IS学園の異端児   作:生存者

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第37話

「で偶然だとしてもおかしく無いですか」

 

「そうかしらー、偶々よ。偶々」

 

「へぇーなら、なんで全員上級生ばっかりなんですか!」

合宿2日目、偶然にも集まったのは上級生だけ。同級生は1人としておらずあまりの居心地の悪さに声を出してしまった。

 

「まあまあ。じゃあとりあえずペアを組んで貰えばいいかしら?」

 

「いや、その必要はないです。えっーと2年生と3年生で交互に横一列に並んで貰えませんか?」

相手が年上の人という事もあり敬語になる。わらわらと並び始めるが織斑先生の指導が入っているのか1〜2分でぴっちりと整列していた。

 

「何となくわかったと思いますが、右端から隣の人がペアです」

 

「結構大雑把過ぎない?」

 

「一応誰とでも連携が取れるようにするための配慮ですが。また変えるつもりですし。じゃあ始めますか、何もやらないよりはマシですから」

一通り総当たり戦で試合をやる。もちろん、時間も少ないのでエネルギー残量を減らした状態から始めている。人数があぶれてしまった人も出てきたがそこはナターシャ先生と上条で交代しながら回していく。

 

「えっと、次はそうだな。今度は戦闘中に先にどちらか一方に集中して攻撃することを前提にしたものでもやりますか」

ルールは簡単、相手の片方には攻撃出来るがもう片方には一切手出しは出来ない。ゆえに攻撃をされない人間がどれだけペアに近づく相手を妨害出来るか。また、その妨害を受けながらいかに短い時間で堕とせるかが試される。特に重点的に見るのはいかに短い時間で終わらせるか。目標を一点に集中して始めても時間がかかればいつの間にか致命的なところまで自分達が追い込まれていたなんてことにもなってしまう。

 

 

「早く落ちなさい!」

重厚な槍で連撃を繰り返す。突く、薙ぎ払う、槍に装備された4つの銃口からガトリングのように連続でレーザーの雨を降らせる。

 

「いくら楯無さんでもそうそう落ちるつもりはありませんよ!」

連鎖的にくる攻撃をギリギリのところで必死に避ける。

 

「じゃあ、これでどうかしら」

距離が離れた上条を確認した楯無は指鳴らす。すると、上条の周りを囲うように連鎖爆発を起こす。しかし、あっという間にその包囲網から抜けほぼ無傷で逃げ出す。

 

「あー死ぬかと思った」

 

「お、ちょうど良く出てきたな。仕留める」

 

「うわ、マジで運無さすぎ。もう泣けてくる」

出たところには偶然にもショットガンを構えたダリルが引き金に添えた引き金を引いていた。しかし、横から狙撃で銃身がズレギリギリのところで身を捻り避けると同時に終了のブザーが鳴り響く。

 

「助かった。あと少しで終わるところだった」

 

「あーもう!あと少しだったのに、またダメか」

両手両膝を地面につき落ち込む楯無。それもそのはず、エネルギー量を減らした状態ですら半分も削ることが出来ないのだ。度々試合をしては何度も負けている上に一度も追い込めた事がない。

 

「あともう少し時間があったら行けたのに」

 

「しょうがない、また次の機会にやればいいだろ。お前はまだ時間もあるんだし」

 

「そうよね、じゃあ先輩の言う通りに挑戦してみます」

 

「こんな時ばっかり後輩ズラか。まあ、あいつにも同じような事を言いたいよ」

軽く笑い飛ばし悔しさを忘れようとするダリル、

 

「すいません、最後はありがとうございました」

 

「いえいえ、偶然です。少しの間止まってくれなければ当たりませんでしたから。私程度の力じゃどうにも出来ませんから」

 

「そんなに悲観的にならない方が、もっと自信を持ってくださいよ・・・」

こちらは目をそらすとすぐに凹んでしまう人を必死に励ます作業に追われる。ここに入ってから気づいたがかなり性格に癖がある、個性が強い人が多い。いつもは普通に見える人も部活や委員会などで豹変する人も多々いる。

 

「本当に変わった人が多いな。困るくらいに」

 

「あなたも結構変わり者だけどね」

 

「上条さん以上の変わり者はいませんよ」

さりげなく呟いた言葉を簡単に返され心にグザグサとトゲが刺さる。

 

