流・山彦返し!!」

 

瀬田はなんと素手で襲い掛かった爆炎を両手で円を書くように捌いた。その結果、服に汚れ一つ見せずに炎を全て消してしまった。

 

「ふっふっふっ、矢でも鉄砲でも大魔法でも持ってきなさい♪」

 

そしてハルカは、両手から気のような壁を作り、炎をそのまま相手に跳ね返した。

 

「なっ!? 跳ね返された!?」

「いかん!?」

 

ハルカに跳ね返された魔法は、ソックリそのまま兵士たちに襲い掛かり、大きな音をたてて爆発した。

 

「ウソォォォ!? ハルカさんと瀬田さんスゴ!?」

「そ、それにあの眼鏡をかけている人のあれは・・・防御の型の・・・廻し受け・・・あんな見事なものは古老子でも出来ない・・・・何者なんですか!?」

 

瀬田とハルカの実力に仰天するアスナ達。しかし兵士たちもまだ終わらない。

 

「くっ、ここで逃がすな! 奴等はここで確保だ!」

「「「「了解!!」」」」

 

跳ね返された炎を逃れた兵士たちが十人がかりで剣を振り上げて襲い掛かってくる。しかしハルカはタバコを咥えなおしただけで、背を向けた。

 

 

「後は、お前にまかせるよ。メンドーだから」

 

「やれやれ、しょうがないな~、僕の奥さんは。・・・・では・・・・せい!」

 

「「「「「―――ッ!?」」」」」

 

「なっ、瞬動!?」

 

 

瀬田が一人前へ出た瞬間、瀬田は消えた。

あまりに突然の出来事に敵味方問わずに誰もが目を疑った。

 

 

「ゴメンよ、少し痛いけどガマンしてね」

 

「「「「「―――ッ!?」」」」」

 

 

消えたと思った瞬間、兵士たちの目前に急に現れた瀬田が横一文字に蹴りをなぎ払うと、カマイタチのような風が発生し、鎧を纏った兵士たちが一列になって吹き飛ばされてしまった。

 

「は、はああああッ!?」

「な、楓さん!? あれは・・・・」

「うむ・・・・魔力を使っている様子はない・・・・・・」

 

この場に居た全員が今の事態に混乱していたのだが、兵士たちは考えることも怯えることもせず瀬田に向っていく。

囲まれた瀬田に逃げ場はない。

しかし瀬田はニッコリと笑って、余裕を崩さない。

 

「ふっふっふ、人はね・・・空を飛ぶのに魔法は必要ないんだよ?」

「とっ、飛んだ!?」

「なっ!?」

 

瀬田は包囲網から逃れるように真上に飛んだ。

しかし兵士たちが驚いたのは飛び跳ねたことではない。

瀬田は魔法も使わずに文字通り浮いているのである。しかも只浮いているのではない。何も無い空中を飛び跳ねているのである。

 

 

「鍛え上げた脚力さえあれば、空を蹴ることも出来る・・・」

 

「虚空瞬動まで!?」

 

「いや・・・少し形が違うと思うでござるが・・・・たしかに・・・」

 

 

そして瀬田は空中で両足を下に向けて何度も蹴る動作をする。すると先ほどのカマイタチのような蹴りの斬撃が、無数になって兵士たちに襲い掛かった。

 

 

「乱!!」

 

 

嵐のような斬撃は、鍛えられ上げた首都の兵士たちを容赦無しに吹き飛ばした。

 

「ちょっ、何だこれはァ!?」

「しょ、障壁が・・・も・・・ぐわああッ!?」

「ば、・・かな・・・・・・・」

 

ありえぬ事態に兵士たちが激しく混乱しながら倒れていく、そんな光景を見渡しながら、瀬田は軽く告げる。

 

 

「まっ、こんなものかな? 功夫を積むことだね。そして覚えておきたまえ。魔法や気を使える人だけを強いと言うんじゃない・・・・・・・・凡人の、道を極めて初めて人は超人だよ♪」

 

 

着地した瀬田は軽く微笑んで、吸い終わったタバコをしまい、新たなタバコを取り出そうとした。

その瞬間、どよめきの声が上がった。

 

「な、・・・・すげえぞ、あの男!?」

「首都の騎士団、全部やっつけちまった!?」

「せ、瀬田さんマジでぇーー!? ちょースゴイじゃん!!」

 

まるで何事も無かったかのように倒れた数十の兵士たちの真ん中に立つ男に、誰もが恐怖より賞賛の声を上げた。

瀬田も少し照れながらもその歓声に応える。すると、瀬田も相手に重症を負わせないように手加減したためか、鎧のお陰でダメージが浅かったのかは知らないが、一人の兵士がヨロヨロと立ち上がり、瀬田に向けて叫んだ。

