魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
「なな、何、ラブコメやってんだコラァ!!」
「おっさんと、おばさんのラブコメなんざ需要なんかねえんだぞ!!」
男たちは賞金が欲しいからなのか、単にムカついたからなのかは分からないが、とにかく険しい表情で、二人に向かっていく。
しかし「おばさん」発言はまずかった。
「誰がおばさんだって、ボーヤたち?」
「「「「「「へっ????」」」」」」
ゆらっと瀬田から手を離し、睨みつけるハルカの瞳。
そして、その手には一体どこから取り出したのかと思えるほど巨大なロケットランチャー。
ハルカは迷わずぶっ放した。
「「「「「「「「「「んなあああ!????」」」」」」」」」」
巨大な爆音と共に、大地に大きなクレーターが出来た。
ハルカは威嚇のつもりで放ったために、直撃したものはいないものの、効果は十分だった。
男たちは腰を抜かして立ち上がることが出来なかった。
近代兵器侮るべからず。
その威力は簡単な障壁や、魔獣などは一撃で葬り去るものである。
「あの・・・・お姉さん」
「それは・・・・反則では・・・・」
いかに屈強な魔法世界の男たちとはいえ、チンピラ程度では近代兵器に適うはずもない。
初めて見る旧世界の兵器に度肝を抜かされた男たちは、急に低姿勢になった。
しかしハルカは小さく微笑み、タバコの煙をため息と共に吐き出す。
「残念だが・・・私が以前住んでいた旅館では、近代兵器も真剣振り回す女も、ロボットもカメの大群も当たり前の世界だったからね。これぐらい100%セーフだ」
タバコを咥えなおし、リロード完了。
「強さもいいが、少しは男も磨くんだな」
ハルカも今度は銃口を男たちに狙いを定め、ニヤリと口元に笑みを浮かべる。
するとさっきまで威勢の良かった男たちは・・・・
「「「「「「て、撤収だああああ!!!」」」」」」
誰も異議は唱えなかった。
「なんだ、つまらん。勝手に帰っちまったな」
一目散に逃げ惑う賞金稼ぎたちの背中を眺めながら、ハルカはクールな表情でタバコの煙を吐き出した。
「ハルカ、苛めたら可哀想だよ?」
「ふん、一人も犠牲者を出さないのなら、最初に脅しとくのが一番だよ。まあ、本当の強敵には通用しないだろうけどね」
「そうだね・・・・たとえば・・・・」
そこで瀬田はチラッとこの場に残って呆然としている刹那たちを見る。
その視線がぶつかって、刹那たちは慌てて身構えた。その時刹那たちから醸し出される雰囲気から、瀬田はニッコリと微笑んで感心する。
「うん、彼女たちクラスには有効な手段じゃないかもね」
「「「!?」」」
お花畑に旅立っているアスナを除いた三人は瀬田の言葉にハッとなった。
二人のやり取りに毒気を抜かれてしまったものの、目の前の二人は賞金首。つまり犯罪者なのである。
そして二人とも只者ではない。
瀬田の微笑みに底知れぬ何かを感じ取った刹那は木乃香を己の背後に置き、刀を取り出して、瀬田に構える。
「楓、ここは私がやる! お嬢様と、アスナさんを!」
「刹那!」
「せっちゃん」
真剣を取り出し全身の気をむき出しにする刹那。
しかし瀬田もハルカも大して驚くこともせず、むしろ感心していた。
「ほお、大した気迫だね」
「やれやれ、問答無用ってか? まあ、賞金首だから仕方ないがね」
「まあいいさ、ここは僕がやろう」
