IS学園の異端児   作:生存者

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第41話

「あれ、委員長アリサちゃんは何処に行ったんや」

 

「アリサさんなら、運営の人がアンケート用紙が切れちゃったかって一緒について行ったわよ」

 

「あれ、こんなところまで来るはずないぜよ。アンケートは通りか、そこに面してる店の中くらい。ここまで来るのは酔っ払った大人か、もう帰る人くらいにゃー」

 

「・・誘拐でもされたのかな」

 

「いや、誘拐じゃなくて拉致でもあってる。現にこっちにものすごい速度で移動してる」

信じられないと言う顔になっている吹寄から視線をはずし道路を見るとかなり速度を上げて通り過ぎる一台の車が目に入る。

 

「あれか・・・」

上条の体が消える、すると近くで急ブレーキをかけたような大きな音が聞こえてくる。それから、悲鳴に近い声が数回響くがそれからは一切なくなり、後部座席からアリサを抱えながら出て来る上条が姿を現した。

 

 

「案外ハンドブレーキって効き目があるな。ついでにへし折っておくのも悪くないかも」

 

「かみやん、アリサは大丈夫かいな」

 

「問題ない、薬で眠らされるみたいだ」

 

「で、上条。お前はどうするつもりだ?まさかここで止まるような人間じゃないんだけど」

 

「まあ、はい。すまん、手伝ってくれないか?」

 

「分かった。かみやんあんまり無茶な事は押し付けないで欲しいぜよ」

 

「わいも同じや。アリサちゃん手を出されたんや黙って見逃すつもりないで」

 

「はぁ、分かったわよ。私も手伝うわよ」

その時、少し上条が笑ったに笑みを浮かべた。

 

「ありがとう、みんな」

全員が手伝ってくれると分かると思わず本当の笑顔が出てしまった。それに気づいた一部の人は驚いた様子になっていたが。

 

 

「で、どうするんや」

 

「場所はこれに書いてある。あと移動方法だけど、遠いな、しかも最寄駅からもそろそろある。仕方ない運転して行くか」

鍵を差し込み、右に回しエンジンを掛ける。当たり前のようにやってのける上条に全員が注意するがこれが1番速い方法なのだ。それを理解し大人しく乗ることにした。中に乗っていた大人達はと言えば車内にあったガムテープで手足を固定し、起きないように薬が染み込んだハンカチを口元に押し付け、テープで巻いてトランクの中に押し込んでおいた。

 

「今更だが、何処でこの運転技術を学んだ?」

 

「親父の運転を見て覚えたんですよ。オートマチックなら馬鹿でも動かせますから助かりました。あと、警官に目をつけられない事だけを祈るだけです」

 

「かみやんの祈るは正直あてにならんな、バレたらどうするや」

 

「その時はこの変装用のマスクと、その人間と同じ声を出せるように出来るテープ。あとは拝借した運転免許があるんでこれでどうにかする」

 

「ちょ、あんた何処でそんなの手に入れたのよ」

 

「夜の通販で売ってたし。あと、何処かにいる天才科学者に、面白いそうだからってもらったくらいですね」

もちろん、運の悪いおかげで警官と鉢合わせしたが、変装道具を持っていたおかげで何とかごまかせた。何で学生をこんなに乗せているのかも聞かれたが、一言、帰りの電車賃が無くなったから送り届ける。昔、自分も同じ事をしてもらったので、今の子達にでも恩返しがしたいと。それだけ言うとあっさりと引いてくれた。

 

 

「随分うまいセリフが出て来るけど」

 

「一体、何回迷惑に巻き込まれたと思ってるんですか?そこら辺のざる警官なら、納得できるような話くらい出来ますよ」

 

「うちの町なんてざる警官より酷い気がするにゃー」

そんなこんなで目的の場所まだ着いた。民家が多く並んではいるが妙なくらいに静まり返っていた。

 

「さてと、着いたな。中に行くのは俺達で行くか。吹寄は監視してくれないか、多分逃げるやつがいると思うから」

 

