IS学園の異端児   作:生存者

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第53話

 

「少し多いな。とりあえず一体一体確実に」

何度も何度も引き金を抜き、書いた音を響かせる。島を囲むように現れたゴーレムを1番近いものか、手を出してきそうなものを瞬時に判断して銃弾を命中させていく。しかし、装甲が厚く中まではダメージが通らない。

 

「仕方ない、これで切断するか」

アスカロンと取り出し構える。色は赤に一度、黒龍を展開すると飛び降りて真下を通りかかったゴーレムを上から切り落とす。剣の重量が重かったせいか上に上がろうスラスターを吹かせても上がる事なく地面へと落下した。

 

 

 

 

「先に校舎の中に入って生徒の避難先に行え。まだ潜んでいるかもしれない」

ISに対抗できるのはISだけ、そう考えているイーリスは先に行かせると言いながら兵士達を校舎内へと避難させる。多少男女の中で溝があるとはいえ死んでほしくはないと思っているイーリスは戦闘に巻き込ませないためにそう指示を出す。

しかし、その行く手を遮るようにゴーレムが降りてくる。イーリスも専用機ファング・クエイクを出して対抗しようと構えるがその前を黒いISに身を包んだ上条が通りかかる。

 

 

「おっと、ここにもか」

標的として狙いをつけ、斬りかかってきたゴーレムのブレードの軌道を先読みし、最低限の動きで避け青色に輝く大剣で胸のど真ん中に突き刺す。動かなくなったのを確認して引き抜くが深く刺しすぎたのか少し手間取っていた。

 

「全員、無事ですか?」

 

「こっちは無事だ。一撃で仕留めてくれたおかげでな」

安堵の表情を浮かべていたが出てきた一夏達も加わり、まずは生徒を避難させることにしていた。結論から言って、白兵戦を最も得意と上条と楯無さん、ラウラ、マドカでアメリカ軍の隊員と一緒に生徒の避難を手伝う事になり、他の人は校舎に向かってくるゴーレムを押し留めるか、破壊する事になった。もちろん、理由は銃弾相手でも守る術があるためだ。

 

 

「と言っても、難しいんだよな。校舎は壊れやすいし遠距離から問答

無用で撃ってくるから急いでやらないと」

室内での銃撃戦を強いられる、ラウラのAICで銃弾を受け止めている間に撃ち合いを力押しで抜けて1つ1つの教室に出向いて避難をして行く。校舎自体かなり頑丈に作られている為、ミサイルが直撃しない限り壊れることはない。

校内でも知名度と人の良さを兼ね備えた楯無さんと半数のアメリカ兵の人に移動をお願いして、もう半分の人達で校内に残っている残党を片付ける。

 

「なかなか進まないか、流石にこの状況で急いだと言われて無理があるわね」

 

「しかし、あと少しのところまで来てる事を考えれば順調では・・」

 

「それはいい事だと思ってるのよ。けど、今更考えてた事でここに襲撃して来た理由が分からないのよね。表世界に全く気づかれない組織がここに籠城をする理由が」

 

「ISが欲しいのなら、ここの生徒を殺すなりして持って行けばいいのに、手を出したのは男性適正者のみ。その原理を調べたいなら、おくせずに解剖だってするくらいの行動はするはず」

 

「・・・復讐という可能性もあるのかと」

 

「復讐ね・・・」

そもそも、復讐する相手も実行した人も分からないので考えたところで意味がなかった。

 

 

その頃、ゴーレムとの猛攻をしのぐ専用機組。ペアの連携の攻撃で鉄壁と言われるダリルとフォルテも硬く厚い装甲を壊すのには苦戦していた。

「硬すぎる、どうやったら壊せるんだ」

 

「焦ってもしょうがないわ。こっちの方が不利なんだから少しは守る事に集中して」

と言うもののだいぶ押された状況でそんな余裕はない状態だった。ただのISのように地道に攻撃を当て続ければ勝てる試合と違い完全に動かなくなるまで破壊しないといけないのだ。

 

 

 

「こいつら、本当に硬いわね。どうやったら壊せるのよ!」

 

