IS学園の異端児   作:生存者

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第34話

「少し買いすぎたんじゃないか?」

 

「いやいや、このくらい買わんと足りなくなるで」

上条、土御門、青髪ピアスの3人は家から10km程離れたスーパーでの買い物を終え両手に大量の肉が入った袋をぶら下げていた。

 

「んじゃ、わいはこの後バイトがあるからまた後で」

 

「俺は家の手伝いだにゃーじゃあかみやん、また後でな」

 

「おう、待ってるからな」

2人と別れ、上条は1人で歩いて帰り始める。3人とも自転車で来ていたのでそこまで疲れる事はなかったが、上条の場合は荷物もあり流石に疲れも溜まってしまい、途中コンビニで休憩がてらにトイレに寄っていると店を出てすぐの場所で見知った顔を見つけた。

 

「ん、あれは・・・秋十か?」

一夏にほとんどそっくりで少しタレ目の人間と言えば兄弟の秋十しか出て来ない。

 

「おーい、秋十」

 

「上条、なんでここにいる」

 

「ちょっと買い物に行っててな。休憩の為に寄ったんだよ」

 

「で、なんで俺になんか声をかけた。用なんて無いだろ」

 

「確かに無いな。それにしてもなんでここに来てるんだ?」

 

「今日はこっちの方で奉仕活動だったんだよ。見て分からないのか、ほら用が済んだらさっさと行け」

 

「まあ、そう言わずに。なあ、俺の家に来ないか?夕方からバーベキューをやるし息抜きにどうだ?」

 

「・・行くにしても、この後俺は学園に戻るんだぞ。あの職員と一緒にな」

指を刺す方向を見ると、スーツ姿の女性が会計をしている。あ、何処かで見た事あると思ったら教科担当の人だったのか。

 

「それなら、俺が交渉するからどうだ?」

 

「それで行けるなら行ってもいいぜ」

どうせ無理だろうと諦め気味で頼んで見たが、上条が行ってから数分後、軽く忠告だけを受け解放された。

 

「お前、どうやって話を着けたんだ?」

 

「簡単だ。明日の昼まで学園に帰ってくるならいいだと。お金は自分で下ろせば問題ないだろ。あの人も仕事が溜まってるみたいだし、もう帰るって」

 

「・・・じゃあ、案内してくれ」

半ば呆れたような顔をするが、監視されながら1人で飯を食うぐらいなら嫌な奴でも楽しく出来る方がましだ。と考えついていくことにした。

 

 

 

 

 

 

 

徒歩で付いてくる秋十の事を考え歩く事約40分、家までようやく着き玄関の前まだ来ていた。

「とりあえず、汗もかいてるだろうしシャワーでもあるか?」

 

「じゃあ貸してくれ。この服でずっといるのも嫌だからな」

鍵は掛かっておらず扉を開けて、入ると上条の家族以外の靴が一足だけ綺麗に揃えられ置いてあった。

 

「あれ、この靴誰のだ?見た事がないな」

ただいま〜と入って行き、そのままリビングまで入るとテーブルの椅子に母親の詩菜座っていたのには特に何も思わなかったが、対面にいる織斑先生の姿が目に入ると思わず目を見開く。

 

「え、え。なんでここに」

 

「あらあら、当麻さん。帰りが遅かったですね」

 

「えっと、帰って来る途中で友達を連れてきたから。それと今日の野菜買っておいたよ」

 

「随分買いましたねえ。食べきれるかしら」

 

「まあ、念のためだから・・・うん」

 

「おい、上条。お前の後ろに何故、秋十がいる?今日は奉仕作業だったはずだが」

 

「それなら、昼近くで終わったそうです。途中で寄ったコンビニで会ったのでうちに来ないかって誘ったんですよ。ああ、担当の先生には話は着けたので問題はありません」

 

「そうか、秋十くれぐれも問題は起こすな、以上だ。自由にしてくれ」

 

「ありがとう、千冬姉」

 

「その名で呼ぶなと言っているだろ。と言いたいが、まあ今回はいい。一夏達は海に行ってるそうだ、お前も息抜きに遊んで来い」

 

「え?」

 

「お前も疲れてるだろうが、遊ぶ元気くらいはあるだろ?」

案に外に出ろと言っているようにしか聞こえなかった。まあ、どうせ用があるからいいや。と思っているが隣の秋十は面倒だなと顔に書いてあるが織斑先生の気迫には勝てなかった。

 

 

 

「結局来たな」

 

「・・・俺としては休みたかったんだよ」

 

「まあ、少ない休みだ。楽しもうぜ」

それから夕方近くになるまで遊び尽くし帰路に着いた。もちろん、一緒にいるのは秋十に加え一夏と妹のマドカもいる。しかもマドカは一夏にべったりとくっついてる。

 

