魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第128話 壁も天井もない

 

 

「やっほ~う、ドケドケーーー!! サラ様とシモンのお通りだぞォ!!」

 

 

そんな状況をまったく知らないシモンは、目をパチクリさせながら笑うサラに連れまわされていた。

 

「サラァ、何で俺たち追いかけられているんだ!? 何か俺が寝ている間にあったのか?」

「ん、そりゃあ・・・・・あいつら・・・・・私が可愛いから・・・」

「はっ?」

「そ、そう! あいつら私が可愛いから賞金首ってことを脅して、自分の言うことを聞く奴隷にしようとしている変態たちなんだ!!」

 

何故かシモンの所為で借金したとは言うことができず、サラは不意にメチャクチャな嘘をついてしまった。

 

 

(・・・って、いくらコイツが単純バカでもこんな嘘信じるわけ・・・・)

 

 

言って後悔したサラだったが、そんなことは無かった。

 

 

「なんだって!? ふざけんな! そんな理由でサラが奴隷にされてたまるかよッ!」

 

「・・・・・・・・・へっ?」

 

 

信じてしまった。

 

 

「安心しろサラ! 俺が絶対にお前を奴隷になんかさせねえ! 誰が立ちはだかっても、絶対にお前を守ってやるぜ!」

 

「あ・・・・あのさ・・・・シモン?」

 

「たとえお前が賞金首でもお前は俺の友達だ! 俺の前から訳もわからねえ理由で、女を攫われてたまるかよッ!!」

 

「へっ、・・・へっ・・・・ええ~~~? ・・・・・・信じちゃったよ・・・コイツ・・・・」

 

 

しかもヤバイぐらいスイッチが入ってしまった。

サラの冗談を真に受けたシモンは、答えに至ったような目で自らの意思で前を見る。

すると前方に筋肉の盛り上がった大男が自分たちの行く手を遮っていた。

 

 

「テメエらか、トサカの言ってた脱走者は!」

 

「シモン、誰か居るぞ!」

 

 

明らかにガラの悪いスキンヘッドの男は、シモンとサラを確認した瞬間、拳を構えて身に魔力を纏った。

 

「来てくれたのか、兄貴!」

「やっちまってくだせえ、バルガスさん!」

「ひゃっはっは、お前らも終わりだぜ!」

 

後方からシモンとサラを追いかけるトサカと子分たちが何かを騒いでいる。

どうやらトサカたちの兄貴分のような存在なのだろう。その証拠に、身に纏う魔力の質は決して只者ではない。

 

「ハハハ、行くぜテメエら!! 戦いの旋律加速二倍拳(メローディア・ベラークス デー・ピフェスビナンドー)!!」

「むっ、アイツちょっと強そうだぞ、シモン!!」

「関係ねえさ! この間の筋肉達磨と比べれば、どうってことない!!」

 

シモンはメカタマから飛び降り、背中に鉄の翼を生やして自らの意思で宙に浮かび、真っ直ぐバルガスに向かっていく。

シモンの前に立つバルガスという名の男は決して弱くは無い。この世界でも高位の魔法使いといってもいいかも知れない。

しかし竜族の魔獣に続き、生けるバグキャラと戦ったシモンから見れば、決して壁になど成りえなかった。

 

 

「俺の瞬動術(クイック・ムーブ)についてこれ「スパイラルパンチ!!」 ぶほおおおっ!?」

 

「「「「あっ、兄貴ィーーー!?」」」」

 

「うおおおお、シモォーーーン! すげ~な、お前!」

 

「当たり前だ、俺を遮ることなど出来るものかァ!」

 

 

一撃だった。

瞬動術で接近するバルガスは、突進したシモンのコークスクリュー気味のパンチ一発で殴り飛ばされてしまった。

その一瞬の出来事は確かに街中の注目を集めた。

 

「おいおい、あの兄ちゃんバルガスを一撃で倒しちまったぞ!」

「見たことねえけどすげぇ奴が現れたぞ!」

「俺、逃げてる奴らに150!」

「じゃあ俺はトサカたちに200賭けるぜ!」

 

魔法世界において争いごとは日常茶飯事である。

激しいバトルはむしろ彼らにとっては退屈しのぎの一つの余興かもしれない。

今街中で、奴隷という立場から自由を得ようと戦う二人の姿は、彼らの視線を集めた。

 

「へへへ、みんなお前のこと驚いてるな♪」

 

カメに跨り駆け抜けるサラは実にうれしそうだった。その笑顔は心の底からの喜びだったかもしれない。

 

「うれしそうだな、サラ」

「へっへ~ん。まあな! それよりシモン、お前やっぱ気に入ったぞ!!」

「そうか? よっし、こうなったら意地でも脱出してやろうじゃないか!!」

「乗ったぜ相棒!」

「ぶいぶい!?」

「ブータが相棒は自分だって」

「ん? そっか~・・・それじゃあいくぜ犬!!」

「なんだよそれは!?」

「ヘヘヘ♪」

 

サラは心強かった。

シモンが一緒に居てくれることが何よりもうれしかった。

勘違いとはいえ、シモンが行くぞと言ってくれただけで、自分もどこまでも行ける気がした。

 

