魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第155話 すぐそばにあの人がいる!

「「「「「はっ、はああああああああああああああああッッッ!!??」」」」」

 

 

ものすごい勢いでその場を離れて全員が画面を食い入るように見た。

それはここだけではない、このテレビ中継を見ているものは、全員が噴出して画面に同時に食い入っている頃だ。それは小太郎たちも同じだった。

大して興味を示さなかった中継から、予想もしない名前が聞こえたからだ。

 

「い・・・・・いま・・・・・何て?・・・・何て言ったん?」

 

木乃香は息を荒く、激しく呼吸しながら画面を見つめる。目も動揺して泳いでいる。

そしてそれはアスナ、刹那、ネギ、楓、一人残らずそうだった。

 

「うそよ・・・・そんなはずない・・・・」

「そ、そうです・・・だって・・・あの人が・・・あの人は・・・あの日私たちに別れを告げて・・・そして・・・」

「そうだよ・・・なのに・・・・」

「ま、まさか・・・・本人でござるか?」

 

全員の肩が震えていた。

自分たちやフェイト以外からその名前を聞くことになるとは思わなかった。

今、聞こえた名前がただの聞き間違いか?

それともたんなる同名の人なのか?

彼女たちにとってそれほどの人物なのだった。

 

 

 

 

 

 

『強い強い強い!! 瞬く間に数十人を蹴散らしていく、シモン・メカタマペアの前に参加者たちはなすすべ無し! 今では二人を倒すために残る全員が徒党を組んでいます!』

 

 

会場は異様な盛り上がりを見せていた。

本来ただのイベントにしか過ぎないこの大会も、ただの祭り前の観客による賭けの一部にしか過ぎなかった。

しかし今では全員が賭けを忘れて、その力に見入っていた。

肩を並べて戦うシモンとメカタマ。

この二人に今多くの注目が集まっていた。

 

「ったくよ~、何で私まで出てるんだよ~」

「仕方ないじゃないか。この大会に出て本戦でラカンの弟子と戦えば、帰る方法も教えてくれてるって言ってるんだし

「でもな~、あの化け物の弟子ってのが、また嫌じゃん?」

 

自分たちを囲む拳闘士、チンピラ、魔法使い、魔族の徒党。

そしてその中でメカタマのコクピットから、不満の声を出すサラがいた。

これがラカンの出した条件だった。

自分たちを見逃すだけではなく、この大会に出て本戦でラカンの弟子と戦えば、勝ち負け関係なく、現実世界へ帰る方法を教えてくれるというものだ。

当然逆らえば捕獲♪

その半ば強制のこの事態にサラはブーブー文句を言っていた。

 

「どーせなら、パパが出れば良いのにさ~」

「ほら、サラ。来るから構えるぞ

「む~~、大体お前、何で大人しく従ってるんだよ、このまま流されていいのかよ!」

「ああ、今は流されてる・・・でも帰る方法がそこにあるんなら、今はその流れに従えばいい、でもな・・・・」

 

談笑するシモンたちに容赦なく数十人の参加者たちが一斉に襲いかかってくる。

しかし所詮は烏合の衆。

森の竜種、メカタマ、ラカン、月詠などの強敵から比べれば、壁にもなり得ない。

その中でシモンはシモンらしく、力強く笑った。

 

 

「近いうちに、この流れを逆に飲み込んでやるぜ!!」

 

 

戦闘はシモンにとっては好都合の場面もあった。

ラカンとの戦いは避けたいが、これまで自分の記憶は戦いの中で徐々に蘇っていった。そこからまた何かを思い出すかもしれないと考えれば、拳闘大会も悪い話ではなかった。

だからこそ、シモンはこの大会には自分の意思で乗り込んだと叫ぶ。そしてその意思でもあるドリルを世界中に見せ付ける。

 

 

「シモンインパクトォーーーーッ!!」

 

 

回転した螺旋槍の衝撃波が全ての参加者たちを吹き飛ばした。

それは賭けもクソもない。一人の男の存在を知らしめるイベントにしか過ぎなかった。

そしてやがてシモンがドリルを消し、代わりに指を天に向かって伸ばした。

その瞬間、大地が唸るほどの大歓声が上がった。

 

 

 

「「「「「「「「うわああああああああああああああ!!!!」」」」」」」」

 

『圧勝です! 突如誕生した二人の選手! シモン・メカタマペア! 堂々の本戦出場だァ! これで大会が一荒れすることになるでしょう!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「本物だアアアアアアアア!!!!???」」」」」

 

 

店の外にまで響き渡るほどの大声でネギたちは叫んだ。

シモンをライバル登場ぐらいのつもりで大会に出場させたラカンも、この意外な反応に戸惑っていた。

すると驚愕したネギ、アスナ、楓は次の瞬間、目を輝かせた激しく興奮した。

 

「シモンさんが、シモンさんが!! アスナさん! 皆さん!」

「ウソでしょ!? 本物!? 本物のシモンさん!? シモンさんがここに居る!?」

「なんと・・・これほどの衝撃はこの世界に来て初めてでござるよ・・・」

 

