魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
冷や汗を流しているシモンは背中をバシンと叩かれた。
そこには涙目ながらも満面の笑みを見せるアスナとネギ、そして微笑む楓が居た。
「ま~~ったく、シモンさんってば! そんなに私たちを驚かせて楽しいの?」
「本当です! ・・・・でも・・・よかった・・・ぐすっ、僕たちも会いたかったです」
「相変わらず予想を超える方で何よりでござるよ。だが、嬉しいほうの驚きで良かったでござる」
今のシモンにはまったく覚えのない面々である。しかしそれでも目の前のネギや木乃香たちは、自分の失った記憶の何かを刺激させた。
だからこそ、シモンも中々口を開くことが出来ずに、しばらくオロオロしていた。
「待った・・・あの・・・ちょっと・・・良いかな?」
「ええ、何でも仰ってください! あなたの言葉を何でも良いから聞かせてください! あなたの口からでる全ての言葉が私たちを刺激し、熱くさせてくれるのです!」
そして目の前には瞳を輝かせてシモンの言葉を待つ刹那。視線を変えると木乃香、そしてネギ、アスナ、楓までもが、その言葉を期待して待っていた。
皆、シモンの言うどんな言葉でも聞きたかった。それが自分たちにいつだって力を与え、どんなことにだって立ち向かえたのだ。
しかしそんな事をシモンはまったく覚えていない。だが、少女たちの反応で何となく分かった。
(やっぱりこの子達・・・・俺の事を知ってる・・・・記憶を無くす前の俺を・・・・)
シモンは少し躊躇いながらも、今の自分の状況を木乃香たちに伝えようとした。
それは目の前で期待に目を輝かせている彼女たちを傷つけるかもしれない。だが、いつまでも黙っているわけにはいかない。
シモンは申し訳なさを感じながらも口を開こうとした・・・・その時だった。
「・・・・おい・・・・」
「・・・・何です、これは?」
メチャクチャ声のトーンが低いサラとエミリィが口を挟んできた。
そして、これが後にシモンによる被害者、シモンに恋をした少女たちの必然の出会いだった。
「おい・・・・お前ら・・・・人のモンにな~にやってんだよ・・・・」
「そしてシ・モ・ン・さ~ん? これはど~ゆうことですか? このガサツな女以外、まだ居たのですか?」
少し肩をビクリとさせて振り返るとそこには二人の嫉妬魔人がいた。
「まっ、待ってくれよエミリィもサラも! 俺も今その事について話があるんだ」
「うっは~~、兄貴ってば浮気現場を目撃された男みた~い・・・話って・・・言い訳のこと~?」
「不潔です・・・・兄貴さん」
うろたえるシモンに不気味な笑みを浮かべて歩み寄るエミリィとサラ、そしてコレットは少し興味心身とばかりにこの展開にワクワクしていた。
だが、うろたえているシモンの前に彼女たちが先に口を開いた。
「貴様・・・・今何と言った?」
「あ~ん? 私のことかよ?」
「今・・・シモンさんを自分のモノゆーた?」
「はん! だってそーなんだから仕方ねーじゃん!」
先ほどまでの甘えモードから突如ゴゴゴと怒気を孕んだオーラを醸し出した刹那と、頬を膨らませる木乃香を、サラはまったく恐れずに容赦なく鼻であしらい、二人に抱きつかれているシモンを無理やり引き寄せた。
「だって、もう私のりょーしんも公認済みなんだからさ~!!」
「「!?」」
「し、シモンさん!? 本当ですの!?」
「だーかーらー、もうコイツは私のモンなんだよーだ!」
――ピキッ
「お、おいサラぁ。今はそんな冗談なんか言ってないで、それよりこの子達の事なんだけど・・・「ふふん、照れるな照れるなッ♪」 ・・・照れてない! 俺は真面目に・・・」
「へん、照れてんだろー?」
「だから照れてないって!!」
「へへん、照れてんだろ~~~?」
――ミシ・・・ミシ・・・
何かが亀裂を立てる音がした。
そして何かが切れそうな音が聞こえてきた。
しかし候補者が多すぎて誰か分からなかった。
だがそれでもサラは怖いもの知らずを全開にしてシモンの肩を組んだ。
「まっ、ホントーは嫌だけど、しょーがねーから、私はお前でガマンしてやんよ♪」
「も~~~、そうじゃなくって俺の話を聞けよーーーーー!!」
しかし誰も聞いていなかった。
今の木乃香たちがサラと同じ行動をしたら、きっと仲のいい兄妹のじゃれ合いに見えるだろう。
しかし大人バージョンのサラがやると、それはバカップルの様な光景にしか見えなかった。
(この・・・女ぁ・・・先ほどの中継でも・・・・たしかに顔は・・・、それに年も我々より上なだけあってスタイルもいいが・・・・ヨーコさんよりも遥かに劣った胸の分際で・・・あろうことかシモンさんを自分のだとォ?)