「これ以上、上条さんの心を傷つけないでくれー!」

と叫ぶも先輩達のありがたい、いじりのおかげで精神的にボロカスにされながら昼までの残った時間をもう一度ペアの組み合わせを変えてあと、一勝出来るまで終われないと言う何ともベタな内容で時間を潰していった。

 

 

 

「あと半日何やるろうかな」

 

「え、まだ決めてなかったの?」

 

「はい、どうせならトーナメント形式でもやろうかな。なんて思ってましけど。時間が足りるか分からない・・・まあ、全員がやりたいと思うならそれでもいいですし。時間も延長して貰うようにお願いしてきますから」

 

「ほうほう、で優勝したら景品であるのかな?」

 

「あのですね、一介の高校生にそんなものを求めないでください」

 

「そうでもないわよ。現にあなたの後ろで期待してる人がいるからね」

え?後ろ?どうしても気になり振り向くとさっきまで誰も居なかったはずの廊下に数人の上級生が点々と隠れながらこっちを見ている。しかも全員知っている上に楯無さんは手を振ってる。

 

「・・・とりあえず、トーナメントやる事だけ伝えてもらえせんか?」

了解よ!と言わんばかりに親指を立てて突き出すとすぐに姿が消え駆け走る足音だけが響いていく。

 

「毎日監視されてるとしか思えないな」

 

「流石、モテモテだね」

 

「お願いですからその言い方だけはやめてください」

頭を抑えながら必死にどうにか出来ないかを考えるが、全く思いつかない。しかし、悪気はないと分かっているのでそこまで深く思わないようにはしているが、また変な噂が立っても困るのでそれはなんとしてでも止めたいと考える。

はぁ、なんでこんな役を任されたんだよ。もう不幸だー!と心の中で叫ぶ。しかし、時間はどんどん過ぎていき気づけば開始を10分前になっていた。

 

「とりあえずペアの相手は自由にして、余った人はナターシャ先生と組んでもらうでいいか。順位は特に関係ないけど、全員が同じ回数出来るように調節しながらやるか」

少し時間が押し始めていたので軽いジョギングくらいのペースで走っていくともう、ペアが出来上がっていたのか二人組で話し合ってのが何人もいた。そして、何故かめっちゃ見られてる。

 

「みんなやる気出ますね。助言でもしたんですか?」

 

「私は何もしてないわ。あるとすれば楯無さんあたりよ」

 

「・・やっぱり」

またか、と思いため息が出る。だが後でも聞けるので先に集合してもらいルール説明と、簡単に作っておいたあみだクジのように線が書かれた紙に全ペアの相方に名前を書いてもらい一度解散する。トーナメントに先程書いたあみだクジの順番に端からペアを書き組み合わせを書く。数分後には完成したのでもう一度集まってもらう。

 

「えっととりあえず組み合わせはこんな感じです。今回はシードは無しで、最後まで順位を決めるので一回で終わる事はありません。あと、今回もシールドエネルギーは100まで落とした状態からスタートで片方でもエネルギーの残量が0になった時点で終わりです。あと専用機の人はあまりビットとかナノマシンは使わないでください」

 

「なるほど、ある程度まで落として全員が同じくらい戦力でやりたいと」

 

「まあ、そうです。という事で、あと10分後に試合を始めるので最初に入る人は準備して待っててください」

そう言うと集団の中で4人の顔つきが少し変わったのが見える。まだ名前を知っているのはほんの数人しかいないので反応してくれと誰がやるのか分かるので助かったりする。

 

「では一回戦目第一試合をを始めます。最後まで諦めずに頑張って下さい。以上」

 

「私はから特にありません。自分の満足できる試合にしましょう」

と言い残しトーナメント戦が始まった。一回戦目は何となく勝てるかなーっと思っている人がちらほらと混ざっていた。二回戦目以降はやはり実力者しか残っていない。その中には代表候補に選ばれながらも専用機を持っていない人もおり、何故持っていないのか聞けば成長しないと思われたから。と言っているが、十分な程に技術もあり専用機持ちだからと言って必ずしも実力がある訳でも無いんだなと感じた。

 

「これで三回戦まで終わったと。じゃあ下位戦を始めるので1、2試合目で負けてしまったペアは入って下さい」

 

「今更な気がするけど、上位戦は最後にやるの?」

 

「最下位決めの後に決勝をやるつもりなんでそれまでに下位戦は全部消化しておきたいですね。ついでに最下位になったペアには全員からアドバイスでも言ってもらいますか」

 

