魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第154話 足元を見ろ

祭りの賑わいでどこの店もオスティア内は満員である。そんな中で、働く三人の少女は一人の男が言う言葉に目を輝かせていた。

 

「それ、本当!? 朝倉に茶々丸さんに、古に、早乙女がこっちに向かってるの?」

「ああ、飛行船買ってコッチに皆と一緒やそうや! それに のどかの姉ちゃんも世話んなっとる人達と一緒に向かってるそうや。アスナの姉ちゃんたちも今頃ネギと再会しとる!」

「それにこの間はまき絵と裕奈から連絡があったし、スゴイ・・・・どんどん皆が集まっている」

 

小太郎の言葉に涙を流しながら喜んでいるのは、夏美、アキラ、亜子の三人だった。

奴隷として捕らえられてからは、目の回るような忙しさに追われていたが、小太郎の言葉に心の底から喜んでいた。

 

「そやったん、皆無事やったんやなー!

「ああ、そんで後は俺とナギが拳闘大会で優勝して、夏美姉ちゃん達を開放したら終いや!」

「ちょっ、小太・・・じゃなくってコジロー君、そんなこと言ってるけど大丈夫なのかな~」

 

小太郎の自信満々の言葉に少し顔を赤くする。

現在小太郎は、コジローと名前を変え、ネギ同様子供の姿ではなく、変装のための大人化をした姿であり、事情を知らず、ネギの大人バージョンに恋をしている亜子を気遣って、三人の前ではコジローと名乗っていた。

すると小太郎は胸を張って当たり前のように言う。

 

「ったり前やろ! 俺らを誰だと思っとんねん」

 

その言葉に夏美は顔を赤くしてポカポカ小太郎を殴った。

 

「む、む~~~、何カッコつけてんだよー!? そんなんだと大事なところでミスするよ!」

「ああ!? なんやてぇ!?」

 

普段は姉弟のように見える二人も何やら微笑ましく感じ、亜子もアキラも笑った。

このまま、本当に皆と一緒に帰れると心の中で思っていた。

すると談笑する四人に奴隷長とトサカが近づいてきた。

 

「こらこら、強敵もいるんだから、油断してると本当にやられるさね」

「けっ、大体何ノンキに話してんだよ! 忙しいんだから、とっとと働け!」

 

トサカが精一杯悪ぶって亜子たちに悪態を付こうとした。

しかし以前なら男にこれだけ怒鳴られたら涙目になって震えていた亜子も、何故かトサカには何とも無く、苦笑しながら謝った。

 

「エヘヘ、ゴメンなさい、トサカさん♪」

 

するとトサカは亜子のヘラヘラした表情が気に食わなく、さらに文句を言う。

 

「コラぁ! 何が「♪」だ!? テメエ俺をナメてんのかぁ!?」

 

亜子の間近で睨みつけるトサカだが、亜子は怖がる素振りはまったく見せずに、少し考えて、アキラや夏美を見た。

 

「だって・・・・なあ? トサカさんウチらに優しいから・・・」

「はあ!?

「亜子の言うとおりです、この間も怖いチンピラの客に絡まれた時に助けてくれたし・・・」

「うん、私たちのシフトが無理にならないように調節してくれてるし・・・・」

「はっ、はあ!? て、テメエら、何を勘違いしてやがる!?」

「そーいや、俺らの拳闘士の仕事も結構世話してくれとるしなー」

「くっ/////・・・・大体トサカさん、じゃなくてト・サ・カ・様だろ! ふざけた事ばっか言ってると、はっ倒すぞ、この奴隷共がァ!!」

「何だ、お前さんそんなことしてたのかい? そして本当に奴隷を殴らない辺り、アンタも成長したさね」

 

奴隷長が意外そうにトサカの顔を覗き込むと、トサカの顔は赤く、うろたえた表情をしていた。

 

「ちっ、ち・・・か、勘違いしてんじゃねえ! 俺は別にお前らのことなんざ、どーでもいいんだからよ!!」

 

苦し紛れに言う言葉にまったく迫力の欠片も無かった。

素直ではないトサカの照れた態度に四人は笑いながら頷いた。

 