 

「ああ、これから仕事が多いな」

 

「用意なら、俺も手伝おうか?」

 

「じゃあ、お願いする。予想より人数が多くなりそうだなからな、椅子とテーブルに七輪とかも。火をつけるのもやっておかないと」

 

「・・俺も手伝う」

 

「秋十も、手伝ってくれるのか?」

 

「一応、世話になるからな」

 

「おう、ありがとうな」

とりあえず、簡単に分担を決めておいた。それから、家着くなりすぐにバーベキューの用意に取り掛かった。食材は後でも持って来れるので先にテーブルを並べ火起こしに入る。

 

「一夏どうだ?そっちは火が付いたか?」

 

「いや、まだだ。もう少し時間がかかりそう」

 

「まあ、そんな簡単に付かないか。秋十は付いたか?」

 

「付くわけないだろ、それくらい分かるだろ」

 

「いやな、もしかしたらと思って」

それからも黙ってひたすら火をつけるのに時間を費やす。秋十も馬鹿みたいだ、と思いながら黙々と取り組むがこの作業が一番面倒なのは知っている。着火剤を使うにしろ、燃えやすいものを徐々に火を移してやるしにても最終的に火が付きにくい炭が燃えされるのに最も時間を割く。

 

「チッこれに限っては時間をかけるしかねえのかよ」

と言いながらも頑張りその2分後には火が移り燃え始めた。

 

「おーい、こっちは着いたぜ」

 

「早ッ、こっちはまだ付かねえよ。そうだな、じゃあ休んでてくれここまで終われば後やる事はほとんど無いから」

 

「分かった」

縁台に座り給水用に置いてある、麦茶の入ったグラスを飲み干していく。それから、庭を見て馬鹿みたいな光景だと改めて思った。自分が散々に凡人と称して虐めた一夏に、自分が取るはずであっただろう名誉・称号を全て奪われ憎み、挙句に背中から串刺しにした上条が必死に火起こしをしている。

 

「・・・やっぱり嬉しくもねえな、あいつらを完膚なきまでに叩きのめして地にひれ伏させる。それでようやく全て元通りになるんだ」

 

 

 

 

 

「ヘェ〜ここが上条君の家、以外に普通なのね」

 

「本家と比較するのもおかしいと思うよお姉ちゃん。念のため言うけど適性が発表されるまでは一般人だっんだよ」

 

「ってそれは調べ上げたから分かってるのよ。問題は上条君のあの強さよ。いくら喧嘩だけで強くなっても限界があるし、戦闘だけなら色々と桁違いに強いっておかしいでしょ」

 

「単に脳筋と言ってるようにしか聞こえないけど」

 

「そこまでひどく言ってないわよ!」

 

「でも、かみやんの成績もかなり酷かったよね〜」

 

「・・・それは知ってるけど」

生徒会の1人として仕事をしている中で他人の成績を見ると言う事は偶にある。もちろん、上条のものも見た事があるが、結構酷かった。一部の教科だけ飛び抜けているのにその他は全部赤点ギリギリと言うデコボコした結果だった。それを目にした生徒会の人間は全員、目が点になった。確かに馬鹿という他ないものだ。

 

 

その様子を丁度一区切りが着き、干していた洗濯物の取り込みしにベランダに出ていた上条が見ていた。

 

「一体何をしてるんですか楯無さん?」

と声を掛けると聞こえたのかこちらに手を振っている。

 

「いつまでも立ち止まってると不審者に見えそうですから中に入ってください」

 

 

 

「お久しぶり〜元気そう・・ね」

庭まで来た楯無だが、入るなり縁台に座っていた秋十と一夏を見た途端言葉が詰まる。

 

「会長、お久しぶりです」

 

「・・・」

 

「なんで、秋十君がいるの!?」

 

「騒がしいぞ、楯無休日くらいは静かにしろ」

 

「え?織斑先生もいる?!」

上からそれを見ていた上条は驚き過ぎじゃないかと思いながら取り込んだ洗濯物の山を1つ1つ片付けていく。気がつけば片付け終わり、外に出ていた。そろそろ、焼き始め頃合いになるのでその前の息抜き代わりに散歩して来ようとしたが、運悪く数百m先で見かけなくなったナンパ男が目に入る。まあ、それだけなら特に問題はないが並走するように走る車まであるとなると話は変わる。あれはどう考えても人さらいだ直感が告げる。

 