(シモンさんの事を何も知らんクセに・・・シモンさんをニアさんの次に好きになったんはウチやのにィ・・・・結婚するんはウチやのにィ・・・)
止まる事無く怒りパワーが上昇している今の二人を数値に表すと、それは最早サイ○人もビックリするほどだろう。
「ななな・・・・ちょっと~~、ネギィ・・・・」
「むむむ、無理です!? 僕には止められません! 深い深い愛の前には、僕の気合なんか消されちゃいますよ~」
「うう~む、今の二人ならヨーコさんにも勝てるのではござらんか?」
冷や汗をダラダラ流しながらも、一歩ずつアスナ達は後退していった。そして刹那と木乃香が同時にサラに怒鳴ろうとした瞬間・・・
「「ふざけ・・・「ふざけないでもらえますか!!」・・・・・・・ギロ!」」
二人より先にエミリィが叫んだ。
するとサラが不機嫌そうにエミリィを見るが、エミリィも引かなかった。髪を片手で掻き上げ、余裕を保とうとしながら言う。
「あなた・・・シモンさんと会ったのはいつ頃でしょうか?」
「あん? アリアドネーで会ったから・・・え~っと・・・・」
「アリアドネー・・・つまり私より後・・・ということですわね?」
「な・・・なんだよ・・・、何かカンケーあんのかよ?」
するとエミリィは自信満々とばかりに不敵な笑みを浮かべた。
「ふっふっふ、ならば手遅れですわね!」
「な、なんでだよ!?」
「ふっふっふ、なぜなら・・・・既にシモンさんは私のパートナである事を了承しているのですから!!」
「「「「「「「「―――――――ッ!?」」」」」」」」
また余計なことをこの子は言ってしまった・・・・
「あれは・・・私が魔獣の森で竜種と戦っている時でした・・・・力及ばず、命を散らそうとした私の前に、シモンさんは颯爽と現れ、身を挺して護ってくださいましたわ!」
「へん、なーんだ! 護ってもらっただけかよー!」
「ふふん、いいえ!! 自らの無力に嘆く私にシモンさんは言って下さいました・・・・私を力強く抱きしめて・・・・」
―――ブチ・・・ブチ・・・
「お前が信じる、お前を信じろ!! その時、私たちはパートナーとなったのですわ! そして共に強固な壁に立ち向かい、見事困難を突き破ったのですわ!」
エミリィは身振り手振りで、多少大げさだが一応事実を述べている。そして・・・
「ああ、・・・そういえば、そんなことがあったな~・・・」
と、当時を思い出そうとしているシモンが呟いた。
勿論シモンの思ったパートナーとは、あの時の戦いで協力し合うという意味であって、当然エミリィや目の前で恐ろしい顔になっている嫉妬魔人達の思っている意味とは全然違うのだが、エミリィは胸を張って自慢するかのように言う。
「ですからもう、アナタ方の入る隙間など、無いのですわ!!」
―――ドォォォーーーーン!!
