IS学園の異端児   作:生存者

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第31話

 

 

「ここは・・・」

ふと、眼を開けると何もないガラリと空いた部屋の中にいた。家具なく備え付けのベッドもない空間。

 

「まさか、ここは」

慌てて窓を開けると目に入ったのは多くの高層ビルが建ち並びそれを傾き始めた夕日が照らし上げている景色が広がっていた。その光景を見た瞬間、後ろに気配を感じゆっくりと振り返ると制服を着た橙色髪の少女が立っていた。

 

「ミサカ・・総体?」

その呟きに聞こえたのか分からないがニッコリと笑い何かを話すと光の粒子となり消えていった。

 

 

「は!」

飛び起きた上条は周りを見渡すが誰もいない、あるのは見慣れた自分の部屋だ。

 

「・・・なんで今更あの世界が出て来る。もう過ぎた事だろ」

”前の世界”で過ごした懐かしい景色だが、トラウマが残っているのか素直に喜べない。

 

「・・・もうこんな時間か。ふぁぁ、いつまでも寝てないで軽く走って来るか」

現在いるのはIS学園から離れた海沿い近くの実家。徒歩十分程度で海岸に着くためよくランニングに使用している。今日は寝起きという事もあるが10km程走ると足を止めて歩いて引返し始めた。

 

「そろそろ、天使化も使えるかな。まあ、本物の天使から直接テレズマを体に吸収したし問題ないか」

上条の使っている機体にある単一使用能≪ワンオフアビリティー≫の2つのうち天使化はIS戦でも魔術の使えるように設定されているが原罪がほとんどない為使えるのは神の右席の4人のみが扱える異端で癖のあるものばかり。それも一度の発動で多くのテレズマ≪天使の力≫が必要になるのでそうそう連発出来ず。また、テレズマを集めるのに必要とするのが月の光なので夜中にしか供給出来ないという問題もある。もちろん、使用すれば相手が天使でない限り確実に勝てる。

 

「そろそろ、バックアップ用に作っておいたあの人形も壊した方がいいのか?とりあえず元の世界は99%構築できたし、あとは記憶を頼りに手を加えるしかないか」

とりあえず、まだ何も食べていないので帰る。家に着く頃には朝の9時になっていたがキッチンからは物音が聞こえる。立っていたのは上条の母親、上条詩菜実年齢は40代ぐらいなのだが見た目は20代後半という恐ろしい美貌を持っている。ちなみにナンパして来たり、連れ去ろうとする人間が今まで何人もいたが来た事を後悔するほどのボコボコにして追い払われている。

 

「あれ、母さん。何やってるんだ?」

 

「もう帰ってきたんですか当麻さん。あと少しで朝食が出来ますから待ってて下さい」

 

「いや、何もしないのは流石に気がひけるというか・・」

 

「いつも頑張ってるんですから、休日くらいはしっかり休んで下さいね」

そう言われると何も言い返せなくなり、素直に椅子に座って待とうとして、テレビで流れているニュースを見る。最近は割と穏やかになり男性適正者について全面特集することなどはなくなっている。

 

「あの頃は大変だったなー。毎日マスコミやら、記者が殺到してまともに寝れなかったし」

と数年前の事を考えていると料理が出来たのか呼びかけられ朝食を取りに行く。内容は焼き鮭にごはんに味噌汁とごく普通のものだった。

 

「ごちそうさまでした」

あっという間にきれいに食べ終わり、横では満足そう詩菜笑顔になっている。

 

「あれ、そう言えばマドカは?今日から帰って来てるはず」

 

「マドカちゃんなら当麻さんが起きた頃に出掛けて行きましたよ。会いたい人がいるとか」

 

「会いたい人ね・・・どう考えても1人しかいないな」

 

「ふふふ、そのとうりですよ」

 

「・・・あいつ、大丈夫かな」

 

 

 

 

その頃、上条と同じく帰省していた織斑一夏は久しぶりの自宅で休んでると思いきや、突然の来客にかなり手間取っていた。

「来るなら連絡くらいくれよ」

 