 

 

「バ、バカな・・・・・・・・魔法を使う事無く・・・・貴様・・・・貴様・・・・・・一体何なんだァァーーーッ!!」

 

 

鍛え抜かれた武装部隊は全員、瀬田に一撃を与えることも出来ずに皆倒れていた。

そして残された最後の一人は叫びながら切りかかるが、瀬田は新たなタバコに火をつけ、ニッコリと涼しい笑顔で微笑んだ。

 

「君たちは・・・・大きな勘違いをしているね・・・」

「ッ!?」

 

そして高速で兵士の懐に入り、トドメの掌打が甲冑を破り、中の人物に衝撃を与えた。

そのまま兵士は悶絶して音もなく倒れ、意識を失った。

 

 

「ただの人間の力も、魔法に負けたりはしないさ♪」

 

 

倒れている兵士たちの耳には、瀬田のその言葉が残った。

これが魔法や未知なる能力や忍術も一切使わない、地上最強の一般人、瀬田の力だった。

 

 

「スッゴーーーーッ!? 瀬田さんマジでスゴくない!?」

 

「首都の戦士を汗一つ掻く事無く・・・・」

 

「いやいやいや~~~恥ずかしいね~。ちょっと昔、偉大なる航路で冒険していた頃・・・・・・」

 

「「「「嘘つけええ!!!」」」」

 

 

アスナ達が改めて瀬田の力を知り、驚いていると、急に瀬田はハッとなって慌ててシモンへ走り出した。

 

「おっーーーと! こーしてる場合じゃなかった! シモン君、急で悪いけど僕たちに付いてきてくれたまえ!」

「へっ?」

「探していた遺跡がついに見つかったんだ! 丁度僕等も見つかっちゃった事だし、今すぐ出発しようと思って、君を探していたんだ! 是非君のドリルを貸して欲しい!」

「えっ? 瀬田さん・・・あの・・・」

「さあ、善は急げだ! 追っ手も直ぐ来る!」

 

瀬田はシモンの返答を一切聞かずに強引に手を引っ張ってセスナ機に乗せようとしている。

すると上空から声が聞こえた。

 

 

「パパーー! シモーン! 今見渡したら、今度はアリアドネーのやつ等が来る! 急いで逃げるぞー!」

 

「「「「サラさん(ちゃん)!?」」」」

 

 

空からメカタマが現れた。そして中からサラが叫び、そのままメカタマは瀬田たちより先に空を駆け出した。

瀬田もサラの言葉に頷いて、有無も言わせずシモンを引きずりながらセスナに乗り込んだ。

 

「では出発だ! 行こうじゃないか! 未だ解明されぬ、顔神遺跡へ!!」

「ちょっ、ちょっ・・・瀬田さーーん!?」

 

シモンも事態に頭が付いていかなかったために、抵抗することは出来なかった。

しかしシモンの叫びを聞いて木乃香たちが慌てて意識を戻した。

 

「なっ、・・・・まっ待って・・・シモンさん行ったらアカーン!?」

「ま、待ってよ瀬田さーーーん!?」

「ちょっ、どこに行くんですかーーーーーーッ!?」

 

急に飛行機にシモンを無理やり乗せて、瀬田とハルカは急いで飛行機を発進させる。

それを呆然と見ていたアスナ達も、急にハッとなるが既に間に合いそうもない。

しかし一足先に反応した木乃香は、無我夢中で走り出した。

 

 

「嫌・・・離れるんはもう嫌や!!!」

 

 

ただシモンと別れたくないという想いだけで、木乃香は走り出して今にも飛び立とうとしているセスナ機に、危険を恐れずに飛びついた。

 

 

「シモンさぁぁーーーーーん!! ウチも・・・・ウチも一緒に!!」

 

「こ、木乃香ァーーー!? 危ない、ダメぇーーーー!!」

 

「おおおお、お嬢様ァァァァァーーーーーーッ!?」

 

 

木乃香は必死になって手を伸ばす。

しかし助走している飛行機には後一歩届かない・・・・

そう思った時、シモンが窓から顔を出して手を懸命に伸ばして木乃香の腕を掴んだ。

 

 

「バカ、何やってやがるッ!! 危ないじゃないかッ!!」

 

「ええもん!! シモンさんとおれんのなら、ウチはバカでええもん!!」

 

 

シモンは叫ぶ木乃香の腕に力を込めて、木乃香をそのままセスナ機の中に引きずり込んだ。

そしてギリギリのタイミングで、木乃香が窓から中へ入った瞬間に、飛行機はメカタマと並んで、空の彼方へと飛び立ってしまった。

 

