魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
出会いというものは突然だと色々な人達が言っている。
そして瀬田もそう思っている。
彼は三十以上の年月を生きてきて、様々な人生を送り、様々な出会いをしてきた。
学生時代三浪したが日本最高学歴を卒業し、海外の遺跡などの発掘活動。秘密結社や盗賊団とも戦う。後の妻となるハルカ、そしてサラの母親と共に青春時代を駆け抜けた。
今回の旅は考古学者としてではなく、むしろ昔の時のような冒険者としてこの世界に赴いた。見るもの聞くもの全てが自分の知らぬ新世界。瀬田の好奇心や興奮を大いに刺激して、当初は子供のように目を輝かせていたぐらいだ。
しかし彼も当然人の親だった。
危険を承知で自分について来、情報収集のために別行動を取った娘と再会した時は一人の親として娘を強く抱きしめた。
「サラァ~~~、無事で良かったよ~~~」
「もっ、もうパパァ、苦しいっての。恥ずかしいからヤメロよな~」
顔を赤くして子ども扱いされていることに照れて文句を言うサラだが、久々会えた父親の抱擁がうれしいのか、文句を言いながら引き離そうとはしなかった。
そしてハルカもまた、元気そうな娘に微笑みながら頭をクシャクシャ掻き回した。
「まっ、元気そうで何よりだ。よくやったな、サラ」
「こ、コラ~、髪の毛クシャクシャにするなよ、ハルカ~。パパもいい加減泣き止めよな~」
「ええ~ん、だってサラが~。本当に心配したんだよ~? でも賞金稼ぎや首都からの騎士団みたいな強い奴らから引き離すにはそれしかなくて・・・・」
「ああ~~っ!? 資料集めとか言って、実は私を子ども扱いしてたんだな~!? でもそのお陰でとんでもない化け物に狙われそうになったんだぞォ!?」
「ううぇえええん、ゴメンよー、サラァ! 今度から絶対にパパが守るからね」
「ったく、ほら鼻水拭け。娘の前でみっともない」
家族の暖かい絆がそこにあった。心だけではなく目に見えるほど強い絆が場を覆っていた。
そんな空気の中サラは泣き出す父親を宥めながら、苦笑した。
「まったくパパは私が居ないとゼーンゼンダメなんだからな~」
「そうなんだよ~~、やっぱりサラが居ないと心配で心配で~」
「ちょっ、心配なのはこっちだよォ!」
「まあ、そう言うな。内心こいつも気が気じゃなかったんだからな。こういう時は、女が大人になってやるべきさ」
「む~~」
ハルカがサラの頭に手を置きながら、諭す。その言葉でサラも渋々だが、自分から退くことにした。
「まったくな~~、・・・・まあ、でも・・・・そのお陰で私も、おもしろい奴と会えたんだけどな~」
「ん?」
サラはそう言って、自分の後ろにいる一人の男を手招きして、瀬田とハルカの前に出した。
「?」
「サラ?」
「あ~、その、やっぱ驚くよな~。こいつは、その色々あって私を助けてくれた男で・・・その~」
「ほう・・・・これは驚いた・・・」
「ハルカ?」
シモンを二人に紹介しようとすると、何故かハルカはタバコを吸いながらニヤニヤと笑い出した。
「ファザコンのお前が彼氏を連れてくるとはな・・・・」
その言葉に一瞬で、サラの顔は沸騰してあたふたし出した。
「か、彼ッ!? ちち、違うよ~! ま、まだシモンとは、全然まったく何でもないんだからな~!?」
「はいはい、そりゃあ時間も掛かったわけだ。でっ? ちゃんともうアレしたのか? 何の前触れもなしに祖母になるのは嫌だからな?」
「な、なんだよ!? アレって何なんだよ!? そりゃあ合体は・・・したけど・・・でも、ハルカの言ってることとは全然違うんだからな~! シ、シモンも勘違いして調子に乗るんなよな~!」
しかし母が一枚上手で、サラはケラケラとハルカにからかわれた。
その光景は実に平和な母娘の会話だった。
とてもではないが高額な賞金首たちの会話には聞こえない空間だった。
そして母親でこうなのだから父親はどうなのだろうか?
