IS学園の異端児   作:生存者

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第74話

 

 

「席が空いてないな」

 

入ってすがに買っていたタッパを持ちながら座る場所を探す。しかし、昼時ということもあり座る所はどこも埋まっていたが、近くにいた他校から来たであろう男を蹴り飛ばして椅子から退かしたのだ。

 

「痛!何すんだよ」

 

「何だ?俺に文句でもあるのか」

 

いきなりの事にカッとなったのか怒鳴るように声を上げるが、振り返った後に見た大男を見て思わず恐縮していた。

 

「お、うまい。肉は少ないって割には。でも、肉の方がいい」

 

あっという間に食べ終わり動き始めた。しかし、それまで座っていた椅子には誰1人寄りつこうとはしなかった。

 

「おい、お前が肉蝮か?」

 

「誰?」

 

「知るわけないだろ。10年以上前の話だ!」

 

いきなり、殴りかかって来た腕を軽々と掴み肉蝮は徐々に力を入れ握った手からはメキメキと音が漏れ始めていた。

 

「く、こいつなんて握力だ。このクズ野郎」

 

「クズ?」

 

その一言に苛立ち、掴んだ腕を下げ膝も振り上げて腕をへし折った。

 

「ぎ、ぎゃあぁぁ!」

 

「へへ・・・」

 

「てめぇ何しやがる」

 

顔を上げ突っ込んでくる男に腕の折れた痛みでまだうろたえる人間の顔を掴み、そのまま真正面からぶつける。

 

「ぐはっ」

 

「あはは・・」

 

 

 

「このクズ野郎、まだ終わってないぞ」

 

折れた腕とは別にもう片方の手にナイフを持ち振り回し始め辺りは悲鳴が出る。

 

「そんなに遊びたいか?そいっ」

 

近くにあった手作りであろう円形の机の根元を折り。

 

「おりゃぁ!」

 

ナイフを無造作に振り回す男に叩きつける。それも怪我をした腕に力任せにぶつけた。

 

「腕が!痛ぇ!」

 

「うるさい。お前のせいで手間が増えた。慰謝料100万寄越せ!」

 

馬乗りになり反抗のできない状態で何度も顔を殴りつける。更に顔付きが気に入らないと鼻を折り前歯も殴られた衝撃で割れている。

 

 

「やめろ!」

 

「あぁ?・・・」

 

メキッ、顔に固く握られた拳が当たっていたが殴られた本人は涼しい顔をしたまま

 

「お前、ムカついたから殺す」

 

「むぐ!」

 

顔を掴り立ち上がりながら耳に手を伸ばし、強引に引きちぎった。断面から血がだらだらと流れ地面に倒れこむ。

 

「耳が!俺の耳が」

 

「ぎゃあぎゃあうるさいな。なら、もっと言わせてやる」

 

足で体を押さえつけ右手で男の口に机を支える角材をねじ込み、空いていた左手で顎を殴りつける。一度で噛み切れる訳もなく何度も殴りつける。その度に、中途半端にむけた木片が口中に刺さり血が噴き出す。

 

「はは、どうだ。もっと声を出せ」

 

「・・・ぅぁ」

 

「ん、なんだ。黙ったらつまらないだろ」

 

馬乗りになりピクピクと痙攣する男を見ると興味がなくなったのか視線を外すが自分が来ていたパーカーを見つめる。

 

「汚れた。おい!誰か、金を寄越せ!」

 

叫び声を上げ周りを見渡す。誰もが逃げている中で振り返る人などいない。

 

「おい、肉蝮」

 

「あぁ!誰に向かって口聞いたんだ?!」

 

「警察だ。お前には逮捕状が出ている」

 

「逮捕?ゴミ共で止められるかよ」

 

 

 

「おい、そっちは頼む。保健室まで運ぶんや。2人でかがりの方が早い」

 

「担架を使うのはこっちだけでいい。そっちは出血が多い」

 

「なあ、落ちてる耳はどうする?」

 

「それは氷漬けにしておけばいいぜい。とりあえず、逃げるにゃー」

 

「おい、足の速さを合わせろ」

 

「遅いのが悪いぜい」

 

 

 

「君達・・・」

 

「あいつら、俺の玩具に触りやがって。殺されたいのか!」

 

短く、うざいと言葉を漏らしい走り出す。警察が後ろにいても御構い無しで。体格に見合わない速さでジリジリと距離を縮めてくる。しまいには散らばっている椅子を投げていた。しかし、当たる直前で全て弾き飛ばされる。

 

「撃て、これ以上は危険だ!」

 

「しかし」

 

「責任は取る。今は安全を優先しろ」

 

刑事の2人は拳銃を抜き取り照準を合わせ、引き金を引いた。しかし、音こそ響くものの動きが止まることはない。

 

「!止まりません」

 

「いや、音を聞け。パーカーの下に何か入れてる。足を狙え」

 

拳銃の弾にも上限がある。それまでに当ててなければ、怪我人を増やすことになる。だが、一発も当たることなく逃げられた。

 

 

 

その頃、校舎への入り口に立ち塞がるツンツン頭の男に睨み合っていた。

 

「おい、てめぇ。俺の玩具を何処にやった」

 