 

「「「「はーい♪」」」」

 

「ぐっ、・・・・てめえら・・・・・」

 

 

それ以上何も言えずにトサカはうな垂れてしまった。その様子を奴隷長はうれしそうに笑った。

 

「はっはっはっ、アンタも最近働くようになったじゃないさ! 奴隷も大事にしているしどんな心境の変化さね?」

「ちっ、・・・別に俺は・・・・」

 

トサカが不貞腐れたようにプイッとそっぽ向くと奴隷長は静かに呟いた。

 

 

「あの・・・あの時の男が原因だね?」

 

 

その瞬間、トサカの肩が大きく動いた。

 

「ち、ちが・・・俺はあんなヤローに影響されてなんか・・・」

「あの男?」

「ああ、亜子ちゃんたちが来る少し前に居た男だったんだが、コイツが面白い男で・・・」

「ママ!?」

「何々? 教えてや、トサカさん!」

「私も知りたいな」

「私もー!」

「何や、トサカ、さっさと言えや」

「だああーーー!? テメエらいい加減にしやがれ!」

 

第三者から見たらこの光景は決して奴隷と主人たちの会話には見えなかっただろう。

それほどまでにこの空間は暖かかった。奴隷という呼び名と、首輪さえ気にならなければ、亜子達も、それほど苦痛ではなかった。

それは奴隷長やトサカのお陰だったかもしれない。

巡り合った境遇に最初は嘆いたものの、今を生きていることに亜子たちは心の中で二人に感謝していた。

そしてそんなトサカに影響を与えたのかもしれない男。

それが少し気になっていた。

 

だが、小太郎たちは全員この少し後にその男が何者かを知ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてこちらも喜びの笑みでいっぱいだった。

ネギが、

アスナが

木乃香が、

刹那が、

楓が、ようやく再会できたのだ。

 

あのメガロメセンブリアでのテロ事件以来離れ離れになってしまった仲間との、ようやくの再会にアスナは涙を流しながらネギを抱きしめたぐらいだった。

再会した時のネギは少し背が伸びたような気がしたと、アスナは思った。

しかし成長期であるとはいえ、一ヶ月そこらで変わるはずは無い。

だが姿勢や態度の変化で人は数字よりも大きく見えることがある。

今回はきっとそれが原因かもしれない。

アスナ達が賞金稼ぎやモンスターたちと戦っていた頃も、ネギは自分自身を追い込んでいたのだと口にしなくても感じ取れたのだった。

 

「これで・・・朝倉たちが合流すれば、残るはアーニャちゃんたちだけってことね♪」

「はい、あと夕映さんもまだ見つかっていないそうですけど・・・・」

「大丈夫や! ユエやったらウチらよりしっかりしとるし、きっと無事や! ユエを信じるウチラを信じなアカンえ♪

「・・・・はい!!」

 

この世界に来てから全ての人達とバラバラにされてしまった。しかしその様々な境遇で生徒たちは逞しく生き、また再会できたのだ。

根拠は無い。

しかし夕映やアーニャもきっと無事だろうと心の中で呟いていた。

 

「はい・・・、だから僕たちは、いつでも彼女たちを迎えに行ける準備と、帰る方法を確保していなくてはなりません」

((((おっ・・・・))))

 

ネギの言葉に少し意外そうにアスナたちは感じた。

いつもなら自分の責任や教師としての仕事だとか、そんな言葉で自分を責めてウジウジしているのだろうが、その様子はまるで無い。

今の自分に出来ることを、自分なりにやろうという空気が漂っていた。

 

「へ~~、アンタ、また一段とイイ目してんじゃん?」

「えっ、そうですか?」

「本当よ、いつもならウジウジして無理して、強くなんなきゃーって言って無茶なことばっかすると思っていたけど・・・・」

「うっ・・・無茶な修行は当たってます・・・・」

「そう・・・ってはあ!?」

「あっ、でもそれは無茶ではなかったというか・・・大変でしたけど無理ではなかったというか・・・」

「ちょっ、どーゆうことよ、ちゃんと説明しなさい!」

「えっ、そそ、それは~~」

 

