IS学園の異端児   作:生存者

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第27話

「はあ、ダメだ勝てねー」

荒く息を切らしながらスポーツドリンクを飲むダリル達、その前には昨日、大会があったにもかかわらず疲れた様子のない上条が立っていた。

 

「それにしても、どうして急に模擬戦なんてやろうと思ったんですか?」

 

「あれだよ。これから帰省するから、その間に腕が落ちないように体を慣らそうと思ったんだよ。全く歯が立たなかったけどな」

サファイアの言うとうり、朝から3対一の模擬戦を2回程やっているが、その二回を上条はほぼ無傷で勝っている。

 

「それより、お前の使ってる武器のほとんどがとんでもなくでかくないか?」

上条が使っていたのは全長5mの巨大な鉄塊のメイス、一振りで周りを一撃で薙ぎ払う事が出来るほどの質量もあるがそれゆえ250kg以上の重さがあり、まともに受ければ一撃で破壊されかねないものだ。

 

「まあ、デカイのは否定しませんけど。このくらいが使いやすいんで」

 

「これがねー、って重!本当にこんな使ってたの?!」

 

「まあ、使えるものしか使ってませんが」

想像以上の重量に思わず声を上げるがそれをあっさりと答えられしまう。小枝を振り回すように使っている上条にとっては全く疲れすら見えない。そんな時、何処からかぐ〜〜と音が聞こえる。ちょうど昼ごろという事もあり鳴ってもおかしくないが、どうも恥ずかしいのか1人程少し目線をずらしている。しかも、さりげなくチラチラとこっちを向いて来るのでどう声を掛ければいいのか分からなくなった。

 

「・・・とりあえず休憩にしますか」

 

数分後、とりあえず軽くシャワーを浴びたり着替えてから廊下を歩いているが周りからの目線が刺さる。何故か分からないが両手にサファイアさんとダリルさんがしがみついている。そして、それ以上に後ろから楯無さんの視線が刺さる。かなり辛い、しかも胸までがっつり当ててくるので意識しないようにする。

 

「おお、顔が赤くなってるぞ。とんでもない唐変木だと思った安心したぞ」

 

「安心って俺は鈍感じゃないです。それくらいされれば恥ずかしくなりますよ!」

 

「へぇ〜ならもっと反応を楽しんでみたいわね」

後ろから思っ切り抱きつかれ顔が赤くなりそうになるが、その前に手を振りほどきその場から走り去る。その姿を3人は楽しそうに眺めるが何処か物足りないような表情だった。

 

 

逃げるように食堂にまで来るとすぐに自分も昼食にする為、1人で食器を持ち窓際の席に座る。あと少しで8月に入る時期になり食堂に訪れる生徒もかなり減ってきている。1人でのんびりと食べながらこの後の暇な時間の過ごし方を考え始める。

 

「この後どうするかー、もうやる事もないしいつものトレーニングでもやろうかな」

部屋でする事もあるにはあるが少しばかり集中しないと出来ないのでここではやるわけにも行かないのでそれくらいしか思いつかない。

 

「上条当麻君。相席してもいいかな?」

 

「あ、どうぞ」

そこに居たのはスーツ姿のナターシャさんだった。臨海学校から帰ってきてから教員としてこの学園にいる。操縦技術が高く、実習の授業で補助役で出ている。そして、人柄の良さもあり生徒からも人気がある。

 

「今日は一夏君とは一緒じゃないのね」

 

「まあ、織斑先生と手合わせをしてるらしいので。代わりに楯無さん達の相手をする事になりましたよ」

 

「1年生であの3人を簡単に相手に出来るような人なんて普通はいないわよ」

 

「ナターシャ先生のあの機体なら簡単に出来るんじゃないですか?偏光制御射撃もあって射撃技術も高いし」

 

「・・・苦戦はするけど勝ると思う・・かな。君みたいに一撃一撃があんな強力なわけじゃないから」

 

