IS学園の異端児   作:生存者

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第35話

「亡国企業を壊滅させたですって?!」

 

「ええ、そうよ。いつもは優しいけど、私の仲間が怒らせたせいでね。ある同僚のからの依頼で彼の始末を頼まれ、それを実行した。念の為とはいえ、人質とダーゲットは別々の場所に呼びだしておたのに両方とも全滅。応援も来たけどほんの数分で立っている人間はいなかったわ。気がつけば居なくなって、次の日には本部は襲撃がされ資金からデータに武器まで全部なくなっていたわね」

 

「それでも死者は0で怪我人だけしかいなかったな。上の連中の顔が腫れ上がってのを見た時は笑いを堪えるので必死だったのを思い出すぜ」

そんな中に机を叩きながら立ち上がる楯無。長く暗部というものを見て来た彼女にとってそんな虫酸のいい話など聞いた事がないし、見た事もないからだ。

 

「うそよ、死者0人なんてあり得ない!それこそ、戦場と化した場所で。秘密を守る為に自殺する人間、施設そのものをまとめて爆破して証拠を残さない人間もいたはずよ」

 

「それが自殺しようとした人も、証拠を隠蔽する為にコンピュータを壊した人間もいたそうだけど。それでも死んだ人はいない、コンピュータはデータが引き向かれるまで壊れず、自爆装置がいくつもあったはずなのに偶然にも全て無くなったらしいわ」

 

「つまり、亡国企業は事実上なくなったと」

 

「ええ」

話がひと段落つき全員が黙っている中、1人声を上げる。

 

「ならさ、1つ聞いてもいいかしら」

気になることがあったのか質問をしたのは鈴だった。

 

「どうぞ」

 

「あんた達が第二回モンドグロッソの時に一夏を誘拐したのも依頼だったことなの?」

その言葉を発するとともに目つきは真剣なものへと変わって行くのが見えスコールは答え方を考えるとともに鈴が何を思考しているのかを考えた。

 

「・・・そうよ、けど相手は教えてないわ。一体を何をするつもりかしら。・・まさか、殺すなんて言わないわよね?」

その一言に表情が僅かに強張ったのを千冬は見逃さなかった。

 

「そのつもりのようだが、流石に人殺しは見逃せん。そんな事をしても一夏が喜ぶと思うのか」

 

「まあ、気にするな。そいつはもう檻の中だ、あまりの大物だったせいか報道はされてない。いつまでも根に持つな」

納得がいったのかいかなかったのか、不満そうな顔をするがここで喚いたところで相手に届くはずもなく大人しくする。

 

 

「なんか向こうは、騒がしいな」

 

「よそ見は厳禁だぜいかみやん」

 

「な、てめえ人の肉取るな!」

 

「早く取らないかみやんが悪いんや。どんどん無くなるで」

一方こちらでは肉取り合い合戦が繰り広げられている。ついでに言うと本音とアリサも一緒になって入っている。女性とは思えないほどの食べっぷりでそこらの男子よりも食べている。

 

「いっちーそれも食べていいかな〜」

 

「いいけど、食べられるか?」

 

「これくらいはまだ余裕なのだ〜」

本音がよくスイーツやお菓子をかなり食べるの知っていた一夏も苦笑するしかなかった。食べる速度は全く落ちる事なく、まだ満足している様子もないので当分は食欲が落ちる事はないと覚悟した。

 

 

「ふぅ、いい感じに減って来たな。余分に買っておいて良かった」

 

「わいもそう思うな。正直食べきれるか心配でしょうがなかったんや」

 

「おい、ノリであんなに入れてたのか?」

 

「まあまあ、これでめどは立った事だし大丈夫だぜよ。それにまだアリサだって余裕があるにゃー」

ふと、先程の食べる量を思い出し問題ないかと頷く。

 

「当麻君〜まだ残ってる?」

 

「ああ、残ってるぞ。でもそんなに食べたら太るんじゃないか?」

 

「いいの!あとで歌って発散するから」

 

「頼むから夜中に歌うのはやめくれよ」

 

「うぅ、仕方ないもん。いつもやってるせいで癖になっちゃってるから」

 

「まあ、無理に直さなくてもいいけど」

そう言うと家に入る、するとそのままキッチンに向かい冷蔵庫を開け果物を取り出すと調理に取り掛かる。勉強をするのが嫌だった時期に気晴らしにネットとか調べたやり方でフルーツの盛り合わせを作っているうちに身に付いた特技。皮を剥き、少しずつ切り用意した皿に盛り付けて行く。ついでに夏なのでアイスもトッピングしておく。

 

「よし、これで完成だな」

と、その時玄関の扉が開き汗をかきながら入ってくる中年の男性がいた。が上条は近づいて行く。

 

「ただいま、当麻。また大きくなったな」

そこで待っていたのは自分の父親、上条刀夜だった。年数回しか帰ってこない事もあり毎回成長してるなと口癖のように言われている。

 

「お帰り父さん。それと数ヶ月経ったくらいじゃ身長なんか変わらないけど」

 