「当たり前だ。メンドそうなレベルの相手は全部お前に任せるよ」
戦場において、刹那の常人を超える気迫を目の当たりにしても、まったく動じていない二人のやり取りは刹那の警戒心をさらに高めた。
(この二人・・・・只者ではない)
明らかに実践慣れしているであろう目の前の敵。
賞金首。
そしてここは魔法世界。
これらの要素を踏まえて刹那の出した結論。
(相手の力、能力も不明・・・ならばどうするか・・・・)
心の中に愛しき男の顔を頭に思い浮かべて、刹那は臆さず一気に瀬田に迫る。
「決まっている! 先手必勝だ! あの人ならそうするはずだ! はあーーーッ!! 神鳴流・斬岩剣!!」
「おっ、これは・・・・」
一撃必殺の剛剣。
しかしその刃を瀬田は軽々見切った。
しかも余裕の笑みとタバコを口に咥えたままである。
「こ、この男!?」
刹那は構わずに剣を振るう。
しかし瀬田は刹那の洗練された太刀筋を、ニコニコと笑いながら、素手でいなしていく。
「な、なに!?」
「せ、・・・せっちゃん」
「せ・・・刹那の剣を・・・」
刃の雨を繰り出す刹那。
しかし瀬田は一向に反撃する気配も無く、ただ刹那の剣を軽々と流していくだけだった。
(こ、・・・この男・・・・出来る! 私の剣をこうも無駄なく、・・・容易く・・・)
刹那とて自分をそれほど過信しているわけではないが、それなりに自信はあった。
力も精神もまだ未熟だと自分で思っていても、数々の実戦や修羅場を潜って来た数は並みの戦士を凌駕しているはずだ。
それなりに自分は出来ると思っていた。
しかし自分の攻撃を軽やかに交わしていく男の余裕の笑みからは、計り知れない力の差を感じずには入られなかった。
するとそんな動揺する刹那に追い討ちを掛けるように、瀬田は剣を交わしながら、口を開く。
「ふふふ、まさかこんな所で神鳴流剣士に会えるとはね・・・・」
「な、なにッ!?」
その瞬間、刹那の体が強張り、ほんの一瞬だけ硬直した。
「隙あり♪」
「あっ・・・・・・」
「刹那!?」
「せっちゃん!?」
「勝負ありだね?」
瀬田の直突きが、刹那の目の前で寸止めされた。
その拳にまったく反応が出来なかった刹那。
瀬田はやろうと思えば、今の一撃で、刹那にダメージを与えられたはずだ。
しかし瀬田は寸止めした拳を開き、二・三度軽く刹那の頭を優しく叩き、ニッコリと微笑んだ。
「うん、でもその年で大したのものだ。このまま功夫を積み重ねていけば、素子ちゃんクラスの剣士になれるかもね」
「な、なぜ!? ・・・・何故・・・・神鳴流を・・・・」
「ん? だってそれは・・・・・」
「悪いが助太刀させてもらおう!」
「ま、待て楓!」
「甲賀中忍、長瀬楓、参る!」
瀬田の実力と意外な言葉に目をパチクリさせる刹那だが、その瞬間、楓が持ち場を離れて瀬田に向かっていく。
刹那を軽くあしらった強敵だ。
自分も始めから全力で飛ばすべきだと本能で悟った。
「おっ、これは・・・・・」
瀬田は刹那の剣を見たときと同様に、迫り来る楓が十人以上に分身した姿を見て感嘆の声を上げる。
「これはすごい。影分身か、しかもこれほどの数を・・・この子といい才能溢れる子達だね。・・・・」
「余裕でござるな。痛い目をみるかもしれぬぞ?」
「さあ? それはどうかな?」
「何!?」
瀬田は大して動じるわけでもなく、服の中から両拳の中に何かを握り締め、分身した楓に向かって投げつける。
(これは、飛礫!?)
