魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第156話 インフィニティ・嫉妬バン・ストーム

相対するシモンはエミリィを見て、思わず名前を呼んでしまった。そしてどこか懐かしさを感じた。

 

 

「元気そうだな! また会えてうれしいぜ」

 

 

自然と出た言葉だった。

しかしその言葉を聞いてエミリィはもの凄い形相でシモンを睨みつけ、ツカツカと歩み寄ってきた。一瞬シモンがエミリィの気迫にゾクリとさせられた。

すると次の瞬間、目の前まで来たエミリィは左手を思いっきり振り上げてシモンの頬を殴った。

 

 

「!?」

 

「ッ!?」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

『これは一体どういうことだ!? 突如現れたアリアドネーの若い戦乙女が、問答無用でシモン選手にビンタ一撃!? 何やらドロドロの匂いが漂ってきたぞ~~』

 

 

シモンも何故殴られたのか分からなかった。

しかし頬を押さえてエミリィをもう一度見ると、先ほどとは打って変わって、か弱い少女のように泣き出し、シモンの胸に飛び込んだ。

 

「シモンさん!!」

「エ、エミリィ・・・・」

「バカ・・・・・・バカバカバカバカバカバカバカバカァ!! シモンさんのバカァ!!」

 

エミリィはシモンの胸に飛び込んで泣きじゃくりながら、何度もシモンの胸をドンドン叩いた。

 

「どうして・・・どうして何も言わずに消えてしまったのです!? 私が・・・皆が・・・どれほど心配したと思っているのです!?」

「エミリィ・・・・・」

「うう・・・うわあああああああああああん」

 

泣きじゃくるエミリィ。その小さく震える肩を抱きしめて、シモンは優しくエミリィの頭を撫でた。

 

「ゴメンな。俺がバカだった。お前たちに心配ばかり掛けて・・・・」

「うっ・・グスッ・・・許しません・・・・絶対に許しません! あなたなど大ッ嫌いですわッ!」

 

エミリィはそう言って、ここがどこかも忘れて大観衆のど真ん中でシモンを離さぬように強く抱きしめた。

 

「ちょっ、痛いぞエミリィ・・・」

「離しませんわ! だって・・うう・・・離したらまた私たちを置いて行くのでしょう?」

「ははは、信用無いんだな、俺って」

「当たり前です・・・あなたは・・・あなたを信じる私たちを裏切ったのですから・・・・」

 

エミリィに苦笑しながらシモンはエミリィのやりたいようにさせ、気の済むまで頭を撫でてやった。

エミリィも少しずつ落ち着いていくが、シモンから離れる様子は無い。

すると上空から声が聞こえた。

 

「ユエ、皆! 後は宜しくね!」

「後で合流します!」

「ちょっ、コレット!? ベアトリクス!?」

 

制する声を振り切って、ズームアップされたシモンとエミリィの空間に、二人の少女が新たに上空から降りてきた。そしてその二人の少女にシモンはうれしそうに微笑んだ。

 

「コレット! ベアトリクス! お前たちまで来ていたのか!」

 

すると頷く間もなくコレットが飛びついてきた。思わず体勢を崩しそうになるが、シモンは踏みとどまり、コレットをしっかり抱きとめた。

そしてベアトリクスも表情からは読み取りづらいが、シモンの服の裾を掴み、喜びを露にする。

 

「も~~ッ! 兄貴のバカァ! 心配したんだからねーーーーッ! 今までどこ行ってたのーーーッ!!」

「はい、・・・しかし、ご無事で何よりです。皆本当に心配していたのですよ?」

「ああ・・・そうみたいだな。急に消えて心配掛けたな・・・・でも・・・」

 

シモンは苦笑しながらエミリィの頭は左手で撫でたまま右手でコレット、そしてベアトリクスの頭を交互に撫でた。

 

 

「安心しろ、俺はここに居るんだからな!!」

 

 

