IS学園の異端児   作:生存者

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第48話

 

「これでナノマシンはどうにか出来た」

山奥の古びた倉庫の中、”本物"の上条当麻は錆びついた階段を登り地下から上がってくる。服も着替えたのか中学時代の制服になった。

 

「これであいつらは死んだと思うだろうし・・・夜あたりに下見してくるか。昼間だとバレバレだからな」

出たのは山奥にある廃工場地下は新しく作りかえられ実験場にもなるが、ほとんど処刑場所のようにもなっていた。見張りというには少ない5人程度しかいないかったので一度の戦闘で片付け。別の牢屋に捕まっていた人質は解放し。先に返したあと用事がある為残っていたアリサを工場の事務所で待ってもらっていた。

 

「お〜い。大丈夫かアリサ。怪我はないか」

 

「うん、何とか」

 

「膝に擦り傷か、これは洗えば何とかなる。こんなところでも水が通ってるのは助かった」

外に設けられた蛇口で膝を洗うといつも持ち歩いている包帯で傷口に巻く。

 

 

「まだ昼間か、何日監禁されてたっけ?」

 

「私は帰りにその拐われたから、4日かな」

じゃあ俺は3日くらいか、と考える。まともな食事すらだされないでよく生きられたもんだと思う。3日前のあの後ここに来て、アリサが人質にされ、とりあえず降伏して捕まったな。今日の朝いちでキリスト教の十字架見たく磔にされて、刺殺でもするのかと思ったら手足に釘を打たれ灯油をばら撒いで火だるまにされたよな。

 

「あとは帰るくらいだ。家までは送って行く」

 

「え、いいよ。マネージャーさんから迎えに行くってメールが来てるし」

 

「え?」

 

「え?どうしたの」

なんでそのマネージャーはここが分かっているんだ、それにまるでタイミングが良すぎる。時間は10時過ぎか、ちょうど俺の死んだと勘違いしてる時間だ。だとするとそいつは間違いなくあれだな、

 

「そうか・・・なら待ってみる。俺も何処にいるか分かってないしな」

 

「うん、じゃあメール返しておくね」

 

「あ、アリサ。俺の事は伏せてくれ、1人でいるって返してくれないか?」

 

 

それから2時間後、偶々近くに川がある事を教えてくれたアリサと川魚を取り少しはお腹を満たして待っていると、一台の車が近づく音が入る、まだ気づいていないのか奥に来ている。

 

 

「あ、アリサさん。ここにいたんですか。無事でなによりです」

 

「!須郷さん」

 

「もう大丈夫です。家までお送りするのでどうぞ」

手を取り車に戻ろうとするがその間に、誰かが入ってくる。アリサの座っていた位置もわざと影になるような場所にされていたことに気づく。

 

「お疲れ様です。随分救出が遅くなりましたね、携帯にGPSを着けたのに」

 

「な、なんでお前がここにいる!お前は死んだはずだ!」

上条を見るなりいきなり、震えだす。いつもと違う様子にアリサは驚いている。

 

「そのまま帰すつもりなら、俺は出るつもりは無かったはずなのにな。何かしら弱みでも握って脅すだろうから止めに入った。やり方が典型的で笑える、もう少し頭を働かせろ」

やろうとした事は簡単だ。アリサにとってある種、心を支えているものを奪う事で喪失感を与える。そこに異性の中で最も近しいマネージャーの立場も使って須郷が人として弱くなっている所に現れ優しく接して心を支配する。その後は全てこの男に自由になるという事だ。

 

「ガキにでも見抜かれるような、フリはやめろ」

 

「ふ、ふふ・・全く何処まで面倒なんだこのクソガキ。お前が生存しているなんて予想外どころか、想像を超えているよ。考えていたことも全部見透かされているなんて」

 

「人の内面はぱっと見じゃ分からないけど、なんかやってるのは一目で分かる。何回、修羅場を抜けて来たと思ってる。作った顔の内側くらいはいやでもこっちは分かるんだよ・・・おい」

いい加減に頭にきたのか、鞄に入れた銃をアリサに向ける。鞄も捨てアリサの首をガッチリと締めている。

 

「いい迷惑なんだよ、これで金も入りいい女も手に入れて、何処かに逃亡して優雅な暮らしを出来ると思った居たのに。この立場はこの仕事の為に手に入れた。収入もいい、こいつに出て欲しいと賄賂まで貢いでくるスタッフもいて最高の仕事だよ。けどな、それだけじゃ足りないだよ」

目がいっている、それに首から腕を外し胸に手を当て楽しみ始めている。

 

「面白い夢物語だ。煩悩の塊だな、これが学生の目指す大人か心配だよー

 

「おい、お前。自分の立場が分かってんのか!?こいつの命は俺が持っているも同然なんだよ!」

 

「それでか?言いたくないが上司を見習ってくれ」

そう言ってアリサに目を向けると何か察したのか、頷き足を思いっきり踏む。鍛えているだろう男には効かないだろう来る直前に安全靴に少し手を加えた物を履いてもらっていた。

