「駄目だー頭に入らない。3日いないだけでこんなに進むのか、今度こそ赤点が見えて来そうだ」
昼頃になり渡されたそこそこ多い課題に追われ机に倒れこむ。元から悪いのにこんな難関校に入学させられた時点で詰んでいるが、どうにか食らいついてギリギリ回避している。
「何故か、現代社会とか科学はやたら覚えられるな。問題は現文と数学・・・あとは英語か」
ともあれ、平均的な学生よりは知識が身についている為、酷い点までは取ることはない。だが、ここはそれよりも更に上なので平均以上にならないとかなり危ない。
「楯無さんに頼みたいけどそれは無理だし・・休憩してまた頑張るか。あ、昼前か食堂も使えるようになったって言ってたし先に食べに行くか」
「は!今誰かに呼ばれたような」
「お姉ちゃん、大丈夫?」
もう怪我も回復し激しい運動でなければ動ける状態にまではなったが、夕方までは休めときつく言われている為大人しくベットに入っている。
「うう、かんちゃんからの扱いが酷いよ〜」
だが、あくまで外傷は治っても心の傷までは直すことはできないらしい。妹からの言葉でがっくりと肩を落とす。
「仲良しだなお前ら」
「妹さんはひつこくて困った様子にしか見えないわよ」
「あれでも愛情のつもりなんしゃないか?」
と遠くからその光景を眺めている2人だがだんだんとエスカレートしていき楯無が簪のベットまで歩いて入っていた。
「なっ!前よりも大きくなってる。これは一体!」
「どさくさに紛れて何やってるの!?」
「妹の成長を確認をするのも姉の務めよ!」
「そんなの聞いたことないんだけど!」
なんとも仲良しな2人を見ていると扉がノックされる。4人部屋の病室なので検診でもやるのかと思い軽く返事を返して待っていると
「これは、いつからこんな勝負下着を、まさか気づかないなんて」
「いやー!」
ついつい大声を上げてしまい、スライド式のドアが一気に開かれる。
「ん、大丈夫か。簪・・・」
部屋着のまま普通に入る馬鹿がいた。そして、目の前にある光景にフリーズして動かなくなる。女性が小柄な同性の女性に襲いかかっているアブノーマルな状態が
「き・・」
「あ、これは」
今更、言い訳したところで遅いだろう、一歩後ずさり走り出そうとするが
「「きゃああ!!」」
その前に悲鳴と机の上にあった花瓶と置いてあるはずのない灰皿が逃げる前に後頭部と鳩尾にあたり倒れこむ。
「ふ、不幸だ・・・」
「あらら、タイミングが悪い時に来たな」
ダリルの同情するようなセリフにフォルテも思わず笑っていまった。
「悲鳴か?まあ、治ったところを見る限り大した事ではないな」
「あ〜千冬ね、織斑先生」
「どうした一夏」
「その昼飯を持って来てくれたのはありがたいよ。けど、両手がまだ痺れが残ってるからスープとかに出来ない?」
「一々注文が多いぞ」
「分かったけど、病人に食堂の飯はどうかと」
と最もな事を言ったのだが丁度よく、く〜とお腹が鳴ってしまった。
「無理はするな、昨晩は夜遅くに食堂が動いてまともに食事を取ってないだろう」
「いや、だから」
「私が食べさせてやる」
は!何言ってんだよ千冬姉!
「何を驚く、お前も秋十と同じ反応をするな」
「え、まさか秋十にも?」
「同じように食べせた。すぐに寝てしまったがお前と同じく重症だから気にせんが」
気にするよ!なんか不器用なりに頑張って食べさせる姿を想像したら可愛いと思ったし。
「そろそろあの馬鹿どもは開放される。その前に全部食べきれないとまた問い詰められるかもしれんな」
鈴達か、絶対騒ぎそうだな・・・ああ、もう。腹くくって食べてやる。
「ほら、あーん」
うわー恥ずい!しかも、あーんってなんだよ。いつもの覇気が何処にもない!