自分が連絡をよこさず無断で姿を消したことが、どれだけ目の前の少女たちを傷つけたのかを理解し、申し訳なさと、再会できた喜びを込めて撫でた。

 

 

「こうして声が聞こえる距離に居る。こうして触れ合える距離に居る。だから安心しろ! 俺はここに居る! お前たちの目の前に俺は居る!」

 

 

その笑みは相変わらずだった。

たったそれだけで事情を聞かずに、納得してしまった。

 

「ずるいね~、兄貴って・・・」

「はい、ずるいです」

 

エミリィもコレットもベアトリクスも笑顔で頷いた。

そしてコレットもベアトリクスもシモンに撫でられて心地よかったのか、笑みを浮かべてシモンに身を寄せた。

 

 

 

っと、まあ本来なら微笑ましいはずの光景なのだが、この中継を見ている者たちに一部違う者たちがいた。

 

 

『おお~~~っと、シモン選手女を泣かしています! しかし三人もだ! 何やら修羅場の気配が漂ってきたぞ~~~ッ!!』

 

 

その通りだった。

 

 

「誰・・・・やろ・・・・あの子ら・・・・」

 

「ええ・・・・・・じっくり聞きたいですね・・・」

 

 

声のトーンが非常に低かった。

そこには海賊王も裸足で逃げ出すほどの強烈な覇気を出す二人の少女がいた。

 

 

「ホンマは・・・あそこに・・・・ウチらがおるはずやのに・・・・何なん? どうして知らない子がおるん? 誰なん、・・・あの子ら・・・」

 

「何なんだ!? 先ほどからシモンさんにベタベタと!・・・・あの方は私たちのシモンさんだ! 気安く・・・あんな気安く・・・触れるどころか、抱きつくなど!?」

 

 

先ほどまでの歓喜も、涙も一切忘れ、木乃香と刹那は背中からチリチリと炎を出しながら呟いていた。

 

「ちょっ、二人とも落ち着いて・・・・って言いたいけど・・・・無理よね・・・」

「あわわわわわ・・・・」

「これは・・・・予想もしてなかったでござる・・・・」

「すげーな・・・事情は知らねえが、嬢ちゃんの溢れる魔力はナギ並みだぜ・・・」

 

ラカンですら冷や汗を流していた。それほどまでにテレビに釘付けになっている二人から発せられるプレッシャーは凄かった。

 

「ウチらをほったらかしにして・・・シモンさん何してんやろ? ウチらは・・・こんなにシモンさんに会いたかったんに・・・」

「ええ、・・・そこの事情を今すぐ聞きだしに行かねばなりませんね?」

 

無表情で呟く二人の言葉の端々にトゲを感じ、ネギたちは恐怖の余り震えていた。

しかも刹那は事情を聞きに行くと言いながら、いつの間にか夕凪を携帯していた。

何しに行くんだとツッコミたかったが、それすら許されぬ二人のプレッシャーにネギたちは圧倒された。

だが、そこから事態は収まるどころかさらに激化した。

 

 

『お前ら~~!? さっきっから何なんだよ~!? 何シモンに抱きついてんだよ~!?』

 

 

新たな女の声がした。するとシモンの隣にいたメカタマのコクピットが開き、中から美しい女が出てきた。

 

 

『おおお~~~っと! メカタマ選手の中から人が現れました! しかも美人だ! これは一体どういうことだァ!?』

 

 

アナウンサーの言葉は、全ての者の言葉を代弁していた。

猫耳プラス大人バージョンのサラがメカタマから出てきた瞬間、会場中が見惚れてしまっていた。

すると当然シモンに抱きついていたエミリィも反応する。

 

『そ、そういう貴女も何者です!?』

『私はシモンとず~~っと一緒に旅してきたんだぞ~~! 何ベタベタしてんだよ~!』

『なっ!? では貴女がシモンさんをアリアドネーから連れ去ったのですか!?』

『えっ!? 兄貴本当なの!?』

『兄貴さん?』

『あっ・・・いや・・・それはだな・・・・』

『なっ!?・・・・この女が私たちからシモンさんを・・・・・許しませんわ! シモンさんは返して頂きますわ!』

『はあ!? 何勝手なこと言ってんだよ~~~!?』

 

