魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第121話 ドリル

 

 

「フルドリライズ!!」

 

 

思い出したわけではない。しかし何の迷いも無くシモンは体に覆った螺旋力から無数のドリルを伸ばした。

そしてフルドリライズ形態のドリルの一本一本が高速回転し、天に向かって風を起こし、シモンの周りに人工的な竜巻を作り上げラカンの剣を弾いていく。

 

「ほう、でもまあ単なる風だな」

 

しかしラカンは大して驚かずに上空高くに飛び上がる。

 

「そんな薄っぺらの風じゃあ、これで芥子粒だぜ?」

 

ラカンの右腕に光が集っていく。その光はやがてビル一棟分に匹敵するほどの超怒涛級の巨大な剣へと変わった。

 

「あっ、あんなの喰らったら粒すら残んねえよッ!? 逃げろシモーーーン!?」

 

サラの声が竜巻の中に居るシモンにも聞こえた。たしかにシャレにならないほどのピンチだろう。

しかし先ほどまでのような震えは湧き上がらない。

 

 

「たしかにデカイな。俺にここまでデカイ影を落とした奴は・・・・・・・・・結構いたような気がするけど・・・・・、少なくとも記憶喪失になってからは初めてだ!!」

 

 

震えの代わりに笑みが込み上げる。

 

 

「斬艦剣!!!!」

 

 

振り下ろされたラカンの剣は、シモンの竜巻をペシャンコに潰し、大地を真っ二つに割るほど深々と突き刺さった。

 

「・・・・死んだか? いや、・・・・そんな感じはしねえな」

 

粉塵が巻き上がり視界が閉ざされる。

故にシモンの生死は分からないが、ラカンは生きている事を確信した。

その証拠に、徐々に自分の地面の下からドリルの音が聞こえてきた。

 

 

「ほう、既に地中を移動してやがったのか? 風起こしたり地面掘ったり、意外と便利だな」

 

 

そしてドリルの刃先が地中から飛び出し、シモンごと真下からラカンへ飛び込む。

 

(入った!)

 

ラカンの攻撃を穴を掘って地中に逃れて回避したシモンはそのままラカンの真下へ移動し、反撃する。

そしてシモンは直撃を確信する。

だが、

 

 

「ふん、気合防御!!!」

 

 

適当に唸って両手足を大きく広げて溜め込んだ気をラカンは一気に解き放つ。するとシモンのドリルの刃先は、ラカンの体の前にある見えない気の膜に弾かれた。

舌打ちするシモン。しかし攻撃は終わらない。

シモンは弾かれた反動を利用し、後方へ飛ぶ。

そして大地にドリルを突き刺し、螺旋力をあたり一面に流す。

そしてシモンの螺旋力を受けた大地から、無数のドリルがラカン目掛けて突き出した。

 

 

「スパイラルガーデン!!!」

 

 

体が次から次へと自然に動いた。体中に流れる螺旋力の扱い方もスムーズに出来た。

たとえ螺旋力という名を覚えていなくても、気合と呼べば問題は無い。己の力に驚くことも疑うこともせずにシモンは戦う。

 

 

「うぬぬぬぬぬぬぬ、ぐおおおおおおおお、ぬぐぐぐぐぐぐ!!!」

 

 

するとラカンはクネクネと奇怪な動きを見せながら唸り始める。唸りと共に空気と場が激しく揺れ、そして練った気と両手足を大の字に広げて一気に解き放つ。

 

 

「必技・気合ドリル破り!!!(今命名)」

 

 

ただ溜めた気を放出しただけである。

しかしそれだけで大地から突き出した無数のドリル全てが砕け散った。

 

 

「おっ、テキトーにやったが、気合でどうにかなったな」

 

 

何事も無いように笑うラカン。

しかし今のシモンは一々驚かない。

ドリルが砕け散った瞬間、背中にブースターを装着し、いつの間にか手に握られているドリルではなくブーメランを巨大化させて、ラカンに立ち向かう。

火を噴いたブースターのスピードをプラスして、シモンはブーメランを剣のように勢いよく振りかぶる。

ラカンも剣を片手に真っ向から迎え撃つ。

 

 

「男の魂炸裂斬り!!!」

 

「軽いぜ、兄ちゃんよ!!!」

 

 

二つの刃のぶつかり合いが、巨大な衝撃波を生み出した。それはシモンが渾身の力を込めた証明でもあった。

しかしその争いを制したのはラカンである。

単純な力のぶつかり合いではこの男には敵わない。

 

 

「甘えぜ。真っ向勝負で俺に勝てると思ったか?」

 

 

シモンが両手持ちで振りかぶった一撃も、ラカンの片手持ちで受け止めた剣に軽々と上空へ弾き飛ばされた。

そしてラカンは再びアーティファクトの能力で幾多の剣を作り出し、数十に及ぶ大剣を空に飛ばされたシモンに投げつける。

 

 

「秘剣・ラカン豪雨剣!! (今命名)」

 

 

隙間無く無数の剣が刃を向けてシモンに投擲される。食らえば串刺し程度では済まないだろう。

だが、そうはならない。

なぜならシモンの足掻きは終わっていないからである。

 

 

「俺は勝てると思っている!!」

 

 

弾き飛ばされるシモン。

しかしシモンは上空に弾き飛ばされながらも空中で無理やり体制を整えて、背中のブースターとサングラスを重ね合わせて投げつける。

 

 

「ダブルブーメラン・スパイラル!!」

 

「おっ!?」

 

 

