魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第152話 ついに集いし運命の地

数日過ぎた。

 

オスティア付近での二つの組織の小競り合いがあったことを、まったく知ることも無く、一隻のセスナ機がオスティアへ向けて飛行していた。

大型ではなく数人乗り用のセスナ機を瀬田たちが入手して三・四日が過ぎた。

オスティア行きを決めてからは、自分たちを狙ってくる賞金稼ぎたちも後を断ち、四人は何の障害も無く優雅な空の旅を満喫していた。

 

「空飛ぶ島か・・・どんな所だろう・・・・」

「まっ、ファンタジーの極みだな」

「そうだな~、私もメルヘンなんかに キョーミねーしな」

「そんな~、何でハルカもサラも、そんなに冷めているんだい? シモン君ならわくわくするだろ?」

「はい、・・・でもわくわくするけど、俺にはメルヘンって言葉が分からないから何も想像できないや・・・・」

「大丈夫! そんなものは行ってみれば分かるさ!!」

「はは、確かに・・・・行ってみれば分かる」

 

セスナ機を操縦しながら、瀬田は大きく笑った。これから赴く場所に胸を躍らせながら、オスティアが見えるその瞬間を、今か、今かと待ち焦がれていた。

 

「しっかし都合が良いな。私たちお尋ね者が簡単出入りできるってのは」

「うん。オスティア終戦記念祭、世界最大の祭りといわれている。そのお陰で色々な人達が出入りをしているから僕たちには好都合だったね」

「シモンの記憶でしょ~、帰る方法だろ~、白髪だろ~、そんでもって、ついでにパパが知りたがってた遺跡の情報もあるだろ~しな」

 

世界中至る所から人がオスティアへこの時期に集まる。

それは現時点で最も世界中の情報が集う場所と言っても過言ではなかった。

自分たちは知っていたわけでない。たまたま時期が重なったのだ。

しかしそれを偶然と片付けることは出来ず、四人は妙な縁を感じていた。

 

「・・・・偶然行くのか、導かれてるのかは知らないけど、・・・何かを感じるよ。何かが起きる・・・・そう感じる!」

 

シモンは胸元のコアドリル、そして指輪を握り締めて雲の向こうにあるといわれている大陸を、目を細めて見ようとする。

徐々に己の心音が高鳴り、少し興奮しているのが分かった。

 

「よしっ、では向こうに着いたときの手筈は分かっているかな?」

「うん、二手に分かれてホテルに集合。シモンと私はシモンの記憶復活の・・・パパとハルカは遺跡や調査・・・そして帰る方法だろ?」

 

瀬田が確認するように尋ね、サラが指を一つ一つ数えるように折りながら説明していく。

 

「ああ、その代わり気をつけることだね。私たちが簡単に出入りできる分、他にも野蛮な奴らが居るだろうからな」

「へへ、大丈夫だって・・・・なっ♪」

「ああ、心配要らないさ。何かあったら・・・瀬田さんに代わって俺がサラを守るよ」

「うっ・・・うん・・・」

 

何の臆面も無く言われて、サラも悪い気はせず、顔をニヤつかせた。

 

「で、・・・・でへへ・・・だってさ♪」

「はいはい、良かったな~」

 

娘の頭をポンポン撫でるハルカ。すると何かを思い出したかのように荷物を漁りだした。

 

「そうだ、サラ・・・これをお前にやっとくよ・・・一応賞金首だと不便だろ?」

「・・・なんだよコレ? ・・・飴玉?」

「ああ、その飴玉中々面白いぞ」

 

サラが貰ったのは、一粒の飴玉だった。

そして、なぜかハルカが口元を隠しながら笑っているのが気になって、少し嫌な予感がするが、試しにサラが飲んでみた。

すると次の瞬間、サラの体が煙で覆われた。

 

「わ、わわわわ!?」

「ほう」

「うわあ、サラはお母さんにソックリだね~。美人だよ、サラ~~。シモン君もそう思うだろ?」

「えっ、・・・う、うん。でもスゴイな・・・・大人の姿になれるのか・・・」

 

