IS学園の異端児   作:生存者

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第80話

 

 

試合終了間際、残り残量は上条が2割、対して楯無は1割7分くらい残りで、あの爆発を受ければ負けは確実だった為に、1番簡単で1番無謀な選択をした。結果的そのお陰で勝ちはしたものの、傷だらけになりなってしまった。

 

「はぁ、一度目とはいえあとで説教だな」

 

少し出血が酷くなると予想していたが、軽くにじみ出てくる程度で軽い怪我で済んだ。

戻ろうとすると真後ろから両肩を鷲掴みにされ物凄い形相で心配しに来ていた。

 

 

「ちょっと大丈夫!?なんで、シールドをオフしにたの!あの爆発で死んだかもしれないのよ」

 

「勝つ為にやった。まあ、死んだ所で不運だからで事故処理するでしょ」

 

「って、そんな簡単に済ませる事じゃないの!次まで時間あるから医務室に一緒に行くわよ」

 

心配なのは分かります。でもシールド切ったままで肩を掴まれるとだいぶ痛いです。結局、ISを解除してから医務室までずっと監視されながら連行された。

 

 

結果の一報はアリーナに伝わり、それを聞いた千冬は黙り込んだ。

 

「・・・」

 

「あの織斑先生?」

 

「別のアリーナの試合が終わったそうだ。決勝に進んだのは上条だが、最後に更識姉の爆発を生身で受けて医務室に運んだと連絡が来た」

 

「あの爆発を?怪我具合は!上条君は無事なんですか?」

 

「軽いやけどと出血で済んだそうだが。何故、シールドを切ったか聞かれて勝つ為と言ったそうだ」

 

仮にも兵器の攻撃を生身で受けるとは、死を意味する。打撃や狙撃で無くなかったとしても人間に耐えられるようなものではない。

 

「しばらくISの実習をやめて、もう一度初めから教え直すべきか」

 

入った当初から予想外の行動ばかりする生徒に頭を抱える事が増えていた。

 

 

 

 

「体張るって馬鹿じゃないの!」

 

「落ち着けって」

 

「落ち着いてられるか!あのね、一歩間違えれば死んだかもしれないのよ。それにこんな立場で問題なんか起こしたら、国に強制送還されて称号剥奪。一夏みたいな特例と違って処分の大きさだって笑えない」

 

仮にも国の代表としてここに来る人間が問題を起こせばすぐに処分が来るだろう。同じ座を狙っている他の人にはいい話だが、強制送還されるくらいの事になれば国の恥さらしのようなものだ。

 

「そうですわね。まだ笑えごまかせる事ですが、下手をすればロシアの国家代表の地位も無くなりかねませんもの」

 

「入学して早々に喧嘩を売った人が言うと説得力があるわね」

 

「そ、それはもう反省していますわ。あまり思い出したくありません」

 

「でも、心配しないんだね一夏は」

 

「本人が何ともないって言ってるしな。これくらい軽傷だって言うよ」

 

 

 

 

「全く、危ない事ばっかりするね。はい、これで消毒は終わったから休んでね。それと更識さんも勝ちたいからってムキになり過ぎよ」

 

医務室、もとい保健室で手当てとお叱りを同時に受ける。その隣ではまだ怪我をさせてしまったことを申し訳ないと楯無さんがずっと座っている。

担当の大滝枝里子(おおたきえりこ)先生。性格はかなり明るく生徒の相談役になったりする事もある人だが、柔道有段者で誰かみたいにすぐいなくなる生徒を逃さない為だそうだ。

 

「・・・すみません。あと少しで勝てそうで」

 

「まっこれからは気をつけてね」

 

作業が終わり、消毒液やピンセットを片付けながらソファーに腰掛けている2人に話しかける。

 

「それにしても、一般生徒でここまで活躍するなんて中々珍しいわ。何か特別な事でもやったの?」

 

「少しそれっぽいことなら」

 

