モンスターハンター 光の狩人 [完結]   作:抹茶だった

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四十三話 フラムとルーフス

 

 今回の依頼の狩猟対象はドスフロギィである。フロギィを倒すのも相手の戦力を削ぐのには良いが、ドスフロギィを見つけなければ依頼達成にはならない。

 

 

「ドスフロギィ、どうやって見つける?」

 

「フロギィを大量に葬れば怒ってでてくるんじゃない?」

 

「おぉ、ルーフス、それいいね!」

 

 

 ルーフスが物騒な発言をする。それにのっかるフラム。……この二人じゃなぁ。

 

 

「ドスフロギィが万が一恐がって逃げたらどうするんだよ」

 

 

 フラムとルーフスの討伐の仕方ではドスフロギィが恐がって逃げ出しかねない。というか仲間であるはずの僕ですら惨状を作り上げて笑っている二人からちょっと距離を置きたいと思っているくらいだし。

 

 

「……えぇ。じゃあここで待つ?」

 

「それはそれでなぁ……」

 

 

 ここじゃ雨をしのげない。待っている間に体力を消耗するのは不味い。それに道具の方も心配だ。既に携帯食料がふやけ始めているし、回復薬が薄まったりしてもあんまり面白くない。

 

 ここに長居するのも良くないか。ベースキャンプで考えてくるべきだったかもしれない。

 そう思い、二人に言おうとしたところでルーフスが言った。

 

 

「巣を襲撃しようよ。巣にいるフロギィを狩って、ドスフロギィを待っていればいい」

 

 

 とても分かりやすい作戦だった。作戦ですらない気がする。

 

 でも巣にいけばフロギィに囲まれるような。いや、入り口に陣取って危なくなったら逃げればいいのかな。いや、そもそも囲まれる前に数を減らせば問題ないか。そっちの方が楽かもしれない。

 背後はルーフスに任せて、フラムが前で壁役になってもらって。入り口付近の狭いところで戦えばフロギィは十分討伐できるだろうし。

 

 

「そうしようか。あ、でもすぐに乗り込むんじゃなくてできるだけこっそりと行こう」

 

 

 巣にドスフロギィがいたら危なくなる作戦だ。巣に既にいたときはフロギィをゆっくりと減らしてから攻めればいいかな。

 

 

 

「ん。分かったよー」

 

「うん。まぁ囲まれたら面白くないしね」

 

 

 巣の襲撃。作戦は決まった。

 

 

 どこに巣があるかは目星がついている。ドスフロギィは一番奥のエリア10に巣を作っているはずだ。……フラムとルーフスが聞いた話によると、だが。

 

 歩いて十五分くらいでエリア10の一つ前のエリア9に着いた。

 とても狭い、という印象。道は細長く、まるで渓谷のようだ。地面に草が生い茂っていて、左手には崖に木がもたれかかるように生えている。雨で土が洗い流されて根が剥き出しになっているだけかもしれないが。

 右手には傾斜があり、斜面に木が生い茂っている。戦闘するには狭さと足場の悪さで危険に思える。

 僕達は三人で物陰に隠れて周囲を伺う。

 

 ……確認できるのはフロギィが一匹、死角になって見えない場所もあるためもしかしたらもう一匹くらいいるかもしれない。フラムもルーフスも一匹奥が見えないようで首をひねっている。

 

 

「……こんな時アルフがいたらね」

 

 

 フラムがこそっと呟いた。アルフは僕達と同じパーティだった。白髪の女の子で直感の良い子だ。

 アルフの直感はよくあたる。僕たちは訓練所ではよくその直感に頼っていた。おかげで採集なんかは捗った。

 

 

「姉さん、無い物ねだりしても仕方ないよ」

 

 

 ……アルフは今頃何してるのかな。村に帰るって言ってたけど、アルフがどこの村出身かも言ってないな。

 確実に確認するとしたら……何もなくね。

 

 

「じゃあ撃つから、別のフロギィの鳴き声が聞こえたらすぐに退散ね」

 

 

 二人は頷いた。運任せかよぉって顔なのが気になるが僕はスコープを覗きこんだ。

 

 フロギィの頭に照準を合わせ、僅かに弾道がブレても致命傷になるように調整し、引き金を引く。

 弾丸はフロギィの頭に直撃し、中身を吹き飛ばした。

 

 

「うぇ」

 

 

 後ろでフラムが何か言ったが気にせず、耳を澄ます。

 