「アリサ、そっちはよく人さらいが来るからやめた方がいいって言ったのに」

その時には上条の体は消える、いつの間にかその距離は半分に縮まりその速さを保ち飛び上がるとその車に飛び蹴りをする様に突っ込む。

ボコンッ!!と凹む音と共に自分体重の何倍もある中型車を縦に回転させながら蹴り飛ばす。その一撃のみに力を用し体は反動でその場に残った。

 

「よう、俺の連れに用か?」

 

「ッ!なんだてめえ一体どこから出て来た!」

いきなりの事に何が起こったのか、困惑しているが人を盾にする速さは異常なものだった。ポケットから折りたたみナイフを取り出しこちらに向けながら、アリサに引っ張る。

 

「あんまりの人の連れに手を出すな」

がそれよりも速く上条の蹴りが入る。勢いのあまりくの字に曲がりさの後ろにある電柱に激突し倒れるがまだ意識は残っていたのか僅かながら体が動くが、首に手刀で軽くあて意識を刈り取った。

 

「はぁ、アリサあんまりここは通るなって言ったはずだぞ」

 

「うう、ごめん・・・」

申し訳無さそうに、しょぼんと凹んでしまうが慌ててフォローする。

 

「まあいい、無事で良かった。ほら行くぞ」

 

「え?きゃあっ!」

いつの間にか上条に抱えられ、思わず声が出る。

 

「ん、嫌だったか?疲れてる様に見えたからつい」

 

「ううん、嫌じゃないよ。いきなりで驚いただけ」

 

「そうか」

軽く返事をしアリサを抱えたまま歩き出す。ちなみに蹴り飛ばした車は何回も転がり倒れはしたが外観には傷は1つもなく中に乗っていた人間は全員衝撃で気絶していた。

 

 

 

「ねぇ、当麻君」

 

「ん、どうした?」

 

「さっきからずっと見られてる様な気がする」

立ち止まり無言で振り向くとニコニコしながら見ているスコールさんもオータムさん立っていた。

 

「おうおう、お熱いね」

 

「見せつけてくれるわね、ヒーローさん」

 

「あの言うならどっちかにして下さい。それからヒーローってどう言う意味ですか?」

 

「そのまんまの意味よ」

 

「俺はヒーローなんて都合の良いものじゃない。ただの学生です」

 

「謙遜も程々にしろよ」

 

「だから、俺は・・・」

 

「車を飛び蹴りで平気で吹き飛ばす人が何を言ってるのかしら?」

あれを見られたのかよ、と内心ため息を吐きそうになる。がいつまでも話してるわけにもいかず、自分も仕事があるのでとりあえず黙ってその場から離れ家までアリサを連れて行くと、すぐに庭に出る。

 

「よし、もう始める」

 

「そうか、でどれから始める?」

 

「まあ、野菜からだな。あとは鶏肉、焼くまでに時間があるしタレも用意しないと、あと自分の飲み物とかもついでに」

 

「俺もやるみたいな、雰囲気だな」

 

「秋十は自由でいいぞ。まだ、疲れが残ってるかもしれないしな」

 

「じゃあ、手伝ってやる。いつまでもお前の世話になるのは嫌だからな」

さっきと同じく3人で作業をやり始める、火が通りにくいものが多く暇な時間がありぼーっとしている時が度々あり。待ちきれなくなった本音が生焼け状態の肉に手を出す事が起こったりと、ハプニングが起こったが徐々に焼きあがり始める。その後、遅れて来たラウラ達も来たので一緒に乾杯の音頭を上げた。

 

「これが、バーベキューですか」

 

「ラウラはやった事が無いのか?」

 

「はい、軍にいた頃は毎日訓練とISの整備で1日が終わったので」

 

「ああ、なるほど。大変だったんだな、おっほらこれも食べていいぞ」

 

「ありがとうございます」

律儀にお礼を返すラウラを見て、妹みたいだなと内心思いながら焼き続けている。なんせ10人以上も来ているのでどんどん焼いていかないと小柄ながらフードファイター並みに食べるアリサや、ついさっき着いた土御門と青髪そして、誘って来た人の分まで追い付かないのだ。

 

「当麻君手伝ってあげるよ」

 

「いや、アリサはお客だ。手伝わなくてもいい、ここに来る前はずっと練習とか疲れてるだろうし休んでくれ。それか秋十か一夏の方を手伝ってやってくれ」

 

それを聞いたアリサは一夏の方に行くが案の定手伝いは大丈夫だと言われ秋十の方にも向かうがやんわりと断られ大人しくする事にした。

 

 

「なんで、あいつばっかり」

その中で秋十は舌打ちをした。その相手は一夏ではなく上条にだった。理由は単純に妬みと嫉妬、作業中で出来た少しの時間で途中からアリサと一緒に来たスコールとオータムを口説きに言ったがあっさりとあしらわれたのだ。そこらの女性なら誰もが振り返るような容姿も持ち、相手を簡単に堕とせる巧みな言葉使いで話しかけた。秋十の性格は全て自分の思い通りにならないと収まらないし、自分の欲しいものはどんな事をしても手に入れないと気が済まない。だが、