「え、え。例えばどんなの?やっぱり武術とか?」

 

「先生、必要以上に聞くのは問題ですよ」

 

興奮気味になる大滝先生を落ち着かせる。それを見ている上条は教師でも上級生でも偶に年上と思えない時があるんだな〜と1人で考える事がよくある。

と待っている間に電話の音が鳴り響く。内容は同じく準決勝が終わったとの事で、決勝の相手を報告したいと電話を変わった。

 

「はい、分かりました」

 

「相手は?」

 

「秋十が決勝の相手だそうです。あと残り試合が全部終わるまで1時間くらいは暇になるそうです」

 

1つ以外だったのが大分決着が早くついた事だ。始まってから5分未満で終わり、大差をつけて勝ったと。

 

「え、秋十君が決着に?何かあったのかしら」

 

「私も気になる。見に行きましょか。あ、上条君は絶対に休んでね!」

 

と念を押されてすぐにアリーナのロッカーに携帯電話を取りに行った。特にやることもなく待つのも何だったが、大分騒がしい。

 

「秋十君、すごかったよね〜」

 

「あのケイシー先輩がほとんど反撃できなかったもんね」

 

まだ試合の余韻で話に夢中になっていた人の会話が聞こえた。怪我人が出たのに試合は続行するのかよとツッコミたい。

そして、ロッカーに着くと軽く羽織れる物と携帯電話を取り出してその場を去った。が、アリーナから出る直前で急に電話に着信がはいる。表示されたのは見覚えのある番号なので出ていた。今日は世間で言えば休日だったので電話がかかってもおかしくはないと思った。

 

「はい、もしもし」

 

「おお、やっと出たか」

 

最初に誰だ?と疑問に思ったが最近聞き覚えのある声に相手が誰なのか耳を澄ませる。

 

「誰だ」

 

「てめえが上条当麻か、金を用意をしろ。200万だ、早くしないと親わ痛い目に合わせる」

 

一瞬、手に力が入りすぎて電話を握りつぶしかける自分を必死に抑える。

 

「場所は?」

 

「まずは、今から言う場所に来い。そこでまた話す」

 

一方的に電話を切ると、メールで住所が送られて来る。さっきの僅かに聞こえた周りの物音で誰かが近くにいる事は把握できた。

 

「1時間以上かかるな、着替えだけして行くか」

 

流石に今の格好で出るにはまずい。寮まで戻り、服を着替え終えた。待機状態にしたネックレスはとっくにロッカーにおいてあるので、あとは必要なものだけ引き出しから取りさっさと部屋を出て行った。

 

 

 

ホテル一室。男の周りには何人もの疲れた表情の女性が倒れこんでいる。それを見れば自分が何もされるのかすぐに理解したが、自分も結束バンドで手を縛られ身動きが取れない状態だった。

 

「持ってくるだと、良かったな」

 

「何故当麻さんに迷惑を掛けるんですか?!あの子はか・・・」

 

続けようした言葉を鈍い音と痛みによって遮られた。

 

「うるせえ、雰囲気が壊れる。てめえ最後にしてやるから待ってろ。良いものは最後までとっておくものだからな」

 

あのクソ野郎のせいで1週間で同じ場所に戻る羽目になった。

 

「お前には、被害届が何件も届いている。覚悟しておけ、もう2度と出れると思うな」

 

目の前で話すことが危険と見なされ檻の外から警告をされた。もちろん、そんな物を割り切って受け入れず、大声で叫ぶ、暴れる

 

「ふざけんな!この!」

 

暴れてもビクともしない。前々からここに入れることを決めていた古株の警察側に作りかえられ。以前のように牢屋の扉を破壊して気に入らない人間を虐める事も出来ないように場所も変えられた。

 

「判決が出るまでは大人しくして待ってろ肉蝮」

 

が、人生は何が起こるか分からない。

 

「あんたを出してやる」

 