その瞬間怒り戦闘力を測るスカウターが計測不能になって粉々に砕け散ってしまうほどの少女たちの怒りが、ついに爆発した。
「「シモンさん!!!! これはどういうことや(ですか)!!!???」」
「うおっ・・・・」
先ほどまで可愛らしく甘えていた二人が、シモンの腕を爪が深く食い込むぐらい強く掴みながら、怒りを露にした。
「今度は・・・・今度会ったらウチ自身を見てくれるんやなかったん!?」
「私たちが最初に告白した時は・・・アッサリ断っておいて・・・・これは一体どういうことですかァ!?」
「・・・・・えっ? なんだって? こ、・・・・告白ゥ!?」
告白したという言葉にシモンが驚愕したが、サラとエミリィは違った。
一応これまでのやり取りで、木乃香たちがシモンの知り合いなのだということは予想できたうえに、記憶云々を抜きにして、シモンに好意をもっていたであろうことは瞬間に察知したが、今の刹那の言葉で違う反応を見せた。
「な~んだ、お前らフラれてんのか?」
「でしたら、あなたたちは相手ではありませんわね。さしずめシモンさんにまとわり付くストーカーというところでしょうか?」
そして、また余計なことを言ってしまった。
「「!?」」
「「「「「――――!?」」」」」
エミリィ・・・流れで一応パートナーという事を承認。注:意味は全然違う。
サラ・・・両親公認済み。注:シモンが興味を持ったのはモルモル王国での生活。
に対して、
木乃香・・・プロポーズ・・・アッサリと、ヤダと言われた。
刹那・・・告白・・・こちらもフラれ済み。
なのだが・・・・
「なんだと・・・・貴様ら・・・・」
「ウチらが・・・・ストーカーやて?」
意外と間違っていないかもしれないが、ついに二人の怒りの矛先は、エミリィとサラに向けられた。
「あら? 何か間違っているのですか?」
「へん、見苦しいからあきらめろよな~」
―――ブッチイィィッッ!!!
人間がそこまで何度もキレる事ができるかどうかは分からない。しかしエミリィとサラの言葉は、二人の想いを侮辱した。
その瞬間ゴングがなった。
「貴様らァァ!! 許さァーーーーーん! たたっ斬ってやるッ!!」
「シモンさんは・・・ウチとせっちゃんのやもーーーん!!」
「へん、ジョートーだよ! 掛かって来いよ!!」
「ふん、返り討ちですわ!!」
女たちが野蛮にも掴み合いを始めた。
正にキャットファイトだった。
いや、そんな生易しいものではないかもしれない。
観客たちは大盛り上がりだが、アスナ達は慌てて震えながらも止めようとする。
しかし・・・
「ネギィ!? 急いで止めなさいよォ!」
「は・・は・・はいっ! ・・・・・うっ、・・・ぶくぶく・・・ガクッ・・・」
「ネギが倒れたァ!?」
ネギが止めようとした瞬間、泡を吹いて倒れたのだった。楓はその様子をあごに手を置きながら、木乃香たちの間合いに入らないように一歩下がった。
「これは・・・どうやらハンパな覚悟では彼女らの前では意識を保てぬようでござるな・・・なんとも凄まじい覇気・・・・」
「マジで!? どこの四皇よ!?」
「ううむ、このままでは・・・雲が・・・天が割れるでござる!!
普段は可愛らしい少女たちも、ヤル時はヤル。
「す、すげえ・・・・誰が勝つか予想できねえ・・・・」
「い、一応俺はあの剣士の女に賭けようかな・・・・・」
「じゃ、じゃあ俺は長い黒髪の子・・・・・・」
一人の男を巡る女たちの争いは、外から見れば、モテる男はうらやましい、と羨むはずが、誰一人としてこの時は思って居なかった。
「神鳴流・・・」
「魔法の射て・・・」
「特殊光学系結界兵器・・・」
「タロット・キャロット・シャルロット!!」
しかも誰一人として、一切の容赦をする気はなさそうである。
「いかん!?」
「ちょっ、それまずいでしょーーーーっ!?」
「委員長、ダメだってば!?」
周りが慌てて止めるが、一切耳に入っていない。
それぞれの身に付けた力をたった一人の男を手にするために、女たちは解放しようとした。
だが・・・・
「いい加減にしろよォーーーーッ!」
「「「「!?」」」」
天が割れる前にシモンが大地をドリルで叩き割った
四人が交錯する寸前に、大地にゆれが走り、四人は思わず攻撃の手をピタリと止めてシモンを見る。するとそこには、感情を露にしたシモンが居た。
「本当に、いい加減にしてくれよッ! この事態を一番知りたいのは俺の方なんだ。その俺を外して、勝手なことをするのは止めろ!」
少しシモンは怒り気味だった。
それは地面に乱暴に突き刺さっている螺旋槍を見れば分かる。
野次馬や、ハッとなったアスナやネギやコレットたちを含めて、全員がシモンの怒鳴りに、静まり返っていた。
しかし・・・
「シモンさん? あなたは何を今更・・・」
「・・・言っとるん?