「痛っ!」

激痛で大きく腕を上げてしまう。戻るまでのその数秒で5mの距離を一瞬で縮め鳩尾に一発いれて膝をつかせる。

 

「もう十分だ、お前には牢屋の中で過ごすのが似合う」

完全にキレた。床に落ちた銃を拾うと容赦無く発砲する。

 

「ちっ、こんな時に頑張るなよ!」

アリサを抱えはしるしかし、銃弾の方が早く打ち出され仕方なく工場の壁にアリサを寄っかからせ上条はそれに被さるように背中を向ける。乾いた音がする度に足や背中に激痛が走るが涼し顔で受ける。その内、ガチャリと弾切れを起こす音が聞こえる。

 

「さてと、それで終わりか」

そう言い残し、殴り飛ばす。それで力尽きたのか起き上がる事はなかった。念の為、連絡をしないように携帯は半分に折って捨てると、アリサととも山を降りていった。

 

 

 

 

「で、何のつもりだ束。急な現れて」

 

「えへへ、ごめんねちーちゃん。ちょっと会いたくなってね」

 

「なら、この部屋をどうにかしろ」

 

「ちーちゃんだって片付けができないのに人に言わないでよ〜」

楽しく会話をしているが束は現在進行形で千冬のアイアンクローを笑顔で受けとめている。

 

「本題に移れ、キリがない」

 

「はいはい〜」

いきなり目の前に現れて、ちょっも。とついてきて欲しいと言われて気がつけばやつの隠れ家についていた。私にはこの後、仕事が山積みになっているのを分かっているだろう。

 

「はい、直球で言うとね。今はIS学園に行かないほうがいいよ。ほら」

束の持ってきたPCに学園内のカメラ映像が流れて、中には見慣れない警備員もおり1つ画面を変えると息を飲む。

 

「なるほど、確かに今は戻らないほうが懸命だな」

5つ程見ただけでも15人は確認された。このぶんだと、全部100は行くな。今日は行事になっていたが学長は夫婦で旅行中だったのが幸いだ。

 

「何故こうなっているのか、お前には分かるか?」

 

「それに限っては私には分からないよ。いっくんの晴れ姿を見よとハッキングして・・・待って待って特に悪意はないから!」

当たり前のように言う束に思わず拳を出してしまうがいつもの事のなので諦めて降ろす。

 

「気が付けば占領か。相手は分からないのか?」

 

「それはもう天才束さんが調べてあるよ〜。なんと、元亡国企業の幹部たちだ!」

 

「それを喜びながら言うな」

 

「まあまあ、大丈夫。それをよく知ってる人のところに行けば分かるから〜」

 

「よく知っている・・・あの2人か」

 

「うんうん、じゃあ行ってみようか!」

相変わらずこいつの行動原理が分からん、好奇心だけで頭が出来てるのかと疑いたくなることもある。それにしても、こいつの隠れ家はどうなってるんだ?出たのは住宅街なのに窓から景色は空になっていたように見えたが。

 

 

 

「んん〜今日の営業もそろそろ終了かしら」

 

「まだ1時間近く残ってるのに、気が速いぜスコール」

 

「もう人も来ないし構わないでしょう」

夕方から夜に変わりかけている頃。所変わって、そこから遠く離れた喫茶店ではモデルといっても過言ではないくらいの容姿を持った2人の女性が話していた。どちらの経歴も知らなければ、男どもが寄ってくる程に。

 

「今日は終わりね。オータム、今日の夕飯は何がいいかしら?」

 

「・・スコールの作ったものならなんでも」

 

「あら、可愛い」

頬を染めながら言うオータムにクスリと笑いながら抱きしめると閉店の準備を始める。店のカーテンを降ろし、ドアに掛けていた営業中と書かれたプレートをしまうつもりだったがいきなりドアが開き息を切らしながら1人の男が入って来た。

 

「はぁはぁ、疲れた。近場の山奥からと思ったら、とんでもなく離れなんて聞いてない」

 

「よっ久しぶりだな」

 

「・・オータムさん。はぁ・・・お久しぶりです」

相当疲れているのか全身を使って息を整えている。ついでに背中には女性が乗っかっていた。

 

「あら、有名アイドルと駆け落ちでもしに来たの?」

 

「そんな事しませんよ!ちょっと拐われたかれ取り返しに行ったくらいです」

 

「流石ヒーローさんだ」

毎度呼ばれるその名前に違和感を感じてしまう。そんな大層なものでは無いし、俺がやっているのは偽善だ。正義の味方なんて綺麗なものになるつもりもないが。

 

 

「で、こんな日にどうしてここにいるんだ?お前はなんかの行事があるはずだ」

 

「えっと、それがですね・・・」

 

「こんばんわ〜」

あ、この声は俺の中では2人しかいない。多分、ここに来るとなるとより絞られる。この気まずい雰囲気の中でよりとんでもない事が起ころうとしているのは把握できた?

