クラス代表選が終わり自由になった上条は1人グランドを走っていた。グランドといっても一周1.5kmもある大きなものだったがジョギング感覚で20周近く走り終わりロッカールームで休んでいた。
「相変わらず大きいなここのグランド。はぁ今日はこのくらいにして休むか」
ゆっくりと出てくる汗を拭きなが椅子に座ってやすんでいた。人間離れした身体能力は持っているがそれでも休みがないのはかなりきつかったようだ。
「お疲れ様上条君、なかなか辛かったんじゃないか?」
「はい、確かに辛いです。それに試合の時に少し無理したんで余計に・・・ってえ?」
「気付かなかったのか、あんなに集中してたのにここじゃ隙たらけだそ」
ふふんと笑いながら見ていたのは3年で唯一の専用機を持っている。アメリカの代表候補生ダリル・ケイシーだった。上条は驚き慌てて立とうとしたが床に垂れていた汗で滑り前のロッカーに頭からぶつかった。
「痛っ!なんでこんな時ばっかり当たるんだよ」
上条はロッカーに当たった部分を摩りながら立っていたが目の前のダリルは思いっきり笑っていた。
「ははっ別にそんなに反応しなくてもふふははっ!」
完全にツボに入ったの腹を抱えながら笑い始め、それから治るのに2分近く掛かった。
「それでどうして来たんですか自分のところに。別に大して有名な人間じゃないですよ」
「代表候補生を無傷で勝つなんて簡単にできることじゃないからな。まあなんだ私と手合わせして欲しいんだがいいか?」
「それなら自分でなくても一夏でもいいと思うますけど」
「はぁ違う私はお前とやりたいんだ、いいか?他のやつは部活だったり、生徒会だったりで出来ないんだよ」
「だから暇そうな自分を選んだと」
「・・否定はしない。だが実力があるやつがその2人以外だとなかなかいなくてな、それでお前に頼んでいるんだけどダメか?」
「別にいいですよ。いつでも、朝でも放課後でも」
「ありがとう、で代わりにお前からして欲しいことは何かないのか?」
「そうですね、・・IS関連の内容が全く分からないので教えてもらえませんか?」
「え?」
「え?何か問題でありましたか?」
「いや、気にしなくていい。思ったよりの普通の答えが返ってきて驚いただけだ」
「・・先輩は俺がどんな人間だと思ってるんですか」
「外見は普通だけど中身はかなり異常なやつ、かな?思春期の男子のことだから正直一緒に寝て欲しいですとか言い出すのか思ったからな」
「ぶっ!俺にそんな趣味ありません!勝手に決めつけないでください」
「悪い悪い、こういう可愛いやつを見つけるといじりたくってな。それじゃあまた今度」
ダリルは満足したのか軽く手を振るながら去っていったが上条は少しゲンナリとしていた。
「この学園には普通の人はいないのかよ。まあ、何度もいじられたことはあるけど。もう少しやってくか」
上条はトレーニングルームに行きまた、倒れる寸前までやり続け部屋に戻った。
「お疲れ上条って大丈夫そうじゃないな」
「ああ、それにしてもこの散らかり方さっきまで誰かと遊んでたのか?」
「勝利の祝いに来たのほほんさんと谷本さんとお菓子食べたんだよ」
「のほほんさんか、確か結構な甘いもの好きだったよな」
「全員でも食べきれないくらいの量を持ってきたんだよ、あれは参ったな。しかもなかなかマイペースで話し方も独特だからな」
「そう言えば話が変わるけど誰になるんだろうなクラス代表」
「意思は伝えてあるんだし、なることはないんじゃないか?」
上条はそのことが気になっていたがまずはシャワー浴びて汗をながした。その後上条は1人で食堂に行っい。一夏はすでに行ってきたらしく、テレビを見てリラックスしている。
「最近になってようやくこの場所になれた気がする」
上条はカウンターのようになっているテーブルに座り頼んだラーメンを食べていた。時間は7時過ぎて部活が終わってそのままきた生徒がたくさん訪れていた、するといつからか隣に水色髪の更識簪が座っていた。
「上条君久しぶり」
「久しぶりだな簪さん。姉さんとは上手くいってるか」
「とりあえずは上手くいってるけど・・まだ姉妹としてはしっかりとは仲良くできてないかな」
