IS学園の異端児   作:生存者

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第60話

 

 

 

 

「ブリードお前に任務が入った」

 

「ん、なんで?これはウィリアムが行ったはずよ?」

 

「なんでも、篠ノ之束と第2回大会の優勝者もいるそうだ。人質を向こうでとって勧誘してこい」

 

「はいはい、部下はこっちで連れて行くわよ」

 

「勝手にしろ」

 

 

 

別に話しても被害のない話でとりあえず安心させるブリード。しかし周りからの視線がそれでは逃さないと語っている。

「で、来たわけか。暇だなあんたらも、学生の方がよっぽど忙しい」

 

「すまないが先こちらの要件から行く。私の妹は何処にいる、もし手を出しているならあとでその首を切り落とす」

 

「裏切り者に教えるとでも?私でなくとも好き勝手に手を出す輩をいるのにね」

思わずウィリアムが手を出しそうになるが、それを上条が遮り話を変える。

 

「そうか、じゃあちょっと来い。少し素直にさせてやる」

 

「誰に命令しているの?」

 

「はぁ。お前だ・・・クソ野郎」

上条から出た殺気に思わず口ごもるが手足を縛られた状態で抵抗もできないブリードは引きずられている。少し離れた物陰に入った途端に悲鳴と叫び声、終いには命乞いらしき声が響く。しばらくして戻ってきた時には先程の余裕のあった顔から酷く暗い表情になり、黙り込んでいた。

 

 

「じゃあ、最初の質問。あんたらの本部は何処にある?」

 

「支部は世界中にいくつもあって一つ一つの場所は最高幹部くらいしか知らないわ」

 

「なるほど、で貴様の本部とやらは何処にあるんだ?」

 

「この近くの近郊をうろうろしてる潜水艦よ。位置が毎回変わるから帰るのが面倒なの」

 

「潜水艦か、対空レーダーしかこの学園には存在しない。ある意味盲点だな。学長に改善を要求しておこう」

 

 

 

 

「ウィリアムが寝返ってブラッドが捕まった。対策を練る必要がある。何か意見はないか?」

 

「まずは人質の始末だ。それから、あの島ごと消せ」

 

「よろしいのですか?」

 

「どれだけ人が死のうと勝手だ。まずは奴らここに来れないようにすることが最優先だ」

 

「では、掃除を行います」

それから、3分後船内を警報とともに巡航ミサイルが放たれる。その威力は核ミサイルを凌ぐ改良されたものだ。

 

 

「・・・まずい、もう気づかれたか」

 

「あれってミサイルか?」

 

「そうだ、硬度はISでも撃ち落とされない程度にされている。あくまで普通の人間ならの話だ」

2人は見えているように話すが空を見たところで何も見えない。高さで言えば大気圏近くにあるのだろう。

 

「なら、そのままお返しでやる。クーリングオフでもさせてもらうか。時間が短いのが難点だ。あとは・・・俺の友達に手を出した事をあいつらには後悔させる」

着弾まで残り10秒、ようやく目に見え来た所だが、逃げるには時間が足りない。

 

「止まれ」

地面まであと5mのところでピタリと宙で動かなくなる。ブースターは付いたままなのだが、一切動くことはない。

 

 

「あんたらがその気なら俺もやり方を変えるか」

 

「ふん、ろくでなしには丁度いい罰だ。水中は全て私のテリトリーのようなもの、そこに残り続けるとは射場を常に居場所は教えるようなものだというのを教えてやる。これを借りるぞ」

宙に浮いていた全長7mのミサイルを掴み取り軽く狙いを済まして寸分違わず全く同じ方向に投げ飛ばす。流石に距離が遠いのか僅かに魔術で補強して。

 

 

「久しぶりの投擲だが、そこまで腕は鈍っていないようだな」

遥か数十キロも飛び、着弾した先では核爆発のようなキノコ雲が上がり数秒遅れて衝撃波が学園まで届いてくる。

 

「では、行くぞ。情けなどかけん、これは俺に対する挑戦と受け取ってやる」

 

「いや、そんな事しなくてもいいぞ・・・こっちに来い」

何かを掴むといきなら手を引く。すると、目の前に全長数百mもある潜水艦が出てくる。流石のウィリアムもその規模に驚気を隠せない顔つきになる。

 

「これで逃げられないな」

 