「鈴、文句は言ってもいいから避けることも考えてくれ!」

6人がかりでようやく一機を破壊出来たが残りは40機以上もあるため、減ったとは言い難い。

 

「シャル、もう一回パイルバンカーを頼めるか」

 

「難しいよ。全員でまた抑えるにしても残りの数とエネルギーの残量を考えると」

くそっ!と一夏は舌打ちする。しかし、現実と言うのは常に非情だ。完全に壊れるまでは永久にプログラムどうりに動き続けるゴーレムに取り囲まれてはまともに集中攻撃は出来ない。

 

 

「全く、こんな事なら最初から出た方が良かったな。それともしごきが足りなかったのか?」

その声とともに上から2つに両断されたゴーレムの胴体が落下してくる。思わず、手が止まった、目に映ったのは現役時代IS操縦者で練習、公式戦無敗で勝ち続けた最強の選手。専用機、暮桜を纏った自分の姉だった。

 

「だが、よく耐えたな。あとは私達で倒す」

私達?全員がそう思ったしかしよく考えれば、他にも何人か学園外の人は見たがいくらあの人達でも無理じゃないかと。

 

 

「私が言ってるのは、あの馬鹿な事だ」

あの馬鹿・・・千冬姉が言うとすると2人に絞られるし、ここに来そうな人といえば・・・あ

 

「もしかして、た・・」

 

「やった!ちーちゃんの現役時代の姿だ!うふふ、彼の写真も焼きまして、カレンダーとして使って後はいっくんの写真さえあれば・・ふふふふふ」

いつも通りのメルヘンな服装で、空中を普通に飛びながらカメラで写真を撮り続ける束さんの姿が映る。何でだろう、この人がいるだけで緊張感がなくなる。

 

「お前はいつまで遊んでいる。さっさと仕事をしないか」

近づいた束さんの頭を鷲掴みにいてメキメキと力を込めて行く。千冬姉、そろそろやめてあげて普通の人からしないような音が聞こえて来るよ。

 

「だってだって、こんな時しか写真に収められないじゃん♪」

常人なら意識を失って痙攣をしているだろう握力でも笑顔でピースサインを決めながら堂々と言う。

 

「こんな時に楽しむな。これで役に立たないなら約束はないだ」

 

「え!!酷いよちーちゃん。それはなしだよ!」

後ろに文字どうり、がーん言葉に出て来るくらいに落ち込む。一体何の約束を交わしたのか気になってしょうがない。それになんでこんなに表情豊かに楽しんだいろう。

 

「なら、少しは動け」

 

「もう、分かったよ。じゃあ、いっくん。みんなの避難を手伝ってあげて、向こうも手間取ってるみたいだから」

 

 

「でも、千冬姉と束さんでどうにか出来る数じゃ」

 

「出来るか出来ないかじゃない。やるんだ、そしてこれは教師の私の仕事だ。お前達にはひとまず生徒の世話を頼む。一夏、秋十指示は2人に任せる」

 

「じゃあ、お願いね〜。とう!」

去り際に束さんを潰そうと接近したゴーレムが束の楽しげな声とともに出た刀の一振りで両断される。いつの間にかさっきの悔しさが何処かに行っていた。

 

 

 

 

「よし、これで全員だな。でも、山田先生とか見てないような」

「確かに、職員室も通ったのにいたのは一部の人だけ。もう一度戻って確認してみる?」

 

「なら、アリーナを一回見てみるので一夏の手伝いを頼めるか?」

 

「分かりました」

 

「お兄ちゃんの所に行かないと」

 

「お前のお兄ちゃんではない。私の兄上だ!」

 

「後から来た人間風情が妹ぶらないで!」

こんな時に喧嘩しないでくれよ。しかも、走りながらやるとは器用な真似するな。そんな2人を見送ると上条は刺繍の入った黒いグローブをはめる。

 

「俺もそろそろ行こう。あの数は無理があるからな」

 

そして、専用機ミステリアス・レディに身を包む楯無さん。

「私も行くわ。いつまでも後輩ばかりに迷惑は掛けられない、少しは先輩を頼ってもらうからね」

 

