IS学園の異端児   作:生存者

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第17話

 

「はぁ、また権力のありそうな人が見にきてるな」

 

「これは仕方ない。3年にはスカウト、2年には1年間の成果を確認するためにそれぞれ来てるから。1年には関係ないけど上位に入れば目をつけられるかもしれない」

 

「どこの国も優秀な操縦者を欲しがってるからな。まあ、俺には関係ないことだけど」

 

 

「上条君は勝つ事に興味がなさそうだね」

 

「そうかもな、いまは一夏とやるのが楽しみだから」

このトーナメントではより優秀な操縦者を自国に引き込みたい人間が集まり見に来るものだが、ほとんどの生徒は他より成果を上げ相応の褒賞を受けたいと思っている者もいた。

 

「やっぱり一夏はシャルルとか。ラウラは残念、夜竹さんとだ」

 

「初戦は本音と相川さんか、油断しないで頑張らないと」

 

 

 

「あ、かんちゃん、かみやんよろしく〜」

 

「どんな時でも変わらないなその話し方は。それで簪、あの観客席にいるあの人はどうにか出来ないのか?」

上条は軽く見渡すと観客席のある一箇所を見ていた。

 

「かんちゃん〜!こっち向いて〜!!」

 

「なあ簪、あのお父さんみたいにカメラをまわしてる人って」

 

「違うからね、あれは決してお姉ちゃんじゃなあからね。急に仲直りをしたのがきっかけで今まで溜め込んでた、欲望を開放したお姉ちゃんじゃないからね!」

 

「簪さん、いくら現実逃避してと現実は変わらないんだから諦めたほうがいいよ」

恥ずかしさのあまり観客席に背を向けて、必死に無関係だと弁解しようとしている簪だが、相川の言うとうり無意味である。

 

「ふふふっなかなかいい写真が撮れるわね〜」

 

「会長、少しは抑えないと後で話しでくれ無くなりますよ」

 

「しょうがないわね、じゃあ上条君もついでに。う〜ん薙刀か、かんちゃんと並んで構えてるのを撮りたいのよね」

自然と楯無の口角が上がり気味の悪い笑みがこぼれてた。

中にいた上条はそれを感じ取ったのか異様な寒気を感じ身震いしていた。

 

「大丈夫?」

 

「いや、妙な寒気がしてな。気にしないでくれ」

 

「Aブロック一回戦の選手は所定の位置について下さい」

 

「おっともうこんな時間か」

4人は指示どうりの位置まで移動し先程よりも高い位置に上がった。

 

「やるからには本気で行くよ〜」

 

「お、お手柔らかにお願いします」

 

「やり過ぎないようにね上条君」

 

「え、なんでそんなに怖がられるの?」

上条と簪はそれぞれ薙刀を構え、本音と相川は接近ブレードを構えた。

 

「わざと合わせたのそれ?」

 

「そんなわけないだろ、単なる偶然だ」

 

「では一回戦、上条当麻&更識簪ペア対布仏本音&相川清香ペア……戦闘開始」

上条は先に相川を終わらせる為間合いに入り先制代わりの一突きを避けやすい足元を狙った。難なく避けられるが、まだ初心者でもあった相川は余分に避けるがその先に今度は振り上げた刃先が迫り今度は後ろに避けた。本人はわざと外してやっているが、上条がこの短期間で積み上げた成果が大きい為、どの攻撃も危険と思っていた。

 

「遅い」

 

避けた先に移動しガラ空きになっている横腹に蹴りを入れて、少し距離が離れると持ち手を端にずらしそのままの回転しながら振り後ろに飛んでいった。

 

「久しぶりに使ったけどなかなかいいな」

薙刀は持ち手の位置を変える事で長くも短くも使える武器なので薙ぎ払いや突きなど様々な使い方が可能なのだ。

 

「うぐっかなりきつい、本当に久しぶりに使ったのそれ?」

 

「久しぶりだよ、数ヶ月ぶりにな」

 

「それ以上はさせないのだ〜」

後ろから簪の攻撃を振り切った本音が後ろから切りかかってきた。上条は背中を向け相川との相手をしていたからか遠くから逃げてと叫ぶ声が聞こえていなかった。前にいた相川も少しでも気をひくためか動き出していた。

 

「いい動きだ」

だが分かっているかのように上条には笑みを浮かべていた。

 

「「え」」

上条は薙刀のもう一方の端に付いている石突きで本音の剣を止めると刃を後ろに回し切り上げ、前に迫っていた相川に先程よりも倍の速度の一振りが入り吹き飛んでいた。相川もその前に守りの態勢になっていたがそれ以上に一撃が重かった。

 

「はぁ危ない、確かに油断しないほうがいいな」

 

「まだまだ行くよ〜」

 