背中のブースターと重ね合わせて投擲されたブーメランは火を噴き、激しく加速していく。

ブーメランから出る螺旋エネルギーの渦により、手元を離れてもシモンは自在に操ることが出来る。

そして加速したブーメランは、ラカンの投擲した剣の雨全てを縦横無尽に激しく駆け回り砕いていった。

 

 

「ほう、やるじゃねえか! まだまだ芸は残っているってか?」

 

 

シモンの未だ尽きぬ技の数に、とうとうラカンは面白そうに口元に笑みを浮かべた。

しかし、それはまだバトルマニアゆえの戦闘を楽しむ笑みなどではない。

シモンの強さを認めて笑ったわけではない。

強い者など百戦錬磨のラカンはいくらでも見てきた。だから戦闘能力の強い弱いで相手を認めることは滅多に無い。

自分と同等に戦えるものぐらいにしか、ぶつかり合いでは楽しみを覚えない。

ならば何故今笑うのか?

答えは簡単だった。

 

(こいつのレベルは俺様に比べれば、かなり格下だと思ったんだが判別しづれえ・・・・・だが・・・・・・気合は俺並かもな!)

 

百戦錬磨の自分でも予期できない未知なる力と、決して足掻くことを止めないシモンの気合を認めたからだった。

 

 

「だが、気合じゃ負けねえぜ!!」

 

 

ラカンは両手を前に突き出した。

目の前にはラカンの剣を全て砕いたブーメランが迫ってきている。

しかしラカンは・・・

 

 

「ぬおおおおおおおおおお!! 気合白刃取り!!! (今・命名)」

 

 

ダブルブーメランを正面から掴んでしまった。

勿論シモンの放ったダブルブーメランの威力は通常のブーメランよりも格段に速さも破壊力も増している。

流石のラカンも掴み取った後は威力に押されて少しだけ両足が地面にめり込んだ。

だがそれだけだった。

やがて威力を無くしてブースターの火も消えたダブルブーメランはラカンの手の中で、大人しくなってしまった。

 

 

「残念! いい線行ってたが惜しかったな。んで? 次は何を見せ・・・・・!?」

 

 

空中からブースターと共にブーメランを投げたシモンは、当然そのまま地に降り立つしかなかった。

しかし只では降りなかった。

ラカンがシモンに次の技を要求するまでも無く、シモンは右手にあるドリルを大地に向けて振り下ろす。

狙うはラカンの技や戦いで亀裂が走って脆くなった大地。

 

 

「感謝するぜ、筋肉野郎!」

 

「テ、テメエ!?」

 

「ドリルが一回転するたびに、俺は何かを思い出せそうだぜ!!」

 

 

記憶を忘れても、土の声はシモンには聞こえていた。

 

 

「トロイデルバースト!!!」

 

 

広い荒野の大地に巨大な地割れが発生した。

亀裂は綺麗にラカンの立っている場所を包み込むように円を描いて砕け散る。

 

 

「ちっ、面白いことしやがって!」

 

 

ラカンはその場から上空へ飛び退いた。それは思わずラカンが初めて取った回避行動だった。

そしてラカンが先ほどまで居た場所は、円形に亀裂を走らせて崩壊して大きな穴を開けた。

 

 

「思わず避けちまったじゃねえか! ちっとばかしプライドに傷ついたぜ」

 

 

地割れに飲み込まれないように自然と回避してしまったラカンだが、たったそれだけのことでも自分では驚いていた。

初めて会ったときは、まったくの興味が見出せず、向かってきたときは震えていただけだと思っていた男が、今ラカンに僅かでも警戒心を与えてしまったのである。 

それは予想外のことだった。

だが、これで最後ではない。

 

 

「ぶい~~」

 

 

サラの肩の上でこの戦いを見守っているブータには一つの予感があった。

たとえ記憶を思い出せなくとも、ドリルも技も、大地の声も聞けるようになった。しかもその一つ一つが鮮やかで、学園祭の時よりもキレがあるように見えた。

忘れたものがあっても、想いが変わっていないのであれば、突き進む進化の力はとどまることは無い。

だからそんなシモンが最後に飾るのはきっとあの技だろうとブータは予感していた。

 

 

「必殺!!!」

 

 

するとシモンの叫びが聞こえた。

 

 

「あん?」

 

「シモン!?」

 

 

宙に飛んだラカンも、離れて見守るサラも、シモンに注目する。

 

 

(感じ取るんだ・・・・このドリルは何のためにある!!)

 

 

シモンが右手に持った螺旋槍を天に掲げる。

 

 

(こうするためにあるんだろうが!!)

 

 

すると先端のドリルがどんどん大きさを増し、ラカンの何倍もある巨大なドリルとなった。

 

 

(こ、こいつ!?)

 

 

巨大化したドリルにラカンも目を見開いた。

このドリルが次の瞬間どんな行動を起こすのかは簡単に予測できる。しかしシモンのことを理解することは出来なかった。

 

 

(こいつ、マジで何者だ? こいつの力は大道芸にしちゃあ、強力だ。芸の枠組みを明らかに超えてやがる・・・いや、この戦いで超えたのか?)

 

 

さすがに予想外の連続過ぎてラカンの笑いも気づけば止まっていた。だが直ぐにニヤリと笑みを浮かべなおす。

 

 

「まっ、考えても分かんねーから別にいいか!」

 

 

今はとにかく目の前のシモンを見ることにした。

巨大になったシモンのドリル。それが回転を始めてシモンはドリルごとラカンへ向けて突っ込んだ。

 

 

 

「ギガドリルブレイク!!」

 


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