魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第130話 強くなりたい

ありえねぇ事なんて、ありえねぇんだよ!! 投稿者:兄貴 投稿日:09/06/24-00:28 No.4027

 

10歳という年齢はシモンよりも半分の人生すら生きていないことを意味している。

 

しかしその半分の年齢にも満たない少年の時間の密度はとても色濃かった。

10歳という年齢なら当時のシモンはまだ地上の存在すら知らずに狭い地下の世界を全てと思い、穴を掘るだけの毎日を過ごしている頃である。

しかしこの少年は既に当時のシモンが知るはずの無い世界や力の領域に足を踏み入れていた。

それだけでなく更なる新たな世界へ足を踏み入れるために、血の滲むような努力を積み重ねてきた。

 

全ては父を探すという、自分自身の目標の原点のため。

 

六年前に遭遇した雪の日の夜の決着をつけるため。

自分自身の想いを通すために日々を過ごしてきた。

信頼でき、信頼してくれる仲間と共に、これまでの人生の中で最も努力してきたはずだろう。

しかしその努力も出会った宿敵に粉々にされた。

信頼できる仲間も敵の手によって広大な魔法世界に散り散りにされた。

新たな世界に踏み込んだ瞬間に洗礼を受けた。

力も無く、仲間も失い、洗礼を受けた少年は悔しく歯噛みした。

だが、それはいつまでも続かなかった。

今は只、今の自分が成すべきことだけを考え、上を向いてこの状況に嘆くことなく立ち向かっていた。

 

 

「後二日ほどあれば一番近くの街に着きます。ネギ先生、体調は大丈夫ですか?」

 

「はい、・・・完全に大丈夫とはいえませんが、メガロメセンブリアでの戦闘の最中に木乃香さんが治癒魔法を掛けてくれたので、心配はいりません」

 

「へっ、体に穴が相手も手をかざして呪文唱えただけで治っちまうとは、・・・・この世界の光景といい、ファンタジーに対する抵抗感が薄れてきたぜ・・・・」

 

「何いまさら言っとんねん」

 

 

見渡す限りの広大な大森林の中、ネギたちは手元にある魔法世界の地図を眺めながら、街を目指して歩いていた。

当初10人以上いた仲間たちも、敵の手によって離れ離れになって、今のネギの傍には茶々丸と千雨、そして小太郎の三人だけしか居なかった。

 

 

「しかし・・・・二日か・・・・もっと早く行動したいというのに・・・・」

 

 

ネギがとても歯がゆい表情で呟くと。茶々丸が心配そうにネギを制した。

 

 

「無茶はいけませんネギ先生。これでも無理を推して進んでいるんです。これ以上の無理はネギ先生だけでなく、千雨さんにも負担が掛かります」

 

「ちっ、悪かったな足手まといでよ」

 

「せやけど、訓練しとらんかった千雨姉ちゃんと早々と合流できたのは大きかったな」

 

「うん、たしかにアスナさんや刹那さんたちなら大丈夫だろうけど・・・・問題は・・・・」

 

 

その言葉で場に少し沈黙が流れた。

彼らが考えているのは、特に訓練のしていない朝倉、そしてイギリスのゲートで自分たちの後をコッソリ着いてきてしまい、巻き込まれこの世界に足を踏み入れてしまった五人の生徒たちのことだった。

 

 

「裕奈さん、・・・・まき絵さん、アキラさん、亜子さん・・・・」

 

「それに夏美姉ちゃんもな」

 

「前途多難だな。ったく・・・・・・とんだ夏休みだぜ」

 

 

ネギはメガロメセンブリアでの戦いで確かに見た。

フェイトとフェイトに従う数人の者たちとの交戦中、フェイトの放った魔法によりゲートポートを破壊され、フェイトの仲間の一人が放った強制転移魔法の光の中で本来居るはずのなかった生徒たちが、自分たちの後をついてきてしまったために巻き込まれたのだった。

千雨や朝倉と違い、魔法そのものの存在すら知らない普通の生活を送ってきた子達である。

アスナ達のように大丈夫だと信じられる根拠は無かった。だからこそ、そのことがネギを一層に焦らせた。

しかしネギのそんな責任感や生徒たちの安否を思う気持ちは分からなくないが、そんなネギが無理をしないようにと千雨と茶々丸、そして小太郎がストッパーとなって、ネギを落ちつかせていた。

そして落ち着くたびにネギは呟いていた。

 

 

「強く・・・・強くなりたいです・・・・本当に・・・・」

 

「ったく、またそれかよ。今回は相手が化け物過ぎただけだろうが・・・直ぐ何でもかんでも力ばっか求めてたって仕方ねえだろうが」

 

 