「そうだ、まだのほほんさん元気に動けるんだった」

振り向きながら後ろに一撃を決めようとしたが上に避けられ、カウンターに上から振り下ろされたブレードを石突きで止めさらに下から刃を切り上げると本音を掴み簪のいる方向に投げた。

 

「簪、頼んだぞ」

 

「いきなりそれはやめて欲しい」

愚痴をこぼしながらも飛んできた本音にライフルの射撃でシールドエネルギーをゴッソリと削り取り、エネルギーを0にした。その時、上条が叩き落とした相川さんも0になり試合が終わった。

 

 

 

「お疲れ、うまい射撃だったぞ」

 

「頼むのはいいけど、あんな乱暴にはやらないで。もしかしたら当たらなかったかもしれないんだよ」

 

「大丈夫だ。簪なら出来る、もっと自信を持て。 えっと次はまじか、今度は玲奈か」

 

「シールドエネルギーが5桁の超耐久のIS。前に1分くらいで倒してたよね」

 

「あの時は単一仕様能力の天使で片付けたからな。今回も使って片付けるか、まだ使ってないのもあるし」

 

「あの天使化って一体なんなの?」

 

「すまないが今は話せない、ごめんな」

上条は軽く簪の頭を撫でるとそのまま何処かに行ってしまった。その日は試合数が多くの時間をとるのか1回戦目だけで2回戦からは次の日になっていた為、止めようとはせず観客席に向かい残りの試合をクラスメイトと観戦していた。

 

 

「はあ、天使化なんて単一仕様能力がどうして付いたのか気になるな。・・・使えるのは、神の右席が使ってた特殊な術式と一掃か。オティヌスが使ってた弩は1本が限界か」

あの後、着替え終え屋上に来ていた。ほとんど生徒は観戦している為か校舎には誰もいなかった。

 

「どうしたもんか、ここで魔術が使えるなんて言ってもあいつのいいネタになりそうだし。大体、原罪がほとんどないから分かりやすい物は使えないんだよな」

 

「まあ、別に使うほどの事態にもならないし問題ないか。玲奈には天罰を使えば1発で倒せる可能性もあるけど、それだとまた面倒な事になりそうだし、光の処刑で削り取ってすぐに終わらせるか。・・・第3の腕は必要はないし」

 

「何が必要ないって?」

 

「いつから居たんですか楯無さん。気配を消して近づくのはやめて下さい」

 

 

「いや〜君の行動が気になってね」

 

「その行動力を仕事の方にも出してくれると助かりますが。向こうには行かなくていいんですか?」

 

「あら、私はシードがあるから1回戦目はないのよ。それにかんちゃんの写真も撮れたし今日はもうやる事がないのよね」

 

「なら、一緒にいてあげたらどうですか。俺はみる必要はありませんし」

 

「それは単に自分が強いから対策を取る必要がないって事?」

 

「違います。あいつの考えそうな事なんて、大体想像がつくからそれだけ気をつければいいんですんよ」

 

「あの量ならお姉さんでも勝てるか怪しいけど。前みたいにやると、迷惑が掛かるわよ」

 

「それを考慮してやるだけです。まだ経験が浅くて自分の実力を過信しているなら、それなりのやりかたで対処します。それと、いつまでもここにいるとあそこにいる黛さんに写真を撮られてますよ」

 

「え」

 

「やっほーたっちゃん〜。いい写真撮れたよ〜じゃあねー」

あ、消えた。逃げるの速いな、追うつもりもないけど。

 

「はぁどこにも休める場所はないか。もう部屋に帰ろう、明日もあるし。楯無さん起きて下さい」

 

「あれ?なんで私ここに」

運良く何も覚えていなかったので適当に言い訳をして部屋に帰った。

 

 

次の日、2回戦目以降の為また来ていたが昨日よりも人が多くなっている気がした。

「今日は玲奈と勝てれば、あとは秋十か」

 

「どうやって倒すつもりなの?」

 

「まずは俺がペアのティナさんを倒す。その後は2人で攻めればいいだろう」

 

「じゃあ始めは、様子見って事でいいの?」

 

「そう、後は出し惜しみなしで全力で倒す。簪の方は何か武装はあるのか?」

 

「ロックオン式のミサイルが全部で48発でも少し時間がかかるし撃ち落とされたら意味がなくなる」

 

「どのくらいかかる?」

 

「大体5分かな。他はライフルが2丁と前の薙刀」

 

「その選択肢の中に素手が入ればかなり良かったけど流石に無理か」

 

「私はそんなに化け物じゃない」

 

「冗談だ、肉弾戦は俺がやる。あとは全力で相手をするだけだ」

笑顔で答えると簪のくしゃくしゃと撫で先にグランドに出た。

 

「もう少し優しくやって欲しい」

そう言いながらも後に後に続いて出た。そして、その姿を姉の楯無もさりげなく見ていた。

 

