魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第144話 気になってしかたない乙女たち

 

グラニクスでネギたちが気合を注入している頃、北の大陸でも動きがあった。

 

 

シモンが旅立ったアリアドネーの学院内。今は少し騒がしかった。

学院の生徒たちがワイワイ騒いで掲示板に張り出されている一枚の紙に注目していた。

 

 

【オスティア記念式典における栄えある警備任務を諸君の中から募集する。各学年から2名志願者多数の場合は選抜試験を実施する】

 

 

その張り出しには多くの生徒たちが群がっていた。

 

 

「えええーーっ! お祭りの警備兵だって、どーする?」

 

「単位にもなるし騎士団のお姉さまと一緒に仕事できるんでしょ?」

 

「志願しよっかなー♪」

 

 

世界各地でオスティアが話題になる中、こちらのアリアドネーでもその話題で盛り上がっていた。

張り出された御触れに生徒たちが憧れの眼差しで見ている中に、コレットもいた。

 

「やった、やったー! これに合格すれば噂の生ナギを見れるかもしれないし、ひょっとしたら美空に会えるかも!」

「コレット、その美空とは誰ですか?」

「あっ、そっかー、ユエは知らないんだね。私の友達で、旧世界から交流のためにこの間来た代表者でさ~」

「旧世界・・・・ですか・・・・」

 

コレットにユエと呼ばれた少女。

彼女は数日前にコレットがシモンに続き、箒で走行中に轢いてしまい、同じように記憶を消してしまった哀れな少女。

しかしその正体は、ネギの生徒、ネギま部の綾瀬夕映だった。

メガロメセンブリアのテロ事件で、フェイトの強制転移魔法に巻き込まれた夕映はアリアドネーに一人跳ばされ、偶然その瞬間にコレットと事故を起こしてしまったのである。

立て続けに事故を起こして相手の記憶を消してしまう。

それはある意味才能かもしれないのだが、シモンの一件もあり、元凶のコレットには教師陣による厳しい折檻が振り下ろされた。

そして夕映の処遇をどうしようかと思っていたアリアドネー側は、身元も一切不明の夕映を放置するわけにもいかず、更に夕映の希望を尊重し、コレットと同じ学院の生徒としてしばらく様子を見ることになったのだった。

その時、シモンの件を知っている教師陣は苦笑いだった。

 

「それにしても・・・・・オスティア・・・・そして・・・・・ナギ・スプリングフィールド・・・・・・」

「あれ? ユエもナギファンだったっけ? それなら一緒に志願しようよ! 一緒にオスティア行って生ナギ見ようよ!」

「コレット・・・・・・・・・・・・たしかに・・・・・・・・ナギ・スプリングフィールドには会うべきかもしれないです」

 

コレットの提案に意外なほどアッサリと夕映は承諾した。

 

(テレビの拳闘士のナギ・・・・・確実にあの人は私にとって重大な何かがあるのです。私の第六感的なものが伝えています・・・・・・印象・・・・息切れ、動悸・・・頬の紅潮・・・・・? って、これではただの一目惚れではないですか!?)

 

やはり記憶を無くしてもネギの仮契約者であることは消せないものだった。ましてや彼女は、のどか同様にネギに想いを寄せているのだ。

その想いは、いかなる魔法でも消せないほどの想い。

のどかと共に最強ヒロインのヨーコに宣戦布告をしたぐらいだ。告白をしていなくても夕映の想いもそれほど弱くは無かった。

だからこそ、ネギの顔を見ていると彼女の顔は紅潮し始め、頭の中も妙な考えで満たされそうになった。

だが、そんなテンパっている夕映に口を挟むものが現れた。

 

 

「残念ですが、その名誉ある任務は誰にも渡しませんわ!!」

 

「あっ・・・・」

 

「げっ、委員長じゃん!? い、委員長も志願する気!?」

 

 

腕を組み鋭い目つきで現れたエミリィ。その後ろにはベアトリクスが付き従っている。そしてその気迫に圧されて、掲示板の前に出来ていた人ごみが一瞬で真っ二つに割れた。

 

「うお・・・・・・・・・・・・さすが委員長・・・・・・」

 

同じ学年にもかかわらず、ここ最近のエミリィには更に凄みが加わったような気がした。その覇気に思わずコレットも引きつってしまった。

すると不敵な笑みを浮かべてエミリィは夕映とコレットに告げる。

 