「・・ああ、では乗り込むとしよう。貴方達には逃げた人間の捕縛を頼む」

 

「了解だよ〜」

 

「構わん」

 

「分かったわ」

 

 

「乗り込むなら私達も行くわよ」

 

「スコールさん、大丈夫ですか?」

 

「今度こそ腐った人間を根絶するためよ。そのチャンスが目の前にあるのをみすみす流す事は出来ないわ」

物凄い笑顔で話すあたり相当根に持ってるのか。けど、アリサにまで手を出したやつには俺も容赦しない。

 

 

 

 

 

「どうなってる!深度が陸の上の表示になっているぞ」

 

「それより侵入者の排除だ」

 

 

 

「おい、どうなっている。ここは安全ではないのか!」

 

「安全ですよ。この部屋だけはシェルターと同等の耐久性もあります、それに加え一ヶ月程度の食料などの完備されていますから」

 

 

「お、ここか。厚さの1m程度の金属から無理矢理でもこじ開けられるな」

 

「私なら3mでもこじ開けられる」

 

「そこは張り合う必要はないはず」

 

 

「で、私がここに来た理由は分かっているよな」

思考を切り替え、お話(脅し)をする。今更相手を思いやる気持ちは一切ない、自分の前に立ち塞がるものは消すだけだ。

 

「君は、裏切りの幹部じゃないか。ここに何の用だ」

わざとらしい言い分にウィリアムは簡単に答える。剣を振り抜き首筋に押し付けるという方法で。

 

「私の妹を何処へやった。まさか、散々に遊んで捨てたというならここで拷問をして組織について洗いざらい吐いてもらう事になる。ああ、心配しなくてもいい。船員なら私達が全て片付けた、話すなら時間をいくらでもくれてやる」

 

「悪魔め」

 

「悪魔はどっちだ?」

上条が遮り幹部の男は舌打ちを仕掛けた、目を疑った。上条の隣に自分の愛する孫が立っているからだ。

 

「おい、どういう事だ!何故私の娘に手を出す!」

 

「お前らもやった事だろう?安心しろ、この子が壊れない程度に遊んで返しれやる。もしかしたら、死んじまうけど文句ないよな?」

 

「この通りお前には拒否権はない。いやならここで貴様の娘を拷問して殺すまでだ」

 

「この卑怯者・・ッ」

言い切った直後には壁ごと吹き飛ばされ地面に落とされる。流石に闇の中で生きて来ただけはある、あの高さから落ちてもまだ元気そうに動いている。

 

「こんな単純な蜃気楼に引っかかるか。これでもう少しいたぶって吐かせれば少しは使える情報が出て来るだろう。上条、お前には船内の調査を頼む」

 

「分かった。あんまりやりすぎるなよ」

 

「それはお互い様だ」

目を離した途端に悲鳴が聞こえて来るが気持ちは一切揺らがない。

 

 

 

「スコールさん、この船内だったら人質を何処に隠しますかね」

 

「人の考え方にもよるわね。でも、一番は厳重にロックされた金庫みたいな場所とか」

 

「見るからに頑丈な部屋ですか?」

 

「そんな感じね、ここみたいな」

通り過ぎようとしていた扉を指差す。よく見るとカメラも付き電子ロックまで掛けられ、指紋認証やら網膜検査の装置まであった。

 

「失敗したら射殺ね。物騒な組織になったものだわ。あれ、どうしたの?」

急に手を引かれて扉へと進んで行く。そして、

 

「優先する・・・人体を下位に・・壁を上位に」

すり抜けて、扉の奥へと入っていた。

 

「当たりのようね」

 

「そうですね」

ピンク色に染まった部屋の中で夜の営みをする男女。主に男が無理矢理でヤッている構想になるが。

 

「お楽しみ中に何の用だ?」

 

「そうだな・・・疫病神がこのふざけた組織に不幸と災厄をお届けに来た」

反論の余地と与えずに殴り飛ばす。意識も刈り取り、一撃で沈んで一安心したいところだが上条にはなかなか落ち着けない場所でもありスコールさんにいじられ始める。

 

 

 

 

 

 

 

「幹部もこの程度か。私の魔術も新しい使い方が出来るのようになったのはいいに経験だ」

地位が高く常に高圧な態度を取っている人間は、立場が逆になった瞬間にすぐに弱るなる。軽く見積もっても拷問に耐えたのは5分にも満たない、何とも口の軽い男だと切り捨てた。

