IS学園の異端児   作:生存者

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第22話

「じゃあ、みんな揃ったね〜」

あれから時間が経ち準備の整った専用機持ちは先ほどまでいた岩場に集まり整列している。一部を除けば緊張した面持ちで話しを聞いている。

 

「まあ、最善は尽くしたしあとはみんなで力を合わせて頑張って〜」

緊張感が途切れそうな言い方だが、こんな時は逆にリラックス出来ると思う。それに一番怖いのは標的に落とされることよりも仲間割れの方が起きて欲しくないと考えている。

上条は移送役で簪とラウラと鈴を運ぶ事になり、一夏をセシリアとシャルロットが運び、秋十は箒と玲奈がやる事になった。玲奈はミサイルの対策で付いていくような感じだな。EMPによるミサイルの対策、これがあるだけでもかなり余裕が生まれる。

 

「じゃあ、束さんからは以上。ちーちゃんから何かある?」

 

「・・先に行く秋十と一夏は一撃で決める事だけを考えろ、いいな」

それに一夏と秋十は頷き飛び立って行った。一般の人間には見えない速度だが、千冬はその行った先を見据えていた。その隣では束さんは笑顔で手を振っている。すると、何故かこちらに近づいて来る。

 

「ラーちゃん達、ちょっといいかな?」

 

「ラ、ラーちゃん?!」

変なあだ名を付けられ戸惑っているラウラを放置して束さんは話し続けた。

 

「箒ちゃんの事、気に掛けてくれないかな?」

 

「そんな事ですか、俺は見捨てたりはしません。必ず無事に返します」

 

「私も、仲間を見捨てはしない」

同じように鈴とラウラも答え、束さんも安心したのか元の笑顔になった。

 

「そっか、ありがとう。じゃあ〜いってらっしゃい〜」

再び手を振る、上条は飛ぶ準備に入った。ちなみに胴体の一部にはラウラのワイヤーが巻き付けられ各機体に結ばれている。マッハ8の環境だ、このくらいはしないと置いているかも知れないしな。

 

「それじゃあ、捕まれ少し負担が大きいから歯を食いしばれよ」

一瞬にして全開の半分マッハ4まで速度が上がり、自分がさっきまでいた場所どんどん離れていく。それから数秒後には最高速度まで上がり安定飛行をしているが少しばかり息がしづらい。

 

「流石がに速いな、大丈夫かみんな」

 

「こ、これが大丈夫に・・見える?」

 

「会話が出来るなら大丈夫だ。一夏達は無事に終わっては・・・いないか。秋十、やるなら一撃で決めてくれ」

 

「え、逃げられたの?」

 

「いや、逃げられてはいない。それにしても6機相手に互角か、思ったよりも厄介だな」

 

「その割には余裕そうね、何度も経験してるのかは分からないけど」

 

「まあな、今までに比べれば可愛いもんだ。このくらい」

そんな会話をしているうちに到着し、離れるとこちらに気づいたのか振り向いた、普通に振り向くだけならまだ良かったがそこまで相手は甘くない。振り向きながら、周りに一斉にレーザーの雨が降って来たのだ。だが、それをその場から動かずにただ体を横に向ける、その動作のみでレーザーの雨を抜け、上条は接近して行った。

 

「すぐに終わらせてやる」

その手には七点七刀が握られ、振り抜いていた。距離は離れているな空気を切り裂く音とともに極細のワイヤーが福音を襲う、その速さに逃げられなかったのか全て当たり大きく体勢が崩れた。そこへ追い打ちを掛けるようにレーザーやミサイルが打ち込まれていく。上条はその中に強引に入り込むと煙に紛れながら、しのいでいる福音を掴み外に放り投げた。

 

「はあああああ!」

気合いが入っているのかやたら大声を出しながら切りかかっている秋十の姿があった。この一撃で決める為か、零落白夜を発動させて当てていた。その直後、ほぼ、エネルギーが切れているのかノイズが混じった声になり下に落ちていった。

 

「ふぅ、まっ僕にかかればこんなの簡単だね」

 

「あんなの誰がやっても出来るわよ」

 

「単一仕様能力が無い君の機体にこんな事は出来ないのにかい?」

 

「あっそ、やっぱりなんでもない」

鈴も秋十の傲慢さに呆れたのかすぐに会話を絶った。周りでも同情する様な目で見ているメンバーが何人もいる。全員が終わったと思い一安心していると海に落ちていったはずの福音が光り出しまた浮き上がってきた。

 

