IS学園の異端児   作:生存者

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第82話

 

 

 

 

「おーいかみやん、あの女子校に行くなんて羨ましいぜい!」

 

「そうや、かみやんばっかりいい思いするなんて納得出来ないわ!」

 

 

 

 

 

「なんだか懐かしい夢だな。もうそんなに時間が経ったのか」

 

仲良く遊んでいた友人の2人からの理不尽なパンチ。何故そんなに行きたいのか未だにわからないが、強制的に生き方まで縛られてるような嫌な気分だった。

 

「はぁ、今日からまた勉強だ。一般教科にIS関連の教育・・・毎日補修で済むか」

 

 

時間を確認すると遅刻はしないがのんびりと出来る時間ではないのでさっさと支度を済ませて部屋を出て行った。

 

 

 

無断外出をした翌日、会議と称した取調室に呼び出され長々と質問をされたが軽々と言える内容ではないので言えないが、ただの私情で出たことは悪いと思っていた。

 

そんな時、会議に1つだけある通話機に掛かってきた一本の一報で処罰は一時的に保留になった。その相手は上条詩菜、こんな事になっているだろうと事務所からここまで繋いでもらい1つ1つ経緯を話した。当事者の1人でありその光景を見た人間の話を聞いてほとんどの人が納得したものの、一部は雰囲気に流されず冷静に処分方法を決めていると。

 

「貴方がたに全て聞き入れて貰えるとは思えません。それでも、教師ならば生徒の言葉に耳を傾けて下さい」

 

 

IS学園の教師が世間の風潮に染まっていないことが唯一の救いだった。処分はなし、担任と企画した生徒会のメンバーに謝罪はしておけと言い渡された程度で済んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「では、HRを終わる。間違っても授業中に抜け出さないようにな」

 

案の定2度とするなと釘を刺されるが何事もなくいつもの生活に戻っていくが、正直なところ外の不良と喧嘩する方がよっぽど楽な気がする

 

「では、次の章に進みます。皆さんも一度は使ったことがある・・・」

 

何が言いたかというととんでもない倍率を超えてきた優等生ばかりが集まってるせいで付いていけないのだ。一般の教育科目に加えISと言う世界でもここにしかない大変希少(迷惑)な科目まであるせいで最近は夢の中で数式、文字、英単語に押しつぶされるようなもの見るほどまでに追い詰められていた。

 

「・・・最初からここに来るなんて分かってても勉強はしないだろうな」

 

「あの、上条君。何か気になる事でありますか?」

 

呟いた声が少し大きかったのか山田先生が近づいてくる。

 

「あ、ただの独り言なんで気にしないで下さい」

 

「1人で抱え込まないで相談してく下さい。教師ですからね」

 

日頃から勉強面で何度も相談に行かせてもらっている中で、容姿のせいか教師として見られていないのでは。と度々愚痴を聞く事はあるが子供っぼい部分もあるせいで今でも学生かと思ってしまう。

 

 

午前中の授業が終わり皆が食堂に向かう中1人異様なほど疲れ切った様子で机に倒れる上条に一夏はいじっていた。

 

 

「結構追い詰められてるな、でもまだまだ授業もあるしテストも待ってる」

 

「・・・頼むから退学にでもしてくれ。勉強が本当に嫌いになりそうだ」

 

「絶対それはありないだろ。みんな必死に止めに来るだろうし、教師からも止められて・・・お前勉強好きだったの?」

 

「元から好きじゃない。成績表を見れば分かる」

 

「見せなくてもいい」

 

 

 

 

「なあ、マドカの料理って最初どんな出来だった?」

 

「・・・織斑先生と同レベルの出来栄えだったな。掃除で半日近くキッチンが使えない事もあったし・・・ってなんでそんなこと聞いた?」

 

「いや、最近千冬姉の指導しててマドカはどんな感じたったか考えてて。マドカは教えてくれないし、あとはお前しかいないから」

 

月二回のペースで指導しているのは何度か見ている。しかし、何故兄弟の方はよく出来るのに姉妹は家事があまり出来ていない。

 

「最初に興味を持ったのは俺が夕飯を作ってるのを見たのがきっかけだな。俺が2ヶ月ぐらいかけて教えてようやく1人で出来るようになった時は親も喜んだよ」

 

ただ教えるはなかなか苦労した。米を研ぐのに洗剤を使い始めたり、包丁をナイフのように扱ったりと手を焼かされた。しかし、遺伝もあるのかコツも掴み1ヶ月でアドバイスなしでも1人分を作れるようになった。

