魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第141話 覚悟

 

「・・・・どうしても・・・行くと言うのかのう?」

 

「はい、当然です」

 

 

学園最高の権力者を前に、一シスターであるシャークティは一歩も引かずに、学園長に申し出ていた。

 

「う、うむ。しかし君の気持ちは分からんでもないが、ネギ君たちと違って美空君たちは首都にいるから、問題は無いと思うがのう・・・」

「そうだね。それにあまりゾロゾロ行っても仕方の無いことだ。やはりここは僕と龍宮君が・・・・」

 

シャークティの形相に背中に汗を流しながら学園長はシャークティを宥めようとする。

しかしその言葉は余計にシャークティの怒りを買うだけだった。

不穏な空気の漂う学園室。

すると一旦顔を下げてシャークティが何かを小さく呟いた。

 

「問題が無い? 心配いらない? ・・・ですか・・・」

「シャークティ先生?」

「無いわけ・・・無いではないですか・・・」

「?」

 

シャークティの呟きに耳を傾けようとすると、シャークティは鋭い目つきで顔を上げ、彼女らしからぬ大声で叫んだ。

 

 

「何も無いはずが無いでしょう!! 魔法世界に行ったのはネギ先生たちだけでは無いのですよ!」

 

「「!?」」

 

 

机を強く叩きつけながら叫ぶ彼女の拳は強く握られ血が滲み出していた。

 

 

「たしかに心配要らないかもしれません。それにあの子達も危険を承知で乗り込んだのです。その結果・・・何があったとしても・・・それがあの子達の自分たちで選んだ意思として納得せざるをえないでしょう・・・しかし・・・・」

 

 

ギリッと強く唇をかみ締めながら、シャークティは二人に向けて口を開く。

 

「それと私がここで何もしないでいることは、まったく別の問題です!!」

「・・・シャークティ先生・・・・」

「あの子達を信じるということ・・・・それは、私は何もしなくていいということにはならないのです!」

 

魔法世界の事件の知らせを聞いたのは、ほんの少し前のことだった。

ネギたちを魔法世界へと送り出した、係りのものが、ゲートポートでテロがあり、ネギと多数の生徒が巻き込まれ、行方不明になったという知らせだった。

更にゲートポートは破壊され、残り僅かな時間で完全に現実世界との退路を絶たれてしまうという内容だった。

この二つの知らせを聞いたとき、シャークティは真っ先に同じ世界へ向かった美空とココネを頭に浮かべ、血相を変えて学園長室へとやってきたのだった。

そして学園長室に着いた彼女の目の前には、既に報告を受けた学園長が、この事態を対処するために、ゲートが完全に閉ざされる前に派遣しようと、タカミチ、そしてネギのクラスの生徒の龍宮が既に学園長室にいたのだった。

タカミチに関しては、豪徳寺たちの訓練に付き合っていた所為で、少し服を汚したままで、それが逆に事態の緊急性を示していた。

そんな二人を見て、シャークティは学園長に、自分も派遣するように申し出た。

当然事情が分かるだけに、学園長もタカミチも、そして龍宮も予想できた言葉だった。しかし学園長は素直に首を縦に振らなかった。

しかし、シャークティも退くことは出来なかった。

そして、いつまでたっても折れない学園長に業を煮やして、シャークティは最後の手段として一枚の封筒を取り出し、学園長が正面に見えるよう机の上にそれを置いた。

 

 

「これを・・・お預けします」

 

 

その封筒に書かれていた漢字は、手に取るまでも無く、なんと書いてあるのか直ぐに分かった。学園長は慌てて手に持ち、確認するが間違いない。

 

「こ・・・これは・・・じ、辞表じゃと!?」

「シャ、シャークティ先生!?」

「今の私に出来る覚悟の形はこれしかありません。しかし教員としての覚悟は、これで納得して欲しいのです」

 

シャークティの目は変わらず真っ直ぐだ。元々冗談を好まない彼女なら、なおのことだった。

つまり本気ということだ。

 

「し、しかしのう・・・向こう側との兼ね合いもあるしのう・・・それに何故そこまでして・・・」

「何故? むしろ何故そんな分かりきったことを聞くのですか?」

「・・・・それは・・・」

「間もなくゲートが閉ざされる世界に残されている子達は・・・・私にとって何なんだと思っているのですか?」

「・・・・・・・・・・」

「私の弟子・・・いえ・・・家族は・・・私が必ず救ってみせます。あの人がいない今こそ・・・この程度のこと、無理でも無茶でも何でもありません!」

 

学園長もタカミチも、これほど強い信念を秘めたシャークティを見るのは初めてだった。

常に冷静さと厳しさを兼ね備えた氷のような女。それが彼女の数ヶ月前までのイメージだった。

そして決して私情と感情に流される者ではなかったはずだ。

しかし今の彼女は誰がどう見ても、私情に流され、勝手な行動を取ろうとしている。それは教員としても魔法使いとしてもあるまじき行為だった。

だが、にもかかわらず、彼女の目は冷静さを保ち、その目に一切の濁りは無かった。

今のシャークティの心は熱く、想いは温かく、常識に逆らってでも己のやるべきことをしようとしているのである。

その熱意を受けては首を横に振るわけにはいかない。学園長は辞表を手に取り、少しだけ目を瞑って口を開く。

 