娘の連れてきた男をどう思うだろう。
しかし自体は意外な展開、・・・むしろこの二人には当然の展開となった。
「パパ? ・・・・シモン?」
「おいおい、どうしたんだ?」
最初に述べたとおり、出会いとは正に何時来るかは分からない。
そしてその出会いは娘との感動の再会をもアッサリ吹き飛ばすほどの衝撃だった。
瀬田には一目で分かった。
目の前の男から醸し出す雰囲気から理解できた。それは相手の強さとかそういう類のものではない。瀬田の第六感が告げていたのだ。
そしてシモンもまた同じ感覚だった。
「シモンです」
「サラの父親の瀬田記康だ。サラを助けてくれたんだね。本当にありがとう」
「いや、俺もサラには助けてもらったから・・・」
お互い苦笑しながら握手する二人。
そしてしばらく沈黙が流れた。
それはまるで自分の感じた相手に対する印象をもう一度、自分の中で確認しているようであった。
(ほう、・・・・シモン君か・・・・・・・ふふ、同じ僕には分かる・・・・・・・彼は・・・・)
シモンも同じである。
(俺には分かる・・・・俺の勘がそう言ってる・・・・・この人は間違いなく・・・・)
それは同志を見つけたときと同じ興奮だった。
同じだからこそ分かるシンパシーだった。
((間違いなく、穴を掘る男だ!!!))
言葉は要らなかった。
お互いが心の中で同じ答えにいたった瞬間、同時に二人は笑みを浮かべ、シモンはドリル。瀬田はスコップとツルハシを取り出した。
それだけで男たちは分かりあった。
「・・・・おい? どうしたんだ、二人とも?」
「ちょっ、そんなもん取り出してどうすんだよォーーーッ!?」
二人の様子に訳の分からないハルカとサラだが、今のシモンと瀬田の耳には入らない。
すると二人は真っ直ぐ歩き出し、己の成すべきことをすべき為に進んだ。
そう、言葉は要らない。
そこに何かがあるのなら穴を掘れ。たとえ無くても穴を掘れ。
ようやく出会った自分と同種の仲間にと共に、走り出した。
「さあ、いくぞシモン君! 何かをするのに理由は要らない!!」
「ハハハ、いつもなら勘弁してくれって言うけど、穴を掘るのなら話は別だ!」
「「・・・・・ハァ?」」
ゴーイングマイウェイの穴を掘る男たちが出会った瞬間だった。
「土と泥に塗れた人生も、それが進むと決めた僕の道!」
「非難中傷ねじ伏せて、蹴破り進め、己の道を!」
瀬田とシモンの意気はピッタリだった。
「何でぇーーーーー!? 何でそんな一瞬で理解しあえるの!?」
分かり合いすぎだろ! というサラのツッコミをも無視して、男たちは走り出した。
「さあ、シモン君! とりあえずアッチに面白そうな遺跡があるみたいだからさっそく行ってみよう!」
「ちょっ、そんな適当に掘ってどうすんだよ!? つうか調査しに来たんじゃないのかよ!?」
「そうじゃないよ、サラ。どうするか? んなもん、掘ってから考えるさ! 行こう、瀬田さん!」
「なんだこの二人はァァーー!?」
ずっと一緒にいた自分よりも、シモンも瀬田も互いを理解した。
この妙な展開にハルカに泣きつくサラだが、ハルカは既に呆れ顔で諦めていた。
「ハルカァ~~~」
「ふう・・・・・あきらめろ・・・・私もあの男を一目見て何となくだけど分かった。アイツらはまったく同じで、人の意見を聞かず、そして流されない奴らだ。何言ったって、向こうが飽きるまで意味ないさ」
ハルカは諦めたようにタバコの煙をため息と共に吐き出して、二人の後を追いかけた。
「ったく、お前の本当の母親といい、その娘もどうして同じような男に惹かれんのかねえ~。・・・・・・・・・まっ、人事じゃないんだがな・・・・・・」
「ななッ!? だ、だからシモンとは全然、ちっとも、ちょっとしか何でも無いんだからなーーッ!?」
「はいはい、先行くよ」
「あっ・・・・・・・うっ・・・・う~~~~~~ッ!? どうしてこうなんだよォーーーーッ!!」
残されたサラは何となく父をシモンに、シモンを父に取られたような気がして、地団駄を踏んだ後、走って二人の後を追いかけていったのだった。
