魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第113話 一方その頃のポンコツ剣士

 

あれから一体どれほどの月日が経ったのだろう。

 

だが、それを数えようとは思わない。

 

大切なのはむしろこれからだからである。

 

大勢の人が賑わう教会、それはあの人のこの世界での家だった。

 

当時幼かった友も、彼の家族も大人になり、実に頼もしい顔つきをしている。

 

 

『兄貴のことを頼んだよ!』

 

『お願イ・・・ひっく・・・ひっく・・・』

 

『ほら、ココネ、寂しいのは分かるけど泣かないの』

 

 

力強く私の肩を叩くのは彼の妹だった。血の繋がりは無いが、魂の絆で結ばれた兄の幸せを祈り、私たちに彼を託す。

 

そして彼女たちは今日から私たちの義妹になる。

 

義妹の頼みにコクリと頷く私。すると背後から、彼のもう一人の家族と、彼の初恋の人がいた。

 

 

『私たちの家族を・・・幸せにしてあげてください』

 

 

シスター服に身を包んだ女性が自分たちに告げる。

普通は男に対して言うセリフなのだが、自分たちはニッコリと笑い頷いた。

それを笑いながらもう一人の女性が話しかけてくる。

 

『アイツに泣かされたら、いつでも言いなさい! 私がアイツに指導してあげるから♪』

 

そう言って、彼とこの宇宙でもっとも親しい女性は、私たちを祝福してくれた。

この人に認められたことが何よりもうれしくて涙が出そうになった。

 

 

『も~、今泣いたらアカンよ』

 

 

すると私の隣にいる方はハニカミながら私の涙を拭いてくれる。

 

 

『ほな、いこ!』

 

 

そう言って彼女は私の手を引いてくれ、私たちは彼の待つ場所へと向かう。

異質な光景かもしれない。

なぜなら純白のウエディングドレスを身に纏う女性が二人いるからである。

しかしそれをおかしいと思う人はこの場にいない。

私もまた気にせずあの人のいる場所へと向かう。

祭壇の上に待つあの人の場所へと私たちは向かい、彼が振り返った。

白いタキシード姿に身を包み、ゆっくりと私たちに近づいてくる。

 

『あの・・・その・・・私・・・』

 

ダメだ、やはり涙が出そうになる。

すると私の隣にいて、さっき私の涙を拭いてくれた方も涙が溢れている。

無理も無い。

今日この日を迎えるために彼女はずっと想いをあきらめなかったのである。

だから今度は私のほうから彼女の涙を拭ってあげた。

そう、今日は涙より笑顔で迎えるべきだからである。

そして私が涙を拭ってあげると、彼が私の涙を拭ってくれた。

二人が泣いても、残りの一人が涙をふき取る。

悲しみがあれば三人で分け合う、何ともすばらしいことだろう。

このめぐり合わせに私は神に感謝した。

 

 

そして彼は私たちを見て微笑みながら呟く・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そして彼は微笑みながら呟く、愛している・・・・・・・私たちは今出来る一番の笑顔で彼に向かって微笑みかけ・・・・」

 

そこで手が止まった。

夏休みの朝、女子寮の一室で、桜咲刹那は机の上に広げられたノートになにやらずっと何かを書いているようだった。

書いている最中は、目が血走るほどの集中力。

幸いなことに、ルームメイトは用事のために部屋を空けているために今は刹那一人しかいない。

 

「あっ・・・うっ・・・あ・・・」

 

そして手が止まった瞬間、刹那の肩が大きく震えだした。

そしてガクガクと震えながら握っていたシャーペンをへし折ってしまった。

そして次の瞬間。

 

 

「だぁーーーーーーっ!? 何書いているのだ、私はーーーーーーーっ!!」

 

 

まるで巨○の星の某父親のごとく、勢いよく机をひっくり返す刹那。

そして顔を真っ赤にしながら部屋中を頭を抱えながら走り出した。

 

 

「なな、夏休みの宿題のつもりが・・・・気づいたら延々と妄想小説を・・・」

 

 

そう、刹那の妄想でした。

 

「どうしたんだ私は~~~! しかもなんてハレンチな! これではただのダメ人間ではないか~~~~!?」

 

マジメで堅物なはずの刹那に一体何があったのか? 