瀬田が投げつけたのは楓の分身体と同じ数だけの投石だった。
それは気も魔力も纏っていないように見える一見ただの石にしか見えない。
しかし瀬田の涼しい顔からは想像もできないほどの威力で十近くの石は、楓の分身体を一瞬で全て葬り去った。
「なっ、・・・」
「甘く見ないでくれたまえ、僕の投石は一発で飛行船をも打ち落とすんだよ♪」
一瞬で本体の楓一人だけが残ってしまった。
(せ、拙者の影分身が一瞬で・・・・)
いまだかつてこれほどアッサリと自分の特技が打ち破られることなど無かった。
だが、動揺している暇は無い。
気づいたときには瀬田は目の前にいた。
「い、いつの間に!? 瞬動で回避を・・・」
「おっと、そうはさせないよ。君のやろうとすることは、手に取るように分かる」
楓は慌てて大地を蹴り、その場から飛び退こうとしたが、瀬田の手が一瞬早かった。
瀬田は瞬動で逃げようとした楓の両肩を掴み、動きそのものを封じてしまった。
「ば、バカな・・・楓が捕らえられた!?」
刹那もこの事態に動揺を隠し切れない。
忍者の楓が、こうもアッサリと自分と同じようにやられてしまうとは、まったくの予想外だった。
普段掴みどころが無いような表情をしている楓も、この時ばかりは、いつもは細い両目を大きく見開いて、自分を捕まえた男を見ていた。
そして瀬田はまたしても、攻撃するわけでもなく、優しく微笑みながら楓の両肩から手を離した。
「君の影分身は見事だったけど、長年僕は遺跡やトラップを相手に戦ってきたからね。僕の目は本物と偽者を簡単に見抜く。実体を分身させる影分身にも、本体はいる」
「・・・・しかし、そう簡単ではござらんよ・・・・・」
「そうでもないさ。君は身のこなしに無駄がなさ過ぎて、逆に動きが先読みできてしまう。昔から悪の秘密結社だとか盗賊団相手に戦ってきたから、実戦経験の積み重ねで分かるんだよ♪」
軽くウインクをしながら、最初と変わらぬ表情で笑う瀬田。
そしてこの男は結果的にタバコ一本吸い終わる前に刹那と楓の戦意をそぎ取り、アスナを笑顔一発で倒してしまったのである。
戦いの最中、微塵も相手に殺気も気迫もぶつけず、ただ爽やかに微笑むだけ。
しかしそれが逆に底の見えなさを感じた。
これがラカンに続く、バグキャラ兼不死身の瀬田の登場だった。
そして・・・・
「さて、・・・まあ、このバカの格闘講座はそれまでにして・・・・」
「そ、そんな~はるか~、僕は彼女たちのためを思って・・・」
「黙れ。中学生かそこらの女に勝ったぐらいで調子に乗るんじゃない」
「えっ、でもあの子たちは十分一流の・・・・「いいから黙ってろ」 ぶろぱあーーーッ」
「と、飛んだ!?」
「な、なんという飛距離!?」
「せ、せっちゃんと楓ちゃんを倒した人を・・・アッサリ・・・・」
刹那と楓を軽くあしらった瀬田を、手首のスナップだけのパンチで高らかに殴り飛ばすハルカ。
正に最強夫婦との出会いだった。
「気を悪くしないでくれ。このバカも悪気があったわけじゃないし、私も事は起こしたくは無い。賞金は諦めて帰ってくれないか?」
「「「へっ??」」」
木乃香たちが揃って首を傾げた。
どうやらハルカと瀬田は、刹那たちを最初にいた男たちと同じ、自分たちの首を狙いに来た賞金稼ぎだと勘違いしていたようだ。
そのことが分かり、刹那は慌てて両手と首を横に振る。
「ち、違います! 我々は別に貴方たちの賞金が欲しかったわけでは・・・・ただ、己の身を守るために・・・・」
「・・・・なんだって?」
「う、うむ。賞金首と言われていたので、てっきり犯罪者だと・・・・しかし・・・・何やら事情がありそうでござるな」
どうも話がかみ合わない一同。その状況に瀬田は少し困ったような表情で唸りながら、とりあえず、話を少し前に進めることにした。
「・・・・う~ん・・・・これは意外な展開だね。・・・・仕方ない・・・まず話をしようか? え~とまず僕の名前は瀬田記康。この世界で言う旧世界、モルモル王国に住んでいる考古学者だよ。そして彼女が僕の妻のハルカだ」
「えっ? きゅ、旧世界?」
「モ、モルモル王国やて!?」
「しかも・・・・というよりひょっとして・・・いや、ひょっとしなくとも・・・」
「ん?」
「瀬田殿・・・旧世界出身ということは・・・ひょっとしてオヌシたちは・・・魔法世界の人間ではなく、日本人でござるか?」
「「へっ?」」
楓の問いに瀬田とハルカは初めて驚いた表情をした。
そして二人は互いを見合って、刹那、楓、木乃香を見て、納得したように頷いた。