拳闘大会を忘れ、画面の中では女対女の争いが繰り広げられていた。

テレビ中継も本来は大会が終わったことで無くなるはずなのだが、ずっとこの光景を撮り続けていた。そして観客も誰一人として帰ろうとはせず、突如始まった女の戦いに注目していた。

 

 

 

 

そして・・・・

 

 

 

 

「せっちゃん・・・・ウチな・・・・こんな腹が立ったんは生まれて初めてかもしれん・・・」

 

「はい、それは奇遇ですね。・・・・私もハラワタが煮えくり返っています」

 

少女たちは感動とは別の意味で肩を震わせながら画面を見ていた。

木乃香はこれでもかと真っ赤になりながら両頬を膨らませ、刹那のオデコには一本一本血管が、怒りで浮き上がっていた。

 

「おい・・・ボーズ・・・止めろ・・・・」

「むむむ、無理ですよ~~~」

「シモンさんのバカ・・・・何やってんのよ・・・・」

「これは・・・・まずい事態になったでござるな・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはオスティアから東に離れた小さな村。

夜遅くにこの村に到着した七人組が食事を取っていた。

しかしオスティアでの拳闘大会のテレビを見た瞬間、大盛り上がりだった彼らも、今では静まり返っていた。

それだけではなく、ある一人の女の周りには誰一人として人が寄り付かず、彼女の仲間である男たちも恐怖の余り壁際で足が竦んでいた。

 

 

「薫ちん・・・・・シャークティの姐さんを・・・・」

 

「お、俺に死ねと言ってんのか?」

 

「シャークティ先生・・・怖いですね~・・・・」

 

「コノエネルギー・・・今ナラ彼女ハ、グランドクルスヲ使エマス」

 

 

誰も寄り付かない店内の中央で、テレビを見ながらシャークティは背中から神に仕えるものとは思えぬほどの禍々しいプレッシャーを放っていた。

 

 

「ふっ・・・・ふふふ・・・・」

 

 

シャークティは笑顔でコーヒーを飲んでいた。

しかしそれは無理だった。

なぜならシャークティの怒気が伝わりコーヒーが蒸発してしまっているからだ。

 

 

「私には分かっています・・・・彼には何かあったのです。・・・ええ・・・私たちや美空たちに一番早くに会いに来ないで、別の女性たちと一緒に居るのにはきっと訳があるのです。ふふふ・・・ええ、私には分かっていますよ。なぜなら家族なのですから♪」

 

 

笑顔とは裏腹にカップを持つ手が怒りで震えている。それどころかヒビが入っているぐらいだ。

まるでグラスの満タンまで水を入れた表面張力のような状態で、後一歩刺激を加えたら溢れるぐらいの怖さを豪徳寺たちは感じていた。

だが、その一刺激が容赦なくテレビから聞こえてきた。

それはコレットとベアトリクスがシモンの腕を抱きしめながら、向かい合うサラに胸を張って告げた言葉だった。

 

 

『そーだよ! 兄貴は私たちアリアドネーの兄貴なんだよ! 言ってみりゃァ、家族みたいなもんなのさ!』

 

―――バキィ!

 

 

シャークティの持っていたグラスが握りつぶされ粉々になっていた。

 

『ええ、この方はお嬢様・・・そして我々の大切な方、無断で盗られるわけにはいきません』

『ちょっ、コレットもベアトリクスも落ち着いてくれよ~、そんなんじゃないんだって、とにかく落ち着いてくれよ~』

 

―――ブチィ!

 

 

シャークティから何かが聞こえた。

その時、新生大グレン団は思った。

テレビにシモンが映ったときには驚きと喜びの声を上げたが、今は心の中で悲鳴を上げていた。

 

 

((((リーダー、自重ーーーーーーーーッ!!!!))))