「なんで私に任せるの?」

 

「吹寄ならやってくれると信じてるからだ。姫神と雲川先輩もお願いします。アリサが起きたら看病でもしてあげてください。あと、やばかったら電話掛けろよ」

そのまま、ドアを閉めるとビルの中に入って行く。見張りらしき人間が数人いたのでなるべく静かに片付けた。

 

 

「危なかったわ。まさか、見張りが3人も居たなんて気付かなかった」

 

「何故か不規則に動かし面倒だな。車に置いて来た薬品の1つでも持ってくればよかった」

 

「でも、ここまで来たし後は、この扉だにゃー。ここから入っても嫌な予感しかないぜい」

 

「それなら、これを使うか。土御門、中に入って位置を教えてくれないか?」

 

「え、あんまり無茶な事はやめてほしいぜよ」

 

「簡単な事だ、音を立てずに中に入って何人いるか教えてくれればいい」

 

「かみやん、かなり無茶な事を言ってるのに気づかないのか?」

 

「ある程度は理解してる、とりあえず念のためこいつは持ってけ」

足元に落ちていた、黒い物体を土御門に投げ上条は青髪と上の階に移動する。しばらくすると電話がかかって来たので通話状態にしてもう一度ポケットの中に戻す。

 

「スタンガンか、確かにこの建物だったら有効な武器だ。連絡はすぐに行える。あとは扉を開ける時と歩く時音を消すだけだ」

1人通れる分だけの隙間にゆっくりと扉を開き中に入るとそこら中に置いてある荷物、元からあったであろう机に隠れながら進む。

 

「思ったより人が多いぜい。見た所10人くらいか、集まってるのは部屋のど真ん中。ん、これは」

床に落ちていたディスクを手に取る、入れ物も近くにあったので題名までも一緒に見たが半分まで行ったところで床に置く。

 

『かみやん、女性は1人。周りに囲むように6人、カメラを取っているのが少し離れた位置に1人。壁に沿った位置に編集係が2人。あと、1人は奥にある扉の前でずっと立ってるぜい』

 

『分かったこっちも片付け終わったから行く。青髪、落ちるから準備』

 

『ちょっ、落ちるってなんや。まさか』

 

『そのとうり。土御門、扉の方逃げないように頼む』

凄まじい音とともに天井が崩れ落ちガラガラとコンクリートと塊が落ちてくる。それあいずに土御門も動く、椅子から立とうとした2人に側頭部から回し蹴りを入れ、ふらつきながら起き上がった人間に膝蹴りを?そして、怯んだ僅かな時間で衣服を掴み前に地面に叩きつける。

 

「これで2人かにゃー」

 

「調子に乗るな小僧」

目の前から折り畳み式のナイフを取り出し、迫るしかし軽々と避けすれ違う時に足を引っ掛け転ばせる。そこから足を振り上げ、かかと落としで沈める。

 

 

落下した場所に誰も人はいなかったのだが、天井ごと崩して現れた2人に唖然としている6人を軽くのしておく。元々裸のやつは数えるつもりがなかったが、見ていて同じ性別の人として恥ずかしいので素早くやっておいた。扉の前に立っていた人間は殴ろうと出した手を受け止め、捻り後ろに回り土御門が走ってくると持っていたスタンガンで大量の電流を流し倒す。

 

「これで終わりか」

 

「そうやな、とりあえずあの人に毛布でもいいから掛けないか?」

あの青髪が優しい?!と土御門と一緒に驚いていたが、先に邪魔なカメラを壊しておく。コンクリート片を投げて壊したので指紋も残らない。ついでに縛っていた紐を解いておく。

 

「あ、まだ1つ見てない部屋があったな。ちょっと見に行くか」

 

「あ、あそこか。でも、鍵がかかってのにどうやってはいるんや?」

 

