IS学園の異端児   作:生存者

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第38話

3日間の地獄のような合宿を終え、1人屋上で佇んで休んでいた。

 

「流石に3日間もやると結構疲れるな」

思えば最終日の今日もなかなか大変だった。1年の専用機持ち全員が一同に集まり、ペアを組む時には大半の女子生徒が一夏と組みたいと言い始め騒動が起こり、更に終わってからは呼び出しを受け教師陣相手に模擬戦までやる羽目になったりとやることが山積みだった。一夏の組みの騒ぎは俺と組む事で一応治ったが。

それを考えれば昨日の夜のことがよっぽど楽に感じる。あの時頼まれたのは苦手な料理作りを手伝って欲しいとごく普通の事で正直助かった。ついでに、同じテニス部の後輩で料理が壊滅的な子がいるからどうにかして直してくれないかとも。誰かは容易に想像が着いたが、あれを直す方法はないと思う。

 

「これで2日後は温泉旅行か。俺の体、保つかな」

明日の朝にはここを出て家に帰るつもりだ。しかし、何故部屋に戻らないかと言うと、自分の部屋は楯無さんが友人達を連れ込んでいるため入ったところで遊び道具にされるのがオチだろう。

 

「そろそろ、寮長も巡回を始めそうだし戻るか」

とぼとぼ歩いて行き部屋まで戻るがまだ遊んでいた先輩達に巻き込まれ自分まで参加する事になる。しかも、巡回する教師は一度通らず深夜までやる事になってしまい少々寝不足気味でIS学園から出る事になった。

 

「ふぁ〜こうなるなら、さっさと寝ておけば良かったな」

自分も何気なく参加してから楽しんだしまったし自業自得みたいなもんだな。本土に戻るためモノレールに乗り込み移動していると、一件のメールが入っていた。送り主は友人の土御門だが内容の割に送られてきた時間がかなり遅い。

 

「普通、祭りに一緒に行かないか?って深夜に送らないだろ。一体何やってたんだよ」

少し呆れ顔になるがとりあえず行けると打ち込んでメール返す。あと一週間もしないうちにお盆になるし楽しみにしておくか。

そんな事を考えているうちに目的の駅まで着くとそこから何度か乗り換えホームに降りる。場所は東京の中でも一際賑わっている新宿まで来ていた。上条が元いた世界なら東京の3分の1を使った学園都市という場所が存在したが、そんなものはない為多くのビルが立ち並び人が行き来している。

 

「今日は何処に行こうかな。終電よりは前の電車で帰るつもりだから、いや夕飯より前には帰るか」

そう言って人混みの中へと入って行く。周りの人間もただの学生としか見えないのか誰もかれもが気づかず通り過ぎて行く。おまけに持っている荷物自体も合宿で大きめのスポーツバッグをぶら下げているだけだ。

 

 

「人が多くて進み辛いな。と、着いた」

大通りから路地に入って少し奥に入った場所にある、電子機器を売っている店だ。電子機器と言ってもゲーム機や中古で売っている携帯電話を扱っているのだが、よく音楽プレイヤーを買いに来たりもする行きつけのお店でもある。その他、映画やアニメの類いのものまで用意されている。

 

「面白そうなものがいくつもあるな。これでも買ってみるか」

気になった映画をいくつか買い、ついでにどこでも観れるようにDVDプレイヤーも購入してからまた店内をうろつく。

 

「案外、新しいものが出てるもんだな」

1つの店で5階分もあるため上へ下へと何度も行き来して何か無いかと探し回る。前よりも金銭面である程度余裕が出来たおかげでもあるが、無駄遣いしないよう必要以上に買ったりしないようにはしない。

そんな事をしているうち時間はどんどん過ぎ昼間に差し掛かっていた。

 

「そろそろ、昼飯にするか。でもここら辺でこの時間で知ってる店はどこも行列が出来てそうだし、どうしよう」

店の前で腕を組みながら悩んでいると、後ろから急に声かけられる。

 

「おい、兄ちゃんどうしたんだ?そんなところに突っ立って」

声をかけて来たのは少し年の入った中年の男性だった。どうやら、何かゲームでも買っていたのか手に持っているビニール袋には箱のようなものが見えた。

「あ、えっと。昼飯を食おうと思ったんですけど、近場で知ってる店でこの時間で入れそうなところが無くてどうしようか悩んでて」

 

「なるほど、ここら辺じゃまともにはいれるところはねぇな」

納得したようにうんうんと、頷く。

 

「なら、近くにまだ1つ知ってる店があるから一緒に行ってみるか?」

 

「ここら辺でまだ空いてる店なんて・・・聞いた事がないな」

 

「そりゃな、常連しか知らないない場所なんだ。行ってみるか?」

時間がかけずに食べられるのはいいし、まだ行ったことのない店に行けるのも・・悪くないな。

 

「はい、お願いします」

 

「はは、そうか。よし、付いて来い」

そこから一度は通りへ出るものの少ししてすぐに薄暗い裏路地に入ってから促されるまま歩いて行く。周りにはちらほらと小さな店が顔をのぞかせているが中にいる人は少ない。すると、ここだよと言われビルに挟まれた二階建の家のような店へと入る。

 

「おう、久しぶりだな。今日は連れも来たのか」

中にはおでこにハチマキを締めいかにも威勢の良さそうな男性が元気に声をかけてくる。内装は居酒屋を連想させる趣がありカウンターの前には七輪や焼き網が揃えられ中には火のついた炭がものが入った物もいくつかあった。

しかし、この人の会話からすると仲の良い人なのか?

