IS学園の異端児   作:生存者

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第56話

 

 

「はあぁぁ!」

ザン!と最後に一撃がカスタムされたラファールに入り大きく後ずさる。

 

「逃さない、山嵐」

24発ものミサイルが一斉に襲いかかりまさしく黒焦げになって出てくる。

 

「まだだ。零落白夜発動」

一夏の単一仕様能力の零落白夜は秋十のとは違い、周りからエネルギーを吸収することで発動する事が出来る。つまり、今回のような異常な量のシールドエネルギーを持った相手ならば半永久に発動ができ

 

「一夏!もう一回頼むわよ!」

装甲を凹ませることも可能な、重量のある青龍刀で背後から入り一時的に怯ませ退避させる時間も与えない。

 

「うおおぉぉっ!!」

全員の足止めのかいもあり連続して攻撃を加えるもでき、短時間で保有エネルギーを激減させられる。そして、もう1人同じ零落白夜を使用できる者がいる。

 

「落ちろ」

ガラ空きになった場所に綺麗に決まる。才能もさながら少しの努力で実力を伸ばせる秋十はその強みを発揮する。一夏の動きを観察して自分なりの解釈で動きを真似して同じような一撃になるが、威力は一夏の一振りに劣っている。

 

「・・・空気を下位に・・・ISを上位に」

瞬間加速のような速度で移動し、目の前まで迫りブレードを振り上げ溜めを作る。

 

「・・・ISを下位に・・・ブレードを上位に」

残ったとはいえ少なくない量の一撃で削り取る秋十。必要以上に前に出る姿は成果主義の彼の考えを主張しているようなものに見え、それを知っている専用機持ちの1年組は何も言わない。一夏はすでに次の標的を相手にする事を考え全く気にしていない。と言うよりも毛嫌いもしていないし、割り切ってうまくつき合う方法を見つけている。

 

「これで残りは1つだけね。あれ、上条君は?」

周囲を見渡すが何処にもいない、手が空いた3人で探してみることにしたが見当たらない。あるとすれば所々でぶつかる音がするくらいで・・・

 

「え、もしかして」

最後に音がした場所へ向かう楯無とそれに付いていくフォルテとダリルだったが、予想どうり2人が向き合って立っている。

 

「あら、面倒臭くなって来たわね。確かにISなんかに乗るよりも生身の方が動きやすいかもしれないわ」

装着していたISを解除して日本刀を取り出す藍。上条も解除して素手の状態で構える。

 

「それでも武器は使うのかよ。それ妖刀か?」

 

「よく知ってるじゃない。見たことある?」

 

「いいや。そのつばについてる血を見ればわかる」

まじかで見ないと分からないほど薄くしかも小さい範囲に付いていない血を指差す。

 

 

「そう、なら分かるでしょ。この刀の呪いは」

 

「血を吸わせるほど切れ味が増していく。更に持ち主も血を求めて人を切るってところか?」

 

「ピンポン!大正解。でも、あなたのこれに切られるのよ」

 

「はぁ、素人の剣くらいなら俺でも避けられる」

 

「それは残念、私は今も経験者なのよ。逃げられると思ってるの?」

もはや、狂気としか思えないほど邪気な笑顔を浮かべて首の位置で振り抜く。

一度でも斬られれば笑い事では済まない。1ついいニュースがあるとすれば冷静さを欠いているおかげで隙は残っていることくらいだ。目線の向きに来る一振りを見極めて回避する。

 

 

「魔術に頼って結局は武器に頼るのか」

首にあたるすれすれの場所で止まる。いや、あたる前に刀を持つ手を左手で先に止めたことでそれ以上に進む事を防いだ。

 

「魔術ならそれ1つに専念してこい」

容赦無く構えた拳で殴り飛ばす。何の守りもなく直撃して

 