「お前ひょっとして・・・・
「・・・・そこまでお馬鹿さんですの?」
四人はシモンに怯えるどころか、何をバカなことを言っているんだ? 的な顔で呆れていた。
そしてユラユラと近づいてきた。
「えっ・・・あれ? ちょっ・・・何だよ?・・・何でみんな俺に構えてるんだよ・・・?」
何故かそのプレッシャーにシモンも、鳥肌を立て、半歩だけ後退してしまった。
そして四人は先ほどまで争っていたとは思えぬほど息をピッタリと合わせて、剣や、杖、レーザー砲を構える。
「「「「誰の所為だと思っているんですかァ(や)(やがる)ーーーーーーーーッ!!!!」」」」
「だから、この事態を一番知りたいのは俺のほうなんだってば!!」
「うええええん、シモンさんのアホォ~~~~!」
「少しは自重してくださーーいッ!!」
「その節操無しのドリルを・・・」
「とにかくブッ叩いてやんよーーーーッ!!」
「ええええーーーーッ!? これって俺の所為ッ? ってうわああッッ!?」
なんと四人が共闘を始めた。
それこそ容赦なく攻撃を繰り出していた。
しかし後にこれほどの光景を見ていたネギたちは語る。「まさかあの時は・・・あれほどの争いが、まだほんの序章だとは思いませんでした・・・」と近い将来語ることになる。
そして爆音が響き渡った。
息もつかせぬ破壊力の剣技、レーザー、魔法。四位一体の攻撃はシモンに容赦なく襲い掛かっていた。
女たちの怒りの矛先は最終的にライバルではなく、元凶の男に向けられ、女の心を弄んだ男は成敗される・・・・事情を知らない野次馬たちは、少なくともそう判断したのだった。
だが刑が最後まで執行されることは無かった。
それはシモンの一言が事態を止めたのだった。
「とにかく! 今更だけど、まず聞きたいことがある!」
「「「「問答無用!! 成敗合体~~~!!」」」」
ボコボコにされているシモンが悲鳴のような声を上げるが、四人は見事なチームワークで容赦なく襲いかかる。
そして追い詰められたシモンは、慌てていたため、言ってはならないことを言ってしまったのだった。
「ななな、なんで!? とりあえず・・・その・・・あああ~~~もうッ! お前たちは一体誰なんだよォ~~~~!?」
「「「「「――――!?」」」」」
「「「―――――!?」」」
その瞬間、四人を含めてネギたちまでもが息を呑んでピタリと止まった。
「・・・・あっ・・・・(しまった・・・こんな言い方・・・)」
そして静まり返った後、シモンは我に返って後悔してしまった。
いくら事実で、切羽詰った状況だったとはいえ、自分と親しかっただろう者に向けて、このような言い方をしてしまったのだ。
そして木乃香と刹那を見る。
すると二人は茫然自失といった感じで、唇が震えていた。
「し・・・、シモンさん・・・な・・・、今・・・なんて・・・」
「お、おっしゃる意味が分かりません・・・・」
さっきまでは、あれ程まで凄まじい覇気を出していた二人が、今はまるで触れれば粉々に砕けてしまうほどの脆い表情でシモンを見ていた。
そしてそれは木乃香たちだけでなく、ネギたちもそうだった。