 

「こんばんは、束さん」

 

「ほぅ、3日も無断で休んで終いには誘拐か。少し罰が必要のようだな」

 

「・・・こ、こんばんは。あの、あれは仕方なく。別に織斑先生の授業を受けるのが嫌で休んで訳じゃありませんから」

額から冷や汗がダラダラと垂れて来る。凄い形相で見て来るから怖いんだ!と内心叫ぶ。

 

「それはいい、後日居残りでみっちりと教えるからな。そこの2人にも聞きたい事がある、もちろんお前からもだ」

とりあえず、今まで学校を無断欠席していた経緯と今日あったことを全て話し解放された。背負って来たアリサは二階の家に寝かせて夕食の支度を手伝っていた。

 

「なるほど、総力を結集して占領か。だが生徒が無事なのは何よりだ、しかし問題はどうやって助けるかだ」

 

「急ぐのは良くないよ〜相手の事は知っておくのが1番だしね」

 

「誰がいるかは分かるとして。どうやって行くかも考えないと、大人数で行ってもバレれば殺され事も加味する必要がある。この映像を見る限りはちょっと早とちりな過激派の人間が多いわ」

 

「ちなみにお前はどうやって行ったんだ?」

 

「まず、途中まではレールの上を走ってあとモノレールの連結部分に隠れて向こうまで行きましたけど。あの時はまだ警備が甘い部分が多いし普通に行けたような」

 

「今は周りから分からないように守りを固めているでしょうね。でも来賓として来たお偉いさんが何日も戻って来ないとなると、流石に向こうも気づくだろうから・・・どんなに遅くても時間としては約2日ね」

それ以上は多分攻めて来る可能性がある。と言う。無理もないだろう、1日の数時間をここに来る為に割いて来るのだから。

 

「今日は忙しいしこのくらいで終わりにしましょう。時間をかけずに終わったとしても、自分が万全でないのは得策じゃないわ」

 

 

 

 

「あれ、ここは」

いつの間にかベットの上で寝ていたことに気づく。最後に覚えているのは駅のホームに行こうとしたら押し倒されて・・・思い出せない。何処かの家なのか清潔に整えられ、きっちりと整理がされていた。下の方から話し声が聞こえ階段を降りて行く。余談だが、いい匂いまでして足を滑らせて階段から転げ落ちそうなっていた。

一階に着くと、料理をテーブルに配膳していく上条の姿があった。

 

「お、アリサ起きたか。ちょうど夕飯が出来た所だけど食べて行くか?」

食べる!と即答えてしまった。数日間まともに食事が出来なかったのか。それとも自分の好きな人が作ったものだからか。

いつの間にか、かなり凄い人物たち(うち2人は誰もが知っている人)と混ざって食事をしていた。が、あっという間に楽しい時間は終わってしまう。

 

「この皿は何処に置きますか?」

 

「それは2段目の棚にお願い、あとそのカップは下の所ね。柄の似たものがあると思うから」

 

「あの、この食器は」

 

「それはここだ。あと、こっちにその器を入れてくれ」

全員で分担して片付けに入る。ちなみに家事がほとんど出来ない千冬と束は床の掃除とテーブルを片付けを進んで始めていたのには苦笑したが。そして、大体終わった頃にスコールから

 

「これで一通り終わったし上条君はアリサさんを送って行ったら?」

と言われ家まで送る事になった。現在時刻は夜9時、駅まで送ろうと考えていたが今日のような事があった事もあり、家まで送る事にした。前提として本人の了承も得たということもあり。

 

「いや〜楽しかった。面白い人達だね」

 

「面白いと言うか変わり者だと・・・」

 

「え、あのアリスみたいな服を着てたが篠ノ之束さん!?」

 

「そうだよ。気づかなかったのか?」

 

「全然」

名前は知ってるが、どんな人かも知らなかったので普通に会えた事にびっくりした。それと同時に

 

「当麻君の周りには面白い人が多いね」

 

「面白い・・・まあ考えればそうなるか」

面白いどころか、聞いた人が疑うような人とも知り合いだったりするが。

 

 

 

それから数十分後、、電車やバスを乗り継いでアリサの家の前まで来ていた。何日も無断でいなかったので入るのが怖いのかのが扉の前で動く事なく2分が過ぎた。

「アリサ、話せば許してくれるし。あれだ、心配してならない状況かもしれないから入った方が」

 

「無理だよ、門限だって超えてるし。その上何日も戻ってないから」

 

「はぁ・・ほら、さっさと帰るんだ」

インターホンを押し、自分は早々に離れて行く。追いかけようとした時にはすでに姿はない。振り返り見えていたのは、自分を心配していた出て来た両親と姉姿だった。

 

 

 

 

 

 

 




眠いですが、気力が保てるうちに投稿します

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