「生ナギに会うのは・・・・・と、言いたいところですが・・・・まずは先に・・・・・・・あの方に屈辱を返さねば気が済みませんので。今回オスティアに行くのはこの私ですわ!」

「なっ、そんなことは・・・・・」

「アッチャ~~、美空のことまだ・・・・」

「当然ですわ! 今度こそ・・・・今度こそ、あの方に10倍返しをするのです!! 首を洗って待っていることですね、美空さん!!」

 

背中に炎を燃やして、より一層熱くなるエミリィ。

魔法の属性は氷なのにも関わらず、何ゆえこの少女はこれほど燃えるのか、夕映は顔を引きつらせながら、コレットに尋ねる。

 

「コレット、何のことです?」

「あっ、実はさっき言った美空って子に、委員長は喧嘩売って、逆にコテンパンにやられちゃって、しばらく引き篭もってた時期があったんだよ」

「コレット、聞こえていますわ!」

 

ギロッと睨みつけるエミリィ。

 

「で、ですがチャンスは公平です。そのような態度で言われたもこちらも引けないです」

 

だが、夕映も引かない。

すると次の瞬間、エミリィの傷口を抉るような一言が、意外にもベアトリクスの口から漏れ出した。

 

 

「申し訳ありませんユエさん。そのことと、それ以外にもお嬢様は最近失恋したばかりで不機嫌なのです・・・・・・。」

 

―――ッ!?

 

「バ、バカァ!? それ言ったら・・・・・」

 

「あっ、私としたことが・・・・・・」

 

 

それは禁句だった。

コレットの言葉に気づいたベアトリクスは慌てて口元を手で覆うが、既に時は遅し、

しかし・・・・・・

 

「あわわわわ・・・・」

「も、もうしわけ・・・・・・」

「な、なんです、一体何が・・・・・」

 

カタカタと震える一同を前に、顔を真っ赤にさせたエミリィが大激怒するかと・・・・・思ったが、

 

 

「ななななな、・・・・何を・・・・だだだ、誰が・・・その・・・・」

 

「「「「「あれ?」」」」」

 

 

たしかに顔は真っ赤だが、動揺しまくっていた。

さすがに普段見ないエミリィの姿に、掲示板の前に集まっていた他の生徒たちも首を傾げた。

 

「(あれ? ベアトリクス・・・・・・・・これってひょっとして・・・・・)」

「(はい・・・・・バレバレでしたけど、シモンさんに・・・・・ナギのような憧れから・・・・・・即ちライクからラブになったのでは・・・・)」

 

真っ赤に悶えるエミリィからは、先ほどまでのように震え上がるような怖さを感じず、ただの自分たちと同じ年の少女に戻ってしまった。

 

「ベベベ、ベアトリクスゥ!? 私は失恋などしていませんわ!! だってまだ告白だって・・・・・ではなく! 私の愛する殿方はナギ様だけですわ! そ、そうですとも! あんな・・・・男は・・・・どうでも・・・・・」

 

本人は怒鳴っているつもりだろうが、真っ赤になって動揺しているからまったく怖さを感じない。

むしろ皆エミリィの今の態度にニヤニヤして見ていた。

 

「な・る・ほ・ど~~、あの人か~~」

「知ってる知ってる~」

「な~んだ~、委員長も女の子だね~♪」

「あ、・・・・・・あなたたちまで!?」

 

先ほどまでビビッていた生徒たちも急に調子に乗り、笑いながらエミリィをからかいだした。

一人だけ事情が分からない夕映は、再びコレットに尋ねた。

 

「あの・・・・これは?」

「いや~、実は委員長にはベタ惚れしちゃった人がいたんだけど、その人何も言わずに突然消えて、そのことで最近委員長、気が立ってるんだよ~」

 

夕映の耳元で小声でしゃべる動作だけして、コレットはからかう気満々でエミリィに聞こえるぐらいの声で告げた。

すると当然エミリィは怒号を上げる。

 

「ベベベッベ、ベタ惚れなど誰が!?あんな薄情な男を! シモンさんなど私にはどうでもいいことですわ!」

 

しかし迫力はない。

それだけでなく失言もしてしまった。

 

