魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第160話 繋がる縁

シモンが木乃香たちと再会したころ、夜も遅くなり閉店間際となり客も減った屋外レストランで、馬車馬のごとく働いた亜子たちが、ようやく一息ついて、先ほどテレビで登場した男について語っていた。

 

「それにしても、シモンさんも居たとは・・・・だったら学園祭での力も、作り物ではなく本物・・・」

「せやけどよかったな~。きっと桜咲さんや木乃香も喜んでるんちゃう?」

「うん、それに~、シモンさってコジロー君より頼りになりそうだし♪」

「ああ~ん、なんやてー!?」

「うっそ、冗談冗談!」

 

亜子たちはそれほどシモンと係わり合いがあったわけではない。修学旅行でも学園祭でも特に話をしたわけでもない。だが、それでも学園祭ではいつも話題の中心に居たのを覚えている。そしてネギたちが心の底から尊敬していることも普段の学校生活でも分かっていた。

だからこそ、このような状況で、頼りになる男が現れたことがとても心強かった。

 

「けっ、・・・・まさか・・・野郎とお前らが知り合いとはよ・・・」

「世間も狭いさね~」

 

談笑している小太郎たちの輪に、仕事を終えた奴隷長とトサカが現れた。

 

「おお、たしかにシモンの兄ちゃんがトサカと知り合いやったとは驚きやな~。にしてもトサカも早う言えや」

「ふん、うるせえよ。大体俺はあの野郎が嫌いなんだよ。話題にも出したくねえ・・・」

 

そう言ってトサカはかなり不機嫌そうな顔になり、小太郎たちに背を向けて出かけようとする。

その後姿は何かにイラついているようだった。

 

「お、おいトサカ、どこ行くんや? 知り合いやったらお前も・・・・」

「ムカついたから少し飲んで来るんだよ! 大体あの野郎に用事なんかねえんだよ!」

「あ・・・おいっ!」

「ったく・・・素直じゃないさね~」

 

トサカは気分を悪くして、早足でその場から立ち去った。

後ろから小太郎や亜子たちが何かを言っているようだったが、シモンの話題は聞きたくなかったらしく、無視して街中へと消えていった。

 

「おい、なんでアイツシモンの兄ちゃん嫌っとるんや? 熱くておもろい兄ちゃんやないか?」

「ええ、・・・それに彼の友の何とか団と言う方々も面白い人達だったな・・・」

「ああ~、裕奈と一緒にアキラも学園祭の最終日のロボット対決で勧誘されてた奴やろ?」

 

付き合いは浅いものの、シモンという人間がそれほどまでに毛嫌いされる理由が分からず小太郎たちもトサカの態度に首を傾げたが、奴隷長は溜息をつきながらトサカの背中を眺めていた。

 

「まっ、気にすること無いさね。トサカの奴も、意地になってるだけさね。あの男を認めちまったら・・・自分が惨めに思えてくるんだろうね・・・」

「あん? なんや・・・トサカと兄ちゃんたちの間に何があったんや?」

「ふん、まっ・・・大の男が気にする必要のない些細なことだよ」

 

そう言って奴隷長は少し溜息をつきながらトサカの背中を目で追いかけていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「けっ、・・・・気に食わねえ・・・なんでまたあの野郎が居やがるんだよ・・・」

 

トサカは夜のオスティアの街をぶらついてた。夜も遅く、店もだんだん閉まっていくにもかかわらず、まだ多くの人が出歩いていた。

もうすぐ始まる祭り本番の準備か、もしくは今から興奮しているのかは分からないが、皆浮かれていた。それが逆にトサカを更にイラつかせた。

 

「おもしろくねえ・・・・野郎に出会ってから、奴隷にもナメられるし・・・ついてねえぜ・・・・」

 

以前ならもっと亜子たちをヒドイ扱いに出来たはずだ。小太郎たちに対してももっと色々な扱いを出来たはずだ。しかし最近それが出来なくなった。

自分で自分をクズだと認めているにもかかわらず、何かしようとするたびにシモンがチラついて、ひねくれた性格はそのままだが、曲がったことが出来なくなってしまった。

自分も変われるかもしれない。住む世界の違う人間の光が眩しく、自分にも何かが出来るのではないかと一瞬思ってしまったこともある。

しかし強すぎる光は眩しすぎて目に毒になるときもある。トサカにとってのシモンは正にそれだった。

何の前触れもなく見せられた光を直視できずに、未だにシモンを認めることが出来なかった。

そんなイライラをどこにもぶつけること出来ずに街中を当てもなく歩いていると、不意に後ろから声を掛けられた。

 

 

「かっかっか、荒れてんじゃねえか? トサカぁ」

 

「あん? ・・・・てめは・・・ラオ・・・」

 

 

振り向いたトサカの前には虎の顔と毛並みに覆われた獣人の男が立っていた。

その名はラオ・バイロン。そして肩には小さな妖精、ラン・フォアが居た。

このコンビは拳闘家の間でもベテランの戦士として名を馳せている者たちであり、グラニクスに居た時からトサカや奴隷長、そしてトサカの兄貴分のバルガスとも顔見知りだった。