 

「ああ、そうだよ。今からでも作れるか?」

 

「はは、問題ない。適当に座ってろ。で注文はどうする?」

席に座る前に聞かれ焦るが、店内を見回すと一品一品メニューが書かれいたのでとりあえず目に止まった。ものを頼んだ。

 

「俺はいつもので」

 

「えっと、もつ煮と串焼きの盛り合わせで」

そう言って水を飲んでいる時、店主が一瞬こちらを見て笑った気がする。一体どうしたんだ?

 

「それにしても、坊主。お前さん高校生か?」

 

「はい。学校の都合上、寮生活をしていますけど。今は長期休みで家に戻って休日を過ごしますね」

 

「寮生活ね。昔を思い出すな」

 

「何か思い出でもあるんですか?」

 

「ははは、ちょっとな。昔、いや、20年くらい前は俺も学生をやっててな、よく遊んでたんだよ。なぁ、タバコ吸ったり酒を飲んだりして夜遅くまでいつも騒いでたからな」

 

「お前だけだ。そんなに遊んでたのは、まあ酒を飲んでたのは認める。ほい、もつ煮だ。しっかり食えよ」

うん、シンプルだな。具はネギにコンニャクあとはホルモンかな。うまい、野菜無しでもいける。

 

「気に入ったみたいだな」

 

「はい、美味しいです。それにしても野菜はあんまり入れないんですね」

 

「ああ、俺らの方じゃ少なくともこれだけで十分だからな」

 

「でも、これだけのものが作れるなら、もっと繁盛するじゃ」

味も量も申し分ない一品だが、何故か暗い顔色になる。

 

「その言葉はありがたい。ここに来るやつもなかなか居ないから嬉しい。けど、このご時世なかなか男がのし上がるのは難しいんだよ。5年か6年前だったかな。その時までは繁盛してたさ。けど、ここの店を聞き付けた1人の女が来たんだよ。けどよ、そいつの酷い嫌がらせのおかげでこのとうりだ」

 

「・・・もしかして支払いを押し付けるとか。そんなところですか?」

 

「ああ、とんだお客だよ。入っていた他の男に支払いを押し付ける。更に目の前で飯が不味いだ叫んで、注意すれば脅迫されたと喚いて通報だ。数十年生きててそんなくだらない事で刑務所に入る事になったよ。すんなり出れたのは助かったけど、再び始めてもこのざまかな」

 

「それでもここまで戻したんですね」

 

「何言ってるんだ、その程度の事で店をやめるつもりはない。中年のオヤジを舐めてもらっちゃ困る。俺は女に復讐するのが仕事じゃない。うまい飯を作って客に食べてもらうのが仕事だ」

 

「すごい、力強さですね」

 

「このくらいの気合いが無けりゃあ、何も出来ねえって昔叩き込まれたからな。あんな若い女に負けるか」

 

「はは、いい感じに気持ちが上がって来てるな。酒でも飲むか」

 

「おいおい、今日は飯を食いに来ただけじゃないのか?」

 

「気が変わった、飲んでいく。グラスを用意してくれ」

何故か自分も巻き込んでとんとん話を進めていく2人を焼きあがった串焼きやもつ煮を食べながら思ってしまう。まあ、時間もあるし少しくらいは長居してもいっか。

 

 

 

 

「ちょっと長居しすぎたかな、お代を少しまけてもらったのはありがたいとしか言えないけど」

路地から出ると、何か探し回っているうちに近くにある書店まで歩いて来ていた。特に見たいと思う本はないがある本の前で止まる。

 

「暗殺、か。中学時代散々されかけたし、少し読んでみるか」

軽い気持ちで読み始めてしまったが以外と奥が深く結構立ち読みしてしまう。周りを見るとかなり立ち読みをしてる人がいたので安心してしまったが。

 

「ついつい全部見ちまった。今更だけど、流派とかを創り上げた初代の人ってすごいな」

そのまま店を出るが、また何処かの店に入っては何かしら気になるものを見たりして時間を過ごす。しかし、見かけに全く似合わない変なグッツを売っているような店にも出入りしていた為、周りからはかなり目立っていた。

 

「ん〜そろそろ帰ろうかな。何か地下街でお土産でも買ってこようか、どうするか」

駅の前で悩み始めるが、自然と地下街の方に足が進んでいく。しかし、

 

「ねぇ、君、今暇?」

振り向き目に入ったのは20代後半くらいで比較的露出度の高い服を着た女性だった。いくら暑いとはいえそこまで肌を出すのか?と一瞬疑問に感じた。

んー、時間は6時近くだけど、最悪自分の足でも今日中には帰れそうだしいいか。

 

「少しくらいなら」

 

