魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
『まて・・・・刹那・・・俺には・・・俺にはアイツが・・・はむっ・・・せっ、刹那!?』
『ん、ちゅっ・・・はむっ、・・・じっと・・・していてください・・・」
私は彼の唇を塞ぎ、口内へ己の舌を侵入させ、蹂躙していく。
『ななな、何を・・・』
息も荒く激しく動揺する彼に対して、私は妖艶の笑みを浮かべて押し倒した彼の唇に人差し指を当てる
『ふふ、この唇が・・・この口から出る言葉が私を喜ばせ・・・私の想いを断った・・・なんて憎たらしい・・・だから・・・・はむっ』
『うっ、はあ・・・せ、刹那・・・』
『そんなイケナイ唇にはお仕置きするんです♪』
息継ぎの暇も入れぬほど私は彼の唇に吸い付いた。
呼吸が出来ずに苦しむ彼。
しかし私は構わずに彼との距離をゼロ以上に縮めようと、彼の頭に回した両腕に力を入れる。
『れろ・・・あむ、・・・負けません、私だって・・・誰にも負けないぐらいアナタが好きなんですから・・・・』
そして私の手はなぞる様に彼の体を這わせ・・・・彼の・・・・
『シモンさん・・・・がっ・・・合体してくだ・・・・』
~10分後
休むことなく動いていた刹那の手に握られていたペンの動きが止まった。
そして・・・・
「・・・・う・・・う・・・・うわああああああああ!! だから何故こうなるのだーーー!? 合体ではなくただの変態ではないかーーー!? ししし、しかも、しし、進化してしまった!? あんな小説を読んだばかりに・・・・」
机を真っ二つに叩き割り、刹那は再び部屋中興奮しながら駆け回った。
「ぬぬぬぬ~~~、だああああ!? いかん、いかんぞ! もうすぐ魔法世界だというのに、この状態のままではお嬢様を守どころの話ではない!? うう・・・~~ッ、全てあの人所為だ・・・」
千雨の指摘したとおり、まったく危機感が無いこの状況を打破できないことこそ、正に最大の危機だった。
「うううう~~~~、煩悩退散!! 素振り一万回だーーーッ!!」
しかしどうにか頭の中から妙な考えを追い払おうと、刹那は昼間修行したというのに、木刀を抱えてすぐさま外へと駆け出した。
自作の妄想小説を出しっぱなしにしていることをすっかり忘れて・・・・・
「ん? なんだいこれは? 机の上に出しっぱなしにして・・・」
当然ルームメイトの龍宮は直ぐに気づき、何気なくその禁断のノートを捲ってしまった。
「・・・なんだ? ふむ、・・・え~・・・馬乗りになる私が告げる・・・・シモンさん天を突くアナタのドリルで私を突い・・・って・・・えっ!?」
とてもじゃないが声に出して読むことは出来なかった。
「お、・・・おお・・・これは・・・まさか刹那が・・・ドリルが刹那を・・・ダダ、ダメだ、・・・これ以上は口に出して読めん!」
しかし一応全部読んだ・・・・
全てを読み終わったあとの龍宮の体は少し火照てり、その年齢からは想像も出来ない大人びた顔に、少女のように頬を染めたギャップに色気が溢れ出ていた。
「ふっ・・・シモンさん・・・・刹那が壊れてしまったよ・・・早く帰ってこないと、刹那の奴は小説家になってしまうよ? しかも年齢制限アリの・・・」
しかし龍宮の呟きも虚しく、シモンが帰ってくるはずは無い。
果たしてこの妄想が現実になるかどうかは、再会した時の刹那しだいである。
そんな身の毛も立つような女の想いをまったく知らず、この男は全てを忘れて新たなる世界で生きていた。
「これが・・・・俺の・・・コート・・・・」
「ぶい~~」
「スゴイ・・・・かっこいいじゃないか!!」
新品同様の皺一つ無いグレン団のマークの描かれているコートを広げてシモンは目を輝かせた。
事故の合った日にシモンの血がこびり付いたということで、学園の人が洗ってくれ、三日目の夜に初めてシモンの手元に届いた。
「大変だったんですよ。まったくの新品同様のコートだったので、なんとか血を残さないようにしていたら時間がかかってしまって・・・」
「いいって。ありがとう。うわあ・・・・本当にかっこいいや・・・」
受け取った物は、自分の心を大きく刺激するほどのものだった。見覚えのある炎のドクロのマークが、シモンの目に焼きついた。
