魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第133話 ただの喧嘩

 

 

「ウケへん芸は強制的に終わらせてもらいますえ~」

 

 

完全に興味を失った月詠はサラとシモンを二人まとめて討ち取るべく、二つの剣に速さと重さを加えて迫ってきた。

ぶつぶつ文句を言っていたサラが月詠の動きに気づいた頃、彼女は既に目の前で剣を振りかぶっていた。

サラが自然と眼を瞑ってしまったが、シモンは自信満々に両手を前に翳した。すると月詠の剣は二人に届くことなく、寸前で見えない壁にはじき返されてしまった。

 

 

「な、なんやァ!?」

 

 

斬ったと確信した瞬間に見えない何かに阻まれた月詠は眼を見開いた。

するとシモンが突き刺したドリルから光が漏れ出し、突き刺した部分からメカタマのボディ全体が光で包まれた。

この異常事態にメカタマを内部から操縦しているサラも包み込む光の強さに圧倒されていた。

 

 

「ななな、何だよこれぇ!?」

 

 

サラの動揺する言葉にシモンはむしろ笑みを浮かべた。

自分の直感は何も間違っていなかった。それが証明されたのがうれしかった。

シモンが突き刺したドリルから溢れたエネルギーはやがて、その光と共にメカタマと一つになっていく。

それどころか、昨晩シモンが壊した胴体や翼の部分も再生され、他のパーツも変形し、出力も強度も遥かにアップされた。

 

 

「あれ? あれぇッ!? 直ったアア!? それに・・・・エネルギーメーターがありえないほど・・・・・螺旋の形をして今までより遥かに振り切っている・・・・・」

 

「気合だァ!!」

 

 

メカタマ内部でサラは突如起こったメカタマのバージョンアップに度肝を抜かれていた。

原理も意味も一切不明。

とにかくようやく口から出て来た一言はこれだけだった。

 

 

「シモンのドリルと合体しちゃった・・・・・」

 

「どうやらそうみたいだな」

 

 

突如起こった目の前の変化についていけなかったのは月詠も同じだった。

 

 

「合体? そんなんが? そんなもん認めませんわ~」

 

 

意を決して再び向かってくる月詠。しかしシモンは余裕の笑みで迎え撃つ。

 

 

「無駄無駄無駄無駄無駄ァーーーーッ!!」

 

 

シモンがその場で拳を前に突き出した。

すると操縦者のサラの意思を無視してメカタマが右のヒレを前に突き出した。

そしてそのヒレからは二本のドリルが突き出して、月詠の剣を受け止め、次の瞬間高速回転したドリルによって月詠の剣が砕け散った。

 

 

「なっ!?」

 

 

砕け散る月詠の愛刀。

シモンはこの結果を当然だと言わんばかりに告げる。

 

 

「覚えておけよ変態女! 互いに足りない所を補って、新たな力を生み出す気合と気合のぶつかり合い! それが合体だァ!!」

 

「なっ・・・・そんな・・・・・ありえへん・・・・」

 

「ふっ、何言ってやがる! ありえねぇ事なんて、ありえねぇんだよ!! そうだ・・・・俺を・・・・・・・・・俺・・・を・・・・・・」

 

「シモン?」

 

「?」

 

 

シモンはハッとなった。

合体という言葉を告げたとき・・・・・いや、ドリルをアリアドネーで出した時・・・・・いや、記憶を失った時から、ある一言がどうしても出てこなかった。

天を突く、その言葉と同じぐらい自分を自分だと証明するための言葉が、どうしても思い出せなかった。

だが、今その言葉がようやく自分にも分かった。

記憶は無くても自分は自分。

だからこそ、何も躊躇う事無く、最高に自信に溢れた笑みで、グラニクス全土に響き渡るほどの声で叫んだ。

 

 

 

「俺を誰だと思っていやがるッッ!!!」

 

 

 

愛刀が目の前で無残に砕け散り呆然とする月詠。しかしメカタマの攻撃は終わらない。

その光景に目を奪われない者など居なかった。

意味も分からず、シモンが何者かを殆どの者が知らないにもかかわらず、シモンの姿から目を放せなかった。

 

 

「さあ、いくぜサラ!」

 

 

サラも何が何だか分からない。

しかし今の自分自身の心を埋め尽くす物は何だ?

混乱でも不安でも、疑問でもない。

ただ湧き上がる興奮を抑えきれず、サラは幼い子供のような無邪気な笑みで頷いた。

 

 

「うん!」

 

 

メカタマの口が開き、中から主砲が飛び出す。

 

 

「いくぜ! 俺のドリルとサラのメカタマが合体したメカタマスパイラルの必殺技!」

 

「なんだよそれぇ? まんまじゃん!」

 

 

そしてそれは只の主砲ではない。

シモンの突き刺したドリルの螺旋力を凝縮し、一気に解き放つ二人の合体技。

 

 

「「スパイラルカオラン砲!!」」

 

「させまへんえ~! ざんくーしょーう」

 

 

空気を切り裂く気の刃が月詠の両手から繰り出される。

しかし空気は切り裂いても二人分の気合の篭った螺旋を描く光の光線は切り裂くことは出来なかった。

 

 

「「おおおおおおおおおおおお!! ぶっ飛べええ!!」」

 

「なっ!? かき・・・・消され・・・・・」

 

 

二人の雄叫びが螺旋の光線となって月詠に向かって突き進む。

自身の技を正面から掻き消された月詠に成すすべは無い。

 