入って数日がたった夜中。頭の中に響いてくる声に気づき、やや苛立ちながら身を起こすと檻の扉が開き、監視についているはずの警官が寝ていた。

 

「なんだ?これは」

 

気になって檻を出ていき、開いている扉を通って行き着いたのは保管庫。そして、目の前に置かれた机には連れてかれる前に所持していた自分の持ち物が衣類から財布まで全てが乗せられていた。

 

「ふん、まあこの服の方が動き易いな」

 

この時も全く気ずかなかったがくる途中に誰も見ていない上にほとんどが倒れるか、寝ていたのだ。ある程度自分で何処なのか分かる場所にくると指示がなくなっていたことに気づく。そんなこんなで署を出るとしょぼい飯しか食べていなかったのか、お腹が鳴った。

 

「肉だ、まずは腹ごしらえだな。どいつから金を巻き上げるか」

 

とフラフラと歩く間に裏路地を歩いていた若い少年達やサラリーマンから力ずくで金を取ると近くにあった店で腹を満たす。たった数日とはいえ中の物とは比べ物にならないほど満足した。そして、次は何をするかと考えていた矢先、目の前を金髪の良い体をした美少女が通り過ぎ、自然と手を伸ばして引きずっていく予定になった。通りに人はいない、絶好のタイミングだった。腕を掴み引っ張りあとは近くのホテルまで引きずっていくだけのはずだ。

 

「触らないで?」

 

引っ張るはずが逆に引ずられて叩き伏せられ、もう1人の見知らぬ男が入ってくる。

 

「恩人に失礼だな。まあ、この男がまともに礼を言う人間じゃない」

 

「あぁ!俺の邪魔をするな!」

「はいはい、これで私以外の女とでも楽しみなさい」

 

肩に掛けていたバックからスッと渡したのは膨らみのある茶封筒。苛立ちながら、中身を見ると札束が2つと住所の書かれた写真だった。

 

「なんだこれは」

 

「あなたを檻の中に入れた子の親よ。年の割にいい体で金持ち、暇なら行ってみれば?」

 

あのあと、2人は何処かに消えていたが。憂さ晴らしと、これからの資金を探す手間が省けた。

そこから行動は決まった。その住所まで移動は通りかかった人を脅してタクシー代わりに。それから、目的地について家に押し入り強引に連れ出して近くのホテルまで連れ出した。その後、更に何人か連れ込み、運転させた人間の免許証と財布まで取り上げた。

 

「遅いな、逃げたかあの野郎」

 

 

 

 

 

 

 

 

「成長が速い子が多くて大変ね。会長さん」

 

「まさか2年3年が上位に1人しか入らないなんて。ビッグスリーの称号も剥奪よ」

 

ビッグスリー、IS学園で他を寄せ付けない実力の操縦者の3人をこの名で称している。過去に専用機を持って入学してくる人も少ない事もありついた名だった。しかし、今年は異例だ。入学時点で5人、転入や留学、その他で6人もいる。

 

「それは考えるのはこの試合が終わってからにするわ」

 

「後回しにするのはやめたら?」

 

「今はそれ以外の書類整理で手が回らないんです」

 

楽しい時間はあっという間に過ぎると言う、その言葉どうりアリーナから医務室まで着いたのだが中には誰もいなかった。

 

「あらら、逃げちゃったか」

 

と呑気に見渡してと中に入っていくとさっきまでの笑顔が無くなった楯無がずっと自分の携帯電話を見ていた。

 

「どうしたの?そんなに驚いた表情なんかして」

 

「え、えっと。これが」

 

見せたのは一分かりやすく意思表示のされた一文がメールに届いていた。

 

『次の試合は棄権します』

 

 

 

 

「さて、これで届いたか。あとは母さんを助ける」

 

暗い道を走り抜けながら、ただ1つの目的に向かっていく。

 

 




ウシジマ君に出ているキャラを出してみました。中々面白くてハマってます。

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