魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第127話 自由を求めて

確実に大きく流れ出した魔法世界。

 

そのキッカケを作ったとも言える男は再び立ち上がった。

 

 

「気分はどうなんだよ?」

 

「ああ、・・・まだ結構体が重く感じるけど動けなくはない。心配かけたみたいで悪かったな、サラ、ブータ」

 

 

目覚めたシモンにうれしそうにすり寄るブータ、そして最悪の事態を回避できたことに安堵の表情を浮かべるサラ。

サラが目を覚ました時には既にシモンは起きていた。

体中に痛々しく包帯が巻かれているが、それでもその表情は決して悪くはなかった。それがサラにはうれしかった。

 

「へへ、とにかく死んでなければ安心だ。あんまり無茶すんなよな」

「ああ、今度からは気をつけるよ。俺も死ぬのも痛い思いをするのも嫌だしな」

「そうだよ。お前はケータロみたいに不死身じゃないんだからさ♪」

「ケータロ?」

「ん? ああ、こっちの話だから気にすんな」

 

万全とはいえないが、体を起こし動くことは出来そうである。昨日まで死に掛けだったと考えれば、十分すぎるほどの回復である。

 

「まあ、でも目が覚めてくれて安心だ。その様子なら・・・・特に何か問題があるってわけでも無さそうだな」

「ああ、お前の看病のお陰だ。ありがとな」

「うっ、・・・・・へんッ、何笑ってるんだよバーカ!」

「バ、バカ! 蹴るな!?」

「ふっ、ふんだ! シモンのクセにかっこつけるからだよ~。・・・・・・ちょっとかっこよかったけど・・・・」

「ん?」

「な、何でもねーよ。無事で良かったなって言ったんだよ!」

 

シモンの素直な感謝の気持ちにサラは顔を赤くしてソッポを向いて素直に受け取れなかった。

だが、それでも気持ちはうれしく、僅かにシモンに見えないようにサラの口に笑みが浮かんでいた。

そしてサラはもう一度シモンの様子を一通り見る。

体は少し重そうではあるが、意識はハッキリしている。あれほどの死闘の末のあとにも関わらず、何か重大な問題があるようには素人の目から見てもあるとは思えなかった。

これもサラの看病の他にも、この世界の医療技術と買い取った薬の質の高さが伺える。

だからこそサラも安心し、まだ万全ではないシモンにいきなりだが本題を告げる。

 

「まあでも・・・・・なあ、・・・その・・・・さっそくでワリーけど・・・」

「何だ?」

「無茶すんなって言った傍から悪いけど、さっそく少し無理にでも動いてもらうぜ」

「えっ?」

「・・・・・・・・・・逃げるぞ」

「?」

 

あまりにも急すぎる言葉にシモンの頭はついていかなかった。思わず首を傾げてしまうが、サラはいたって真面目だった。

 

「逃げる?」

「そっ。お前も心配いらないみたいだし、さっさとこっから逃げんぞ」

 

それだけを言ってサラは黙々と自分の荷物をカバンに詰め込み始め、旅立つ準備を始めている。

そしてシモンのコートとゴーグルをシモンに投げつけ、準備を着々と進めだした。

しかし急すぎる展開にシモンはどうすればいいか分からず、準備を進めるサラの手を無理やり止めた。

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれよ。逃げるって何でだよ。ここに何かあるのか?」

「ああ~~、ここに・・・うう~~ん、まあ、あるんだよな~。法律というか・・・借金というか・・・・」

「・・・・・・・・・・・・借金?」

 

借りた覚えも貸した覚えもシモンにはなかった。

するとサラは少し言いづらそうな引きつった笑みを浮かべながら口を開く。

 

「ああ~~、その~~、・・・お前の~・・・・・」

「ん?」

「だから~、・・・・その・・・なあ・・・・」

 

まさかシモンが寝ている間に止むを得なかったとはいえ奴隷契約をしてしまったということをどうやって伝えようかと悩むサラだったが時間の余裕は無かった。

自分たちが首輪を嵌められるまでの監視役の男が、近づいてきたのである。

 

「おい、もう起きてんだろ? さっそくだが首輪を嵌めてもらうぜ!」

 

扉の外からトサカの声がした。

 

「なっ!? あの野郎もう来やがったのかよ~」

「・・・・・・・・・・・・・・・首輪?」

 

状況を把握できないシモン、そして舌打ちをするサラ。だがシモンにゆっくり説明している暇は無い。

あきらめたサラは頭を掻き毟りながら、開き直るしかなかった。

 

「だああ、細かいこと気にするなよな~! とにかく逃げるぞ! 充電完了、来いメカタマ31号!!」

「お、おいおいおい!?」

 

説明することが出来ないサラは答えを有耶無耶にしたまま、リモコンのスイッチを押した。

すると部屋の壁が壊れ、外からメカタマが顔を出した。

そしてサラはそのまま荷物を抱えて、シモンの腕を掴み取り、無理やりメカタマの甲羅の上に登る。

本来なら色々と計画を立てて逃げようと思っていたが、借金をして奴隷になるということをシモンに説明できず、言葉に詰まったサラは開き直った。

 

 

「へへ~ん、そんじゃあいくぞ~シモン! 乗れ! 若者は自由を目指すんだぞーーッ!!」

 

「お、おおーいッ、サラ!?」

 

「行けえーーーッ!」

 

 