 

 

ゆらっと立ち上がるシャークティ。

その一挙一動に豪徳寺たちは震えていた。

するとシャークティは指を十字に切り、叫んだ。

 

 

「判決・死刑!!」

 

 

シャークティとは思えぬドスの効いた言葉で親指を下に向ける。

そのあまりの凶悪な形相に豪徳寺やハカセたちは慌てて押さえようとする。

 

 

「ちょっ、同じドリルネタとはいえ、そのニード○スの神父はまずいっすよ!?」

 

「そ、そうですよ~! それにそのネタ知ってる人あまり居ないと思いますよ?」

 

「論点は違うが落ち着いてください、シャークティ先生の美しい顔が台無しに・・・・」

 

 

とにかく世界は女たちの怒りで満ちていた。

 

 

 

 

 

ここもそうだった。

 

 

 

オスティアへ向かう飛行船。

ネギの仲間たちが合流しようとオスティアへと向っていた。

この飛行船には朝倉、さよ、茶々丸、ハルナ、古が乗っていた。そして彼女たちもこの生放送を皆で見ていた。

そして今では茶々丸の言い知れぬプレッシャーに全員がビビッていた。

 

「ちょっ、朝倉・・・どーゆうこと?」

「い、いや・・・・私も何が何だか・・・・そもそもシモンさんが居ること事態、今知ったんだから・・・・」

「茶々丸が・・・怒ってるアル・・・」

「こ、怖いですよ~~~っ!?」

 

全員がテレビの前で正座している茶々丸から遠ざかって眺めていた。

 

「マスターをほったらかしにして・・・・・私のライバルは何をしているのでしょう・・・・・」

 

自分のマスターが想いを寄せているシモン。そして自分が最大のライバルと認め、何度も戦い、時には背中を合わせて戦ったこともある戦友。

 

「お覚悟を・・・この私の新技・・・茶々丸インパクトであなたを・・・」

「ちゃ、茶々丸ーーーッ!?」

 

その男が自分たちの知らない女に抱きつかれてヘラヘラ(していないが、そう見えた)していることに茶々丸は怒りメーターが上昇していた。

 

そう、シモンの登場に彼を知る者たちは皆、心の底から喜んでいた。

 

しかし現在、映し出されている光景に炎をメラメラと燃やしながら眺めていた。

 

まるで心のマグマが炎と燃える・・・・いや、その程度ではないかもしれない。

 

そして遂に、その炎が大爆発を起こした。

 

 

『ふざけんなよな~! お前たちに指図される覚えはないやい!』

 

 

画面の向こうで、サラが無理やりエミリィたちからシモンを奪い取って、渡さぬように抱きしめながら睨みつける。

 

 

『へん! お前らよ~~っく聞いとけよ~~!』

 

 

そして戸惑うシモンを無視して、サラはシモンの肩に手を回し、ムキになってアッカンベーをしながら衝撃の言葉を告げた。

 

 

 

『べェーーーーーーっだ! シモンは私のだもんねーー!』

 

 

「「「「「「「「―――――――ッ!!!???」」」」」」」」

 

 

『お前らなんかにあげないもんねーーーー!』

 

 

 

 

その衝撃はリアルタイムで全世界に襲い掛かった。

 

そしてサラのその言葉が合図となり、全てが始まった。

 

シモンを巡る戦いが遂に開幕した。

 

事情を知らない女たちは沸き起こる感情を抑えきれずに溜め込んだ想いと同時に放出する。

 

場所は違えど、想いは皆同じ。

 

それは業火などと生易しいものではない。

 

怒り、嫉妬、全てを込めた大爆発。

 

まるで宇宙誕生並みのエネルギーがそこにあった。

 

 

言葉にならないほどの衝撃。

 

 

 

「「「「「「ぬあああんだってええええ!!!???」」」」」」

 

 

 

永劫に続く宇宙創生の業火、インフィニティ・嫉妬バン・ストームが魔法世界で発生した瞬間だった。

 


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