しかし一瞬で打ち解けた瀬田とシモンだが、一つだけ瀬田とハルカはこの時は知らないことがあった。それは、まさか今朝別れたばかりの木乃香たちが想いを寄せている相手を、自分の娘が連れてきたということを、まったく知らなかったのだった。
この一瞬のすれ違いが、後に争いの種ともなる。
そのことにまだ誰も気づいていなかった。
そして……
遠く離れた空の下。
ナギ・スプリングフィールドの名で、超注目の拳闘士としてデビューを果たしたネギは、小太郎、千雨、茶々丸、そしてこの街で再会した朝倉とさよと一緒に、現在の状況を話し合っていた。
「では現状を確認しましょう」
ネギの言葉に朝倉が頷いた。
「うん、さっきのネギ君のお父さんの名前を出したテレビ放送は物凄い効果的だったね♪ これで仲間に伝わればいいんだけどね~」
そして小太郎と茶々丸も続く。
「そして次に夏美姉ちゃんたちの奴隷問題やけど、これも俺らが賞金集めれば問題なしや。一ヵ月後のオスティアの拳闘大会での賞金でなんとかなるやろ」
「それに奴隷という立場ですが、亜子さんたちの話だと、少し大変なバイトのような感覚で、世話役の人たちも意外といい人たちとのことです」
「「「「あっ、それはそう思う」」」」
何故か茶々丸の言葉に皆がハモった。
「トサカさん、・・・・・僕たちがデビューできるように色々と掛け合ったりしてくれたり、何か色々とお世話してくれますしね」
「ああ、それにあいつ口は悪いが、夏美姉ちゃんの話やと、姉ちゃんたちが大変な時も助けてくれたらしいで?」
「ああ、和泉の奴もそんなこと言ってたな・・・・・」
どうやらネギたちにとってトサカは好評のようだった。
なぜトサカがそうなったのか、理由をネギたちは知らないが・・・・・。
とにかく、奴隷という立場であっても、彼女たちの現況はそれほど緊急性が無いと言うのは不幸中の幸いであった。
だからこそ、ネギたちも随分と障害無く話を進めることが出来たのだった。
「そんじゃあ話は戻るけど、オスティアの古代遺跡。そこには現在では使われていない、フェイトたちに唯一壊されていないゲートがある。これを使って元の世界に帰る」
「そんで俺たちには都合よくオスティアの拳闘大会に行く予定」
「さらにオスティアの終戦記念祭はかなりオープンな式典だけに、我々お尋ね者が落ち合うには最適の時期」
「わ~~、それじゃあ、このお祭りで問題全部解決できちゃうかも・・・・・ってことですよねー♡」
「・・・・居たのか・・・お前・・・しかし幽霊って・・・・」
「はは、前途多難やったけど、目的が明確に分かるとテンション上って来たで」
「うん、やることは決まった! 後は突き進みましょう!」
自分たちにようやく吹いてきた風を荒立たせるように、この作戦を絶対に完遂させて見せようとネギたちは意気込んで、アレをやる。
「よ~し、一ヵ月後のオスティアを目指して、ネギま部! 一・ニ・三、ハイッ!!」
その瞬間、何をやるのか察した一堂は中央に集まり、互いの右拳を一緒にぶつけながら叫ぶ。
そしてそのぶつけた拳を上に上げ、人差し指をピンと真っ直ぐ上へ伸ばした。
「「「「「僕(俺)(私)を、誰だと思ってやがる!!!」」」」」
ネギの掛け声を合図に、気合を込めた掛け叫びが響き渡った。
「きゃ~っ、カッコいいですゥ~。私もずっとこのセリフを一緒に言いたかったんです~」
「よかったね~、さよちゃん♪」
「言ってしまいました・・・・ライバルの言葉を何の躊躇い無く・・・・・・・・・・またもやシモンさんに負けてしまいました・・・・・・」
「くっ・・・・これ・・・・・リアルでやると実はスゲー恥ずかしいじゃねえか・・・・」
「そうか? 俺は気合入ったで?」
うれしそうに興奮する、さよや朝倉。そして何故かブツブツと言っている茶々丸に自己嫌悪している千雨と、反応は様々だが、気合は入ったようだ。
何はともあれ、彼らもオスティア目指して決意を固めたのだった。