 

「こここ、恋をした神鳴流剣士が妄想に走ったことがあるとは聞いていたが、ま、まさか私まで・・・」

 

仮定は分からないが、原因は一つしかなかった。

 

「う~、やはりお嬢様があんなことを・・・ささささ、宰相同衾などと言うから・・・」

 

とんでもない提案に、しかも自分が頷いてしまったことにより、親友との恋のわだかまりがあっさりと解消してしまった刹那は、微妙に壊れてしまった。

 

「くっ、・・・なんと浅ましい、本当に私の好意度は五位なのか? 最近ずっとあの方のことばかりを・・・・・・。お嬢様を含めて上位ランキング者は私よりもあの方のことを思っているというのか?」

 

自身を叱咤し、前を向こうとする刹那だが、それでも今の彼女の心はそう簡単には行かなかった。

 

「はあ、・・・シモンさん・・・いつ帰ってくるんですか? 夏休みが終わった頃でしょうか・・・。・・・・・・一緒に・・・・魔法世界行きたかったな・・・」

 

静かになった途端に不意に声が漏れてしまった。

慌てて口を押さえるが、幸いにも刹那の呟きは誰も聞いていない。

少しホッとするが、また頭を激しく横に振り、自身を落ち着けようとする。

 

「イカンイカン! ネギ先生だけではない、アスナさんもお嬢様も、魔法世界行きへ向けてがんばっているというのに・・・他の皆さんだって自分に出来ることをしようとしているのに・・・私だけ・・・」

 

木乃香とのシモンを巡るわだかまりは解消した・・・とはいえないが、気まずい雰囲気は現在無い。むしろこの間公開されたシモンへの好意度ランキングの結果を知ってから、より一層力を合わせると誓ったほどである。

だがそうなると、わずかな寂しさだけが胸に残った。

皆と一緒に居ればなんとも無いはずが、一人になるとポッカリ穴が空いたような感覚になる。

その穴を空けたのは間違いなくあの男だろう。

 

「ダメだな・・・、美空さんたちは私以上に寂しいだろうに・・・それでも前を向いている・・・」

 

今頃二人は自分たちより先に土を踏んだ魔法世界の空の下で奮闘している頃だろう。

そう考えると、少しずつだが気を持ち直してきた。

 

「しっかりしろ、私!」

 

色ボケで鍛錬を怠るわけにもいかない。

自身を奮い立たせるために刹那はニ、三度両手で頬を叩く。そして鏡に映る赤くなった自分の顔を睨み付けて、準備を整え外に出る。

 

「さて、・・・私も行くか!」

 

ようやく正気を取り戻した。

こうなるまでに何時間掛かったかは分からないが、それでも彼女はやるべきことを忘れずに、エヴァの別荘へと向かった。

 

刹那は数日前から少し様子がおかしかった。

その原因は間違いなく、別荘内で公表された好意度ランキングによるものだった。

 

自身のシモンに対する気持ちは自身が想っているほど、シモンの周りにいる他の女と比べて弱かった。それを知って以来、シモンのことばかりを考えてしまい、あまり他のことに集中できなくなっていた。

 

剣をガムシャらに振ったり、仲間と共にいる時は気分が紛れる。しかし先ほどのように一人になってしまうと、すぐにシモンを考えてしまっていた。

 

相当重症だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうした刹那? ここ数日は身に入っていないのではないか?」

「エヴァンジェリンさん?」

「どうも集中力に欠けているようだが、・・・奴のことでも考えているのか?」

「うっ・・・・・」

「なんだ図星か・・・・」

 

刹那の剣の鋭さを間近で見てきたエヴァにとって、彼女の僅かな変化ですら見抜くのは容易いことだった。エヴァにアッサリと見抜かれた刹那は気まずそうに顔を赤くして下を向く。

そんな刹那に共感して木乃香も涙ながらに刹那を後ろから抱きしめた。

 

「ええ~ん、分かるわ~、せっちゃん。ウチも寂しいわ~」

「お、お嬢様!?」

「ウチらが魔法の国に行くゆうことは、夏休みが終わるまでシモンさんに会えへんゆうことやろ?」

「は、はあ・・・・」

 

すると二人のやり取りを見てエヴァは意地悪な笑みを浮かべる。

 

「くっくっく、まあ貴様らが決めたことだ。というわけで行かない私は、のんびりと夏休みを欧化させてもらおう」

「むっ、エヴァンジェリンさん、ウチらが居らんときにシモンさんが帰ってきても抜け駆け禁止や!」

「はっはっは、何を言っている? そろそろ奴も女が恋しくなる頃だろう。帰ってきた時は優しく扱ってやらんとな~」

 

高らかに笑うエヴァに、頬を膨らませて睨みつける木乃香。

混戦模様は相変わらずだった。

だがシモンはそれでも帰ってこない。

帰ってこないのは当然だ。なぜなら既に魔法世界に居るからだ。

そして記憶喪失と、刹那たちの同年代の女性たちに囲まれているというオマケつきで。

 


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