10分後にはなんとか食べきり解放されたが、その顔はかつてないほど真っ赤になっていたと、先に治って自由になって訪れた鈴は言っていた。
『なんだ、ここは』
あたりは真っ暗で見えない。だが、うっすらと町のようなものが浮かび上がる。しかも、前の世界で住んでいた自分の街だ。
『どうなってる。街が倒壊してる!?』
高くそびえ立っていたビルも寮も全てがなくなって崩れていた。その時、後ろからの足音にとっさに動き静かに近くの瓦礫に隠れる。
『おい、今の声聞いたか?』
『ああ、間違いなく上条って男の声だ』
!なんで知ってる。くそ、情報が少ない。いきなりこんなの見えつけられても分からない。ん、なんだあの杖、妙に見覚えが
駆けつけて来た男は2人ともローブを被っている。そして、杖を持っている人間となると自然と分類が絞れていた。
『今から第七学区の一帯を捜索する。許可を取ってくれ』
片方は詠唱を片方は電話で誰かに話をしている。そして、終わったのを確認して視線で合図を送ると空に向けて何かを放つと一部の空だけが夜から昼のような明るさになる。
『げ、なんつー魔術だよ』
走って逃げるなんて真似はしない、近くの瓦礫の山の中に体を隠していたがその時に体に違和感を感じる。体が若干重い事に、だが、そんな事よりも気になっていたのは周りの事だ。
『話で聞いたけど、第七学区って言ったよな。神様のイタズラか分からねえけど、知ってる人を探してみよう。ここは寮に近いのか』
そもそも、あたりが全て建物が崩壊してるので見分けがつかない。せめて、分かるものでもあれば。
『あれは、』
そんな時に見つけたのが自分の若干曖昧な記憶から探り出す。2人が通らら過ぎて言ったのを確認して走り出す。何故か分からないが嫌な予感がしたのた。ここをのんびりと歩いていいことはないと悟った
『これが俺の寮?』
辿って来た道を走って来たが何故か自分の住んでいた寮の上条当麻の部屋だけが残っていた。階段も所々が砕け小さな地震でも倒壊してしまうくらいに。
『何があったんだ・・・行ってみなけりゃ分からないか』
崩れそうになっている階段を慎重に進み自分の部屋がある階までたどり着く。
『酷い、あたりが全部が瓦礫の山・・・』
暗くなっているせいで見えなかったが明るく高い位置に来たお陰で全貌が見えていた。見渡す限り瓦礫の山、そしてクレーターで溢れている。
『まずは、ここに入ってみるしかねえか』
ゆっくりと玄関扉を開けて入る。電気も通っていないのか暗くなりそれに何かが腐ったような匂いまでするが構わずカーテンを開く。
『どうだ人間、自分の育った街が崩壊している光景は』
ベットに腰掛けつまらないそうに話しかけてきたのはかつて散々に心をへし折って最後には心臓もろとも吹き飛ばした魔神だ。
『オティヌス、何のつもりだ!お前にはもう槍はない、それでどうやって』
『私が手を出さなくとも手下が勝手にやる。それにしても、随分楽しそうな世界だな。お前のお友達は大変な思いをしているのに』
『何だと』
オティヌスが軽く腕を振ると壁全体が剥がれ落ち、中にあったものがあらわになる。
『私には趣味がなくてな。どうせなら、嫌がらせくらいにはなるだろと用意してやった』
それを見ていき飲んだ、端から端まで全てに自分と関わった人間の生首が飾られていた。インデックス、御坂、御坂妹、土御門、神裂、ステイル中には一回あった程度の人まで飾られている。
『まだ足りない。これではお前も満足できんだろう』
『何が目的だお前の目的は前に自分のいた世界を作る事だろ!』
『それはもういい、あそこは私の作りだした現実だかここはお前の現実だ。ここでお前が折れたらどうなるか試したくなった、それだけだ』
驚きを通り越して怒りで満ち既に上条は握った拳から血を流す。
『全員を集めてくるまではまだ時間が掛かる。それまでは』
左手以外が動かなくなりベットに倒され、オティヌスは更に馬乗りになって話しかける。
『ここで大人しくしていろ。周りを歩いている連中には手を出さないよう言っておく、それまでここでゆっくりと・・絶望していろ』
顔が徐々に近づき、上条の意識をいつの間にか薄れて行った。
「は!」
勢いよく起き上がる。悪夢のような物から解放された事に一瞬油断してしまい。
「え、ちょっ!」
何故か乗っていた楯無さんに正面からぶつかった。しっかりと見る余裕は無かったが左手以外に何故か人がしがみついているように見え夢の妙な違和感が分かった。