 

「つうか、テメエは何で居やがるんだ? 俺はナギとコジローの拳闘団としての仕事があるから来たが、テメエは二人に負けて大会には出場できねえだろーが」

「ぐっ・・・いいじゃねえか祭りを楽しむだけでもよ・・・・」

「けっ、んな風に日和ってるから、新人なんかに負けんだよ」

 

トサカの言葉に少し傷ついたらしく、ラオは少し肩を落とした。

本来ベテランとして有名なラオたちは、このナギ・スプリングフィールド杯の参加者として有力候補だったのだが、地区大会でデビュー戦のナギ・コジローペアにアッサリと破れ、そのまま大会参加を逃してしまったのである。

 

 

「ぐっ、痛いところを突きやがるな・・・・まあ、お前も最近丸くなったと噂を聞いたが、口はトゲが残ったままだな・・・」

 

「ふん、うるせえよ~。んで、何のようだ? 祭りで声を掛けられるほど、俺たちは仲良くもねえだろ?」

 

「おいおいおい、仮にも同業者に冷たいんじゃねえか?」

 

「ああ~~ん? 大体テメエらがアッサリ予選で負けるから、俺たちはナギたちにくっ付いてワザワザここまで来ることになったんだろうが。ベテランが聞いて呆れるぜ! なあ? 大戦期の戦士、虎口のラオよ?」

 

「そ、そこまで言わなくても・・・」

 

 

一貫して態度の悪いトサカにラオは苦笑せざるをえなかった。そして取り付く間もないトサカの嫌悪感を察して、用件だけを早々と言うことにした。

どうやら彼は、ただ声を掛けただけではないようだ。

 

「ったく。そ~と~イラついてやがんな・・・まあいい、本当はバルガスに用事があったんだが、お前でいいか・・・」

「あん?」

 

ラオは軽く咳払いをして本題に入った。

 

 

「ちょっと・・・儲け話に誘われてな。各地の拳闘団たちも抱き込んで、大仕事をやらかそうって話だ。・・・お前らはどうする?」

 

「ああ? 儲け話だぁ~? いきなり胡散癖えな・・・主催者は誰だ?」

 

「テメエも知ってる奴らだよ・・・・黒い猟犬(カニス・ニゲル)だ・・・」

 

 

ラオの口から出た言葉にトサカは顔色を変えた。

 

「は、はあ!? あの猟犬共だと!?」

「黒い猟犬(カニス・ニゲル)」 その名をトサカは当然知っていた。悪い噂しか聞いたことの無い賞金稼ぎ結社である。

 

だからこそ、胡散臭さよりも危険な匂いしかしなかった。

 

「バカかテメエは! 残虐非道の賞金稼ぎ共と組んで儲け話もクソもねえだろうが! どーせ、後で騙されんのがオチだぜ」

「まあ、そーなんだがよ、生業はともかくとして、別に犯罪者なわけじゃねえ。その犯罪者を捕まえる組織だ。ガラが悪いのは俺らも同じだろーがよ」

 

しかしトサカは首を横に振った。

 

「どーでもいいんだよ、んなことはよォ・・・・大体俺はテメエみてえに暇じゃねえんだよ、俺も兄貴もナギたちの所為で拳闘団の仕事がある。悪いが、そんなアブねえ誘いはお断りだぜ」

 

考える間もなくラオの誘いをトサカはケリ、ラオも残念そうに肩を竦めた。

 

 

「かっ~~、つまんねーなー、今色々な拳闘団に話が回ってるってのによ~。俺のように大会に出場していない古参の拳闘士の間じゃあこの話で持ちきりだぜ? 何でも大物捕らえるために、俺らの手を貸して欲しいそうだぜ?」

 

「はん、興味ねえよ・・・俺はもう、んなデカイ話も儲け話も興味ねえ・・・・・・地べたを這いずり回るクズらしく・・・・一発狙わねえで、セコク稼いでいくだけさ・・・・・」

 

「お・・・おお・・・卑屈さまで出てくるとは相当重症だな・・・・まあ・・・いいけどよ・・・」

 

 

ラオもトサカを無理に誘うことはせず、諦めてそれ以上言うのはやめた。どうやらこれ以上言ってもトサカは動かないと判断したようだ。

 

「まあ、いいぜ。俺は一発狙いに行ってくる。大会出れないんじゃ暇だからな。騙されたと思って行ってくるぜ。気が変わったら連絡しな」

 

ラオはそう言って、トサカに告げて背を向け、夜の街へと姿を消していった。

ラオが何の儲け話に誘われたのかトサカには分からない。しかし黒い猟犬(カニス・ニゲル)という組織が関わるのならばあまり良い予感はしなかった。

少しラオの話しも気になりもしたが、今のトサカはシモンや亜子たちに対するイラつきが頭の中で優先され、結局ラオの話の中身を知らぬまま、またオスティアの夜をぶらつき始めたのだった。

 


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