「おい、まさかこのタイミングでセカンドシフトしたのか」

よく見ると先ほどと外見が少し変わっている様にも見えた。最初の状態でも手こずった相手が更に成長したのか、これはやる気出さないと危ないな。けど、1つ気になるな、無人機って聞いてたけど、本当に無人機なら形態が変化することはないはずだ。だとするともう1つの可能性が出てくるな。

 

「みんな、離れて」

簪は牽制なのかミサイルを8発を打ち込もうとするがその前に福音の上部から放たれた特大のレーザーに書き消され、真っ直ぐに簪に迫っていく。擦るくらいのギリギリの位置でなんとか避けるがそのせいで集団から離れてしまった。その隙を狙う様にとてつもない速度で迫り今度は全方位のレーザーやミサイルが撒き散らされる。一夏と上条はフォローに回ろうとするがその前に直撃する。そう思ってしまったが

 

「言ったはずだぞ、私は仲間を見捨てたりしないと」

当たる直前でラウラがミサイルの一部を受け止めいたのだ、レーザーの一部はセシリアのピットの射撃により相殺され、残りは意外にも玲奈によって防がれた。

 

「私も手伝うわ。1人で倒せる様な相手じゃないしね」

 

「了解ですわ」

なるほど、単体では勝てないなら集団で行くのか。けど、この機体には人が乗ってる可能性もあるからな。でも、まずはエネルギーを削らないとすぐには解放できないし、それまでは我慢するしか無いか。

ブンッ!と鈍器が振るわれる音が聞こえる、いつの間にか体はギリギリ当たらない位置まで体が動き避け後ろに下がる。その下がった時、福音のレーザーが何十と放たれるが、上条は持っていた武器を変え横に振るだけだった。その一振りで向かってきたレーザーは2つ切られ当たる事はなかった。

 

「早く終わらせないと、中の人が危ないな」

その手には長さ1mもなく切っ先のない剣。カテーナ・オリジナルと言われ全ての次元を切ることの出来るとんでもないものだが、外観からはその恐ろしさはあまり伝わらない。

全てを切り落とすと上条と福音は対峙していた。その周囲には体勢を整えいつでも落とせる準備が出来た一夏や玲奈が囲んでいる。

 

「全次元切断術式、まさかこれを使う事になるなんてな」

上条と福音はほぼ同時に動いた。先に動き出した福音はもっとも強敵だと優先した上条にミサイルとレーザーが放たれる、しかもレーザーは全てが偏光制御によりカーブを描きながら飛んできた。2、3度振るった剣で全てが切り落とされる。そして、瞬間にラウラのレールカノンが火を噴き福音を落とすべく胴体に向けて発射される。それを僅かに身を屈め避けたが、その先に待ち構えていた鈴の青龍刀が目の前まで来ている。今度は反対に仰け反り、避けるが背後に回っている簪とシャルロット、玲奈の一斉に射撃が襲う。とっさに避けるが体の半分に直撃し後ろに体勢を崩した福音に先程まで戦闘に全く出てこなかった箒の斬撃が迫る。その斬撃は当たりはしたがその攻撃で距離を開けられていた。反撃に一斉掃射でレーザーの雨といくつものミサイルが降り注ぐがミサイルをラウラのAICの停止結界、玲奈はEMPで無効化し、飛んできたレーザーを上条が全て切り落とすと、残りのメンバーの一斉射撃が福音を覆う。

ドガガガガガッ!といくつものレーザーのが直撃した。福音にもかなり効いたのか、煙が立ち少しだけ動きぐ鈍くなった。

 

「もう操縦者を守らなくていいぞ、福音」

ザンッ!と上条のカテーナが振り下ろされ、福音の装甲が真っ二つに切られ中からは操縦者と思われる女性が見える。上条はISの装甲を更にこじ開け担ぎ出し、ついでに機体も持って行く。その光景に無人機だと思っていた面々は驚いている。

 

「えっ!まさかそれ、操縦者?」

 

「ああ、そうだ。無人機が形態変化する訳ないと思ったけど、このとうり乗ってたよ」

 

「って、そんなゆっくりしてないで早く戻らいないと危険だよ!」

 

「あ、じゃあ誰かどっちか持ってくれないか?この機体も持ってかないと行けないから」

いくら、ISで持っているとは言えずっと持つのはかなり負担がかかり旅館に着く前にエネルギーが枯渇するかもしれないからだ。

 