「痛て、偶々なんだから許してくれてもいいのに。悪夢から覚めたと思った現実で制裁かよ」
あの後受けた平手打ちを受けた頬を抑えながら歩いて戻る。
「あの夢も可能性の一つだよな。改心して変ったんじゃないかと俺は信じてるけど、もしかしたら・・・そんな事を考える前に帰る方法だ」
「手引きは終わったか。問題途中で何も起こらないかだが・・・」
電気を置きながら呟くが心配事が多く浮かび上がり正直、気が気でなかった。
「まあまあ、束さんが直接行くのもありだけど。そこらへんの有象無象に見られるのも嫌だかね〜」
「国際手配されてる人間はここでじっとしていろ、騒がれて処理するこっちの身にもなれ」
そんなの知らないと言わんばかりに笑顔でぶいぶいとピースをする束に頭を抱えたくなったが、こればかりは自分達でやらなければならなかった。
「馬鹿は1人で行くつもりだろうが、せめてもう1人は連れて行くか」
「いっくんとちーちゃんで行かないの?」
とりあえずふざけた言い分についつい手が出てしまったが気を取り直して考える。この際、怪我の治ったばかりの誰を一緒に同行させるのもありだが思っている時、ふとまだ残っている2人を思い出した。
「いい機会だ。束、またハッキングをしてくれるか?」
「え、何々?またミサイルを撃つの?」
もう一度、粛清をして置き用を伝えると面白そうに笑顔を浮かべ、何処かへと走り去った。
「さて、私も交渉に行くか」
僅かに口が釣り上がる。一夏か秋十、鈴が見れば多少は嫌な予感がすると悟っただろうがここには誰もいない。それに千冬にとっては最大のチャンスでもある。かつて、一夏を誘拐した奴らを全て片付けられる人間も炙り出す事が。
「これがコアの入ったケースだ。数が多い分大きくなっているが束が作ったりオリジナルのものだから取り上げたコアが全部入っている」
次の日の昼間、代表として上条と元亡国企業に所属していたオータムが一緒に行く事になり、千冬からケースが渡されていた。隣では束さんがいつもどうり爽やかな笑顔を浮かべて千冬さんに抱きつこうとしている。もちろん、片手のアイアンクローで阻まれてしまっているが
「移動は制服なんですね」
「規則だ、そこは我慢しろ。だが、帰るときくらいは構わん」
少し強引じゃないかと思うが特に支障もないのでそのまま、送ってもらう。ちなみに移動は公共交通機関で行うので正直着くまでが既に不安だった。面倒事(不幸)が自ら寄ってくる体質のせいなので何もない事を願っても意味がないことは承知しているが。
「あれあれ〜楯無はいつになったら声をかけるんだ?」
「ちょっとフォルテちゃん、黙ってて・・」
「仕方ないわフォルテ。ファーストキスの相手なんだから・・ね!」
「ああ、もうそれは言わないで!!」
遠くから何やら騒がしい声が聞こえてくるが既に離れているせいで話しているのが誰だかは全く分からなかった。
とりあえず問題なく?国際空港まで到着して搭乗手続きを済ませた2人は椅子に腰掛けた。立っていてもいいがまだ搭乗になるまで時間があるので時間的には余裕があった。
「いや〜お前といると退屈しなくて助かる」
「その代わり、俺は大変な思いをする羽目になるんですけど」
「ははっ」
来る道中には変わった事が面白いくらいに起こった。偶々見ていたニュースで、近くの強盗犯が電車に乗り込んできたり。それから乗り換えたバスではバスジャックをしようとした人間が現れたりとのんびりとしたい上条には迷惑な事だった。
「にしても、まだ1時間もあるのか。何か食べますか?」
「そうだな、飛行時間は半日もあるし機内食でも食べたいところだけど」
とさりげなく見て来るオータムさん見て、何気なく用意してきたサンドイッチを差し出す。
「用意が良くないか?」
「念のためです。弁当もありますよ?」
最初こそ少し驚くが、受け取った本人は嬉しそうに開く。中身はおにぎりと唐揚げにウインナー、あとはポテトとブロッコリーとかなりシンプルだ。そして、箸とお手拭きまでしっかり付けられていた。
「何処まで想定してるんだよ」
「飛行機がハイジャックされた時の対処法・・くらいですね」
「いや、お前が言うと冗談で済まないからな」
「ちょっとそこのあなた!」
思わず溜息を吐いた。いや、吐いてしまった。なぜだが分からないが声かけられるだろうと知らないうちに感じ取っていたからかもしれない。
隣に視線を向けると視線で頑張れとだけ言われた。
行きませんでした。と言う事で次回は乗り込みます。