「んーそうでかね。先輩達もかなり強いですし、そんなに強いとは思いません」

あくまで自分は強くないと思う上条だが、彼のの戦績を知っているナターシャにはただの謙遜にしか見えなかった。

 

「あ、なら私と一回模擬戦をやらない?」

 

「・・急ですね」

 

「あの時は意識が無かったし、映像で軽く見たことしかないからね。それにこの後は暇なんでしょう?」

考えていた事を当てられ思わず顔が引きつる。別に構わないのだが、流石に1日でアリーナを数時間も使うのには気がひけていた。

 

「アリーナの許可はもう取ってあるから今からでも出来るわよ」

何故か大半の人に先周りをされているような気がする。と思うがここまで来たら受けた方いいと感じ、受ける事にした。まさか今日こんな事になるとはと、思い返すがもう遅いので諦めてやる事だけを考える。

 

「射撃が主か。遠距離じゃ不利だし、接近したら余計につらそうだな」

ぶつぶつと独り言を話しながら移動して来たが、よくよく考えるとISのスーツが下だけしかなく、上の方がなかった。

 

「どうするか、上だけ着ないって言うのも悪くないけど不味いか。・・あれ、確か下着だけでも良かったんだよな。ならシャツだけでも着るか」

素早く着替えると軽く小走りで行くとグラウンドに入る。すでにナターシャ先生は専用機の銀の福音を展開し待っていた。前と違って操られてる訳じゃないから数倍厄介な相手になりそうだ。

 

「じゃあ、始めますか」

 

「ええ、そうね。でも、下がISスーツで上が普通のシャツなのが気になるけど」

 

「偶々、上の替えが無ったんですよ。ナターシャさんでも相手が上半身が裸の男で集中出来ますか?」

 

「あ、・・でも、まあ見てもいいかも」

何故かポッと顔が僅かに赤くなるのに首を傾げる。しかし、いつまでも始まりそうにないのですぐに現実に戻して準備に入る。ちなみに審判は途中であった山田先生にお願いしてあるのであとは試合開始の合図が鳴ったら始めるだけの状態になっている。

 

「正式に戦うのは初めてだけど、負けるつもりはないからね」

 

「それは俺も同じです」

手に持っている薙刀を構え直す。少し体制を前にして合図が来るのを待つ。

その時ちょうど、アナウンスが流れる

 

『では上条当麻君対ナターシャ・ファイルスさんの試合を始めます』

少しばかり緊張感が走る、あれだけのビーム兵器を備えた専用機を使いこなす人だ距離を置いて戦えばあっさり蜂の巣にされかねない。

 

『3・2・1・・・模擬戦開始!』

ドンッと空気を裂き接近する、数秒でその間合いは5mまで縮む。ナターシャさんも驚いたような声を出すがこれは試合、素早く刃を上に向けて振り上げ先制攻撃を決める。がそこは後ろに飛び受けるダメージを減らし距離を開ける。

 

「ぐ!・・流石に速いわね」

 

「これくらいは出来ないと、楯無さんには敵いませんから」

間合いから外れた瞬間に上条にロックしたミサイルを放つ。だが、それはその場しのぎに終わる。一斉発射されたミサイルのカーテンになり迫るが、そこに出来ている僅かな隙間を縫うように避けながら向かってくる。

ナターシャも慌てる事なく次に移る、機体につけられた特大のレーザーを放つ。それも上条ではなく今も上条を狙い続けるミサイルに。

 

「やばっ!」

それにいち早く気づき逃げようとするが火の煙幕が覆い尽くし爆発が起こる。流石に効いたのかシールドエネルギーがかなり削られている。

 

 

「うまくいった、のかな」

正直、成功するか否かが怪しい物だった。最初に放ったミサイルを囮にして次に発射したレーザーをわざと上条に当てずにズラした位置に発射し、ミサイルを誘爆させ広範囲に渡って爆発を起こす。もし、直接狙えば確実に避けられると分かっていたのだが、偶然反応が遅れてくれたのも重なり一気に削る事が出来たのだ。すぐにその場から離れ距離を開けると先程の爆発が起こった場所を眺める。そこにはうっすらと人の影が映り自然と身が引き締まる。が、いつの間にか景色ぐ前に進んでいくのが見えた。気がつけば後ろに吹き飛ばされ、お腹の真ん中あたりに薙刀が刺さっている