アスナが怒ってネギが泣く。

現実世界では皆が止めようとしていた日常の光景だったが、今は木乃香たちも止める事無く笑って眺めている。

なぜならこの光景を見れたことにより、自分たちは本当に再会できたのだと実感できたからだ。

だからこの光景に口を挟むのはそれを知らない男だった。

 

「だっははは、賑やかじゃねえか。まっ、その方が見ていて気持ち良いがな」

「う~、ラカンさ~ん」

 

情けない声を出すネギに、先ほどからずっと傍観していたラカンも機嫌良さそうに笑っていた。

 

「しっかし、随分と余裕じゃねえか。お前らにはやる事が、まだ山済みなんだろ?」

「ええ・・・しかしラカン殿か手伝ってくだされば・・・」

「だから、俺は嫌だって言ってんじゃん? メンドクセーし」

「あ~ん、ラカンさん、いけずや~~」

 

このラカンの言葉に頬を膨らませる木乃香だが、ラカンは笑ってばかりで甘やかそうとはしなかった。

 

「まっ、それは置いといて、ボーズよ、お前がやるべき事は分かってんのか?」

「はい、やる事は三つあります。①僕たちが拳闘大会で優勝して亜子さんたちの奴隷身分解放、②残されたメンバーとの合流、③帰還ゲートの発見と開放、この三つです」

「ほう・・・だが、障害があるだろ?」

 

ラカンが意地悪そうな笑みを浮かべると、刹那たちも察してネギを見る。

 

「はい、フェイト・アーウェルンクス。彼らと必ず戦うことになるでしょう」

 

その言葉にアスナ達はフェイトを思い出して少しムッとした表情になる。

 

「① は僕と小太郎君が何とかしますし、②は茶々丸さんと朝倉さんが今、皆を捜索中で、もう直ぐ合流できます・・・問題は・・・・」

 

問題は③の帰還にある。当然帰還前にはフェイトたちと戦う可能性があることは誰からも明らかだった。

 

「アーウェルンクス・・・まっ、メンドクセー敵には変わりねえな。アイツらは・・・俺ら紅き翼の戦いの生き残りだろうからな」

 

ラカンの言葉に全員が身を引き締めた。メガロメセンブリアでは惨敗した相手と、もうじき戦うことになるのだと。そして今度こそ負けるわけにはいかないことを全員が自覚していた。

だが、その緊張をアスナが打ち破った。

 

「それが、どーしたってのよ?」

「アスナさん?」

「「?」」

「あん?」

 

アスナがテーブルにドンと片足を乗せて、ニヤリと笑った。

いつもと同じ、いや、いつも以上に自信に満ち溢れた笑みだ。

 

「だって、そーでしょ? 倒した人達がいるんなら、私たちにだって出来るってことでしょ?」

「・・・・はっ?」

 

ラカンは呆気に取られてしまった。

そしてネギたちもである。

何時の日か、誰かが、どこかで、言っていた言葉だ。

だが、一瞬で何時、誰が、どこで言った言葉なのかをネギたちは直ぐに思い出した。

フェイトたちの目的。

戦い。

ゲート。

仲間全員で帰還。

やる事は山ほどある。しかし自分たちなら出来る。根拠が無くてもそう言い続けることが、彼らの心の奥底の想いを刺激した。

 

 

「そうです・・・僕たちなら出来ます!」

 

「はい」

 

「せやな~」

 

「ウム!」

 

 

アスナだけでなく、ネギたちも先ほどまでの不安要素を無視して、自信に溢れた表情をした。

ラカンには実に意外だった。

 

「ボーズの時にも思ったんだが・・・お前ら全員、タカミチに聞いていたのと少し違うじゃねえか。もっとガキかと思ったが、バカなガキっぽくて良いぜ!」

「それ、褒めてんの?