 

「なんか前よりごつくなってないか?」

 

「あんたは逆に薄いのよ。やっと実力を見せる時が来たわ、さっさとあんたを倒したいわね」

 

「俺は一夏とやりたいんだ。ここで負けるつもりわない」

 

「なら、ここで終わりなさい」

ちょうど、開始のブザーが鳴り上条は弓を出しペアのティナ・ハルミントンを狙った。

 

「え」

放たれた矢はティナが持っていた、ブレードを射抜き観客席のバリアに貼り付けられていた。

 

「相手はこっちだ」

振り向かれる前に右手で腹を殴り、大きく足を振り上げ一気に落とし下に行かせると上から速度を上げ、今度は左手で殴ったがその前に下に逃げられ僅かに威力が落ちてしまった。しかし、逃げた先に回りこみ振り向いた瞬間に頭に蹴りが入りその一撃でシールドエネルギーが0になった。

 

「手荒くしてごめんな」

 

「い、いえ気にしないで下さい。私も無理に組まされたので」

 

「そうか、あ。無理にその話し方で話さなくてもいいぞ」

 

 

「ペアの人は終わったみたいね。あとはあなただけ」

 

「別に人数合わせで組んだだけの相手よ。あんなのは・・ッ!」

後ろから金属がぶつかるような音がし、あまりの痛みに頭を抱えながら後ろを向くと一部が光っているアスカロンを持っていた上条がいた。

 

「ヘェ〜そうか、ならお前も同じように倒れな」

 

「チッ!もう来やがったか。悪運だけは随分いいな」

 

「残念だな、容姿はいいのに性格がな」

 

「お前の好みなんて知るか!」

 

「簪もう出来るか」

 

「大丈夫、お喋りな人で助かった」

上条に気をとられている玲奈に簪は容赦なく全弾を打ち込んだ。全てを当てても玲奈のシールドエネルギーを一割も削られそうにはないがそれでも削れないよりかマシだと思った。だがそのすべては玲奈に当たらずその後ろにいる上条を追いかけた。

 

「え、なんで。あなたを狙ったはずなのに」

 

「残念だな、私の機体はロックオン式のミサイルの照準には入らないんだよ。お前は最初からペアの上条を狙ったんだよ」

よく見るといまも上条を狙い48ものミサイルが追いかけている。持っているライフルに当てていた引き金からも力が抜け呆然としていると、頭に囁くような声が響いた。

 

「簪、いつまでも後悔してるな。戦いってのは最後まで諦めない奴が勝つんだよ。だからもっと俺の事を信じろ」

はっと頭を上げると玲奈の後ろに回り笑っていた。

 

「全てを機械に任せすぎだ。性能が良くても意味がない」

上条は首に手を回しその場で首を締め上げていた。ミサイルが追跡してる状態では的になりただの自殺行為だが、なんの対策もなく上条が来るはずもなかった。その言葉は上条だけが聞こえる声で呟いた。

 

「優先する。ミサイルを上位に、他の全ての妨害を下位に。さらにISを下位に」

上条は飛んで来るミサイルが1mまで近づくと、ISを一瞬だけ解除し弾幕の僅かな隙間を通り抜け外に脱出しその直後、玲奈を中心に大爆発が起こり上条は勢いで壁に衝突していた。

 

「痛た、少しやり過ぎたか。これでもまだ2割も残るか・・ッ!」

寒気がし、ほんの少し首を横に倒し終えた瞬間に頭があった位置をレーザーが通り過ぎ。煙と中から凄い形相で追いかけてくる玲奈がいた。

 

「死ね、このくそ野郎が!」

機体についている砲身からいくつものレーザーやガトリングが一斉に上条に向けて撃たれるがギリギリでその射線から逃れると、もう一度アスカロンを出した。その持ち手に近いスパイクのように鋭くなっている部分に意識を集中させ、一気に距離を縮めると玲奈の機体のど真ん中に切り込み、残りわすかまで削るとそこから離れた。それを追おうとした玲奈だったがその前に簪が撃ったライフルが命中しシールドエネルギーが0となった。

 

「ごめん、上条君。私のせいで危険な目に合わせて」

 

「気にするな、最終的にはあのミサイルのお陰で追い詰められたんだからな。いいんだ、何もしないより無理かもしれないけど挑戦する事が大事なんだよ」

来る時と同じように頭を撫でると、徐々に顔が赤くなっていた。

 

「あれ?顔が赤くなってるけど大丈夫か?」

 

「これは上条君のせい」

と言って逃げるようにピットに飛んで行った。上条にはさっぱり分からず首をかしげながら戻って行ったが体に視線が突き刺さっているような気がしていたが、誰から来ているのか分からずそのまま戻った。

 

 

 

 

 




次回はラウラとの試合です。

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