「シモン? ・・・・・・シモンと言うのですか?」

「へっ?」

 

夕映の言葉に皆が口元を隠しながら笑いを堪えていた。

 

「お嬢様・・・・・墓穴です。私たちは誰もシモンさんの名前は言っていません」

「ホントホント~♪ ベタ惚れして姿を消した男はナギも同じなのに、へ~~、委員長はナギじゃなくて兄貴の名前をだしたのか~~~?」

「そうだよね~、自分はナギの真のファンとか自慢してたのに、委員長って浮気っぽ~」

「――――ッ!? あ、あなたたちィィーーーーーッ!? 誰が・・・・・誰が誰に惚れているというのです!」

「にゃはは~、怒っちゃダメだって~」

「エミリィったら惚れっぽ~い」

 

もはや当初のオスティアの警備兵志願の話は誰もが忘れ、あたふたし出すエミリィをからかうことに目的が皆移っていた。

しかし事態は思わぬ方向へ転んだ。

 

 

「くっ、・・・・・だ、誰が・・・・・私は断じて、・・・・・断じて・・・・だん・・・・じて・・・・・」

 

「「「「「「へっ?」」」」」」

 

 

誰もが目と耳を疑った。

 

「お慕いしてなど・・・・いま・・・・せんわ・・・・・うっ・・・あんな・・・・うう・・・・あんな何も言わずに・・・・・ぐすっ・・・・」

「あ、あのあのあの・・・・・」

「お嬢・・・・・・様・・・・・」

 

その場にいた全員がオロオロし出した。

なんとエミリィは目じりに涙を浮かべて、嗚咽をし出した。

どうやら悪ノリし過ぎたようだ。

だが、エミリィの涙の理由はそれだけではなかった。

 

 

「うっ・・・・ううう・・・・・・シ、シモンさんのことなど・・・・・・・私にはどうでも・・・・・」

 

「だアア、泣かないでよ委員長~!? 私らが、からかい過ぎたって、ゴメン~」

 

「ひっぐ・・・・らって・・・・ジ、ジモンざんが・・・・あれから・・・・何の連絡も・・・・・・・勝手に消えで・・・・・・あれだげ探しだのに・・・・どごにも・・・うううう」

 

「あっ……」

 

 

誰もがその言葉にハッとした。

そう、シモンは結局行方不明のままなのである。だから安否も不明。

そのことを全員が失念していたのだった。

それをすっかり忘れてからかっていた皆もバツが悪そうな顔になって、少し反省した。

 

「大丈夫だって、兄貴はアレで強いんだし、きっと元気にしてるって!」

「で・・・・・ですが・・・」

 

そしてコレットもからかうのを止めて、エミリィの頭をポンポンと優しく撫でた。

 

「言ったじゃん! 兄貴は大丈夫! 私はそう信じてるからさ!」

「私もそう思いますお嬢様。兄貴さんにはきっと何か事情があったのだと思います。ですが、きっと無事です。ですから泣き止んでください」

「うん、あの人しぶとい人じゃん?」

「そうそう、コレットたちの言うとおり! 私たちアリアドネーの兄貴は元気でやってるって♪」

 

皆もエミリィのまわりに集まってエミリィを宥めるように優しい言葉を投げ掛けた。

だが、その中で夕映だけは、何か心の中で引っかかりがあった。

 

「あの・・・・コレット・・・・、その方はコレットの兄なのですか?」

「ん? う~ん、全然違うけど・・・・・まっ、そんなとこかな~? だあ~~、泣き止んでよ~~」

 

皆が委員長を宥めている中、夕映は顎に手を置き考えた。

「ナギ」という単語に続く、心の引っ掛かりを懸命に探っていた。

 

 

「シモン・・・・・・・兄貴・・・・・・・これも・・・・・どこかで・・・・・・」

 




お世話になっております。他の作家が「推しの子」とかの小説書いてるときに、まさかのこの小説が今になって「日間9位」にまで登ってきました。まだ死ぬほどストックある中でこれは嬉しいです。

せっかくなのでもっと大勢の人に再びネギまとグレンラガン熱を広めたいと思います。

下記の「評価」のタブから本作にご評価いただけたら嬉しいです。モチベーションに繋がりますので、何卒よろしくお願い申し上げます!

何卒~!!!!

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