煙の中から現れたサラを見て驚いた。

先ほどまでは15,6のまだ幼さが残る子供に見えていた少女が、一転して僅かに慎重も伸ばし、胸や腰周りに一段と色気を上乗せした20前後の美しき女がそこに居た。

 

「これで髪を下ろして・・・・ついでに猫族化の薬でしっぽを生やして・・・でっ、ほら!どっからどう見ても美しき亜人の女が完成だ♪」

 

ハルカがニヤニヤ笑いながらサラの長い金髪を櫛でとかし、猫族化の薬をサラに使用すると、サラの頭からフサフサの耳が生え、可愛らしい尻尾まで生えた。

 

「ななな、何だよこれーーっ!? 人で遊ぶなよーーーッ!?」

「お、おおおお・・・・・」

「ぶ、ぶみゅう~」

「これは・・・父親の僕でも思わず萌えてしまった・・・」

 

ブルーの瞳、そしてナイスバディの女が猫耳と尻尾を装備して、完全体の姿を見せて瀬田とシモンの前に現れた。

自分の姿に戸惑ってうろたえるサラの姿は瀬田のツボだったらしく、その姿に思わずハンドル操作を誤りそうになっしまった。

ハルカも楽しくなってきたのが、悪巧みをサラに提案した。

 

 

「くっくっく、母親譲りの姿でそれは反則だな・・・おい、試しにシモンに言ってみな。ボソボソボソ」

 

「は、はあ!? 何で私が、んなこと言わなくちゃいけないんだよーッ!?」

 

「・・・・ボソッ(これなら写真の女にも負けてない、シモンと釣り合うぞ?)」

 

「うっ、・・・・・・わ、・・・わかったよ・・・・やるよ・・・」

 

 

耳元でそう言われて、サラは意を決したのか、顔を真っ赤にしながらシモンを見る。

 

「?」

 

そしてシモンは急に外見年齢が自分と近くなったサラに少し戸惑いながらサラのやろうとしていることを黙って見守る。

するとサラは右手を招き猫のような形にして、顔を沸騰させ、そして声を震わせながら精一杯の甘えた声を出す。

 

 

「にゃ、・・・・にゃァ~、いたずら子猫のサラちゃんだぞ~、守ってくれないと引っ掻いちゃうぞッ♪」

 

「「「!!!!??」」」

 

「だ、だから、ま、・・・守ってくださいニャン♪」

 

 

その時全員の体に中に稲妻が走った。

 

「おい、言ったぞ!? こ・・・・これでいいのかよ!?」

 

父親は感動の涙を流し、シモンは両手、両膝を地面について震えていた。サラは皆の反応に困ってしまい、招き猫のポーズのままオロオロしていた。

 

「ななな、なんだよ・・・何か言えよ・・・・」

 

そしてハルカは一人で大爆笑。

 

「シ、・・・・シモン君・・・」

「は・・・・はい・・・」

「サラをあげるのは・・・・やっぱり考えさせてもらえないかな?」

「あ、・・・いや・・・そんなこと言われても・・・」

「とにかくサラ・・・・僕の娘でありがとう・・・」

「これは・・・・何だ? この胸の中から湧き上がるのは・・・気合とは違う・・・」

 

魂の妹が燃えていたかと思えば、兄貴は空の上で萌えていた。

これが、シモンが異世界の新たな文化を学んだ瞬間だった。

 

「はっはっはっは、強烈だな。う~ん、それで言葉遣いか丁寧ならお前も母親らしい貞淑な女になるんだがな~」

「う、うっさい! いいんだよ、ママじゃなくて、私は私なんだからさ」

「まっ、・・・・まあ、事情は知らないけど、俺は乱暴なほうがサラらしくて良いと思うよ?」

「たしかに、乱暴で口の悪いお姫様だと思えば、これもアリか? なんぜイタズラ子猫だからな~♪」

「う、・・ううう・・・・フガーーーーッ!! 二度とやんないからなァ!!」

「まあまあ、そう言わずに、ホレ試し次はこういう言葉も・・・・・」

 