「面倒だから、鍵ごと壊す」

上条達が行った1つ上の階に移動すると、いと部屋だけドアが重厚になっていたが、鍵穴を蹴り上げて外して中に入ると段ボールが何段も重ねられ部屋を埋め尽くしていた。中身はCDが箱を埋め尽くすほど入っている。

 

「中身は察しがつく。問題はこれをどうやって全部ゴミにするかだぜい」

 

「1つずつ壊してもきりがないし。一辺にやっても全部出来るかどうか」

 

「そうや、かみやん。雲川先輩に聞いてみるのはどうや」

 

「いいかもな。そしたら、一回戻るか」

一度、駐車したところに戻り雲川先輩に事情を説明すると、あっさりと手を貸してくれた。もちろん、俺だけは1つ言うことを聞くと約束されたが。すぐに携帯で何処かに電話をして急用が出来たと帰ってしまった。途中まで送ったのは言うまでもない。

助け出した女性には服がなかったので吹寄と姫神に資金を渡し買って来てもらうことにした。男が買っている時点で怪しまれるどころか、通報されかねない。念のため車は言っちゃ悪いか近くの邪魔にならない路上に放置して、外に出て祭りに戻った。女性はそのまま帰ってしまったが。

吹寄と姫神、車での移動中に目を覚ましたアリサは行きたい店があったと途中で別れた。去り際に何度もありがとうと感謝されたが、周りからの視線が刺さりかなり気まずかったが。

 

 

「随分騒がしい祭りになったな」

 

「かみやんがいるだけで絶対に何か起こるからにゃー。また、楽しい思い出だにゃー」

 

「そうやけど、あの人大丈夫なんか?」

 

「大丈夫ぜい。女性には今色々と特権があるからにゃー。こんな時は便利だぜい」

 

「お、兄貴〜。ここにいたのか〜」

間延びした聞き覚えのある声、土御門は一瞬にして振り返り抱きしめていた。いくら好きだらといって公然の目の前ではやめた方がいいだろ。

 

「舞花!いつからここに」

 

「いつからじゃない、ずっと待っていたんだぞ。と、すまないが上条、兄貴は借りて行くからな」

 

「おう、自由に持ってってくれ」

 

「おれは物じゃないにゃー。じゃあまたな」

 

「じゃあな、ツッチー。あ、かみやん、わいもそろそろ帰るわ。そろそろ行かないとバイトに間に合いそうにないかもしれん」

 

「じゃあな、また会おう」

去って行く青髪に手を振りって見送る。これから特に目的もないので花火を見て帰るつもりだ。

 

「バイトか、うちの学校禁止されてるからな。やってみたいな、まっ俺みたいな奴を入れてくれるのは、相当な変わりだろう」

やってみないかと聞かれたら多分やるだろうなと、内心思いながらもそれはないと確信する。まだ、時間も残っていたので露店に寄って何度か串焼きやかき氷などを食べて時間を過ごす。なお、射的なんかの賞品があるゲームをやるとやる度にどの店でも毎度出禁を受けてしまい。酷い時はやる前から来ないでくれと言われてしまう。もちろん、賞品目当てでやっていた訳ではないので欲しい人に渡していった。

 

いつの間にか、人の少ない場所まで歩いていると頭上でパンッパンパンッと規則的な音が聞こえ見上げる。

「お〜綺麗だな、やっぱり花火は見て飽きない」

 

「あと少しで2学期、初めての文化祭に体育祭か。あとはいやなテストが二回。はぁ、テストなんてもうやりたくないし問題が難しいからな」

 

「他にも、楯無さんに任されてた派遣部員が思ったより大変だな。ただ部活の日もあったり、練習試合みたいな日も参加になるし」

度々面白半分で出されたりしてとても困ってたりする。出た以上は手加減なんてものはあまりしないが。

 

「親父もそろそろ仕事で家を離れるし、最後は気合を入れて飯でも作るか」

あと少しで終わる休みをどう過ごして行くかを、考えながら帰路につく。もっとも静かに終わることを願って・・・

 

 

 

 

 

 

 

 




自動車の運転は免許を取ってからして下さいね

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