「え、なら僕が操縦者を持っていくよ」

一瞬、ほんの一瞬だがとてつもない殺気が秋十に向けられたように感じた。本人は気付かないが、箒や一夏を除いたメンバーは全員秋十に嫌らっている。一夏は、いつもいたせいか慣れているので特に何も思っていない。

 

「操縦者はあんたが持ちな、機体くらいは持ってあげるわ」

 

「おお、ありがとな玲奈。急にどうしたんだ?」

 

「私はまだシールドエネルギーが有り余ってるからは持っていけるのよ。変な気は起こさないようにね」

 

「はいはい、じゃあ頼んだぞ」

近づいてくる玲奈に福音を渡すパワーアシストがありでもかなり重量があるのか少し顔が変わった。そこに納得が行かな秋十が更に割り込んでくる。

 

「君は疲れてるんだし、無理はしないでいいんだよ」

 

「この程度じゃ疲れない、そんなに気遣ってくれなくていいぞ」

 

「そうね、体力馬鹿の厄病神なら持てるでしょう。それに、帰りの分のシールドエネルギーもあるかどうか分からないようなあんた持つよりは、安全だとおもうわよ」

 

「一夏ならまだわかるけど、下心丸出しのあんたに任せたら分かったもんじゃないわ」

 

「ッ!なんだと!」

 

「ほら、こんなところで遊んでないで帰らないと千冬姉から説教くらうぞ」

一夏がそう切り出すとすぐさま全員が戻り始めた。いくら倒したとはいえ、いつまでもここにいれば後で何を言われるか分からないからだ。

 

「はぁ、これで後は訓練だけか・・・、ん?」

ふと、周りが急に暗くなり空を見上げるといつの間にか真っ暗に染まり、満月になっている。そして、よく月の中心を人間のようなシルエットが見えていた。

 

「・・・ッ!」

その刹那、ガキィィィッ!と振り上げたカテーナと黒い翼がぶつかり合っていた。上条の鍛え方抜いた腕力でもギリギリので防いぐことが出来、少しでも力を抜けば八裂きになるか、腕が吹き飛ぶかもしれない。

 

「なんで・・・天使がこんなこんなところにいるん・・だ!」

上条はカテーナ・オリジナルに溜まっているテレズマ(天使の力)を意図的に暴走させ爆風を起こすと大きく後ろに飛んで距離を空ける。

 

「・・優先・・」

更に100以上の翼が生え問答無用で振り下ろす。上条は、振り下ろす天使の下に潜る事で避けるが、巻き上がる水しぶきで抱えている操縦者を落としそうになるが再び距離を置く。

 

「兄上、大丈夫ですか!」

 

「ラウラ、この人を頼む!あと、ここから全員を逃せ!」

ラウラに向かって女性を投げる。かなり雑に渡したが何とか受け止めてくれた。

 

「では私も共闘します。今、シャルロットとセシリアも来ています」

 

「馬鹿野郎!!全員逃せ!・・ッ!」

真上からの一撃、寸のところで真横に避けて避けるが、天使はこちらに手を突き出す。上条は右手で何もない空間を横に払う、僅かに何かに触れた感覚が残るが直後、遠く離れた岸の近くにある崖が吹き飛ぶ。

 

「あの時と同じか」

天使は少し手を捻るとまた同じ一撃が迫るが体を屈め避けると距離を詰める。それに対し天使は無数の翼を広げ一瞬で1000mまで高度を上げ真下に一気に落下する

 

「・・本気で天使が戦う前に終わらせないと。ここ一帯が全部消しとんちじまう」

上条も一直線に天使に突っ込んでいく。状況は違うが前にも同じ方法で消す、と言うか元の居場所に戻した事があるからだ。一撃で仕留められなくてもある程度までなら力を削ぎ落とせる。ズバッ!と正面からぶつかり合い周りに衝撃波が撒き散らされる。上条の振りかぶった右手は見事に天使のど真ん中に吸い込まれるように食い込み貫通させていた。しかし、天使が顔をしかめることはなく、むしろその凹凸のない顔は歪んだ笑みを浮かべている。

 

「まず!・・グファッ!!」

天使の両手から放たれる不可視の攻撃を至近距離から受け海面に叩きつけられる。立て続けに背中から生える翼が枝分かれし50まで増えると落ちていった場所に振り下ろす。海面が叩き上げられ高さ10mもの津波が起こった。しかし、天使の顔は優れていなかった。標的である男がまだ目の前にいるからだ。

 