 

「もう少しうまい口説き文句を考えてみる事ね」

 

「お前に興味はない」

 

と言われたのだ。しかもその後

 

「もう少し大人になる事かしら。いつまでも幼稚な考えはしないように」

 

「あいつと同じくらいきれいな心でも持て」

 

と立て続けに言われかなり腹立っていた。前の秋十なら暴れそうくらいに

 

「何なんだよ、大体あいつは絶対に裏で卑怯な技でも使ってるに違いない」

 

 

 

 

とその反対側ではスコールにオータム、更に更識姉妹と専用機持ちのセシリアにシャルロット、鈴とラウラが同じテーブルで食事を楽しんでいた。ちなみに詩菜が作ったサラダや当麻が何処からか仕入れてきた魚をさばいて用意した刺身まで置いてある。

「本当に主夫が板につくわね、あの2人」

 

「一夏は前から家事が得意なのは知ってたけど、上条もなかなか・・・」

 

「何というか、女として色々負けたような」

 

「そこまで気にする事じゃないわよ。人には不得意がある、たまたま彼は得意だったそれだけ」

 

「・・・あの今更なんですが、一体誰なんですか?」

おどおどとした様子で会話に入る簪だが、隣に座っている楯無もその質問には気になっていた。単なる勘だがやけに自分達の事を知っている上に漂っている雰囲気が僅かに自分に似ているのだ。

 

「上条君の友人よ」

 

「同じく」

 

「いつまでもふざけた嘘を付くか。裏稼業で何十人と殺してきた人間が何故、私の生徒と友人か聞きたいところだな」

その会話に割り込む織斑千冬の言葉に楯無は瞬時に身構える、裏稼業には詐欺やらヤクザ、暴力団も含まれるが、この落ち着き具合と何十人と殺してきた。と言う言葉からみると殺し屋か何かの組織で人間の始末をしてきたものしか思いつかないからだ。

 

「マドカは話したのね。流石は織斑千冬さん、世界大会を2連覇しかけた事はあるわね。その察しの良さは」

 

「・・・一体なんのつもりだ」

 

「そんなに殺気だだなくても、私はもうあの組織からはおさらばしたわよ」

 

「そんな言葉を信じられると思っているのか?」

 

「あら、私の言葉は信用出来ないのね」

 

「当然だ、素性はある程度把握しているが信用出来るかと言ったら私には全く出来ない」

 

「あら残念、それなら信用出来る人に証言してもらいましょう」

スコールは千冬の後ろに向かって軽く手を振り合図を送っていた。

 

「少しは他人を信用出来るようになった方がいいんじゃないのかね」

 

「国際犯罪組織の人間をどうやって信じろと?生憎だが、一夏を誘拐した人間の信頼など皆無だ」

 

「おうおう、弟思いのお姉さんだ」

 

「そこまでよオータム、じゃあ証人も来た事だし真実でも聞いてもらえるかしら?」

 

 

「スコールさん何か困った事でもありますか?」

 

「ちょっと質問に答えてもらえないかしら?」

 

「まあ、いいですよ」

 

「そう、なら1つ目。私とオータムがもう亡国企業から抜けたのは知ってるわね」

 

「知ってますよ。大体抜けたからここに来たんじゃ無いですか?」

 

「確かにそうね。あともう1つ、すでに亡国企業は存在しない」

その単語が聞こえた人間は目を見開き、一夏の鈴に至ってはへっと声を漏らしていた。ISを乗っているものだったら知らない人間はいないだろう、亡国企業の言葉を簡単に出すスコールに驚きを隠せない。

 

「ん〜存在しないと言うより潰れた、こっち方が正しい気がしますね」

 

「ふふ、ありがとう上条君。じゃあ用はこれだけよ、戻っていいわ」

軽く会釈をして立ち去る上条を見送ったスコールは再び千冬に問いかける。

 

「これで信じてもらえたかしら?」

 

「・・・あいつは嘘を付くような人間でないと分かっている。だが、おかしい事が1つある。ISの適正が発見されるまでやつは普通の中学生だった筈だ。そんな人間が何故裏の世界を把握している」

 

「あら、何も知らないの?」

 

「?何の事だ」

スコールの思わせぶりの表情に怪訝な顔になる千冬。それをかたず飲んで見る生徒達。

 

「私のいた亡国企業は何処にでも居る学生、上条当麻に一夜で壊滅されたのよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まだまだ続きそうです

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