「あんたってなんか、昔は苦労してそうな気がするんだけど。実は今みたいになる前は結構な時間精神的にやられてたのか?人格が2つ、いやそこまで自分の性格を押し殺して変わったのか」

 

「ッ!」

 

「まあ、人の内心を探るつもりはないけど。今の世の中になる前は大変だったんだろ。会社は男が常に強者みたいなもんだからな」

 

「同情してつもり?あんたみたいのされると無性に腹が立ってしょうがないのよ」

 

「そうかもしれないな。なんせたかが十数年しか生きない世間知らずのがきなんだから。でも、そんな俺でも辛そうか顔してるけどな。どれだけ時間をかけて、一体何人を犠牲にしてるのかは知らねえけどよ」

 

「ここで説教でもするつもり。あいにくそんな暇はないわよ!」

 

「男装女卑の世の中で酷く劣等感を味わった後のISの世界展開。そのおかげで女尊男卑になり今までと真逆、優越感と支配する力に踊らされていたんだろう」

そういう人にはよくあった、娘の玲奈に1学期に見下したセシリアや街で出くわした女性の大半。

 

「おとしめ差別して虐めてきた人間を今度は自分がそうしてやる。歯向かうなら権力で、常に女性という最強の特権を持ったあんたは復讐として見下した全ての男をねじ伏せて来たんだろう」

いままで溜まったものを吐き出すように男という道具のように扱い、高い地位に上がりこき使う。世の中にはしっかりと対等に話し合って一緒に頑張る人も中にはいるだろうがそう居ない。少なくとも上条は自分友人以外でなかなか見た事はない。

 

「どういう経緯で裏社会に手を出したかは知らないけど。行動に移すってことは、それだけやられてた事を根に持ってるか、あとはもう自分がどうなってもいいと考えたのかどっちかだろうな」

 

「よく過去が分かるのね。ええ、確かに前は弱かった会社でのし上がるのなんて一苦労よ、職場の陰口に陰湿ないじめ。中間管理職あたりになってからは上と下から、あるはずの無いクレームで頭がおかしくなると思ったわ。けど今は違う。この力でまだ私に屈辱を与えた人間を殺してあげるのよ」

 

「・・・そうか」

 

「なにその顔は、まるで安心したような」

 

「ああ、何の理由もなしに人を襲ってるのかとずっと思ってたからな。でも、人を殺したことは許容できない」

 

「へぇ〜じゃあ、こうなっても?」

強化された足で踏み込んだ衝撃で地面にヒビが入る。向かったのは先に落ちていったラファールの操縦者、まだこちらが向かっているのに気づいて居ない。ここままだと殺されると判断し

 

「まずい!逃げろ!」

声を出し、そのまま迫る。振り下ろされる刀を蹴り飛ばすことでギリギリのところで切り落とされることは逃れた。

 

「何のつもりだ、こいつはもう戦う気は無い」

 

「部下の始末も上司の仕事よ。戦意の有無は関係ないわ」

 

「させると思うか?」

 

「だったら止めてみなさい、ヒーローさん。私は悪者、殺してでもね」

必殺の一撃を何度も受け流す、刃が付いているのは片方のみ。それを把握して手のひらで起動を少しだけずらす。

 

「その熱心な心は別のところで使ってくれ」

わざと大きく動いて隙を作り振りな体勢にする。真上からの一閃、筋力と移動速度まで強化された重くまだ捉えられない一撃を目をつぶって両手で受け止める。

 

「く、真剣白刃取り。この土壇場でやるなんて」

勢いも全て無くなり、完全に捕らえられ刀はピクリとも動かない。

 

「あんたは完全な悪にはなれない。なりきってるだけだ」

手を離して距離を取る。

 

「なら、本物の悪党にでもなってやるわ」

取り出したのは前も見た衛星レーザーのスイッチ。だが、一度押すとそのまま捨てて踏み潰す。

 