「本当!ありがとう」

さらっと手を取られ連れて行かれる。されるがままについて行き路地に入ってしばらく進んだところにある階段を下りバーのような店へと入っていく。

 

 

 

 

「ママ〜、ちょっと良い?」

 

「あら、どうしたの響子。珍しいわね・・・」

カウンターには8席、周りにはテーブルが5つありまばらにだがお客がはいっている。全員大人の女性であることはまぐれだと思う。

店主と思われる30代前半くらいの女性がカウンターでグラスを拭きながら、こちら見ると手元が止まる。周りからも見られるような感じわあり。中で座っていたかなり露出した服(ドレス)を女性が寄ってくる。

 

「良い男を連れてきたじゃない。私も混ざって良い?」

 

「ダメよ、あとで回すから待っててちょうだい」

回す?一体何をやるんだ?

 

「じゃあ、部屋一つ借りて行くから」

先ほど同じく手を引かれ連れて行かれる、気のせいかな、この人興奮してるのかさっきから脈の速度が上がってますけど。

 

「さあ、どうぞ」

 

 

個室、中もシンプルにベットにシャワールーム、あとテレビと冷蔵庫か。で、一番気になるのは壁際に並んでる変な道具の数々、手錠やら紐、更にムチなんだここは。しかも、ベットの側にあるスタンドには透明な液体の入った瓶。

「なんだ、ここ」

 

かちゃり、鍵の閉まる音とともに寒気が感じる。

「まさか・・・一体何をするつもりですか?」

 

「何ってこういう事よ」

ドアを閉めた鍵を口にくわえ、さも当たり前のように服を脱ぎ下着だけになる。

 

「あら?反応しないのね?」

 

「残念でしたね、あなたがそのつもりなら俺はもう帰ります」

 

「私が鍵を持っていても?一応言っておくけど、電子ロックも掛かってるから」

口にくわえていた鍵を見えつけるように手に持つ。

 

「はぁ・・・来なきゃよかった」

 

「言ったら来なかったでしょ」

 

「ええ、もちろん。無駄にセキルティが高いのには参りましたけど」

 

「いいじゃない。君はお金を払わなくてもいいんだよ?」

 

「・・・」

 

「しょうがないわね、これでも飲んで落ち着いて」

冷蔵庫から取り出し備え付けのコップに注いで渡してくる。これを飲んだら必ず何かやってくるのは目に見える。

この人以外と分かりやすいな、わざわざ目の前で笑わないでくれよ。

 

「な・・・」

一歩、歩み寄ってきた瞬間、最速で鳩尾へ打ち込み床に倒す。まともに動けないのか体が震えている。さすがに床にずっと倒れて入られても困るのでベットに寝かせると落ちた鍵を拾い開けようとするが全く動かない。

 

「電子ロックは本当だったか。嘘の方が良かったのに」

しかし、僅かに睨んだ瞬間あっさりとドアノブが下がり扉が開く。正直、壊す方が楽だったけど、後が面倒なのでやめておいた。

 

 

 

入り口に来るなり全員から驚いたような表情になる。

「響子は、どうしたの?」

 

「急に眠くなったそうなのでベットに寝かしておきました。それで、ここは一体なんですか?入っていきなり媚薬を飲ませるバーなんて聞いた事がないんですが」

 

「はっはっは、やるね。それにしても、ここがどんな場所か知ってて来たんじゃないのかい?」

 

「こんな場所、噂程度しか聞いた事ありませんから」

 

「噂ね。ここはただのバーでしか無かったのは確かだよ。けどね、婦人達の集まりになってから気に入った男を連れこんでやるような場所になったんだよ」

 

「じゃあ電子ロックもあなたが?」

 

「いや、あれは貰い物みたいなものだ。偶にくる変わった客がセットしてくれたんだよ。名前は分からないけど」

 

「そうですか」

 

「すまないね、ここにいる奴は男に飢えててね」

 

「分かりました。もうここら辺をうろつかないようにしますよ」

 

「まだここは良心的なほうだけど、もっと酷いとこもあるらしいから気をつけな」

 

「ありがとうございます」

そう言い残し店を出る、絶対にここには来ないと内心で誓って。

 

 

上条が出てから数分後痛みが引き立って歩けるくらいには回復しふらふらと歩きながら部屋を出ていた。

「いたた、鳩尾にあんな強いの受けるとは思わなかった」

 

「やっと戻って来たの?」

 

「あれ?あの子は?」

 

「とっくに出て行ったわよ。なかなかいい男を連れて来たものね」

 

「ぱっと見で体つきのいい人を引っ張って来たつもりだったんだけど。まさか、ね」

 

「珍しいどころか会えるかすら分からないような人よ」

上条が一体どんな人間かを分かっていた店主は未だに驚いている。しかし、それが分からない女性達は?を浮かべたいた。

 

 

 

 

途中、何事もなく到着し駅の目の前まで来る。前まで来て足が止まるが

「もう帰ろう、ここで溜まってたらろくな事が起こらない」

即決、迷いなく決め入っていき無事に電車には乗ったが家に着くまで気が抜けないので大変なのに変わりはない。

 

 

 

 

 

 


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