 

「く!このままじゃ、態勢を」

完全に態勢が崩れる前に強引に戻そうとするが勢いが強く全く押し戻せない。

 

「態勢がどうしたんですか?」

ゾッと全身から嫌な汗が出そうになるがそれでも振り向く事はしなかった。声のする方向のスラスターに付いているレーザーを拡散させるよう全方位に放つ。そこから旋回するように振り返るがそこには誰もいない。慌ててセンサーで探すが反応がなく腕を良く見ていると影が映りこんでいた。決死の回避で真後ろに避けるとその数cm前をブンッ!と何がが振り下ろされる音が聞こえる。だが、それでは終わらない反撃に入ると考え終えた時には機体は横に薙ぎ払われていた。

 

「痛!なんてパワーなの。こんなの機体が・・・!」

そこで言葉が途切れた、反動で体が硬直している時に上からもう一度振り下ろされる。避けるのは無理だと判断し両手を頭の上で交差させ、受けようと踏ん張ろうとした。その直後、先程の何倍もの重さの一撃がかかり耐えきれなくなったナターシャはそのまま地面に倒れそうになるが踏ん張り持ちこたえるが続けざまに来た蹴りが真横から入り吹き飛ばされた。着地と同時にシールドエネルギーがゼロになり終了のアナウンスが流れる。

 

『しょ勝者、上条当麻』

あまりの終わり方に思わず戸惑っている山田先生。上条にはいつも通りの事にしか感じていないので倒れているナターシャ先生に近づく。あまりにも力が掛かったのか所々の装甲が凹んでしまっている。

 

「負けちゃったか、相変わらず桁外れの強さね」

 

「強くないですよ。ただ、速く動けるだけで戦闘のしかたなんて素人同然です」

 

「そんな素人さんが簡単に国家代表相手に勝てるとは思わないんだけど・・・あれ」

専用機を待機状態に戻してゆっくり立とうとしているが一向に立つ気配がない。側から見ている上条が足をチラッと見てみると少しばかり震えていた。

 

「もしかして、・・立てなくなったんですか?」

言うのが恥ずかしいのか、俯いた状態で少しだけ首を縦に振る。

 

「しょうがないですね」

軽々と抱えるとそのままピットまで運んでいく。

初めてお姫様抱っこをやってもらうけど、以外といいかも。

 

 

「上条君お疲れ様です。相変わらずとんでもない速さですね」

 

「あの、そんな怪物みたいに言わないでください山田先生、結構傷つきます」

さりげなく言われた一言に傷つく。以前にも楯無さんからも面と向かって言われたことが普段からおっとりしている山田先生に言われ余計に辛い。まあ、まだナターシャさんを抱えているいるので近くの椅子に座らせると妙なくらいに汗が出ているのが目に入った。

 

「すごい汗を掻いてますけど、水でも飲みますか?」

体調を気遣い、何処から出した水筒を差し出す。渡された本人からすれば上条のやり方に冷や汗を大量にかいてしまったのだが、せっかくなのでと受け取って口を付けて飲み始める。中身はパックを入れた麦茶で喉が渇いていたナターシャにはありがたかったが、ここであることに気づく。

 

「ねぇ、これってここに来る前も使ってた?」

 

「え、そうですけど。問題でもありましたか?」

その一言で先程よりも一層顔が赤くなる。上条は意図してやったわけではないが学園でも人気のある人間と関節キスをしてしまった事に思わず恥ずかしくなっていく。仮にも命を救われた人でもあるので更に恥ずかしくなっている。側にいる山田先生も思わずまたかとそんな顔をするがそんさの事に一切上条が気づくことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 


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