 ……雨の音、雨の音、雨の音。敵の声なし。

 

 

「敵はもういなさそうだよ。」

 

「アオイも結構ムゴいことやるんだね」

 

「フラムに言われたくない」

 

「いちゃついてないで早く行くよ」

 

 

 ルーフスに促され僕たちは巣があると思われるエリアの入り口まで歩いた。……フラムといちゃつくとかちょっと考えられない。

 

 

 

 フロギィの巣があった。二人の情報は正しいかったようだ。フロギィの数は五匹。障害物の少ないエリアだからこれ以上は潜んでいないと考えてもいいだろう。

 ルーフスはそっとフラムの後ろに立った。

 

 

「じゃあ僕は両端の二匹を倒すから、真ん中の三匹、二人でお願い」

 

「分かった」

 

 

 フラムは楽しげに答え、ルーフスは黙って頷いた。

 左のフロギィにまず狙いをつける。距離が離れているから通常弾では一発で倒せないかもしれない。

 徹甲榴弾だな。

 

 徹甲榴弾なら重い分これくらいの距離なら威力の減衰はないはずだし、爆発するから一発で倒せる……はず。祈りつつ弾丸を装填する。

 

 どこに当てても倒せそうなので照準をフロギィの中心に合わせ、引き金を引く。

 発砲音が響き、次の瞬間にはフロギィの腹に食い込んだ。フロギィが着弾の衝撃で吹っ飛び、地面に着地したと同時に弾丸が爆発。

 突然起きた自体に生きているフロギィ達は肉片を見て固まっている。

 すぐに徹甲榴弾を装填し直し一番右のフロギィに照準を合わせ、引き金を引く。

 狙いが甘かったようで足に突き刺さり、フロギィが転んだ。直後に爆発し、フロギィの足が消し飛んだ。多分生きているが無力化にはなった。

 

 銃声に三匹は気付いたようだった。こちらを向き、殺意を剥き、走って近付いてくる。

 それに対し、フラムは三匹のフロギィを見据え、ゆっくりと歩いていく。

 

 フロギィはその雰囲気に気圧されたのか立ち止まる。だが、直ぐに顔を見合せ、フラムに三匹同時に襲いかかった。

 フロギィは真ん中の一匹を先頭に、二匹がその左右を走る。フラムはそれと同時に走り出した。

 真ん中を走るフロギィが一足先にフラムに飛びかかる。フラムはそれを盾で受け止め、右側のフロギィに向かって突き飛ばした。

 突き飛ばされたフロギィはそのまま後続のフロギィにぶつかり、転倒する。巻き込まれたフロギィも同様だった。

 左側のフロギィはそれを見向きもせず、フラムに飛びかかった。

 フラムはそれをかわし、フロギィのかかとを足で払って転ばせた。

 

 フラムはフロギィ達とすれ違うように進み、振り返った。

 フロギィは直ぐに起き上がり、振り返ってフラムに向かって走り出そうとした。

 

 

「せ、ルァァァァアッ!」

 

 

 茂みに潜んでいた、ルーフスが突然飛び出し、フロギィに向かってボーンアックスを振り抜いた。

 フロギィは悲鳴をあげながら吹き飛ぶ。そして吹き飛んだ先にいたフラムは

 

 

「はーい、いらっしゃいませー」

 

 

 抜刀したアイアンガンランスでフラムは吹き飛んできたフロギィの腹を貫き、砲撃を放った。爆発と同時にフロギィの腹に丸い穴ができ、上半身と下半身に別れさせた。

 フロギィ二匹には爆発が印象的だったのか逃げようと後ろを振り返った――

 

 

「ふんッ」

 

 

 縦に振ったスラッシュアックスをフロギィの頭部に叩きつけた。一撃でフロギィの頭は地面に埋まり、赤黒い液体が湧いてきた。

 ルーフスはスラッシュアックスをすぐに持ち上げ、最後の一匹に向かって振り抜いた。だが、流石に時間がかかったか、フロギィは後ろに跳んで避けた。

 

 

「鳥竜種って鳥頭なのかな?」

 

 

 そのバックステップの先には赤い炎をほとばしらせるガンランスがあった。

 溜め砲撃だ。溜めが必要だが、その分一発が強力になった砲撃。

 直前の砲撃より見るからに強力な爆発が起こる。フロギィは赤い尾を引きながら吹き飛び、地面を滑り、動かなくなった。

 

 