 

「目に焼き付けろ! これが俺とサラ、そしてブータの合体技だァ!!」

 

 

輝く螺旋を描く光線を目に焼き付けたのは月詠だけではない。

トサカやトサカの子分・・・・いや、この場に居たグラニクスの住人たちの目に焼きついた。

そして光が月詠を捉えた! そう思った瞬間だった。

 

 

「なっ!?」

 

「えっ!?」

 

 

月詠が姿を消したのだった。

それは一瞬の出来事だった。

月詠は交わす素振りも何も無かった。

確実に命中したと思っていた。

だからこそこの事態にシモンとサラは目を見開いた。だが、その答えはすぐ傍にあった。

 

 

「ふっ・・・・ようやく僕の知っている君らしくなった。やっぱり君はシモンだね」

 

「「!?」」

 

 

振り向くとそこにはフェイトが居た。

そしてフェイトの足元に呆然とした表情で両手と膝を地面に着いている月詠がいた。

彼女自身もこの一瞬の出来事を理解していなかった。

 

 

「月詠に今やられてもらうわけにはいかないんでね。転移魔法で邪魔させてもらったよ」

 

 

月詠を助けたのはフェイトだった。

転移魔法で月詠を一瞬で自分の傍まで移動させ救出したのだった。

 

 

「・・・・ふん、空気の読めない野郎だぜ!・・・・・・それで、お前はどうするんだ? お前が売ってきた喧嘩だろ?」

 

「・・・・喧嘩?」

 

 

シモンの問いかけにフェイトは首を傾げた。そして次の瞬間肩を竦めながらヤレヤレといった呆れた様子だった。

 

 

「くだらないな。まあ、記憶があっても無くても君に僕たちの大義を語っても無意味だっただろうけどね・・・・」

 

 

だが、そんなフェイトの様子にシモンは噛み付いた。

 

 

「テメエこそ何ふざけたこと言っている。大義だか何だか知らねえが、そうじゃないんじゃないのか?」

 

「・・・・・・・何だって?」

 

「そうじゃないのか? 俺とお前は何か大層なものを賭けて戦っていたのか? 違うだろ? 俺たちの争いは・・・・・」

 

 

覚えていないシモンの代わりにフェイトは思い出す。

そう言えば自分は何故シモンと決着をつける約束をしたのかと。

だが、シモンと戦ったことも、約束も覚えているが、肝心の戦っていた理由が思い出せなかった。

 

 

(京都で初めて彼と会って・・・・・・・ネギ君たちの様子を見るために見張っていた僕は彼に見つかって・・・・・・・)

 

 

たしかにそこに大した理由など無かった。フェイトも今になってそのことに気づいた。

 

 

「なるほど・・・・・・たしかにそうだ・・・・・僕たちの争いはなんてことのない・・・・」

 

「やっぱりそうだったのか? 俺たちの争いは・・・・・」

 

 

フェイトは微かに口元に笑みを浮かべ、シモンと同時に同じ言葉を口にした。

 

 

 

「「ただの喧嘩だ」」

 

 

 

フェイトもようやく納得した。

ネギたちとはこんな単純な理由では戦わないだろうが、シモンに関してはそんな形で十分だろうと自身も納得した。

 

 

「いいだろう。君を相手に大した理由も何も必要ない。ただの喧嘩相手として、処理させてもらおう」

 

 

次の瞬間フェイトの指輪が光り、フェイトは遥か上空へと飛び上がった。

顔色一つ変えず。しかし人を殺傷させる破滅への言葉を唱えながら。

 

 

「ヴィシュタル・リシュタル・ヴァンゲイト・おお、地の底に眠る使者の宮殿(オー・タルタローイ・ケイメノン・バシレイオン・ネクローン)我らの下に姿を現せ(ファインサストー・ヘーミン)」

 

 

そしてフェイトの唱える呪文と共に、上空にビル一棟にも匹敵するほどの巨大な石柱が無数に姿を現した。

 

 

「な、なんだ!?」

 

「なななな、何だよこれぇ!?」

 

 

あまりにも巨大。

あまりにも強力すぎるフェイトの魔法は、サラとシモンだけではなく、本場の魔法世界の住人たちをも震え上がらせるほどだった。

この日初めて広場に集まった人々が悲鳴を上げて逃げ惑った。

激しい戦いすら、暇つぶしと賭けの対象としてしか見ていなかった彼らですら、上空から狙いを定めている魔法の力がどれほどのものなのかを直感で理解していた。

 

 

「取りあえず再会の挨拶代わりだ。受け取ってくれたまえ」

 

 

フェイトは上空に浮かぶ全ての巨大な石柱を最後の言葉と共に一斉に振り下ろした。

 

 

「冥府の石柱(ホ・モノリートス・キォーン・トゥ・ハイドゥ)」

 

 

正にその名の通り、冥府へ誘う呪文だった。

まともに受ければ自分一人が死ぬだけでは済まない。

確実に起きる大惨事を防ぐためにも、シモンは無茶を承知で気張るしかなかった。

 

 

「させるかよォ!!」

 

「シモン!? バッ、バカァ! 無理すんなよな!」

 

「無理を可能にするんだから・・・・無理なんかじゃねえ!!」

 

 

シモンはメカタマの頭部から飛び跳ねて降り注ぐ石柱に真っ向から向かっていく。

一本でも巨大な柱が無数も存在している。

しかしやるしかなかった。

 

 

「ギガドリル・マキシマム!!」

 


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