「何よ文句でもあるの。それとも、エロいものでも隠しあるの?」

 

 

「いや、そういう訳じゃないけど」

 

「私は兄上を驚かせに来たのだ」

 

「はぁ」

遊びに来たと言う名目で突然の来訪したシャルロット、セシリア、ラウラ、鈴の自由な考えに戸惑っている一夏だが、いつまでもこのままでは自分も退屈になりそうなので何をしようか考える。

と、その時、玄関のチャイムが鳴り響く。この4人が来てるならもしかしたら、篠ノ之か?と内心思っていたが扉を開けるとそこに立っていたのは自分の姉織斑千冬と瓜二つの顔を立ちをした人物が立っていた。

 

「久しぶりだね、お兄ちゃん」

 

「お兄ちゃん?」

そんな呼び方をするのはラウラくらいだと思っている一夏は戸惑いを隠せない。

 

「あ、でも久しぶりよりかは初めましてと言ったほうが正しいかもしれないね。義妹だけど」

 

「待て、俺の家族は千冬姉と秋十と俺の3人だけだ。妹はいないはず」

 

「まあ、普通はその反応だよね」

どう言うわけか、自分の性格を分かっているような口ぶりで話す目の前の少女に不信感があるが何処と無く親近感を感じている。

 

「一夏、いつまでもそこにいては邪魔だ。長くなりそうなら中に案内しないか」

ちょうどよく千冬姉が帰宅して来るのだが、そんな事よりも目の前にいる義妹らさき人物の事で頭がいっぱいになっていた。

 

「姉さん、相変わらず弟には厳しいね」

 

「ッ!マドカ、何故お前がここに、お前は両親に連れて行かれたはずだ」

 

「ちょっと待って千冬姉。この子の名前を知ってるのか?!」

 

「・・・ああ、知ってるとも。一夏には記憶がないかも知れないが、名前は織斑マドカ。お前の・・実の妹だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつ今頃、慌ててそうだな」

1人しかいない部屋の中でIS学園で出された課題に取り組んでいる上条はそんな事を呟いた。昼もとっくに過ぎ他にやる事がなく、勉強を始まていた。別に成績で赤点を取ったわけではないが、それでも次は怪しいと言われそれぞれの教科担当からから対策のプリントをどっさりと渡されその処理に追われていた。寮である程度進めていたので約8割以上は終わり、残り少しのところまで来た所で集中が切れベッドに座り込む。

 

「ああ、そうだ。こいつの処分をどうするか悩んでたんだよな」

視界に入っているのは筒状でダイヤルが付けられた何処にでもありそうなカギ。しかし、中身は持っているだけで上条の使える魔術の全般を扱える危険な代物だ。しかもご丁寧に裏には使い方まで書いてある。

昔の上条曰くどれで使えるのか忘れない為だとか。

 

「まあ、防犯用とその他の細工はしてあるとはいえ取られれば厄介な事になりそうだしな」

ゴロンとの寝転がり視線を天井に向けると何故か機械仕掛けのうさ耳が視界に入る。

 

「うおおッ!」

 

「あはは、いや〜いっくんと同じで反応が面白いね」

腰に手を当て高笑いするのは世界中が血まなごになって探している篠ノ之束さんだった。

 

「って束さん。何処から入って来たんですか?」

 

「もちろん玄関から入って来たよ。お母さんにも挨拶したし」

胸を張り自慢するように言ってくるがせめて部屋に入って来る時は普通に入って来てくれも内心思ってしまう。

初めてあった時は、お腹が減りすぎて家の目の前で倒れている束さんに軽く料理を振る舞ったのが始まりだった。まだ、中学生になる前の上条に担がれると言う、失態に激怒したり上から目線の言葉がよく炸裂したが色々な経験をしている上条に口喧嘩であっさりと負けた。