「父さんにはそう見えるんだよ。それにしても今日は友達も一緒に来てるのか」

 

「予想よりも多く来てるのには驚いたけど」

軽く誘ったつもりだった上条にはこの大人数になったのに苦笑したのを思い出した。

 

「じゃあ父さんも混ざろうか。当麻、ビールを一本取ってくれないか」

上に着ていたスーツを脱ぎネクタイを緩めキンキンに冷えたビールを喉に流し込んで行く。一口で終わらせるつもりが歯止めが効かず一缶全てを飲み終えるとちょうど当麻と入れ替わりで入ってきた詩菜がいつもの笑顔で迎えていた。

 

「あらあら、刀夜さん速いお帰りでしたね」

 

「ああ、仕事が早く切り上がったお陰でね。あと、毎度のことだけど母さんも元気そうで良かった」

 

「ふふ、刀夜さんも元気で何よりです」

その様子を外から見ていた当麻は幸せそうだなと思った。愛妻家である刀夜の性格を知っているのもあるが、あそこまで入りづらい空気を漂わせていると流石に引いてしまう。それくらい詩菜を愛している事も分かっている。もちろん、当麻の事も家族として愛しているが本人は気づいていない。

 

 

その頃、暗い雰囲気が漂わせていたガールズトークも時間が経つにつれ楽しいものに変わっていた。

「千冬さん、一夏を下さい」

 

「ダメだ、貴様のような小娘に一夏は渡さん。もし欲しいなら・・・せめて私を倒してみろ」

 

「案に渡す気は無い言ってるようなもんでしょ!」

 

「ほう、なら一緒にいたく無いと。そう言いたいのか」

 

「あ〜もう、なんでも無いです!」

 

 

 

「かみやん〜おかわり」

 

「さっきもたくさん食べてたけどよく食えるな」

 

「甘いものは別腹なのだ〜」

 

「・・・なるほど」

よほど気に入ったのか1人で上条の作ったパフェを5回もおかわりしている本音に苦笑しながら言い返す。それ以前にアリサと一緒に用意した肉を2人で5分の1も平らげているのだ。内心は本当に人間なのかと認識がぐらついている。

 

その頃、一夏は仲良くなった土御門達とメアドの交換なんかをしている。もちろん、秋十ともちゃっかり話をいているが

 

楽しい時間は過ぎ、夜もかなり遅い時間になった頃に土御門と青髪は別れを告げて帰って行った。その場に残ったメンバーは片付けに入るがそれが終わってから全員が困った顔をしていたのに上条は気づいた。

 

「アリサ、どうかしたのか?」

 

「あのー実は終電逃しちゃって」

 

「なら、泊まって行くか?部屋ならいくつか余ってたはずだし、使ってもいいけど」

リビングを除いて4部屋ほどある上条の家だが、その他にも空き部屋のようなものもあるので数人程度なら難なく泊まることが出来る。

 

「で、他に誰が泊まってく?一夏は・・用意してあるからみたいだからもう分かる」

と言いながら一通り来ている人を見てると、僅かに黙り込む。

 

「ちょっと待っててくれ」

それだけいい家の入る。その数分後、戻ってくると一言

 

「全員泊まってOKだそうです」

やったーと数人程喜んでいる声が聞こえてくる。そして、いつの間にかバックを手に持っている人も出てきた。どっから出したの?と聴きたくなるがそれよりも、やる事が沢山あったので後で聞くことにした。部屋割りに風呂の順番やら布団なんかの準備で大忙しになったのでその余裕はなくなっていた。

 

「予備の布団ってどこにあったっけ?」

 

「確か、端の部屋の収納の中にあったはずですけど。もしかしたら、寝室にあったかもしれませんね〜」

慌ただしく家の中を右往左往して準備をする。一夏やアリサ更識姉妹も手伝ってくれたお陰ですぐに敷くのは終わるがそれまでに上条は階段で踏み外しすねをぶつけたり、扉の角に足の小指をぶつけて悶絶したりといつもの不幸で酷い目に遭っていた。

 

「さてと、部屋割りの話にするけど。どうって分ける?」

 

「あの2人は別の部屋で寝るって言ってたから、まずそれは除外するとして。更識さん達も同じにする方がいいよね」

 

「なら、私は教官と一緒に寝たいのだが」

 

「それもありですが問題は・・・」

 

「うん、それは私も思った」

 

「ですが、男子3人が同じ部屋っていうのも普通すぎだと思いますわ」

 

「そうするしか無いでしょ。バラバラにしたらあんた達は絶対に一夏のところに行くじゃない」

 

「そうなると男子は確定。ラウラは織斑先生とマドカさんと同じで。更識さん達と本音さんとアリサさん。であとは私達で問題ないのかな」

組み合わせが終わり一息ついている時、ふと鈴は思った事が口からこぼれ出た。

 

「今更だけど、なんで自分の部屋を使わないかきになるわね。・・・まさかいかがわしいものでも隠してるんじゃ」

 

「いやいや、流石にないと思うよ。他に理由があるはずだよ」

「おーっす、終わったか?」

と丁度良く戻って来る声が聞こえ、シャルロットは上条の方に寄って行く。

 