 

「2ヶ月か、こっちはもう何ヶ月も経ってるよ」

 

「それは週末とかの短い時間を使ってるからだろ?毎日教えてるから短いのは普通だ」

 

と話しているうちに時間も迫ってきたので食べ終わらせると教室に戻った。戻っている途中は家事の話ばかり、お互いがまだ小さい頃からこなしてきたせいか苦労を楽しくしていた。しかし、そんな時間は去り2時間もすれば疲れ果て、いつもの補修の時間になった。

 

 

「中々いい出来だな、珍しい」

 

「補修なんて何度もやりたくないからです」

 

机に倒れれながら力なく答える。授業ではほぼ理解出来ないと自分で分かっているせいか知らぬ間にこの時間を頼っていた。

 

「料理なら何度も作れるのにか?」

 

「・・・あれは好きでやってるからです。俺みたいのが平凡な所から上がっても頭が良くなる訳がないですよ」

 

「それは同情したいけど親の為にも頑張らないとね」

 

今日はここで終了と打ち切る。上条も荷物をまとめて教室を後にするが寮には戻らず日課である運動をするのにトレーニンルームに向かう。前と同じ量をこなすには時間が足りないがそれでも体が鈍らないように調整するには十分だ。

 

 

「ふう、おし終わった」

 

ベンチプレスのバーを降ろすとゆっくり体を起こす。気分転換に通い始めてからかれこれ1ヶ月近く毎日のように来ている。

 

「2年近く岩とか持ち上げてやってたのが嘘みたいだな」

 

軽く体をあっためる程度で終わらせ食堂で夕飯を済ませて部屋まで戻る。何事もないように生活するが視線をすごく感じるせいで何か落ち着かない。

 

「こればっかりは仕方ないとは思ってけど、想像以上に気まずい空気が。あと何日か経てば落ち着くだろうしそれまでは我慢だ」

 

「おっとそろそろ楯無さんも戻ってくるし先にシャワーを浴びておかないと。あの人には届かなくても何されるか分からないからな」

 

今では多少落ち着いているが、前はシャワーの途中で入ってきたりコスプレなんかをして出迎えたりわざと同じ変な声をあげたりゆっくりする邪魔をされたりと遊ばれていた。

 

「また、大浴場使いてぇな。男性用なんて無理は言わないけどよ。毎日入ってるこっちには案外きついものが」

 

「なら、お願いすれば?」

 

「それで簡単に入れるなら苦労しませんよ、お疲れ様です」

 

音もなく入室してきた事には一切気にしない。日に何度もいたずらをされてたのに加えて、散々人をいじって笑う嫌な人にも世話になったので慣れるのに時間は掛からなかった。

部屋に着替えて横になると真っ先に思い浮かんだのは補修で受けた勉強内容だった。何度も言うが上条が付いて行けるほどゆるい教育はしていない。

 

「これからは補修の時間が伸びそうだ。ISの学課に対応出来る余裕がねぇ」

 

「弱音を吐いても辞めるのは無理よ。むしろ、ここをやめた方が危ないわね。世界中の研究者が拉致しに来る、家族も実験台にされるなんて可能性も」

 

「分かりましたからそれ以上言わない下さい!辞めるつもりはないですから」

 

やる気を出させる為と言え、本当にあった事(・・・・・・・)を言われると反応しそうになる。無事に終わっているとしても、世の中にあんな馬鹿げた事をするやつもいるなんて想像もしなたくないし、2度と会いたくもなかった。

 

 

 

「あ、今更なんだけど上条君、ISあんまり使わないの?」

 

「そうですね、選手になろうなんて目標もないし最低限の操縦の仕方だけ覚えれば十分って考えで、そんなにたくさん乗る必要は」

 

「必死に訓練してもそこまで届かない人には嫌味にしか聞こえないわ。確かにISは操縦者のアシストをするから動ける人の方がいいけど」

 

素の動きはスポーツ選手以上、だがこれまでの騒動で明らかに自分に枷を付けているのは明白。それでも、疑問だったのは射撃と弓の遠距離の攻めはどうやって鍛え上げたのか。調べた中では一度もやった記録はない。

 

「どうしたんですか?」

 

「何でもない。運動だけじゃなくて勉強の方に集中しないとね。特に君は」

 

「善処します」

 

 

 

 

 

 

 


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