 

「拷問になったが一部書き換えれば問題はない」

 

 

 

「そうか、了解した。束、中の制圧が終わったそうだ。今日中にでも潰したいそうだから船内でデータの回収に行くぞ」

 

「え、いいの?!やった!これでいっくんに手を出した愚か者をいたぶり倒せる」

 

「程々にな、まだいくつか開けてない部屋もあるそうだから、それにも気をつけるようにと」

 

 

 

 

 

 

「重い、無駄に鍛えてやがる。連れ出すのも苦労するな」

手に持っているのは排除、意識を刈り取って倒れた戦闘員。防弾服まで装備しているが3人はそれも関係なしに突入して制圧をした。

 

「これで80人。まだいるのか?」

 

「数えるだけなら手伝って下さいよ」

 

「それは、あれだ。男に力仕事を任せるのは当然だろ?」

何とも曖昧な答えだが諦めたように肩を落とし運び出す。

 

 

 

「はぁ、疲れた。ああもう!この後の生徒会に来る仕事の量が多くなると思うとやるきが出てこなくなる」

 

「そうだな。こんな事になれば1日で書類の山が2つは出来るだろ」

先のことを考えて絶望に拉がれる楯無とそれを眺めながら同情するような視線を送りながら倒れている戦闘員の拘束をしていく。まだ、秋十からの爆風の衝撃が残っているため体の動きは鈍い。

 

「無理にしないで休んでもいいのよ?」

 

「後輩がせっせと動いてるのに休めるか?それでなくとも助けてもらってるだ、こっちは」

 

「それもそうね」

 

 

 

ウィリアムの粛清を受けて動かなくなっていた中年の男が激痛から逃れ目を覚ます。

「くっ、こんな所で。捕まってたまるか・・・」

周りを伏せながら確認する、誰もこちらを気にしていない。

 

「へ、1人でも盾にすれば学生なんて黙らせられる」

無駄に長生きしてきた経験で出された最も逃げやすい方法。船内に戻った所で動かせるわけでもなく、救命ボートを使うなどもってのほかだ。偶然にも数mか離れた位置には真剣が落ちている。1人くらい殺して、中にしまっておいたナイフで脅迫には十分だ。

 

 

 

「やっと終わったー。はぁ、今度は壊れた瓦礫の撤去か・・・魔法使って元に戻したい」

いきなり直したらあの潜水艦が邪魔になるし、かと言って偶然でも秋十の目の前でやってこっちの世界に足を突っ込ませるとあいつもみんなにも被害が出る。

 

「お疲れ様、今日は一番頑張ったじゃないか」

その言葉いいとして出来れば寄っかからないで!失礼だがペアのダリル先輩よりは小さいが当てられればそれなりに感情が出てくる。

 

「あのフォルテ先輩、当たってます」

 

「当ててるんだ。今更気にするな」

気にします。これでも年頃の学生ですよ?と気持ちが完全に抜ける。一通り倒してもう安心できると思っていた。

 

「く・・・ぐあぁぁ・・」

自分の体を真剣が貫くまでは。心臓の位置を刺され膝から崩れ落ち倒れこむ。地面に倒れる寸前に悲鳴がおぼろげに聞こえてきた。

 

 

「ふはは、まだまだ若いな。周囲の確認もせずに安心しきるなんて」

 

「離しやがれ!」

手を後ろで組まれナイフを首筋に当てられる。流石に訓練しているといえど男女では体格差で負ける。

 

「おっと、ご自慢の体に切り傷が付いてしまうよ。ギリシャ代表のサファイア」

 

 

「まだ生きてたのね。敵がここまでしぶとくて面倒だと厄介なものだわ」

 

「それよりまずはフォルテの救出だ。上条は・・・急げば間に合う」

駆けつけた楯無とダリルが来るも遅かった、足元に剣を突き刺された状態で倒れたままだ。2人は殺意を隠しもしないで男に向けるが楽しそうな表情で笑う。

 

「そんな怖い顔をするな」

 

「そう、ならそのナイフを捨てて投稿しなさい。せめて、牢屋に入れるだけで済ませてあげる」

 

「牢屋には入らんな。こねで入る刑期はほとんど無くなるからね」

 