 

「コラァ! テメエらよくも兄貴を! 逃がさねえぞこの野郎!!」

 

「待ちやがれぇ!!」

 

 

追っ手が後ろから追いかけてくる。

トサカも子分たちも拳闘士の端くれである。その実力は相当のものだと思っていいだろう。

しかし先ほどのバルガス同様、シモンと共にいればサラは何も怖くなど無かった。

まるで幼い時に危険地に冒険に行ったとき、傍に居てくれた父親と同じような安心感だった。

 

「シシシ、待つわけ無いじゃんかよ~!」

「くっ、この・・・小娘がァ!」

 

振り返りながら舌を出して挑発するサラ。するとトサカは空を飛ぶシモンに向かって叫んだ。

 

 

「この・・・・野郎・・・。いいのかテメエ! 言っておくがそのガキは既に賞金首だ!このまま逃げ出したらテメエも只じゃすまねえぞ!」

 

「「!?」」

 

「この世界の法律に逆らうってことだ! 犯罪者の仲間入りだ! いや、既にその女を手助けしている以上、余計に罪が重なるぜ! そして俺たちの面子にかけても奴隷を逃がすことなんて絶対にありえねえ! 騎士団だけじゃなく俺らの仲間や、賞金稼ぎたちが挙ってテメエらの首を獲りに来るんだぜ! その覚悟はあるのかよ!」

 

 

その言葉にサラは苦虫を潰したような顔になる。

トサカの言葉、それは脅しではない。

奴隷が法的に認められている以上、逃げ出すことも犯罪になるのだ。

つまり逃げる場所など最初からどこにもないのである。

しかしそんなものは今更だった。

シモンは振り返りながら後を追いかけるトサカに叫ぶ。

 

 

「だから・・・・サラを渡せってのか? ふざけんなよ、サラが可愛いとかそんな理由で奴隷になんかさせるかよっ! 同じ人間を奴隷にしようとは、捻じ曲がった野郎だぜ!」

 

「あっ? 何言ってんだテメエ?」

 

「あっ・・・・(やべえ、勘違いしたままだ・・・)」

 

「トサカの兄貴、そうなんですかい?」

 

「んなことあるかあ!」

 

 

勘違い状態のシモンには何を言っても無駄だった。

まさか自らの借金が原因とは知らずに、女のために逆らった。

 

 

「ああ~~、とにかく! ふざけた理由だろうとイカサマだろうと、ぼったくりだろうと、テメエらは既に奴隷なんだよ! 俺らの所有物なんだよ!」

 

「て、テメエ! サラだけじゃなくて俺も奴隷にするつもりなのか!? この変態野郎! 誰がテメエの物なんかになるかよ!」

 

「なんだテメエ!? なんだそのキモイ言い方は!? つうかさっきから何言ってやがんだよ!?」

 

「ああ~・・・シモン・・・(勘違いしたままだけど・・・・いっか・・・・)」

 

 

シモンの誤った解釈は、少し会話が通じないところがあったが、根本的なところは分かった。

シモンは抗うということだ。

そんなシモンの行動にトサカは気に食わなかった。

 

 

「けっ、あくまで逆らうってか? バカなやつらだぜ! 逃げ場もねえ、従うしかねえ、地べたを這いずり回って金を稼ぐ以外に自由になる方法はねえ、それが奴隷だ! それがこの世界の法律であり常識なん・・・・」

 

「それがどうしたって言うんだよ!」

 

「!?」

 

 

シモンの言葉にトサカや子分、そしてサラだけでなく、街中でこの追いかけっこを見ている街の人達も一斉に注目した。

 

 

「自由が無いだって? 何寝ぼけたこと言ってやがる! この世には・・・壁も天井も無いんだぞ!!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

その言葉は、この場に居た全ての者に響いた。

逃げ回る男のその言葉は、たしかに魔法世界の者達の中に何かを残した。

 

「シモン・・・・お前・・・・」

 

シモンはサラの嘘を信じたままのため、現状を勘違いしている。

だからトサカとの言い合いでかみ合わないところがあるのは仕方ない。

しかし、その言葉はシモンという男から大きく、そして強い意思のようなものを感じた。

そしてその言葉に何かを感じたものはもう一人居た。

 

「テメエ・・・・壁も・・・・天井もねえだと?」

 

トサカは今のシモンの言葉が強烈に響いた。

そしてその響きは沸々とトサカの心からどうしようもない怒りが込み上げてきた。

 

 

(じゃあ・・・じゃあ・・・・俺や・・・俺や兄貴や・・・・ママの18年間は・・・・あの地べたを這いずり回った日々は・・・・)

 

 

その瞬間トサカの動きが加速した。

 

建物の屋根から屋根へと移り渡り、宙に浮かぶシモンに飛び掛かった。

 

 

「あの日々は、何だったって言うんだよォーーッ!!!」

 

「!?」

 

「シモン!?」

 

「「「トサカの兄貴!?」」」

 

 

飛び掛かったトサカの蹴りを、シモンは寸前で交わした。

だが、トサカは地面に着地した瞬間、腰元から短剣を取り出し、再びシモンへ向かっていく。

 


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