それからは上条の事情も知ってくれたのか仲良くなり、それからは1ヶ月に一度食事をするくらいになり両親の事をお父さん、お母さんとも呼んでいる。

 

「で、何の用ですか?こんな時間に」

「ちょっと頼み事があってねー。これは当麻君じゃないと難しいから」

 

「はぁ、分かりました。やりますよ。で何をやるんですか?」

 

「えっと、あった。このイギリスで盗まれた専用機を取って来てくれないかな?」

 

「専用機が盗まれた・・・いや、そう簡単には取られないように警備はしてるはず。襲撃でも受けたか?」

 

「当麻君の言う通り襲撃なんだけど。かなり手練れだと思うよ」

 

「それなら、直接束さんが行けばいいじゃないですか」

 

「ん〜困った事に束さんには強制停止くらいしかできないから。回収するのは難しいのだ」

笑顔でさらっと恐ろしい事を言う束に顔が引きつる。現代において最強の兵器となっているISを自分の意思で自由に止めるのは使用している人間にとって脅威だ。それこそ、空中で停止などされた時には命の保証はない。

 

「無人機に限っては無理だけどね。それと、襲撃した中に元亡国企業の幹部が1人いたらしいから気をつけてね当麻君」

 

「軽々と言わないでください!」

渋々動き始めるが、束に世話になっていた事もあるので上条は準備を済ませると早々に家を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが教官の妹。・・・どう見ても同じにしか見えない」

 

「ラウラ、お前にも気になる事が多くあると思うだろうが、静かにしていてくれ」

場を落ち着かせるため、一度静かにさせる。

 

「マドカ、今まで何処に行っていた」

 

「お説教でもするの?」

 

「違う、それならこんな穏やかに話などしない。そうだな、質問を変えよう。何の目的を持ってここに来た?」

 

「目的も何もお兄ちゃんに会いに来た。ただそれだけ」

端的な理由だがそれに腑に落ちない人が数人いた。しかし、それを一夏が抑える。

 

「まあ、いいじゃないか。マドカは会いに来ただけなんだしそこまで質問する必要は無いだろ」

 

「それでいいんですか?もしかしらたら、嘘を言ってるかも知れないんですわよ」

 

「それは俺が決める事だ。俺はマドカが嘘を言ってないと信じてるし、家族だと思ってる。だからセシリアも抑えてくれ」

 

「そうでしたか。申し訳ありませんでした」

 

「顔を上げろオルコット。ここで説教はしたくないからな、謝罪の気持ちがあれば十分だろう。ほら、いつまでも人を睨むなそんな事をしているなら家からつまみ出すぞ」

それを聞いた途端に、慌ててな抑え込む2人に溜息をつく。

 

「マドカは私の家族だ。文句があるなら、私に言え」

それだけいい、リビングから姿を消した千冬を見送った6人。すると、何かを思い出したように一夏の袖を引っ張って気を向かせる。

 

「ん、どうしたマドカ?」

 

「もし、明日暇だったら上条当麻君の家に行かない?」

 

「上条の家か・・・確かに一度くらいは行ってみたいしいいけど。どうしてこんな時に聞くんだ?」

 

「明日、上条君の家でバーベキューをやるから友達でも誘ったらって言われてね」

 

「上条らしいな。そうだ、弾も誘った行くか」

 

「むー兄上の家族か、気になる。私も行こう」

結構その場にいた全員が行く意思を示す。結局、そのあと降りて来た千冬にマドカ以外は帰らされ秋十の除いた家族3人で残った時間を過ごす事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イギリス ロンドン郊外

辺りはすでに暗くなり住宅のほとんどが静まり返っている。

深夜0時を回りほとんどの人が寝ている時間だが、その場所を1人の女は後ろから追いかけてくる何かから逃げ回っていた。

 

「くそっ!なんでこんな事になったんだ」

その女はある物を盗んだ後バーで報酬と交換するだけだった。盗んだまだ良かった。あとは少し遠いが人に紛れて移動するだけだったが、途中で厄介な男に出会ってしまった。顔立ちは東洋人とすぐに分かった、服装も普通で軽く夜遊びをしている学生にしか見えなかったがすれ違いざまに言われた言葉でその考えが変わった。

