「はぁ疲れた。今日はこのくらいするか」
「上条お疲れ様」
「ってケイシーさんまた来たんですか。別にくる必要は無いと思いますけど」
「数日前にあった未確認機の襲撃の時に助けに行ったらしいな。また、無茶をする」
「それが俺の生き方です。誰にどうこう言われる筋合いはないですから。で今日は扉が開いてなかったんですか?」
「いや、ちょっと体育館まできて欲しいんだけど付いてきてくれるか?」
「いいですよ。あっ服忘れたな。俺はこのまま行きますよ」
「あ、別にそのままでいいぞ。少し相手になって欲しいからな」
上条は半袖半ズボンで軽くジョギングしていた格好のまま体育館に行くと入ると、いきなりバスケットボールを投げられ受け取っていた。すると奥から着替え終えたケイシーさんが出てきて何故か数人の部員も一緒についてきた。
「まさか相手ってこれのですか?」
「そうだ、大会も近いから少し相手になってくれないか?
「構いませんけど、素人の俺はあんまり動けませんよ」
「ISであれくらい動けるならこっちでも十分動けるだろう。あと上条、先に私が5本取ったら付き合ってくれないか?」
「え、いいですよ」
「え、いいのか?」
「別にいいですよ、それくらい。ああ、審判の為にこの人達を連れてきたんですか、てっきり全員相手にしろって言われたのかと思いましたよ」
「いくら私でもそんなひどい事はしない。じゃあ頼む」
強制的にやる事になったが軽い息抜きには丁度いいと思い始めた。どうやら一回ずつトスを上げてからやるのか。その時にトスが上がり同時にジャンプをして手を伸ばしていた。身長で上条の方が劣っているが、跳躍力が高い上条の方が先にボールを取った。
「はぁなんとか届いたってうお!」
「すぐに行かせるかよ」
「やっぱり、そうですよね・・ッ」
上条は1歩踏み込んだ瞬間に一気に加速しゴール下まで移動しゴールにボールを放り込んでいた。そのスピードに追いつけなかったケイシーは目で動きを遅れて見るのが精一杯だった。
「これであと4本か、まだ先が長いな」
「本当に人間かよ、動きがおかしい」
「これくらいは努力でどうにかなります」
上条はその後3本とも軽々と入れ残りは一本となっていた。いまだケイシーは1本も取る事は出来ず、取れるボールは全て寸のところでボールの位置をずらされ取る事は出来なかった。
「あと1本、どうやって入れるか」
上条は呑気に考えながら待っているといつの間にトスが上がり遅れて取りに行こうとしたが着地するまで待ち、ボールをしっかりと掴み着地してきたところに手を伸ばしボールを奪い取るとすぐにジャンプしシュート体勢に入ると、対応するように目の前に手を伸ばしてブロックに入ってるケイシーさんがいたがそのまま地面すれすれまで固定し背中が地面につく寸前に投げた。そのボールは吸い込まれるようにゴールに近づき、輪をくぐった。
「な、あの体勢から打つか。なんて体幹だよ」
「何とか入った。ってらあのすみませんが退いてもらえませんか。その体勢があれなので」
上条にケイシーさんがのしかかる様に被さっていた。それに気づいたのかすぐにどいてくれたが少し物足りないような顔をしていた。
「じゃあこれで終わったので俺は帰らせてもらいますね」
「分かってる、お疲れ上条」
上条は軽く会釈してその場からさり、背中が見えなくなるまで手を振っていた。
「はぁあそこまで遊ばれるとは思わなかった。一体なんだあの運動神経は」
「先輩なんとか引き入れられないんですか?」
「無理言うな、私だってやるにも限界がある。それにしてもあっさりあの要求を了承してくれるとは思わなかったな」
「あれ、完全に別の意味で捉えてましたよ。多分、買い物とかそれに付き合えって聞こえてたと思いますよ」
「あれで鈍感ってどんな男だよ、もう少し反応してくれると思ったんだけどな」
「そう言えば先輩前にあの人と部屋に行ったらしいですよね、どんな感じでした?」
「普通の一言だな、必要最低限のものだけ持ってきて要らないものは置いてきた感じだな。でも家事力はなかなか高いぞ、料理も美味しいかったしな」
「ヘェ〜じゃあどこまでやったんですか?」
「ぶっ!そこ止まりだよ、悪かったな」
後輩にそれをネタにいじられている間に上条は部屋に着いたが部屋に来るまでに誰かに監視されてるような目線を感じていた。
「今日は遅かったな上条」
「少しある人に絡まれてな。一夏はもう食べに行ったのか?」
「いやまだ行ってないな。いつものメニューをこなして休んでたから。よし、ちょっと待っててくれ着替えるから」