千雨は呆れたように頭を掻きながらネギに言いにくそうに告げる。

ネギが力を求める理由は今回のこの結果を見る限り仕方の無いことなのだろうが、それは何か違うのではと千雨も思い、自分の言葉に自信が無くとも、ネギに告げる。

しかしネギは千雨が思っているよりも我を見失っては居なかった。

その眼は自分が良く知っている憎たらしいほど純粋で真っ直ぐな目だった。

 

 

「違います、千雨さん。たしかに力が欲しいです・・・・でも、僕はまず・・・・もっと・・・ここの強さが欲しいです!」

 

 

ネギは自分の胸を叩きながら言う。

その言葉に茶々丸と千雨はキョトンとし、小太郎は感心したような笑みを浮かべた。

 

 

「信じているはずなのに・・・皆は無事だと信じて探すしかないのに・・・・ずっと不安や嫌なことばかり思ってしまうここの弱さが・・・・僕は悔しいです・・・・」

 

 

ネギは心底悔しそうに歯軋りをした。

しかしそれは悔しさで不貞腐れた様子ではない。悔しさをいつか変えて見せるんだと意気込んでいるように見えた。

そんなネギを見て、小太郎は機嫌よさそうにネギの肩に手を回した。

 

 

「はっはっは、そう落ち込むなやネギ! そういう考え方出来る時点で、けっこう強い思うで? それに俺もお前の仲間は無事やと信じとる! 俺らは信じて前へ進むしかないんや!」

 

「小太郎君・・・・そんな根拠も無く・・・・」

 

「そうかァ? 俺はよう知らんけど、あの兄ちゃんや超鈴音と学園祭で戦った時のお前らの絆はそんな柔なもんやなかったんやろ?」

 

「・・・・・・あっ・・・・・・」

 

「せやろ? それにお前はお前やけど、親父同様にあの兄ちゃんに憧れてるのもまた事実や! だったらあの兄ちゃんみたく根拠も無く仲間を信じて前へ進めや!」

 

 

小太郎の言葉にネギはハッとなった。

そしてあの男のことを話題に出されれば、たしかに根拠は無いが、自分のすべきことは小太郎の言うとおりだと納得できた。

その様子に千雨も茶々丸もホッとしたような安堵の笑みを浮かべた。

 

 

「へっ、ごちゃごちゃ考えるクセに、納得する時はアッサリしやがるんだな。まっ、いいことだけどよ」

 

「しかし小太郎さんの言っていることは的を射えています」

 

「そうやな・・・そして今のお前に足りないもんゆうたら・・・・やっぱ・・・・」

 

「その答えはもう分かっているよ」

 

「ほう、なんや? 力! なんてゆうたら張っ倒すで?」

 

「決まってるじゃないか! 僕に足りないもの・・・それは、気合だよッ!!」

 

 

自信満々のネギの答えに、三人は少し間を置いて考えた。

 

 

「「「・・・・・う~~~ん・・・・(・・・・まあ、これはこれで・・・いいのかな?)」」」

 

 

だが三人が正否を答える前に、ネギは自己完結して、大森林のど真ん中で大声を張り上げた。

 

 

「よ~~~っし!! やるぞォ! いつまでも下を向いているわけにはいかない! アスナさんに殴られるだけじゃなく、シモンさんや、ヨーコさん・・・・そして・・・カミナさんにがっかりされないように突き進んで、必ずみんなと再会してみせるぞ!」

 

 

何はともあれ答えに至ったネギはやることは一つ。

とにかくまずは前へと進んで、この状況を少しでも変えることだった。

後悔も、仲間の安否も、己の弱さも、全ての不安を取り消すにはまず、只ひたすら今は前へ進むしかなかった。

 

 

「気合の注入完了ってか? まあ、ええんやないか?」

 

「まっ、ウジウジされるよりはこっちも気分が良いしな」

 

「はい! それでは行きましょう!!」

 

 

根本的には何も変わっていないかもしれないが、それでも先ほどまでの空気よりは何百倍もマシだった。

そんなネギを見て、茶々丸は一人の男を思い出した。

 

 

(シモンさん・・・・・・・・・アナタは今・・・・どうしていますか?)

 

 

茶々丸は空を見上げて、いつも天ばかりを目指していた永遠のライバルを思い出す。

シモンが今のネギと同じ状況に陥ったら、きっと今のネギと同じ答えを出すだろう。そう感じた茶々丸は、この世界には居ないであろう男を想い、心の中で呟いた。

 

 

 

だが、そんな茶々丸の想いを知らずに、シモンはちゃっかりこの世界の同じ空の下にいた。

 

 

 

そしてそのシモンは・・・・

 

 

 

シモンは今・・・・・・・

 

 

 

ネギたちを最悪の状況に叩き落した元凶と・・・・・

 

 

 

コーヒーブレイク中だった・・・・・・・・。

 


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