 

「襲撃して奪ったサイレント・ゼフィルスは何処にしまってる?」

 

慌ててその場から逃走を始めたが間違いだった。あらかじめ幾つかの逃走ルートを用意していたが逃げる先々でルートを塞がれた。我慢も出来なくなり人気のない場所に誘い込み始末する事を決断し、ISを展開する。

 

「ワザとここに来たのか、確かにここなら軽く騒いでも問題無さそうだな」

しかし、応戦しようにも完全な死角。真上からの奇襲により完全に虚を突かれる。真上から一直線に加速しながら落下寸前に拳を振るい真下にいる私に激突し、ズガガガアアッとあまりの威力に地面に叩きつけられたあと周りも陥没し大きくヒビが入った。

 

「くっ!こいつ」

 

「女性がそんな汚い言葉は使わない方が良いですよ」

言ってくれるな、と返すがこうも簡単に姿を出してくれるならこちらも始末出来ると思考する。組織でも下の方だったが、国家代表と同じレベルで毎日訓練に明け暮れている。最初のは驚かされたがこの程度の人間など軽く殺せる。

 

「ふん!」

 

一気に加速して間合いに入ると脚部に狙いを定める。胴体だけでは確実に仕留められるとは言えないと判断した。ギュン!と空気を切るような音ともにブレードが振りかぶるが目の前の男はそれを上から足で踏み潰すようにブレードを地面に叩き落とされ動きが取れなくなる。

 

「なんで・・・生身でISの動きについてこれる」

 

「なに、兵器ばっかりに頼ってる人間の驚く顔が見たくてな。毎日鍛えてただけだ。・・・じゃあ、俺の番だな」

それからは一方的なものになった。たった数発の蹴りと拳で機体の四肢にある関節部分を破壊され使い物にならなくなり自分の足で逃走する羽目になったのだ。

 

 

息が上がり始め、そろそろ辛くなっていたが、闇雲に逃げ回るうちに気づけば予定の場所まで来ていた。それを見ると少しばかり気が抜けたが、慌てて気を引き締め周辺を警戒するが何処にも追いかけてくる人間はなかった。

「いない?さっきまで追いかけて来たはず。・・・まあ、いいこっちの物を渡せば問題ない」

軽く息を整えると、落ち着いた雰囲気を出して店内に入る。ちょうど奥にある座席に待っている女性が上司でもあり渡す相手だった。向かいの席に座るとワザとらしく目を向ける。それに気づいたのか、口を開き始めた。

 

「・・・サイレント・ゼフィルスは回収出来たか」

 

「ああ、ここにある。けど早くここを出た方がいい。やばいのがついて来た」

 

「・・・まあ、問題は無いわ。急いで離れる用意をして」

そこで言葉に詰まる事に違和感を感じる。だが、その理由がすぐに分かった。その目線を向けた先にはずっと後をつけて来た男が通り過ぎていた。思わず服の内側に隠していた銃に手を掛けるが、その男は何もなかったように出て行ったのを見て安堵する。しかし、目の前の上司である女性は手が僅かに震え表情も悪くなっていた。

 

「・・・あいつを知ってのか」

 

「ええ、知ってるわよ。トラウマになるくらいにね、またあれが相手になるなんて」

さらに表情が暗くなっていくがその程度で行動力まで落ちることはなかった。予定のどうり裏に用意しておいた車まで移動するため店員の目線が外れた瞬間に従業員用の扉から外に出る。

 

「よう、遅かったな。もっと早く来ると思ったけど」

扉を開けた先には壁に寄りかかってこちらを見てくる男が立っていた。

 

「あら、早く待ってくれてた事はありがたいけど・・・ここで死になさい」

素早く引き抜き容赦無く銃弾を飛ばす。その銃には消音器が付けられほとんどというレベルで発砲音が抑えられ暗殺などによく使われるものが搭載されていた。

 