「姉さん、本当にそうか確かめてみる?」

 

 

 ルーフスは剥ぎ取りナイフを地面に頭を埋めているフロギィに向けながら言う。

 

 

「いいよ。別にそんな趣味ないし」

 

 

 そういいつつ、フロギィの上半身から鱗を剥ぐフラム。怖い。

 

 

「えっと、フラム、ルーフス、今からドスフロギィ待つよ」

 

「はーいアオイ義兄さん」

 

「ん。じゃあ私ちょっと作戦思い付いたから小細工していい?」

 

 

 フラムはフロギィの死骸を持ち上げながら言った。

 

 

「好きにしてください」

 

 

 何をするのか怖くて見たくなかったので雑に答えた。

 

 

 

 

 

 

 雨は徐々に強くなり、周囲の音が雨一色に変わり始めた時、ドスフロギィは来た。

 従えるフロギィの数は二匹、少ないかな。

 

 

「ギャ……?」

 

 

 ドスフロギィは仲間の死骸に気付いたようだ。死骸三体が直線的に並び、もっとも遠くの一体は木の残骸の横に転がっていた。

 ドスフロギィはゆっくりと仲間の骸を辿っていった。体が泣き別れしているもの、泥と血にまみれた三匹、そして焼け焦げている最後の一匹、とドスフロギィは僕とフラムの潜む場所に近付いた。

 先に出たのはフラム。ドスフロギィの前に立ち塞がるように出てくる。

 ドスフロギィは虚を突かれて固まったが、隙と呼べるほどの長さではなかった。

 

 

「今っ!」

 

「はいさ」

 

 

 フラムは言った。私が合図を出したら私の言った通りの動きをして、と。

 

 障害物の裏から立ち上がる。そして射線が通るようになった瞬間、迷わず引き金を引く。

 ドスフロギィはそれを即座に反応して弾丸を避けた。弾はドスフロギィの体を掠め、そのまま遠くの森林に消える。……反応速度どうなってるの?

 まぁ、外れたのは惜しいが、本命はこちらではない。

 

 

「せいっ」

 

 

 フラムはガンランスでドスフロギィを突く。ドスフロギィは回避運動の直後だったために避けられなかった。しかし、それでも体を捻り、刃を腕で受け止めていた。

 フラムはトリガーを引き、だめ押しの砲撃をする。

 

 

「ギャア⁉」

 

 

 突然の爆発は予想も反応も出来なかったようだ。ドスフロギィは悲鳴をあげ、バックステップで距離をとった。

 

 

「オルァァッ!」

 

 

 ルーフスが後ろから飛び出し、剣でドスフロギィを後ろから突いた。剣がドスフロギィの尾のつけねに食い込む。ドスフロギィからはきっと突然現れたように見えただろう。だが、僕たちはドスフロギィが通り過ぎた瞬間、ルーフスが後続のフロギィを倒すところが見えていた。

 

 ルーフスはフロギィの皮と肉と泥を被っていた。フロギィの死骸に擬態してドスフロギィを欺いたのだ。つい直前までフロギィの血にまみれてたせいで身体中真っ赤で重症の人にも見える。……了承するルーフスもだが、フロギィの皮被って擬態する、とか考えたフラムは頭おかしい。

 

 ドスフロギィに食い込んでいるスラッシュアックスのビンからエネルギーが溢れ、剣が震える。その震えが僅かずつドスフロギィを刻む。

 そして、スラッシュアックスが抱えきれなくなったエネルギーが暴走し、剣先で大爆発を巻き起こした。スラッシュアックスの大技、属性解放突き。

 ドスフロギィは体勢を崩し、無防備な隙ができた。

 

 

「ハァッ」

 

 

 ルーフスは掛け声と共に斧に戻ったスラッシュアックスを振り抜き、フラムはガンランスをドスフロギィの頭に叩きつける。僕は一発、通常弾を腹に撃ち込んだ。

 フラムは更に持ち手を捻ってからトリガーを引いた。

 普段の砲撃の数倍近い規模の爆発が起こる。ドスフロギィが爆発の威力で吹き飛び、地面に叩きつけられる。

 フルバースト。ガンランスに装填されている弾の全てを同時に放つ技。分かりやすい攻撃だが十分に強力。

 ドスフロギィはすぐに起き上がり、苦しそうに白い息を吐いた。

 

 

「怒り状態っ、慎重にいこう!」

 

 

 フラムは盾を構えながら炸裂弾を装填し、ルーフスはスラッシュアックスから容量の少ないビンを外し、新しいビンを装填した。 

 

 ドスフロギィを睨み、照準を頭に合わせようとスコープを覗くとドスフロギィの肩が上がったのが見えた。

 息を吸った……毒攻撃? 毒はマズい。正面にいるのはフラム。

 

 

「フラム、離れてっ」

 

 

 フラムはすぐに反応して、盾を構えながら離れようとした瞬間。ドスフロギィは叫んだ。

 ドスフロギィの叫び声が響き渡る。

 

 仲間を、呼ばれた。

 

 

 不味い不味い不味い不味い不味い不味いッー!