「確かに、勝つだけじゃなくてみんなで仲を含め合いながら強くなっていくのもいいわね」

と話し合っているうちに準備が整っていたのでアナウンスを流し始める。ちなみに試合を見るのは自由になっているので時間の余った人は試合観戦をしながら休んだり作戦を話し合っている人もいる。

 

「いや〜シールドエネルギーが少ないから緊張するわね」

 

「その分、一般の生徒でも上に行けるようにしたんだろ。お、今度は下の方かどんな試合か楽しみだな」

 

2時間後・・・

順調に試合も進み、決勝と最下位決めを残した状態で一通り終わった。しかし、これが終わった後かなり時間が余ってしまうのでどうにか出来ないか考えていた。

 

「そろそろか、最後はサバイバルみたいなやつで終わらせようかな。その後は・・自由じゃなくてやりたい事でも聞いて何かあったらやるみたいな感じにするか。よかったらナターシャ先生も入りますか?」

 

「えっ、いいの?」

 

「・・・そんなにそわそわしてたらやりたそうだなって感じますよ」

正直当てずっぽうで言ってみたが、当たるとは思わなかったので内心では結構驚いてる。元軍人という事もありやはり礼儀正しい部分はあるが。自分の興味がある事になると多少表情が緩んだりと面倒くさがりやでマイペースな所も出てきたりする。

とのんびり話しているうちに終了のブザーが鳴る。

 

「あ、終わったみたいね」

 

「僅差でダリルさんとフォルテさんの勝利か。一部制限をかけたとは言えここまで試合を運べるものなんですね」

 

「そりゃあ、いつもはふざけてるけど国家代表なのよ。並の相手じゃない限り負ける事はないからねー」

その後すぐに、最下位戦も行いペア1組ごとにビリになってしまったペアにアドバイスを言っていく。的を射た意見もあったが、いくつか分かりづらい意見も出てきたので全員で分かりやすく説明した。

 

「今度はサバイバル?」

 

「はい。2年のペアのみと3年ペアのみで分けて」

 

「それって連携の訓練と関係がないと思うけど・・」

 

「ないですよ。軽いレクリエーションとでも思ってくれればいいので。ルールは、そうだな〜先輩方で決めてもらっていいですか。ペアが全滅するまでは最後まで戦うと言うのだけは絶対条件で」

 

「ルールは自由って、どんなものならいいのよ」

確かに無理なものを言っても限度があり全員が納得できるものでないといけない。

 

「例えば全員訓練機でやる、とか近接武器だけしか使えないとかですね」

 

「あ、そんな感じなら問題ないのね」

 

「あ、ちなみにナターシャ先生も入るから」

 

「なるほど、だとすると武器の制限は辛くなるし。訓練機だけって言うのはありだけど数が足りるか分からないし。まずはシールドエネルギーは元に戻す。これはいいわよね?」

わざと減らしていた訳だし当然だな。軽く頷くと再び悩み始める。その時

 

「あの、一度でいいので専用機を操縦してみたいんですけど。あ、無茶なお願いなのは分かってす」

この時。その気持ちは分かるけど言っていいのか?と考えてしまった。周りでも少しざわついてるが決して批判的な意見は出ない辺り悪い事じゃないな。自分も同じ立場なら言っていたかもしれないしこんな時ぐらいはいいかも。

 

「いいですけど、問題は本人が貸してくれるかどうか・・・ですね。無理ですか」

 

「ち、違うのよ。貸したいとは思うけど一応国から借りてるものだってあるし、壊れた時の修繕とかで時間とかが掛かるから気軽に渡せるものじゃないのよ」

 

「それは・・・」

 

「まあ、絶対に傷つかないで使うって言うのは無理があるし。ん〜困ったな。あ、ならこれ使ってください」

え?と動揺する声が広がるがそんなのお構い無しで首に掛けていた首飾りのようになっている専用機を外し手渡す。渡された先輩の方が何故か驚いた顔をするのでしきりに首を傾げる。

 

「え、いいの?」

 

「いいですよ。立場が違えば同じ事を言ってたこもしれませんし、他の専用機よりは癖みたいのは少ないと思いますから」

すっごく、受け入れられるのに時間がかかってしまったが始まってしまってからは順調に進んだ。かなり暇を持て余していたナターシャ先生は2回とも出て、最後まで残ってしまい一部の先輩方から苦情みたいなものが出てきてしまったが。

その中でも2、3年で1人ずつ上条の専用機使う人には武器の取り出しの注意はしっかりしておいた。何故なら全部約40種類以上あるため、自分の取り出したい武器を的確に出さなかったりするからだ。

 

 

「やる気出しすぎじゃないですか?みんな少し引いてましたけど」

 

「こんな時ぐらいしかまともに動けないからいいのよ!じゃあ交代で」

ん?交代?どうして?