「はは!これでもう何もかも終わる、今度のはさっきほど優しくないわ、この島ごと消し炭にしてあげるわよ。さて猶予は1分、あなた1人ならまだここから逃げられる。けど、他のみんなまで見殺しにはできないでしょう」

 

「あんたの様子だと範囲はこの島か。でも、」

ゴスッと鳩尾を殴られ痛みのあまり倒れこむ。

 

「さて、やっと倒れてたから。あとこっちだけか」

 

「大丈夫?!上条君怪我はない!?」

素早く駆けつけて来た楯無さんだが、かなり近い。あと少しで鼻が当たりそうになるくらい。

 

「大丈夫です。怪我はないですから、あと近いです」

はっと気づいたのか少しずつ離れる。

 

「まあ、これはISだけならどうしようもないな。あと30秒もないか」

左手を空に掲げて立つと、何か目に見えないものが上条の周りを覆いつくして行く。そして、光が輝きを増したと同時に

 

「吹き飛べ」

大地が揺れる、島ごと消し飛ばせる最大出力で放たれた真っ直ぐに降り注ぐレーザーを縦に割く。しっかりと確認は出来ないが、それ以降何も落ちてくる気配もなく、運が良ければ衛星ごと破壊出来たのかと思う。

 

「え、今のは一体。何なのあれ」

 

「・・・」

まあ、こうなるだろうと分かっていたことだ。驚くのもおかしくない、こんなものを見れば。あの気楽に話していたフォルテさんとダリルさんも力は抜いているが俺から注意を外していない。

困った、犯罪者に仕立て上げられた記憶はあるけど、それとはまた違った気不味さがある。でも、とりあえず玲奈がまだ捕まってから縄を解かないと。

 

 

「・・・優先する」

言葉の意味を知る前に走り出す、そのまま瓦礫の山に飛び込んで爆発から身を守る。

ズガガガァッと連続した爆発のようなものが起こる、脳裏ではこんな武器も兵器も無かったはずと考えている。

 

「殺す気か」

 

「そのつもりは無いよ。ここでお前を半殺しくらいで身の程を分からせるくらいだ」

銃を構えたまま生身で宙に浮かぶ秋十。

あの目は本気でやるつもりだな。

 

「どうりで家から無くなったわけだ。まさかあの日に盗んだのか、ラウラの話を聞いて」

 

「ああ、偶然にも聞いたよ。魔術だって?最高じゃないか、どの業界でも才能の有無はあるんだ、全てにおいて才能に溢れている僕にとっては ・・・」

異様な手が浮き上がる、あれは・・・ここで出してくるか。本気で運悪さにため息をつきたくなる。

 

「3人とも後ろに!」

怪我どころか殺しかねない一撃が迫り声を上げるがなかなか反応してくれない3人。

 

「いや、まずはあれを・・・」

 

「早くしろ楯無!」

3人を自分の後ろに転移させ右手を突き出す。聖なる右、じゃんけんで例えるなら手を出した時点で価値が決まるような反則級の魔術。

突き出すのと同時に辺り一帯が全部が壊れ近くにあった校舎が8割全壊、シンボルのタワーもあと少しで倒壊しそうになる程亀裂が入る。

 

「今日だけで二回も魔術使いに会うなんてな。プロでも素人でも油断は禁物か」

足元は1mほど反動で動いてしまった。流石に右手でもあれを打ち消すのは無理がある。やっぱり相手の強さに応じて出力も上がるのはきついな。

 

 

「なあ、1ついい?これの強化に幻想殺しが必要って書いてあったのを見たんだが何処にあるんだ?」

痛え、何回も正面から受けたく無いな。まったくとんでもない奴が持って行ったな、これならゴミ箱に入れておけばよかった。壊す時だけは簡単に出来るようにしたのは良かったが。

 

「そうだな、俺に一撃でも入れたら教えてやる」

少なくとも探しても見つからない物だ。ここにあるを知ってるのは俺・・・くらいだ。もし、あいつが見てるなら話は別だけど。

 