オスティア直前にパーティたちが少し壊れかかっていた。

緊張感の欠片もないが、それも彼ららしいといえばそれまでだった。

 

しかしこの時は想像もしていなかった。

 

この数時間後にアダルト猫耳バージョン姿のサラの一言が、魔法世界にデカイ炎を巻き起こすことになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして同じ頃、シモンたちの傍で一隻の飛行船が同じようにオスティアに近づいていた。

 

 

「ひゃ~~、近くで見るとデッカイな~」

 

 

突き抜けた雲の向こうに見える広大な空に浮かぶ大陸。地球に居た頃からではありえない空島が、今現実として目の前にあった。

木乃香、そしてアスナ、刹那、楓の四人も視界に入りきらないほどに広がるオスティアの広大さに目を奪われていた。

 

「今頃ネギ君たちも居るんやろな~」

「はい、拳闘大会の出場権は楽々入手したと聞きます。もう直ぐ会えますよ」

「よ~し、早速着いたら会いに行くえ~!」

「まったく、・・・・まっ、別に良いけどね・・・・」

「おやおや、アスナ殿も会いたかったのではござらんか?」

「えっ、うっ・・・ま、まあそれは認めるけど・・・・」

 

楓のからかうような言葉に頬を膨らませてソッポ向くアスナ。そんな初々しい姿が刹那たちには面白く、思わず笑みを零した。

 

 

「とにかく、遂に来ましたね!」

 

「そうね~! こっからはネギま部の反撃開始よ~!」

 

「うむ、油断せずに行こう」

 

「ほな、いざオスティアへ上陸や~~~!」

 

「「「おおおお~~~~!!」

 

 

 

 

 

 

 

そして彼女たちもそうだった。

 

「ほ~れ、そろそろ見えてきたニャ」

「あら、意外と早かったですね」

 

突き抜けた雲の向こうに広がるオスティアを、全員が窓に張り付いて眺める。特に初めて見る夕映は感動して震えているように見えた。

 

(ついに・・・・ここならきっと私の記憶の手掛かりがあるです)

 

広がる広大で神秘的な世界を目に焼きつけ気を引き締める夕映。

 

そしてエミリィも同じだった。

 

(美空さん・・・・雪辱を晴らさせてもらいますわ。そして・・・・この祭りの出来事は世界中に中継で繋がっています・・・・・。シモンさん・・・あなたも見ていますか?)

 

エミリィは少しうつむいた後、力強い瞳で顔を上げ、振り返った。

 

「では、皆さん。現地に着けば数日後には早速仕事です! これが我々の初仕事になりますので、気を引き締めますわよ!」

「りょ~か~い。って・・・任務はなんだったけ?」

「コレット・・・・しっかり話は聞くです。我々の最初の任務は、ナギ・スプリングフィールド杯直前、最後の代表者決定バトルロイヤルです」

「あ~あ、あの敗者復活戦?」

「ええ、本来この拳闘大会は、それぞれの地区で勝ちあがった拳闘家が出場できるのですが、大会直前のこの決定戦で勝ちあがれば、その方も大会への参加を認められるのですわ」

「まっ、と言っても出場条件に規定も何も無いから、出るのはプロの拳闘家になれないチンピラか、もしくは地方予選で負け奴らだにゃ~」

「な~るほど、それで私達が警備をするわけだ?」

「ええ、まあ相手も野蛮とは言っても大会出場権を得られなかったチンピラたちですから、我々見習いに任されるというわけです」

「そっか~~、それじゃあ、初任務へ向けて、気合入れていこーーう!」

「「おおお~~~~ッ!!」」

「ちょっ、コレット!? それは私の役目ですわ!?」

 

船の中でコレットがのん気な声を出しながら掛け声を上げた。

 

 

 

だが、ついにオスティアに繋がった縁が集い始めた。

 

 

 

まずは数時間後、彼女たちの初任務が、全ての始まりになるのだった。

 


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