急展開過ぎてシモンは頭が追いつかず、されるがままだった。

壊した壁の向こうに広がるグラニクスの街並み。

そこはシモンが知らない世界である。

その街並みを駆け出そうと、サラがメカタマを動かそうとした瞬間、部屋の扉が開いた。

 

「おい! 一体何の音・・・・ぶほッ!?」

 

入ってきたのはトサカだった。

メカタマが部屋の壁を壊した音は外まで聞こえ、慌てて扉を開けたのだろうが、トサカが扉を開いた瞬間、頭上から土器がトサカの頭に落ちてきた。

 

「ぐおお、痛てえええッ!?」

「お、おい!? 誰だ? それに何だ!?」

「へへ~ん、見たか! 昨日の仕返しだい! 」

 

頭を強打したトサカが部屋の中でうずくまると、サラがガッツポーズをしてトサカを見下ろした。

どうやら部屋の扉にサラが罠を仕掛けておいたようだ。

そしてサラはそのままメカタマを起動させ、人が行き交うグラニクスの街並みへ飛び出した。

 

「おいおいおいーーッ!?」

 

シモンが少し情けない声を出すがサラは気にしない。サラはその巨体なメカをまるで手なずけた猛獣のように自由自在に操作して、街を駆け巡る。

突如現れた謎の物体と甲羅に乗った二人の男女の姿に当然街中が注目を集めている。

メカタマを避けたり、振り返ったりと街中が少し騒がしくなる。

 

 

「さあ、行っくぞォーーーっ! この街を飛び出したら自由がある! 奴隷なんかに、なってたまっかよーーーッ!!」

 

「サラーッ!? 頼むから状況を教えてくれよーーッ!?」

 

「気にすんな! 逃げ切ったら教えてやんよ!」

 

 

メカタマに乗り二人は街の外へと目指し突き進む。状況が理解できないシモンだが、少しこの状況に何かを感じ取った。

 

 

(あれ・・・・なんか・・・これと似たようなことがどこかで・・・・)

 

 

それは不意に思ったことだった。

今のこの無理やりの脱走劇を、以前にもどこかで経験したような気がした。

その時もメカタマぐらい大きな動物の群れの背に跨って、自分とそしてもう一人と共に何かを目指して突き進んでいたことがある。

 

 

(そうだ・・・そして・・・今のサラみたいな言葉を聞いたんだ・・・若者は・・・若者は・・・地上を・・・・・)

 

 

シモンは覚えていないがブータは覚えている。

地上の存在を信じ続けたカミナが、シモンを無理やり同行させてブタモグラの背に跨り地上を目指したときがある。

たしかあの時もこの様に注目を集めていた気がした。

どこか懐かしい気分になったシモンとブータ。

だが、似たような状況は仮定だけではない。結果も似ていた。

かつて地下から脱走しようとしたカミナとシモンだが、最後の最後で村長に邪魔された。

そして今回も最後の最後に立ちはだかれた。

 

 

「なにやってんだいアンタたち!!」

 

 

立ちはだかるのはメイド服の巨大な獣人。

それは奴隷長だった。

 

 

「どけーーーッ、着ぐるみ!!」

 

 

サラが叫ぶがその言葉にカチンと来た奴隷長は目がキラリと光り、拳を振り上げる。

 

 

「生意気な小娘だね! 元拳闘士を舐めんじゃないよ!!」

 

「だから、状況を教えてくれよーーーーーッ!?」

 

 

勇ましく叫ぶサラ。しかし二つの影が重なった瞬間、街中に鈍い拳骨の音が二発響き渡った。

 

 

「「ぐほおッ!?」」

 

 

魔法世界は侮りがたし。

メイドもまた現実世界の常人を遥かに超えた力を持っていた。

サラとシモンはデカイたんこぶが頭にでき、そのままメカタマの甲羅の上から放り出されてしまった。

地上に叩きつけられるサラとシモン。

二人を見下ろしながら奴隷長の女は両手を腰において、仁王立ちした。

 

 

「まったく、最近の新入りは立場も弁えないのかい?」

 

 

見下ろされる二人は体を痙攣させながら殴られた頭を抑えていた。

 

 

「いって~~~~・・・・もう少しだったのに・・・・・・・・・」

 

「だ・・・・だから状況を・・・・・・」

 

 

結局最後までシモンは何が何だか分からなかった。

 

 

「へっ、でもこんなんで、まいったなんて言わないからな~~」

 

 

だが、これしきのことでへこたれるサラではない。

サラは痛い頭を抑えながら即座に立ち上がり、服の中から取り出した何かを地面に投げつけた。

 

「煙幕弾!!」

「ちょっ、また逃げる気かい!?」

 

 

サラが投げた煙幕弾が煙を上げて視界が遮られる。

そしてサラはメカタマの甲羅に乗り、シモンのコートの襟元を掴み、再びメカタマを発進させる。

 

 

「おい、ママ!? 新入りはどこだよ!?」

 

 

煙を掻き分けて咳き込む奴隷長。するとサラの罠に掛かっていたトサカがようやく追いついた。

 

 

「トサカ、あいつら逃げ出したよ! 何やってんだい、まったく。さっさと追いかけな!!」

 

「ちっ、アイツら舐めたマネしやがって・・・・・。拳闘士のネットワーク使って、街を包囲してやる! 絶対に逃がさねえぜ!」

 

 

トサカは直ぐにメカタマを追いかけ、街中の仲間たちに手助けを要求する。

その言葉を聞いたトサカの仲間のチンピラたちが挙って街の中心部を目指し始めた。

 


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