 やらかした。読みを外したどうしよう仲間を呼ばれた不味いッ。毒を吐いてくる小型モンスターに気を付けながらドスフロギィに対応するなんて難易度高すぎる。これならフロギィをもっと減らしてから挑むべきだったっ。

 

 

「アオイ義兄さん、冷静にっ。乱戦だよっ心踊らないのっ?」

 

「砲撃を撃てる敵が沢山……!」

 

 

 駄目だ二人も壊れた。回路がショートして暴走しはじめてる。でもおかげで代わりに冷静なれた。駆けつけたフロギィは取り敢えず二匹。まだ対処できる。ここからフロギィを撃って数を着実に減らせば対応できるはず。

 

 

「二人はドスフロギィをお願いっ」

 

 

 二人はすぐにドスフロギィに攻撃を開始した。仕事してくれるのは嬉しいけど返事が欲しいな……。

 フロギィは右側から二匹、左側からは二匹。……増えてない?

 慌てて狙いをつけてフロギィの体の中心を狙い、撃つ。当たったかだけを見て、生死は確認せず、足止めのため次のフロギィに狙いをつけ……。後ろから足音聞こえるんだけど。

 後ろを見ると更に一匹走ってきていた。……ヤバイぞ。

ボウガンを無理やり後ろに向け、引き付けてから一発撃つ。引き付けすぎたか、返り血が顔にかかる。すぐに顔についた血と雨を腕で拭い、ドスフロギィを見る。

 

 

「ハァッ!」

 

「よいしょっ!」

 

 

 ルーフスがフロギィを吹っ飛ばし、フラムが砲撃でドスフロギィを牽制する。援護しないと。

 フロギィの数は右に二、四……あぁ、もう数えたくないっ。

 閃光玉をポーチから取り出す。緊急用のつもりで持ってくることにしておいて本当に良かった。後二個あるけど高いから使わないことを祈って、乱戦に投げ込む。

 

 

「閃光玉! 二、一……」

 

 

 ゼロ、と言う前に閃光が駆け回った。腕で覆っても残光がわずかにあった。視界が完全になった時には二人は攻撃を始めていた。

 

 

「竜撃砲っルーフス気を付けてねっ」

 

 

 フラムがガンランスを構えると青い炎が剣先を覆うように吹き出た。炎が明後日の方向を威嚇するドスフロギィを炙る。

 竜撃砲はガンランスのなかで最も破壊力のある大技だ。隙がある分、威力は火竜のブレスに匹敵する。

 しかし、フロギィが一匹、フラムに向かって動いた。

 閃光玉が効いてないってことは、何かの影になって運良く逃れたのか?

 通常弾で狙おうとするが、フラムに近く、安易に撃てない。

 

 

「フラム、フロギィが」

 

 

 言ったときにはフロギィはフラムに飛びかかっていた。フラムは反応したが、もう遅い。フロギィはフラムのガンランスを持っている側の肩に噛みついた。

 

 

「痛……あっ」

 

 

 フラムの手の握力が緩み、ガンランスが落ちた。発射間際の竜撃砲は止まらなかった。

 地面に着地すると同時に竜撃砲が放たれ、大爆発がフラムの周辺を飲み込んだ。

 

 

「フラムッ」

 

「姉さんッ」

 

 

 煙からアイアンガンランスが自らの力で飛んだのか、転がった。フロギィ達に閃光は……まだ効いてる。

 撤退が頭に浮かんだ直後。

 

 

「大丈夫っちゃんと狩りできるよっ」

 

 

 フラムはそう言い、応急薬を飲み干して剥ぎ取りナイフを取り出した。

 フラムはガンランスに近付きながら近くにいるフロギィを的確に無力化していく。

 

 

「ルーフス、先にフロギィ数を減らして。フラムのことは僕に任せて」

 