「あ、危ねえ。本気で死ぬかと思った・・」

上条は2つのうち1つはギリギリで避ける事が出来たが、片方しか避けられず脇腹を僅かにえぐられていた。

 

「・・範囲・・拡大・・」

手を掲げると氷の結晶が現れ少しずつ大きくなるが途中で止まる。

 

「・・目標・・変・更」

上条の横を視認出来ない速度で通り過ぎる天使、振り替えり行く先を目を凝らして見る。そこには白い機体とそれを追いかける5つ影が見えた。

 

「あの馬鹿」

自分の怪我を無視して、最高速度で追いかける。だが遅いその時には攻撃の準備に入りあと少しで、氷が降り注がれる状況だった。いくらシールドエネルギーで守られているていっても、それは人間の作り出した兵器から守るものだ。それが神の作った兵器の攻撃に耐えられるかと言われたらどうだろう。1つ1つがミサイル同等の威力の氷が降り注ぐなんて事があったとしたら。ロボットに心はない、打ち込まれたコマンド1から10まできっかりこなす。殺すと決めた相手に手加減する事も。直後、氷が雨のように降り注ぎ、秋十達を1人ずつ落としていく。1人はまだ残っているが残りはただ受け止め少しずつシールドを削り取られている。

 

「やめろおおおお!!」

雄叫びを挙げながら30km以上離れた天使に剣を振り下ろす。その長さは持ち手だけで3〜4kmもある剣だ。幻想殺しでもうち消すのに時間がかかった大剣、あの時はただ落ちるだけだが、今回は人の手で振り下ろす。高く掲げられた大剣は一瞬で振り下ろされ、天使に命中した剣はそのまま海面を通り海の底まで通り地面に刺さった。

 

「はぁ・・はぁ今のうちにあいつらを」

剣を消し上条は落ちていった、メンバーの救出に向かう。来ていたのは玲奈とセシリアを除いた全員、何とか防ぎ切っていた一夏にも手伝ってもらい助けだす。致命傷は免れたがかなりダメージが入っているのか機体の損傷は激しい。少しばかりホッとしたが全員に何故来たのか上条は一夏に聞いてみる。

 

「一夏、何で来た。危ないから逃げろって言ったはすだ」

 

「・・それは悪かった。けど急に飛び出した秋十を止められなくて」

 

「・・分かった、強く当たってごめんな。どうしても怪我人は出しなくない性格でな、俺もあいつを足止め出来なかったんだ。俺の方こそ悪かった」

腰をしっかりと曲げて謝る上条、しかし一夏達は顔を上げさせる。途中上条が手を貸さなければ怪我どころか死人まで出ていたかもしれないからだ。

 

「いや、謝らなくていいよ上条君。来た私達の方が悪いから」

 

「そ、そうだよ。僕らも怪我じゃすまなかったかもしれないんだよ」

 

「分かった。あ、帰ってもらう前に秋十1つ聞きたい、なんで来たんだ?」

 

「何って?君1人じゃ大変そうだから助け来たんだよ。その僕になんでとは酷くないかな?」

 

「・・力があるから戦たいのは分かるし俺もそうだから何も言わない。けどな、相手が悪すぎる。早く戻ってくれ」

 

「相手が悪ってあれが何なのか知ってるのか、上条」

 

「知ってるよ。あれは・・天使だ、大天使ガブリエル」

 

「ふっはは!天使?あれがあのちょっとした凹凸しかないようなあれが?つみり僕達は天使相手に対抗してたのか?すごい、あれを倒せれば僕は最強に近づける」

 

「天使って本に書いてあるようなやつじゃないの?」

 

「俺が知ってる天使はあれだ。少なくとも見た事があるのは・・・逃げろ、もう元気になったのか?・・はぁ手間を増やさないでくれ」

上条が見ていたのは海面。その表面は少しずつ凍りつき、気がつくと周り一帯の海全てが凍りついていた。そして、その中から翼を広げた天使が現れる。上条が開けた穴を塞がり、先ほどよりも寒気が増している。

 

「ラウラ、自衛隊のIS部隊はまだ来てるのか?」

 

「いえ、一度報告したので帰ったとおもいます。ですが、この騒動でくる可能性も」

 

「なら、ラウラ。もし半径5kmいないに誰かぎ入ろうとしたら止めてくれないか?こいつは俺に注意を向けてる。から多分周りには手を出さないと思うけど、もしもの事があったら対処できないかもしれない」

 