 

「ほら、ぼさっとしないで相手して来なさい」

思いっきり背中を押して強引に前に行かせようとする。しかし、なんで行かされるのか全く分からない。

 

「ちょっと待ってください、どうしてですか?!」

 

「ほら、私ばっかり入ってもつまらないだろうから」

どうしよう、ただやらせたいとしか言ってように聞こえない。しかも、楯無さんはすごいやる気を出してる。こうなったら時間まで引き延ばすしか・・・

 

「もうそろそろ時間になりそうね。時間を延長してくるから頑張ってね〜」

なんで悪い方にはとんとん進むんだよー。ほんと、自分の運の悪さが目につくな。

 

「不幸だー」

 

「あら、不幸だなんて失礼しちゃうわね。こんなにたくさんの美女がいるのに」

 

「確かに先輩方みたいに美人な人と一緒にいられて嬉しいですよ。ですけどこの時間帯からまた・・・ってなんで照れてるんですか?」

見渡すとほとんど2、3年の先輩の顔が少し赤く染まっている。その他にも髪を直したりあからさまに顔を隠している人もいた。

 

「そんな、真正面から言われるとちょっと・・ね」

 

「・・ありのままの事実を言っただけなんですが」

 

「よし、やる気が出て来たわ。早くやるわよ!」

あ、これはもう無理だな。一度決めてしまったらこの人は止まることはない。

 

「じゃあ、やりますか」

 

「え、訓練機でやるの?」

 

「何か問題でもありますか?」

それを聞きおし黙る一同。ISの適正がある人間なら誰でも使用できるが、男性適正者の中で使用が確認できたのは織斑一夏1人だけなので正直問題なく動くか不安があった。

 

「あ、普通に動く。でも少し軽く過ぎる、パワーアシストをある程度切って重くして・・・」

そんな心配も無駄に終わりあっさりと起動させ調節し始めていた。

 

「心配した私が馬鹿だったわ」

 

「まあ、気にするな。それに訓練機ならまだ勝てる可能性があるかも知れないぜ」

フォルテに励まされた一言で楯無は持ち直し、5分後時間が少しだけなら延長可能と言われ1試合だけやれる事になったのだが、本気で倒しに来たいのか2、3年でも上位の実力があるペアで組み合わせた。

 

「え、戦力差あり過ぎませんか?!」

と反論が出るが虚しく、サバイバルと言う名の一方的な試合が始まった。

それから10分後試合が終わった。結果だけ述べると、上条が負けで終わるが挑んだのが6組12人しかし生き残っていたのは1人。しかも、残っていたエネルギーはほんの僅かのみ。偶然と言っても過言では無いほど差だった。負けた・・・ではなく最後まで残れなかった上条すぐに片付けの指示を出す。すでに時間はギリギリまで来ていたので敬語なんてものは一切使わないでてきぱきと作業をこなした。

それからはこれまでと同様反省点とアドバイスを1人ずつに説明して行く。ほとんどついさっきまでの試合の事が主な内容になった。色々と知識不足なのだが、長年の経験も含めて分かりやすく話し終え2日目の合宿を終わらせる。しかし

 

「あの上条君聞きたい事があるだけど」

丁度訓練機の片付けに入ったところで声を掛けられた。その人は最後に行ったサバイバルで唯一残っていた人だが、物凄く嫌な予感がした。

 

「・・・もしかしなくても、生き残った時の何と言うか褒美的な話ですか?」

軽く頷くが上条からすれば聞いて欲しくなかったが

 

「ある程度の事までならいいですよ」

そう答えるしかなかった。だが、妙に興味を持たれてる楯無さんにこの話を持ち込まれるよりかはましだと思う。

 

「えっとじゃあ・・・」

返って来たの実に良心的な内容だったがみんなが食いついて来たおかげで面倒になった事だけは確かだった。

 

 

 

 

 

 




次回3日目を飛ばして進めていきます。

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