「ねぇ、上条君。1つに気になった事があるけど聞いていいかな」

 

「ん?何かあったか?」

 

「些細な事なんだけど、どうして自分の部屋は使わないのかなって」

 

「ああ、その事か。実は俺の・・その”あれ”がよくでるんだよ」

 

「あれ?」

 

「何よ男ならハッキリ言いなさいよ」

 

「・・・分かったよ。そうだな、よく二階は幽霊みたいのが出るんだよ」

 

「は?!幽霊?!!」

思わず声を張り上げる鈴に対してシャルロットとセシリアは、それが一体何なのか分からず?が浮かんでいた。

 

「そうだよ。深夜に部屋の前とかを見ると白い服を着た床まで髪の長い人が立ってたりするから。避けるために枠から外したんだよ」

 

「いやいや、幽霊なんてそうそう見るものじゃないでしょ。それに何、そのあった事がありますよ。みたいな言い方」

 

「え、だって話した事もあるし。それに部屋の中はもっと凄いぞ」

 

「も、もっと凄いってなにがあるの?」

 

「ん〜中学の頃は寝る前に何か音が聞こえるからカーテンを開けると窓の外から首から下のない人が話しかけてきたり、その逆で部屋に違和感があるから起きると椅子に首から上のない人が座って本を読んでいたりと変わった事がよく・・・って鈴?大丈夫か?」

 

「も、もうわ、分かったからは、話さないで」

 

「そうか、でどんな割り振りになったんだ?」

 

「あっ、えっととりあえず割り振りは……」

恐怖でまともに話せなくなっている鈴の変わりにシャルロットが話しはじめる。特に不平不満もないので決まり、それから自由な時間になった。じゃれ合う姉妹に楽しそうに話す引き裂かれた家族もいるなかで上条は外で夜空を眺めていた。

 

「楽しいな、いつまでもこんな日が続くのか。まあ、いつかは消える場所だけどな」

遠くを見つめながら溢れた言葉に上条は噛みしめるように自分に言い聞かせる。ここは別にある世界のひとつであって上条のいた世界ではないからだ。とそんな事を考えていると自分に近づいて来る人影に気づく。

 

「兄上、ここにいたのですか」

 

「ラウラか、どうたんだ?」

 

「その臨海学校の時の事で聞きたい事があったのですが」

 

「その事か、まあ座れ大した事じゃないがあんまり言いふらされるものいやだからな」

 

「はい、分かりました」

上条が左手でトントンと真横を叩いて座ってくれと誘う。それに応じるようにラウラも横に座ると最初に口を開いたのはラウラだった。

 

「では、聞きます。兄上のあの謎の攻撃は一体なんですか?まだ底が見えない単一使用能力を使っていたのなら聞く意味はありませんが、IS展開している反応もセンサーにありませんでした。物理的に干渉してもいないのに氷塊を槍のようにとばことは不可能なはずです。なのにそれを軽々とやった、それが気になったのです」

 

「まあ、普通じゃあんなことは出来ない。一般人にはな。何故ならあれは魔法だからな」

 

「え、魔法?」

 

「そうだ、元々魔法は才能の無いものがそれに追いつくために編み出したものらしい。俺はちょっと特殊で、それになる誓約や制限はない」

 

「ではこの家系は全員が使えると言うのですか」

 

「いや、使えるのは俺だけだ。もちろん、家族はそれも知らない」

 

「なら、私が使えるようにしたいと言ったら出来るものですか?」

 

「多分出来ない、先にこっちを覚えていたなら変わるけどな。でも、ラウラでも出来る方法はあるぞ」

 

「どんな方法ですか?」

 

「・・・俺の部屋に南京錠に見えるやつがあってな、それを使えばラウラでも使えるようになる。けど、俺はもう壊そうかと思ってるんだよ」

 

「何故ですか?」

 

「まあ、何と言うか事情があってな。端的に言えば悪用されない為だ。でも魔法なんてものに頼らなくても強くなれる。ラウラもまだ強くなれるから無理をしないで頑張れ」

にこやかに笑いながらラウラの頭を撫でると中に戻って行った。その時、それを盗み聞きしていた2人の人物も戻って行く。

 

 

「なるほど、じゃあ今までずっと勝ってきたのはそのおかげなのね。どうりで強いわけだわ」

その様子を壁に寄りかかりながら聞いていた楯無はそれだけ呟くとまた、自分の居場所へと戻って行く。

 

 

もう1人はその話を聞くなりある人物の部屋に来ていた。もちろん、訪れたのは上条当麻の部屋だ。入るなり、目的のものが見つかったのか近づいて行く。その視線の先にあったのはダイヤル式の南京錠で上条が使いやすく調節した霊装。

 

「これが、あいつの全てか。はは、暇つぶしに来たつもりがとんでもないものを見つけたよ。ありがとう上条、自分から失敗するなんて」

歪んだ笑みを浮かべる秋十は窓際に置いてあったそれを取ると、何もなかったかのようにいつもの作った顔に戻り騒がしく賑やかな場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 




次回少し飛びます。

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