「・・・・・・・なるほどのう、女の覚悟を感じたわい・・・・」

「では、・・・・学園長」

 

学園長は肩の力を抜き、ヤレヤレといった感じで首を縦に振った。

 

 

「うむ、・・・ワシの負けじゃ、もっともこれを受理するかしないかは、オヌシが帰ってきてから決めるとしよう。美空くん、ココネくん、そして高音くんに、愛衣くんの四人については君に任せるとしよう」

 

「ありがとうございます!!」

 

「うむ、ではタカミチ、そして龍宮君にはネギ君達の方を任せるぞい」

 

「分かりました」

 

「ふっ、まあ・・・依頼料さえ貰えれば、私はどちらでも構わないさ」

 

「よし、では事態は急を要するからのう。早速じゃが三人にはゲートに向かってもらうぞい」

 

「「「了解」」」

 

 

話は決まった。

やるべき事も決まった。

シャークティは胸元のロザリオを握り締め、数秒間何かを祈るように呟いた。そして顔を上げ、タカミチたちと共に、今すぐ旅立とうと思ったその時だった。

学園長室の扉が乱暴に開かれた。

 

 

「「「!?」」」

 

 

一瞬驚いて、全員が肩を少し動かすと、開かれた扉の向こうからゾロゾロと誰かが入ってきた。

 

 

「な、なんじゃッ!?」

 

 

入ってきた者達は実に意外な人物たちだった。

学園長もタカミチも龍宮もシャークティも揃って目を見開いた。

そして意外な人物たちを代表して男が告げる。

 

 

「水臭ぇっすよ~、シャークティの姐さん!」

 

 

言ったのは豪徳寺だった。

そして豪徳寺の言葉に続くように次々と口を開いていく。

 

「俺らにも声掛けてくんね~とよ~」

「ふふ、グレン団の女神を黙って行かせるわけには行きませんよ」

「我らも共に」

 

豪徳寺に続いて口を開いたのは達也、慶一、ポチ。そして・・・・

 

「ふっふっふっ、そういう訳なのです」

「シスター・シャークティ。我々モオ供シマス」

 

ハカセとエンキ、二人を含めて計六名の新生大グレン団のメンバーが学園長室に乗り込んできた。

 

「あ、あなたたち・・・・」

「これはどうなっているんだい?」

「な、何故君たちがここに!? もしかして・・・今の会話を・・・・」

 

事態がまったく飲み込めず、豪徳寺たちの乱入にただ理解できなかったタカミチたちに、ハカセが代表して答える。

 

「えへへ~、いや~、学園祭中に探知機にも引っかからない盗聴器を学園長室に超さんが忘れていったのをたまたま思い出して、たまたま話を聞いて駆けつけたわけですよ~」

「な、なんじゃとお!?」

「えへへへへ~~~」

「な、なんですって!? ハカセさん・・・・それでは・・・」

 

ハカセのとんでもない言葉に、シャークティも驚きを隠せなかった。

そして次の瞬間、普段温厚のタカミチも、このときばかりは思わず声を張り上げてしまった。

 

 

「な、なんということを!? 葉加瀬くん! 君は自分が何をしてしまったのか理解しているのか!? よりにもよって一般人でもある彼らに魔法の存在を!?」

 

 

ハカセのしてしまった行為はそれほどのものである。

魔法の存在は秘匿。

バレればオコジョにされるか、本国へ強制送還。もしくはなんらかのペナルティが課せられる。それが魔法使いのルールであり、絶対に破ってはならない掟なのである。

世界の均衡を守る。倫理。正義。上げれば限が無いほど魔法を秘匿にしなければならない理由が出てくる。

だからこそ、学園側は学園祭で魔法を世界にバラそうとした超鈴音と戦ったのである。

ハカセは一般人だが、特別な理由により魔法の知識を許可されているが、背負うべきルールは自分たちと同じである。

それを破り、一般人である豪徳寺たちを巻き込んだことを、タカミチは見逃すことは出来なかったのである。

だが、タカミチは目の前の男たちを侮っていた。

 

 

「へっ、魔法だ~~? んなもん、知ったって今更関係ないぜ」

 

「・・・・えっ?」

 

「はっ?」

 

「?」

 

「な、・・・なんじゃと?」

 

 

豪徳寺の言葉に全員が呆けると、他の面々も笑いながら口を開く。

 

 

「その通りだぜ! 大体、俺たちはそれ以上にスンゲーもんを知ってんだからよ」

 

「ふっ、たしかに魔法だろうと超能力だろうと今更だね」

 

「気合に比べれば取るに足らない・・・・」

 

 

忘れてはいけない。

彼らは魔法を使えないだけで、既に一般人ではないということだ。

天を突く男と共に戦い、同じ誇りを背負い、ましてや最終日にはその瞳に全銀河の希望の象徴であるグレンラガンを生で見た男たちである。

魔法という存在など、もはや今更だった。

 


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