「あれ、専用機はどうしたのよ?」

 

「アリーナのロッカーに入ってます」

温厚な楯無さんの笑顔徐々に変わり最後には。馬鹿じゃないの!と怒られながら叩かれていた。

 

 

 

「なあ、スコール。このやり方の奴って前の組織にいた気がするのは気のせいか?」

 

「あの、オータムが冷静に考えるなんて・・・明日は雪でも降るのかしら」

 

「おい、俺だって考えるぞ!」

 

「ごめんね、あなたがそんな事を言うとは思わなかったから。でも、私も同じ事を考えていたわ。私と同じ幹部クラスの人間に1人心当たりがね」

 

 

 

 

 

「クリアパッション」

水蒸気爆発とともに一体のゴーレムが吹き飛ばされる。いくら、硬いとはいえスラスターでも耐えられない風圧に合えば押される。

 

「フォルテちゃんにダリルさん、大丈夫かしら?」

 

「おお、なんとかな。いつも厄介だと思ってたお前の十八番に助けられるとはな」

 

「こっちも助かったわ。いくら鉄壁と言われていても所詮はスポーツの範囲内の話だから」

 

「あれ、上条は何処に行ったんだ?」

 

「上条君ならさっきアリーナに」

と話しかけたがとっさに後ろから飛んでくるレーザーを避けたため途中で途切れる。

 

 

 

「は!」

横に振るわれる5本の光線にゴーレムが薙ぎ払われる。くっきりとその跡が残りの壁や柱にも大きな傷が出来た。

 

「あんまり時間がない、押し通る」

両手から出る10のブレードで薙ぎ払われ分厚い装甲を引きちぎり宙を舞う。それでも、まだ止めずとどめに上から振り下ろして潰す。

 

「ふぅ、指先が痛え。あいつこんなの笑顔で使ってたのか恐ろしい奴だな」

 

「まだ残りは多い、早く・・・」

ガチャリと真後ろからライフルを突きつけられる。偶々、横にあった鏡を見ても姿が見えない。

 

「なんだ、まだ残ってたのか。校舎に残ってたと思ったのは勘違い。まあ、何処かでステルス迷彩があるなんて聞いたことがあったのは本当ったのか」

 

 

「まさか、人間だけと思ったのか?」

 

「いやーそんな現実が優しいとは思っていませんよ」

 

「そうか、ならこんな現実も受け入れられるか?」

暗闇からうっすらと現れる訓練機の影に予想どうりかと考えるがその顔を見た瞬間に顔色が僅かに変わるがすぐに戻り、笑みを浮かべる。

 

「実力のある教員を洗脳してるのか。俺にもやったようにナノマシンを直接打ち込んだみたいだな。あとは透明人間か」

何処からか取り出したライターを着け上に投げると、一気に身をかがめ銃弾を避ける。広い廊下になっているため、銃弾とライフルのレーザーを空間を大きく使い左右に避けていると警報機が鳴り響きスプリンクラーが作動する。

 

 

「お、いたいた」

何もない空間に視線を向けると上条の拳が放たれ、鈍い音とともに壁に何かがぶつかる。更にアッパーで殴り飛ばし、ピシャリと水溜りを踏む音が聞こえすぐに振り向き回し蹴りを放ったあと、横に踏み込んで肘を打ち込む。

 

「なん、で俺達の居場所が・・わかる」

ステルスが解け、全身に装甲わつけた男が姿をあらわす。

 

「いくら、透明になったとは言え雨粒が空中でとまってるのは不自然だろ?」

実体がある以上見えなくても水なんかが降ってきた際に弾き飛ばすのは当然。もしそうならないなら、多分それは人間じゃない。昔見ていた、映画で雨の中、透明人間が歩くという場面を思い出して試した。

しかし、先ほどまで際どいところを狙って飛んできた弾丸がやんでいることに気づき振り返ると構えたまま固まっていた。手元が震え必死に抗っているのが見て取れた。

 

 