「了解。姉さんのことは頼んだよアオイ義兄さんっ!」

 

 

 フラムが足の腱を切ったり、目を潰したり、喉を裂いたりしたフロギィに止めを刺す。

 

 こちらの片付けが終わったところで周囲を見ると立っているフロギィはもういなかった。その代わり血の池ができ、ドスフロギィに視界が戻った。

 ドスフロギィは怒号をあげ、周囲に紫色な霧を吐いた。

 

 

「これじゃあ接近できない」

 

 

 十中八九、毒だろう。吸い込んだら毒に体を侵される。ガンナーの出番、と言いたいが正確に狙いはつけられない。

 闇雲に撃ち、弾丸を装填し、更に撃つ。

 装填分撃ち終わり更に装填しようとしたところでドスフロギィが急に飛びかかってきた。

 

 

「わっ」

 

 

 避けようとしたが、滑ってバランスを崩し、その上ドスフロギィに押し倒される。

 ドスフロギィは口を大きく開き、僕に噛みつきかかってきた。体を精一杯捻り、なんとか避ける。肩に牙が擦っていったが防具のおかげで怪我はない。

 ……これってピンチじゃないか? 拘束攻撃を撃退できるこやし玉は持ってきていない。いや、そりゃさ、モンスターのフンなんてできれば見たくもないのに調合なんてもってのほか……。

 

 ドスフロギィは僕の腹を足で踏み、動けないようにした。そしてもう一度噛みついてきた。

 腕につけた防具を信じて両腕で受けようとしたところでドスフロギィは止まった。

 

 

「私の、殿方に、何をするのっ」

 

 

 ドスフロギィはガンランスをくわえていた。そして腹部から圧力がなくなったことに気付き、フラムが何か変なことを言っていた。

 横に転がって逃げてフラムに合図を出す。

 

 

「脱出した」

 

 

 その言葉がトリガーとなってドスフロギィの喉が爆ぜ、無数の穴があき、喉の袋から毒液が漏れた。

 

 

「アオイ義兄さん、《スーパーノヴァ》準備してっ」

 

 

 ルーフスがドスフロギィの足を刈り、転ばせた。そして足で踏みつけて起き上がれないように押さえつけた。

 すぐにフラムも加わり、ドスフロギィは二人の足の下でもがく。

 

 適切な距離をすぐにとり、最速で落ち着いて、信頼をこめて妙に大きい弾を装填する。

 

 

 狙いをつけ、引き金を引く直前に。

 

 

「撃つ。二秒、一……」

 

 

 二人に警告。二人はすぐにドスフロギィから離れ、カウントダウン通り、引き金を引いた。

 メテオキャノンの砲身が赤く熱くなり、重い質量がドスフロギィに向かって飛んだ。

 そして、立ち上がったドスフロギィに火球のような弾丸があたり、爆炎が膨らみ、ドスフロギィを飲み込んだ。

 突風が上に向かって吹き荒れ、熱があたりの気温を上げ、泥があたりに撒き散らかされる。

 

 炎が収縮して消えると体を真っ黒に焦がし、血と熱で所々を真っ赤にしたドスフロギィがよろよろと歩いていた。

 やがて力なく動くようになり、倒れた。

 息が吐き出されそっと萎み、ドスフロギィは息絶えた。それに合わせてドスフロギィにまわりに血が染みでて水溜まりを赤くした。

 

 クエストクリアだ。

 

「やった!」

 

「討伐成功だ!」

 

「よかったよかった」

 

 

 ドスフロギィに三人でかけより、剥ぎ取りをする。皮は焦げで使い物にならなさそうだが、鱗や腕甲、爪やクチバシは問題なく使えるだろう。

 

 

「そう言えばフラム、さっきの私の殿方がどうこうってどういう意味?」

 

「……えっ? アオイ?」

 

「アオイ義兄さん、何惚けてるの?」

 

「えっ」

 

 

 惚ける? いや、ちょっと訳が分からない。

 

 

「フラムのことは任せろって言ったでしょ? 貰ってくれるんでしょ?」

 

「ゎ、わたしはアオイが望むのなら別に……」

 

「嫌だよ。フラムを貰うくらいならアルフの方がいい」

 

「言質とれたのに……」

 

 

 がっくりと肩を落とすルーフスと顔を伏せるフラム。僕はそれに苦笑いをしながら剥いだ鱗をポーチに入れた。

 


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