 

「ヘぇ〜たった一撃?」

あれに入れていたのは一介の魔術師には使えないものが4つ。それと錬金術、それだけだ。けど、両方とも使える人間は脅威だ。少なくと俺はも簡単にしか使ったことしかないし、使いこなせる人間を見た事がない。

そんな方を考えているうちにブレードを構える。来るか

 

「・・・優先する。空気を下位に、ISの動きを上位に」

速いな、目で追うのは無理だ

 

「優先する」

目の前からなら対処は出来る。それに次に来るパターンもある程度予想が付く。殺しにくるやつと、ただ攻撃してくるやつなら、2つまで絞れる。

 

「空気を下位に・・・刃の動き上位に」

多分、織斑先生でも防ぐのが精一杯だろうと思われる速さだ、キレも違う。真後ろにいる楯無さんを突き飛ばし上半身を一気に下げて避ける、あと一歩遅れていた装甲ごと切り落とされていただろう。

 

「運良く避けられたな。でも奇跡は何回も続かないよ」

確かに運が良かったよ、俺はな。楯無さんは力加減を間違えて吹っ飛ばしてしまったけど。

 

「魔術に俺に頼って勝っても意味はないぞ」

 

「それはどうかな。少なくとも僕にとっては意味はある、これをみすみす逃すつもりはない」

つもり、ここで屈服させたいのか。ここで誰も見てないなら良いとしても自分の脅威をさらして周りを遠ざけるだけになるだけだ。

 

「そうか、でもここだと周りに被害が出る。決闘ならアリーナの中でやるのはどうだ?少なくともフェアな戦いになると思うが」

 

「決めるのは僕だ。けど、君がそこでやりたいなら受け入れてあげよう。君の誠意の見えてくれるならね」

上から目線の言葉遣いに戻ったな。けど、ここでやれば中にいる玲奈はタワーが倒され圧迫死。そして、地下にいるその他大勢の人にも被害が出る。別にプライドなんて俺にはない、ここは正直に頼もう。

 

「分かった。・・・アリーナでやらせて下さいお願いします」

土下座をして頼み込む。下を見ているため秋十の表情を確認することはできないが相当悪い顔をしていると予想できた。

 

「しょうがないな、君の誠意をよく見せてもらったしやってあげようじゃないか」

歩み寄って頭をポンポン触りながらわざとらしく言う。普通の人ならここで歯ぎしりをしているようなところだが、一切そんなものは感じなかった。

 

「5分後に第三アリーナでやろうか。ISはなしで乱入も無しだからな」

先に向かっていった秋十を見送ると倒れている楯無さんの腕に玲奈の件についてメモを書いて歩いて行く。

 

「玲奈の母ちゃんは・・・まだ生きてるな、瓦礫が壁になったか」

暴れまわって出来たくぼみが身を隠す場所になり、胴体のほとんどは傷はない。しかし、足の一部が挟まれている。

 

「はぁ、仕方ない。。これだと骨折か?まあ、出血もしてるしとりあえず洗って・・・」

何故か包帯を入れる癖があり、近くに落ちていた木の枝を持ってくると少しずつ巻いていき固定する。消毒は不十分だが、簡易的にここまで出来れば問題無いだろう。

 

「さて、本題だ。秋十をほどほどに殴って落ち着かせる方法を、残り3分で移動しながら考えないと」

 

 

 




瞬間移動・・・座標をセットする必要はなく(視線の先に・言葉で表した場所に大雑把な)自分の望む場所にどんなものでも動かす事が可能。建物であれそれを押しのけて出る、ただし失敗すると大怪我になる事も。自分には使えない。
全能のトールさんは世界が勝手に自分の望む位置へ動くなんてチート魔術になりますが。(ダメージを受けずに攻撃が必ずクリーンヒットする位置に瞬間移動し続けるなど)

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