「・・・いくらナノマシンで動きを強制されているとは言え、意識である程度押さえてるか。今すぐ、楽にしますから待っててください」

ブレードを起動させ、近づくと一撃でシールドエネルギーを全て削り強制解除すると機体から引きずり出し壁に寝かせると不意に、立ち上がる。

 

 

「ほぅ、ただの餓鬼と思っていたのはこちらの勘違いか。流石、私のいた組織を壊滅させただけはあるな」

廊下にいくつかある、扉から出て来る長身で引き締まった身体つきの男。

 

「こんなだだっ広い場所にこの程度しかいないはずがないのは分かってた。最初からここに来るのを予想していたのか」

 

「確かに予想はしていたが、予想というよりも確信に近いな。まあ、そんな事はどうでもいい。ここで貴様を殺せれば私には十分だ」

 

 

「軽々と殺すなんてふざけた言葉を出すな」

 

「この口を黙らせたいなら実力で示す事だ。あいにく、君の先輩方は忙しいようだからね」

 

「あんたをすぐに片付ければいいだけの話だ」

地面を踏み込んで一気にせまり拳を突き出す上条

 

「喧嘩程度の殴り合いが効くとは思わない事だな疫病神」

それを正面から受けるように踏み込んで、全体重の乗った拳を突き出しぶつかり合う。

 

「パワーはあるが当たらなければ怖くない」

 

「言ってろ」

蹴り、一瞬で顔に迫るものを当たる寸前で避けられる。更に振り落としかかと落とし。

 

「全く、分かりやすい。こんな奴に手こずるとは世界的な裏組織も落ちたものだ」

 

「分かりやすいのは昔からだ。こればかりは治せなくてな」

 

「今になって仇になったな」

今度は男の方が一気に迫る。縦拳にした速い一撃が心臓を狙って近づく。左手でそれを払い、とっさに右足を突き出し飛んで来るはずの左足を押さえつけ一歩下がる。

 

 

「喧嘩も馬鹿には出来ないか」

もう一度、振り上げられる足に腕でガードして懐に入ると左で鳩尾を狙って放つが、その横から脇腹を狙う男の腕が伸びるのが見えた途端に肘で弾き飛ばす。さらに反対の手からくる拳を腕を巻きつけ脇に固定して蹴りを放つが、脇に激痛が走り歯を食いしばって強引に力技で壁に投げ飛ばす。

 

「痛ってえ、人間の指が皮膚を貫通するの初めて見たな」

脇から血が流れているのを無視していつもの喧嘩スタイルに構える。

 

「以外と効くものだな。だが、その辛そうな顔を見るのがまた実にいい」

 

「この変態野郎が」

 

 

 

 

「いや〜ちょっと辛いかも」

 

「無理しないで本音で言ったら?」

 

「正直、無理」

 

「本音で言えとは言っても、そこまで断言されるとこっちも士気が下がるぞ」

あれから10分で5機を何とか鉄屑にして耐えるがまだこの場には10機以上も残っている。楯無のエネルギーの残量も全機落とせるか怪しいところまで削られてもいる。せめて、上条がいればと考えてしまうがいつまでも頼れないと思っている。

そんな時だった、高エネルギー反応ありと警報がなりとっさに振り返りその場を離れた。特大のレーザーがさっきまでいた場所を通過してそれから少し遅れて爆発が起こる。爆風で大きく飛ばされる3人、流石にもう無理だろうかと口に出す楯無だったが、ザシュ!と何が突き刺さる音が聞こえた。

 

「・・・え」

 

「あいつ、見た事があるぞ」

 

ゴーレムの装甲を突き破り飛び出た槍を引き抜いて3人のいる方向を見る。

「3人とも大丈夫かしら?」

赤髪のツインテールにかなり露出の多か成る程着崩れした着物で現れた女性。

 

「第2回モンド・グロッソを優勝者。決勝で織斑先生が帰還した事で勝った、アリーシャ・ジョセスターフ・・・」

 

 

 

 

 

 




という事で、終わりました。次回はもう少し投稿が遅れてしまうかもしれません。

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