「ちょっと、今治療中だからどっか行ってろ」

 

何やらスイッチが入る。蹴りやらパンチを怪我をさせたいのか血だらけにして這いつくばっているのを見たいのか、幾度も迫り来る。ここまで公の場で暴れられるとなると相当に欲求に正直なのか。ただ、自分の思い通りにならないのが気に食わなくて苛立っているのか分からなかった。

 

それでも、イライラ募り何度も当てようと殴っても落ちていた棒切れを投げ飛ばしても見事に自分に戻って傷が付く一方だった。

 

「お前は絶対殺す!!」

 

「当たり前のように殺すなんて口にすんじゃねえ」

 

顔めがけてくるパンチを当たる寸前で外側に避け軽く力を入れた左手で殴り飛ばす。

 

「ガハッ」

 

2m以上ある巨体が浮き上がり放物線を描いて地面に叩きつけられる。

 

「向こうであんたを待ってる奴がいるんだ。連れてってやる」

 

服では耐え切れずに運ぶ途中で破かれしまうと悟り。首根っこを掴み足を引きずりながら入り口近くまで運ぼうとした。

 

「かみやん、2人とも大丈夫そうや」

 

「おお、って本当か?」

 

「ああ。いつ間にか保健室の先生がくっ付けて。あとは自然に付くのを待つだけや」

 

おいおい、そう簡単に付くわけないだろ。どんな人だよ。

 

「とりあえず、このデカイのは・・・まだ動くか」

 

「ツッチー、ガムテープとビニールテープどっちにする?」

 

「両方使うぜい」

 

 

それから数分後。両手足をがっちり固定され、手足のほとんどが動かない状態になっていた。

 

「こんだけだるまみたいになれば十分だろ」

 

「あとは代車があれば楽になるだけどにゃー」

 

担いで行くのも面倒だと3人とも紐をかけて引きずっていく。その途中、暴言が多々聞こえてくるも全身を固定したので怖くもなく、ただの悪あがきにしか聞こえなくなっていた。

 

 

 

「この紐を解け。今すぐ殺してえ」

 

「だってよ、かみやん。口も塞いでおくか?」

 

「口まで塞いだら息できないだろ」

 

 

「君達がこれを?」

 

「話は後にして欲しいぜい。こっちも祭りを楽しみたい、これを運んでくれ」

 

「捕まえられても裁く事は出来ないんや。あとは頼むで」

 

「おい、呑気に話してないで手伝ってくれ。暴れるから抑えるの大変なんだよ」

 

「「すまん、ちょっと忘れてた」」

 

「何にも悪びれぇな、ったく。じゃあ、お願いします」

 

「・・・ありがとう。では、後日改めて礼を」

 

まだジタバタと暴れる肉蝮を少し強引に膝で鳩尾に名一杯体重をかけておさこんでいる。力加減が難しいので体力は使わない代わりに制御するので疲れていた。

 

「あらー?そいつが噂の肉蝮?これじゃあただの芋虫と同じね」

 

カツカツとわざとらしく足音を立て新しい刑事らしき人が歩いてくる。女性なのを見た途端に少し歳をとった刑事が前に出る。何かを察したのか表情も硬くなる。

 

「おい、何のつもりだ」

 

「口の聞き方には気をつけた方がいいかな〜。まっこれで終わりね」

 

取り出した銃を肉蝮に向け瞬間にパンっと乾いた音が響き渡る。女刑事の動く前に動いていた刑事も誰を狙ったか予測できても何処に飛んでいくかまでは予想で気なかった。その直線上には背を向けたまま押さえ込んでいた。学生がいる事も

 

「お前!何のつもりだ。刑事だって無闇に殺す権利はない!」

 

「ごめんなさい。ついつい手が滑って」

 

更に近づき倒れた学生ごと背中を撃ち抜く。遠くから悲鳴が出るが何もなかったように涼しい顔で女刑事は去ろうとしていた。

 

「おい、関係のない一般人まで巻き添えにして良いと思っているのか!」

 

「知らないわよ。覆いかぶさって邪魔だった。それにいちいち怒んないで、私は犯罪者を減らしたのよ」

 

「殺したことを自覚しろ!女だからって全て許されると思うな」

 

「あんた、歳下の男の癖に舐めた口聞かない方が身のためよ。これからの出世なんかだ大変になっちゃう」

 

悪びれる事もなく若い刑事は後ろから殴りかかろうとしていたが何とか自分を押さえつけて耐えていた。

 

「じゃあ、あとは頼むわね。責任、あんたが全部取るんでしょ?」

 

 

 

 

「ただし、自分の怪我は自分の責任だにゃー」

 

通りがかった軽車両が歩道へ乗り上げ、そのまま校門を出た女刑事を跳ね飛ばし逃げ去った。次々と色んな事が起こり2人だが、年の入ったベテランの方が先に落ち着きを戻した。

 

「おい、救急車を呼んでおけ。あと、肉蝮だが」

 

と振り返った時には銃弾で撃たれたはずの上に覆いかぶさっていた学生が立ち上がり伸びをしていた。

 

「ったく、迷惑かけるな。ただの打撲か」

 

 

 

 


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