「分かりました」

頷くラウラに軽く笑顔を見せると、天使と向き合う。まだ逃げ逃げ切れていないことを考えまずは時間稼ぎを優先させようと考えていた。しかし、運に見放された上条にはそれが出来なかった、上条の後ろから猛スピードで天使に突っ込んでいく秋十が横を通り過ぎて行ったのだ。

 

「やめろ、秋十!」

 

「お前1人じゃ無理だ、そこで待ってな」

自信に満ち溢れた言葉だが、内心は1人であの天使を倒し、今度こそ自分の居るべき場所に戻る為どんな手を使ってでも倒すと欲望にまみれた考えて頭の中は埋まっていた。

 

「・・範・囲・・設定」

もごもごと口元が動く、夜空には魔法陣が描かれさらに光輝く。上条は秋十に追いつき装甲を掴むと、逃がすべく後ろに放り投げる。そこから慌てて守る体勢に入ろうとするがもう天使は次の段階に入っていた。

 

「コマンド『一掃』投下」

半径2km圏内に数千、数万もの裁きの礫が注がれる。凍った海は全てが壊れ、真っ平らだったものは一瞬で崩れて行った。その一撃で上条も下へと叩き落とされ血を流している。反応は遅れてしまったが最悪のはまぬがれ起き上がる。だが、天使は攻撃を止めない。

 

「・・再投下まで20秒」

 

「ッ!まだ間に合う」

音が消える、自らの脚力で氷の大地を踏みしめて一気に上空へと飛び上がる。あまりの脚力に耐え切れず足元の氷は砕け散る。人外レベルの速さで近づいた上条の右手拳が天使の顔を捉える。ズドンッ!と音が響き渡り天使の顔には大きくひびが入り僅かに、それでも上条は手を止めず更に回し蹴りを横腹にいれ、今度は左手を強く握りしめ胸の中央に叩き込み、もう一度追撃をしようとするが無数に生えてきた翼に阻まれ一旦離れる。頭を狙った右手が効いたのか投下は行われない、しかし目立った傷は顔だけで残りはほとんど擦り傷程度にしか残っていない。

 

「やっぱり、右手じゃないと無理か」

息を整えようとするが、それでは終わらせない。無数に枝分かれした翼が襲い掛かる。その間に僅かに凹んだ口から声が漏れる。

 

「コマンド『一掃』・・投下まで20秒」

迫りくる翼を避け、受け流しながら必死に近づこうとするが、中々近づけずいる時。急に回線から声が聞こて来る。

 

「援護するぞ、上条」

その言葉とともに迫ってきた翼の軌道が頭部を狙った軌道から腹部の位置に変わる。上条は日本刀で切り落とすが更に迫ってきた翼も予想より離れた場所に外れていく。軽く首をは捻り確認する一夏や簪、シャルロットなどが翼を撃っているのが見えていた。

 

「あいつら、・・ははっ帰ったら説教してるやる」

上条は迫り来る10近くの翼を全て切り裂くと、もう一度迫る翼を落とすべく振り抜いた。その時、1人が通ることの出来る隙間が一瞬だけで現れる。気がつけば上条の体はその隙間を縫って近づいていた。長年の経験が体勢までも補助され完全に拳を振るう状態にまで変わる。あと一撃までとは言えないがこれで致命的な状態にまで行かせられる。

 

「うおおおおおお!!」

硬く握り締めた拳を振り抜き天使の腹部へと入っていく。ボコンッ!と振り抜かれた右拳がぶつかり更にひびは広がる。すぐに手を引き完全に消滅させる為、もう一度殴りつけようとしたその時。ズキリと痛みが走り目線だけを動かし見てみる、そこには上条の体を貫通し天使まで届く白い刃が刺さり血が流れ徐々に痛みが増して行く。あと一撃、軽く殴れば消せる天使を目の前にするがそこから少しも動かす事が出来なかった。

 

「投下まで3秒」

後ろにいるのは誰かは分からないが必死に左腕を後ろに回すと首を掴みと天使の真下に向け投げる。一掃は自身も巻き込みする術式、なら一番安全なのは天使の真下。痛みで僅かに意識が薄れながら投げたが何とか間に合い投下の寸前に届いたが。大きく振り被るのに使わなかった右手がフリーになり天使は一番の危険視しているその右手を肩から切り落とす。その傷口からは大量の血が噴き出し、それと同時に投下が行われ上条は氷山になった氷の大地に叩き落とされた。

 

 

 

 

 

 




と言う事で天使を出してみました。禁書22巻、怪物5人でもようやく一時的に倒せた天使に1人で相手をさせてみました。

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