「人殺しでも?」

 

「それは君も同じさ。対暗部組織更識家の当主」

 

「なら、ここで殺した方がこいつの為にはなるわ。楯無、早く殺しましょう」

 

「この間合いでか・・・流石だレイン・ミューゼル、その美貌と賢さで多くいる世の中の悪を葬ってきただけはあるな。しかし、今は傷物になっているからそこまで価値はないが」

 

「レイン?ダリル・ケイシーよ」

 

「はて、学園の全員が知らないのか。そうか、誰もにも離していないのか。仕方ない」

 

「喋るな!」

 

「1年くらい前まで私の組織にいた彼女は・・・」

 

「元亡国企業、独立派のリーダー。スコール・ミューゼルの娘。産業スパイとしてIS学園に送り込まれ、戸籍は偽装。あとは意気がっていたのが気に食わなくて大人数で力ずくで強姦して初めてをあんたらが奪った。とまあ、ふざけて言ったみた。どうだ、当たってるところはあるか?」

何事も無かったように立ち上がるが、刺さった患部から今も血液が流れ出て痛々しい。

 

「なんだ、そんな怯えたような顔するなよ。ほら、さっきみたいに笑えよ。他人の不幸と苦しんだ姿をあざ笑う笑顔を」

 

「どうした、笑えよ。なんだそんな程度か?大したことないな幹部ってのは、餓鬼が近寄った程度で怖がる腰抜けしかいないのか?」

今もナイフをフォルテに向けていてるのも御構い無しに近づいていく。その度に笑顔が良くなってあるが、目が一切笑っていない。

 

「そうだ、一つ教えてやる。人間ってな一回刺された程度ならそうそう死ねえんだよ。例え心臓を刺してもな」

背中にある持ち手に頑張って手を伸ばし引き抜く。

 

「さて、今のところはあんただけみたいだし。罪滅ぼしとして精々ここで無様な姿を晒してもらうか」

ブチッと血管の切れる音が聞こえ、知らないうちに手に持っていたナイフを首に突き立て、

 

ボキッ

 

「え・・」

恐る恐る見るとナイフを持っていた手が”反対側に”へし折れている。

 

「誰が動いていいと言った?」

一歩で手の届く範囲まで移動して軽く手を払っただけで腕をへし折った。さらに反論の余地すら逃さずフォルテ先輩を引き剥がして蹴り飛ばす。人が傷も付かず、痛みもあまり感じない程度に。ついでにフォルテ先輩は後ろだと蹴りやら拳を振り回した時に当たる可能性もあるのでそのまま、抱えたがすぐに後ろに下げる。

 

 

「待て、やめろ。金なら払ういくら欲しい!」

 

「金だあ?そんなもんてめぇらの汚れた金で足りてる。どっかに隠し持ってるからそこから引き抜けばいい。もちろん、何処にあるのか知ってるからな」

 

「なら、女だ。いい女をいくらでも知ってる!」

 

「てめえみたいなやつから勧められるくらいなら自分で見つける。ふざけた話をしてる暇があるなら早く逃げたらどうだ?ただし、逃げられるものならな」

 

「あ、悪魔め!」

 

「悪魔はあんただ。俺はせいぜい厄介者か、疫病神のどっちかだ。くたばれ馬鹿」

軽く息を整え、地面に倒れて動かない男の首を持ち上げまず一回、ぶっ飛ばす。

 

「さて次だ、これは俺の大切な人達に手を出した分のむくいだ。一回で済むんだ、安いものだろう?」

不気味なまでに優しい笑顔のまま拳を構える。

 

「ただし、これで記憶が無くなるかもしれないけど我慢しろよ?男なんだからよ」

この後に味わう地獄の先例として軽く意識が無くなる程度でぶん殴る。地面引きずるとこのおっさんは死ぬ可能性もあるので瓦礫の中に一つあった壁のような塊にぶつけて眠らせる。手加減は上手くできるし、脳震盪くらいで済むだろう。

 

 

「今更になってそんなこと言われても、人の見方なんて変えねえよ。人殺しだから?とんでもない組織の人間だった?そんなに肩書き程度で扱いを変える大人から受けとるものはない。生き方は人それぞれだ、他人を不幸にして楽しむ人間がいちいち口を出すな」

 

 

 

 




次回あたりのこの話題を終わらせたいと思ってます。

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