「チッ・・やっぱりこれじゃ殺せない・・か」

パタリとその場に倒れる女性。その腹には男の固く握り締められた拳がめり込んでいた。僅か2〜3mの距離からの射撃を避けられ、顔は驚愕に染まるがそれより体が早く動き始め女はとっさに逃走する。路地を右へ左へと複雑に曲がり時には立てかけてある機材などを全て倒しさらに後ろに発砲しながら逃げ続ける。

 

「すばしっこいやつだな、ラチがあかない」

バンッ!と曲がり角にあった扉を体当たりしてこじ開け中に入ると扉を閉めて近づいてくる足を音をやり過ごす。そして、その場を過ぎようとした瞬間、扉を開け音のした方向に銃口を向けるが誰もおらず薄暗い路地が続いていた。

 

「・・何処だ。クソッ!」

慌てて真後ろ、路地の左右も見るが人気のない狭い道があるだけだった。また、中に入り気持ちを落ち着かせるが、標的を見失った今どう動くか迷っていた。このまま逃走するか、もう1人も回収するか。その思考には追跡者を抹殺するという考えがないという事はそれだけ相手が上かを認識できたのだろう。

とその時、人影もない目の前の扉が開く。

 

「ッ!」

とっさに銃の引き金を引きそうになるがなんとか押さえつけ、外を警戒しながら見渡すが誰もいない。

 

「なんだ、今のは」

ホッとしたのか、扉を閉じ中に入ると今度は部屋の奥にある扉のドアノブがガチャガチャと急に動き始める、最初は驚いたもののすぐに慣れたがいつまでも収まる気配がなく、銃を向け数発打ち込むと何もなかったように止まるが、同時に扉の横にある窓に人影が通り過ぎる。

 

「そっちか」

と立ち上がろうとした時、奥にある扉が急に開き、そして勢いよく閉じバンッ!と大きな音を立てる。さすがに驚いたのか肩をビクつかせるが、やはりそこには誰もいない。

キィィィーとドアが軋む音を立てながら少しずつ開き始める。思わず目がそちらに向かうがやはり何もない。

 

「一体何なんだよ。さっきだから」

 

さらに今度は窓ガラスを強く叩く音が鳴り始める、何者かが外から叩いて脅し掛けるような力で。

もはやここまで来ると恐怖しか感じないのかガタガタと震え始める。自分でも必死に抑えようとするがそれもままならない。

 

「・・・止まった?」

恐る恐る、窓に近寄り確認するが人影もなかった。

 

「はっ!いい迷惑だったな。ったくビビらせやがって・・ッ!」

ハッと何か嫌な予感がし、振り向く。すると、振り向くのを待っていたかのように奥にあった扉が徐々に開き始める。全身から冷や汗がダラダラと流れ、扉が開くのを銃構えながら見続ける。ついに全てが開き廊下まで見えるようになったが何もなかった。続けて入って来た扉も開き始めるが今度はいないだろうと視線だけ送った。

すると、その扉には手が掛けられていた。やっと来たかと構えるが次の瞬間、驚愕に染まる。なんと、その手は肘から先がなく、宙に浮いた状態で固定され扉を開けていた。

 

「!!」

もう、本物か作り物か判断をする余裕などなかった。完全に開き終える前に銃を何度も発砲し、弾倉が空になるまで打ち続け、気がつけば後ろに後ずさりしている。そろそろ、壁にぶつかる頃かとふらつきながら思った。

 

「わッ!」

と後ろから背中を押しながら驚かすような声が発せられた。

普段なら軽く流しそうな事だがもう、正気を保っている余裕などなかった。

 

「キャァァー!!!!」

出せるありったけの声を出して悲鳴をあげる。すでに精神的に限界が来てさていたのか気絶してその場に倒れこんだ。

 

「ん〜少しやり過ぎたか」

最後に呟いた言葉は誰もにも聞かれる事はなかった。

 

 

 

 


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