その表情に希望が溢れていた。

誰もが落ち着きを忘れて画面に映る男を何度も見ながら騒いでいた。

無理もない。落ち着けるはずもない。この出来事はそれほど衝撃的だった。

 

「テメエら・・・シモンを知ってんのか?」

「それはこっちのセリフです!! ラカンさん、シモンさんを知ってたんですか!?」

「まあ、チョッとな・・・お前らが知ってるのは驚いたが・・・・って、嬢ちゃん!?」

「木乃香さん・・・・」

「木乃香・・・・・刹那さんも・・・・」

 

ラカンは目を丸くした。

親友の娘であり、天然でいつも笑っていそうな木乃香の表情に目を丸くした

しかしネギもアスナも今の木乃香の気持ちが心の底から理解できた。

そして刹那の気持ちもでもある。

 

 

「お嬢様・・・」

 

「うっ・・・・ひっぐ・・・・うっ・・・ひっぐ・・・」

 

「木乃香・・・・」

 

「木乃香さん・・・・」

 

「シモンさんや・・・・ホンマに・・・本物の・・・シモンさんが・・・・シモンさんが・・・」

 

 

何度も何度も溢れる涙を擦りながら木乃香は画面に映るシモンを見る。

夢なのか、幻なのか、他人の空に似なのか? いや、違う。木乃香が見間違うはずもない。

いつも恋焦がれて再び会える日を何度も願ってきた彼女がシモンを間違えるはずもない。

画面に映るのは間違いなくシモンである。

自分が心の底から惚れ、心の底から愛し、そしていつも想い続けていたシモンがそこに居た。

 

「せっちゃん! シモンさんが・・・シモンさんが来てくれた!!」

 

涙目で腫れながら木乃香は刹那を見る。すると刹那も似たような表情で震える木乃香の両肩に、自分自身も震える両手で抱きしめていた。

 

「ハイ!! ・・・・あ、あの人が・・・ここに・・・・ここに! シモンさんが!」

 

常に気を張っていた刹那が、普通の少女のように涙を流していた。

そしてそれは悲しみの涙ではない。歓喜の涙だ。

魔法世界に来て、今日まで、これほどうれしいことなどなかった。

 

「あんな・・・せっちゃん、ウチ・・・シモンさんのことが好き・・・・」

「・・・はい、分かっています。私もあの方を・・・お慕いしています・・・あ、愛しているのです・・・」

 

まるでお互いが確認するかのように木乃香と刹那は告げる。その言葉にラカンが予想していなかったため、固まってしまったが、二人は構わずお互いの想いを告げる。

 

「でもな、シモンさん・・・ウチらが手の届かん、遠い世界に帰っても~た・・・」

「はい、・・・ですが今・・・あの人が手の届く距離に居ます!!」

 

二人がもう一度テレビを見ると、やはりそこに居たのはシモンだった。

自分たちが愛した男がそこに居るのだ。

夢ではない。

木乃香はもう一度涙を流した。刹那も木乃香を抱きしめながら涙を流した。

 

 

「刹那さん・・・・木乃香さん・・・」

 

「へへ、ほんっとーに、シモンさんってば、困っちゃうよねーー♪」

 

 

気づけばネギもアスナも目元が潤んでいた。

存在だけでこれほど心強い存在など居ない。ただうれしくて涙が出た。

そしてアスナは涙を拭い、満面の笑みで皆に告げる。

 

 

「皆! 後のことは本人に聞いてやるわよッ! 急いでシモンさんのところに行くわよ!! 全員でシモンさんの胸に飛び込んでやろーじゃない!!」

 

「「「「おおーーーッ!!!」」」」

 

 

そう、目と鼻の先にシモンが居る。それを知って、いつまでもここでボヤボヤしていることなど出来るはずがない。

皆が溢れる喜びを抑えきれずに、一斉に頷いた。

全員は急いで駆け出そうとした。一秒でも早くシモンの胸に飛び込みたかったからだ。

 

だが、事態は少し妙な展開に移った・・・

 

 

『シモンさん!!!』

 

「「「「「・・・・・へっ?」」」」」

 

 

突如背を向けたテレビからシモンの名前を叫ぶ女の声が聞こえた。

あまりにも大声だったため、ネギたちは立ち止まって振り返ってしまった。

するとそこには、シモンと相対する一人の戦乙女の鎧に身を包んだ、警備兵らしき少女がそこにいた。

しかもシモンと向き合う少女の目は自分たち同様に潤んでいた。

少し気になって、再び画面の前に歩み寄るネギたち。

すると会場もシモンたちに注目しているのか、静寂し、シモンと少女に注目していた。

そしてシモンがとうとう口を開いた。

 

 

『・・・エミリィ・・・・』

 

 

シモンが驚きの表情で呟いたその言葉。しかもズームで中継されているために、その言葉はしっかりとマイクで拾われていた。

そう、名前を呼ばれたのはエミリィだった。

戦乙女見習いとしての初任務で彼女はこの大会の警備兵を務めていた。

そして初任務として使命感と誇りを胸に全うしようとした彼女は、シモンの存在に気づき、全てを忘れて目の前に現れたのだった。

 

 

最もそれをネギたちが知るはずも無かったのだが・・・・

 


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