「おおおお、やったわ木乃香! 間に合ったわ!!」

「やるでござるな!」

「ハイ!・・・・って、そうじゃなくって!? シモンさんと木乃香さんが攫われちゃいましたよ!?」

 

ネギの言葉に再び慌てだし、刹那は激しく動揺しながら、背中の翼を出そうとしていた。

しかし、その前に楓に止められた。

 

「くっ、私が飛んで・・・「待て刹那!」・・・離せ楓! お嬢様とシモンさんが・・・」

「瀬田殿たちなら信用できよう。それよりも騒ぎが大きくなってきた。我々も捕まる前に逃げるでござる!」

「そ、そうね! シモンさんも居るし木乃香は大丈夫よ! 私たちも警備の奴等が来る前に逃げるわよ!」

「ぐっ・・・うう・・・わ・・・わかり・・・ました・・・」

 

刹那はその言葉に悔しそうにしながらも、しぶしぶ頷いた。

目の前で二人の大切な存在が共に自分の手の届かないところへ飛んでしまい、それを追いかけられない自分自身に歯噛みしながら、刹那はネギたちと共に急いでその場から立ち去った。

しかしその途中で刹那は空を高速で通り過ぎる一人の戦乙女を見た。

 

 

「お待ちなさい、そこの飛行船!! 今すぐ人質を解放なさい!!」

 

 

刹那たちの真上を通り過ぎ、真っ直ぐ飛び立ったセスナ機へと向かっていた。

 

「あれは・・・・」

「エミリィちゃん・・・よね?」

 

戦乙女の武装をしたエミリィが、単騎で追跡を試みているのである。

本来なら団体で任務に当たる警備隊としては、これは命令違反の単独行動としてみなされるだろう。現に遥か後方でエミリィのスピードに追いつけないが、必死に止めようとベアトリクスやコレットたちが空中で通信を試みている。

しかしエミリィは止まる気配はない。

 

「委員長ってば! 単独じゃあ危険だって! 一度体勢を立て直して・・・・」

「お嬢様、聞こえていますか? お嬢様!」

 

しかしその必死の呼びかけにエミリィは答えない。

彼女は無我夢中で飛び立ったセスナ機を追跡していた。

 

 

「絶対に・・・・絶対に逃がしませんわ・・・・」

 

 

普段優等生の彼女だが周りが分からなくなるほど熱くなっている。そのため、コレットたちの声など届かない。

彼女は只必死だった。それは何故か?

それは彼女が目撃してしまったからだ。

賞金首である瀬田が、シモンを無理やり攫った(?)瞬間を見てしまったのである。

だから・・・

 

 

「シモンさん・・・・私が・・・今度は私があなたを救ってみせますわ! それが・・・それがパートナーですわッ!!」

 

 

正義と誇りと愛を掲げ、戦乙女見習いエミリィ・・・・絶賛勘違い中だった・・・・

そして身を隠しながらネギたちはエミリィの飛び立った方向を不安そうに眺めた。

 

「シモンさん・・・木乃香さんも大丈夫かな?」

「うう~~ん、エミリィちゃんも行っちゃったしね・・・・」

「いや、・・・100パーセント大丈夫だと思うでござる・・・ある意味、木乃香殿が今居る場所は、世界で最も安全な場所とも言えよう」

 

楓の言葉に、ネギたちも何となく納得でき、ようやく少し落ち着いた。

だからこそ今はとりあえず身を隠して、他の仲間とも逸早く合流してシモンたちの帰りを待つ、それが最善の策だった。

しかし・・・

 

「・・・・・・・・・・・・・」

「刹那さん?」

 

刹那は一人、木乃香たちの向った空を眺めながら何かを考え込んでいた。

 

 

「・・・まさか、・・・いえいえ・・・お嬢様は協力しようと仰いましたし、抜け駆けは・・・いや、お嬢様が望むのなら私も身を引くのはやぶさかでもないが・・・それではあまりにも私が・・・・。・・・いや、だが今のシモンさんはニアさんを思い出せないし少し危険では? もし、お嬢様の美しさにコロッと・・・いや・・・だが・・・」

 

「あの・・・・ちょっと・・・刹那さん?」

 

「うう~む・・・いや、待て!? お嬢様だけではない! サラさんも居るし、たった今ドサクサに紛れてエミリィさんまで・・・・」

 

「刹那・・・少し落ち着くでござる・・・」

 

 

ブツブツ言いながら、徐々に顔が真っ青になっていく刹那。

そして、考え抜いた彼女の答えは・・・・

 

 

「しまった! 出遅れたァァーーーッ!?」

 

 

刹那、参戦失敗に素で悔しがりながら、肩を落として落ち込んでしまった。

そんな刹那の叫びも届かぬ既に遠い空の上で、シモンたちは真っ直ぐ遥か先の遺跡へと向かっていた。

 


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