簪が見ていた方向をチラッと見ると食堂につながる廊下の端からじっと見ている人がいた。
「あそこから見てるくらいならここに来て話をすれば良いのに」
「上条君と違って私はすぐに行動出来ないから」
「そんなものかな、別に出来ないことではないだろうけど」
「あの時もそうだったよね、私には自分から何かをするって事が出来ないから」
「でも少しは仲良く出来るようになったのは自分から言ったからだろ、それでも十分な進歩だよ。じゃあまたな簪」
「うん、じゃあね」
部屋に帰っていく上条に軽く手を振り見送ると、また自分の頼んだ魚定食を食べ始めていた。
「簪ちゃん、隣良いかな」
いつからか隣に来ていたのは生徒会長であり姉の更識楯無だった。
「何?」
「う〜んもー。なんで普通に呼んでくれないの簪ちゃん?」
「それならせめてストーカーみたいな事しないで。面と向かって話してよ」
「うう、でもそれならなんであの上条当麻君とは普通に話せるの?」
「上条君には助けてもらった事があるから、普通の人よりは信用出来る」
「え、いつ?いつそんな事がかさあったの?!」
「もう少し離れて」
気になった楯無は簪に迫ったが一言で離れ簪が話し始めるのを待っていた。
「私がまだ姉さんが嫌いで1人でからにこもってた時に1人でショップモールに行ったのは知ってるよね?」
「もちろん、知ってるわよ。って、あ」
「・・・その帰りに歩いてたら偶然、前を歩いてた不良の人にぶつかっちゃってすぐに謝ったんだけど妙に絡んで来た時に助けてくれたの。なんの見返りも求めずに、なんで助けたのって聞いたけど、俺が助けたかったからだって言ってすぐにどこかに行っちゃったんだよ
「どこかの恋愛小説でも読んでるみたいね〜。でもそれがどうしたら信頼につながるの?」
「目が本気だったからかな、それに他の人と違って流されず自分のやりたい事を貫き通せるところ」
「もしかしてかんちゃん上条君の事が好きなの?」
「・・分からない、ただ一緒にいてモヤモヤするくらい」
「へぇ〜そんなの、私も彼に興味が出てきたわね」
「またストーカーみたいなことでもしたら敬語で話すよ」
「やめてかんちゃん、絶対にしないから!それだけはやめて」
重度のシスコンになっている楯無には他人として認識されたくないのか必死にお願いしていた。
「冗談だからそこまで心配しなくてもいいよ。あと姉さん、聞きたい事があるんだけどいい?」
「なんで聞いていいわよ、お姉さんに任せなさい」
どんと胸をはり答えるが簪からの質問ですぐに引っ込んでしまった。
「じゃあなんで私と距離を置いてたの?」
「そ、それはちょっと」
「あれ、姉さん?いまなんて言ったっけ?」
「うう、ごめんそれは今はね」
「別にいいよ私も無理に来ていてごめんねお姉ちゃん」
「え?いまなんて!」
「どうしたのお姉ちゃん?」
「う、ううかんちゃん!!」
「お姉ちゃん、ここ食堂なんだけど!」
喜びのあまり楯無は簪にがっしりと抱きついていた。簪も嫌がってはいるがほとんど恥ずかしいからやめて欲しいだけだった。
その頃上条は寮の屋上で夜景を眺めながら、少し過去を振り返っていた。
「よくここに来てから色んな事に巻き込まれるな、またあの時みたいに友達を作れるか心配だな。はぁ、よくオティヌス相手に1人で数億年も挑み続けたもんだな、そのせいか大概の事は辛くも悲しくも感じなくなったな」
「今でもまともに勝てる相手じゃないな、それにしても本当にこの状態が幸せなのかな。家族も全員いて幸せな暮らしは出来てるけどやっぱり、友人が少ないな。まあ、時間はあるしゆっくり作ればいいか」
まだ何か考えごとがあったのか部屋には就寝時刻ギリギリに戻り次の朝を迎えたがその日教室に入るとどこぞの嫌がらせとばかりに上条が過去に受けた迫害について書かれた新聞記事やテレビのニュースのくりぬいた部分の写真が貼られていた。
「はぁやっぱり出てきたか、今回は随分と遅かったな。しかも3年ぶりかこの馬鹿げた嫌がらせを受けるのは」
つぶやきながら見るのは中央の記事。そこには疫病神がまた現ると書かれた記事が書かれ上条の中学時代の写真が載せられていた。
簪との過去を軽く書いてみました。これから少しずつ過去編をやっていきます。