「あっ、そういえばこれがコートの内ポケットに入っていたのですが・・・・」
シモンが目を輝かせていると学園の侍女の女性は思い出したかのようにもう一つのものをシモンに渡す。
「えっ!?」
それは一枚の写真が入った写真立てだった。
「これ、シモンさんですよね。一緒に写っている人・・・恋人ですか? 綺麗な人ですね」
コートを洗おうとした時に、侍女の女性は内ポケットに入っている写真に気づき取り出しておいたようだ。
「あっ・・・・・・・
「ブミュウ!?」
そしてその写真こそ、出発前にココ爺から貰ったニアと一緒に写っている写真だった。
「これ、ひょっとしてシモンさんの記憶の手がかりに・・・・・・、シモンさん?」
「・・・・・・・・・・・・・」
「シモンさん!?」
「・・・・・・・・・えっ?」
手渡された写真を見て呆然とするシモン。
写っているのは間違いなく自分。そして、その隣に居る自分の腕にしがみ付いた女。
その写真を見た瞬間、見覚えがあるどころではないほどの衝撃が全身に駆け巡った。
胸を襲う切なさが、シモンから離れなかった。
「あ、・・・その・・・俺、エミリィと文字の勉強する約束があるから!!」
「あっ、ちょっ、シモンさ・・・・・・行っちゃった・・・・」
今の自分の顔を誰にも見せたくなかった。
きっともの凄く情けない顔をしているだろうと自分自身でも理解できた。それほどまでシモンの心は動揺していた。
居ても立っても居られずに部屋から外へ飛び出した。
そしてエミリィの部屋ではなく外へと走り出したシモンは、息を荒くしながら誰も人がまわりに居ないのを見計らって、もう一度写真を見る。
「・・・・はあ、はあ、はあ、・・・・・・・・この子は・・・・この子は・・・・」
全力で駆け出したために息も荒い。しかも呼吸は整うどころかむしろ余計に荒くなっている。
まるで心臓を鷲摑みにされたような衝撃だった。
「お前は・・・・この子を知っているのか?」
「ブム・・・・」
シモンは肩に乗っているブータに尋ねると、ブータは少し寂しそうな声で即答した。
隣に写っている女は知っているどころのレベルではない。
しかしそれをどう説明すればいいのかは分からない。
探すことも出来ない。
何故なら現実世界も魔法世界どころか次元を超えた世界も全銀河を見渡しても、彼女は既にこの世に居ないのだ。
それをブータが説明できるはずも無い。
「そうか・・・・この子・・・・俺にとってすごい大切な子なんだな・・・」
しかしシモンもブータが頷いただけで、隣に写る女がどれほど自分にとって大切なのかを理解できた。
しかし胸を襲う切なさの理由は分からない。
分からないが只、写真をとても愛おしそうに両腕で包み込み、シモンは胸の中で抱きしめた。
そしてその時だった。
「へへ、潜入成功♪」
「!?」
まったく聞き覚えの無い声が学園の中庭に降り立った。
(誰だ?)
シモンが慌てて建物の影に隠れて声の主を見る。
声の主は女で、恐らくコレットたちとそれほど変わらない年齢だろう。
色々と大荷物を抱えて、まるでどこかの探検家のような帽子と布切れのようなマントを身に纏い、サバイバルか冒険をするかのような姿である。
「ふう~~しかし密入国ってのもキツイよな~。おかけで賞金稼ぎが邪魔して来たり、ここの警備もヤバイし一苦労だったぞ~」
中庭に降り立った少女はヤレヤレといった感じでぼやいている。しかし今の話で聞き逃せないところがあった。
(密入国? 賞金稼ぎ? どういうことだ? あの子、何者だ?)
気配を殺しながら不法侵入した少女を見つめるシモン。
そして少女は辺りをキョロキョロ見渡した。
「さってと、さっさと用事を片付けて私も二人に合流しないとな~。まったく、つまんね~用事ばっかおしつけやがって。後で覚えてろよな~~」
粗野な言葉遣いで少女はそう言って隠れるように学園の建物の中へと進んでいく。
その様子を一部始終見ていたシモンも少女の後を追った。
受け取ったコートに袖を通して、写真を胸ポケットの中に入れ、少女に感づかれないように気配を殺した。
そしてこの日を最後に、シモンとブータは学園から・・・・いや、
この日を最後にシモンとブータはアリアドネーから姿を消した。