「俺は嫌いじゃねえってこった! 十分褒めてるつもりだぜ!」

 

ラカンはまた笑った。もっと自分に力を貸せなどと甘えてくることを予想していたが、ネギやアスナ達は決して自分に頼り、依存することもなく、自分たちの力だけでもやってやろうという、単純な気合が伝わってきた。

それが妙におかしくてラカンは機嫌が非常に良かった。

 

「くっくっく、だがな、ボーズ」

 

しかしそこで、もう一度、ラカンが意地悪な笑みを浮かべた。

 

「足元を見ないと転ぶぜ?」

「・・・・へっ?」

「拳闘大会で優勝ってのも、アッサリ言って良いのかって事だよ」

「えっ・・・・だって・・・ラカンさんは今の僕ならよっぽどのことが無い限り、らくしょーだって・・・」

「はっ? マジで? アンタそんなに強くなったの?」

「ネギ君スゴイなーーッ」

「まーな、ヤな感じ正拳突き修行の時は、ネガティブになれなくて手こずったが、・・・まあ、身に付けた力についてはボーズに聞いてくれや。そんでよっぽどのイレギュラーなんだが・・・・起こったらどうする?」

「えっ?」

 

ラカンは笑っている。しかしどこか声に真剣さを感じた。

何やら裏がありそうなラカンの態度に不安を感じていると、ラカンが店の中にあるテレビを指差した。

 

「おっ・・・・どうやら丁度いい頃だな」

「えっ、何です?」

「あれは・・・・拳闘大会の・・・」

 

指差されたテレビの画面をネギたちが見ると、そこには拳闘大会らしきコロシアムで、大勢の男たちや魔族の者たちが乱闘している光景だった。

 

「ラカンさん・・・あの、アレは?」

「ああ、誰でも参加アリの、お前らの拳闘大会出場を賭けた最後のチャンスのイベントだ。これに勝ち残りゃあ、出場できるんだぜ?」

「へえ~、そんなのがあったんですか・・・・」

 

ネギが知らなかったらしく、「ふ~ん」といった感じで少し見ていたが、直ぐに画面から目を離した。

それは刹那たちも同じだった。

 

「しかし・・・あれは・・・」

「そーよね、・・・別に大したこと無いんじゃない?」

「ウム、・・・ネギ坊主の敵ではないだろう」

 

画面に映っていたのはどこからどう見てもチンピラたちの喧嘩で、自分たちの興味を惹くものではなかった。出場者は記念に出場しているものなども多く、実力も魔法も大したものではなかった。

仮にこの乱闘を制したものが大会に出場すると言われても、ネギは自分が負けることは無いと数秒見ただけで、判断した。

事実そうである。

この敗者復活も、開催地ゆえのイベントのようなもので、この大会で勝ち残ったとしても例年一回戦で姿を消すのは当たり前の事だった。

 

しかし今年は少し違った。

 

そしてその時、ラカンは画面を見てニヤリと笑った。

首を傾げるネギたち。

すると自分たちが、見るのをやめたテレビから大会の解説者のアナウンスが聞こえてきた。

 

 

『さあ~~、最後のイスを賭けた最後の戦い! 熱い熱いバトルロイヤルもようやく終盤に迫ってきています! 毎年このイベントは無意味だという意見が多数でしたが、今年は一味違うぞ! 今年は意外な二人組が、怒涛の勢いで参加者たちを蹴散らしています!』

 

 

ラカンが笑いを堪えている。しかも非常にイヤラシくニヤニヤしている。

 

「ラカンさん、どうしたん?」

「さあ、変人の考えることはよく分かんないわよ」

 

ネギたちは訳も分からないまま首を傾げ、テレビのアナウンサーの声だけが聞こえてきた。

しかし次の瞬間、衝撃に襲われた。

 

 

 

『正体素性、まったく不明! その身を鉄のボディで覆ったメカタマ選手とドリル片手に大暴れのシモン選手です!!』

 

 

「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」

 

 

 

一瞬間が空いた。

 

まるで全員が心臓を鷲摑みにされたかのように停止してしまった。

 

だが・・・

 

 

 

「「「「「ウウウウウウウウウーーーーーーーーーッッッ!!!??」」」」」

 

 

 

「うおっ、どうしたテメーら!?」

 

 

全員同時に盛大に噴出した。

 


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