上条も汗をかいていたので、着替え食堂でのんびりと日替わり定食を食べていると何処からか現れたクラスの女子達に囲まれた。どうしたんだ?と思いながら誰かが話すのを待っていると谷本さんが最初に話してきた。
「ねぇ上条君。3年のケイシーさんに告白されたって本当なの?」
ぶっと口に入っていた、ご飯が飛び出そうになった。一夏は普通に食べているが同じような事にあったことがあるのか少し目線をそらしていた。
「ゴホッゴホッ!…そんな事を言われたことはないぞ。それにいつの間に広がったんだよ、その話し」
「はいはい〜私だよかみやん。かみやんに用があっていったら、3年生から付き合って欲しいって言われてるのを聞いてこれは面白いと思って、つい広めちゃったんだよ〜」
「……何やってるの、のほほんさん。確かにそうは言われたけどそれの何処が告白なんだよ」
シーンと一瞬にしてその場が静まり、何故か一夏にもこいつ大丈夫かと言われていた。
「あれ、何か問題でもあったのか?」
「上条君ってかなり鈍感なのかな」
「もしかしてBL系なの?なら一夏君と毎日・・・」
「俺にそんな趣味はない!勝手に決めないでくれ」
危ない思考に入ってる人が混じっている人物がおり必死に思考を戻していた。そのお陰が、なんとかその場にいた人は全員納得し戻っていった。
「飯を喰うのにこんなに疲れるのかよ。もうこんな噂は立たないでくれ。一夏も食べてないで助けてくれよ」
「口出ししたらまずいと思ってな。さてと先に行ってるから」
「ああ、頼むからこういう時は助けてくれよ。さっさと残りを食べて戻るか。つーかなんであれが告白になるんだ?」
上条はボヤきながら残りを食べていると、前に何処かで見たことのある水色髪をした少女が目の前に座った。
「私も一緒に食べていいかしら上条当麻君」
「なんですか、生徒会長。毎日朝晩監視しないで下さい、いづらくてしょうがないので」
「え、なんで分かったの!」
「毎日監視されれば分かりますよ、誰でも」
「それなりに気配は消したはずなんだけど。やっぱり気づかれたか。じゃあ自己紹介ね、私の名は更識楯無ビック3の筆頭で生徒会長をやっています」
「そうですか、すごいですね。で何のようですかクラス代表でも無いんですよ自分は」
「ん〜もう少し反応してくれてもいいのに。ねえ、部活には入ってないのよね」
「はい、入るとこすら中学の頃は禁止されてましたし、入るつもりも無いですけど」
「入学から2ヶ月も経たないのにビック3にしてナンバー2のケイシーさんをほぼ無傷で倒す実力はあるのに、そんなに訓練に回す必要なんて無いんじゃない?」
「あなたになくても俺にはありますから」
「もしかしてあなた織斑先生を目標にしてるの?」
「その程度の目標を立てるならわざわざ自分は訓練なんかしません。倒すだけなんてやろうと思えば誰でも出来ます。俺は誰かを守る為に訓練をしてるだけです」
「でも君は十分に強いと思うわよ」
「強い奴はいくらでもいます。俺は誰かを守る、助けられる人になりたいと思ってるんです。倒すだなら努力と才能でどうにでもなりますから、で会長は何が言いたいんですか?」
「そんなに畏まらなくもいいわよ、名前で呼んでくれていいから」
「じゃあ楯無さん、本題に入ってください」
すると楯無は持っていた扇子を向け自分に向けてきた。
「上条君、生徒会副会長に就任しなさい」
「断ります。そんなに余裕がないのですみませんが他をあたってください」
間を開けず即答し、すぐに食べ終わったトレーを持って返しに行っていた。すると後ろから楯無さんはしがみつき進むのを阻んできた。
「ちょちょなんで断るのよ」
「入っても自分には得がないので。ではまた明日」
「待ちなさ〜い、少しくらい話を聞いてよ」
「はぁ、手短にお願いします」
「私はあなたという優秀な人材を欲しているし、あなたは私という練習相手が得られるお互いにメリットがあるでしょう?」
「優秀な人材なら一夏や秋十でいいと思いますが、わざわざ馬鹿な自分を選ぶ必要はありませんよ」
「秋十君は個人的に嫌なのよね、一夏君は確かにいいと思うけど、変に手を出すと織斑先生に怒られるから」
「普通に頼めばいいじゃないですか」
「大丈夫よもう手はうってあるから、じゃあ上条君、私が勝ったら大人しく副会長になってもらうから、それがいやなら勝つことね。決闘は一週間後よじゃあ私はこれで」
自分事を言うだけ言うとすぐに走り去った。元から出るつもりもなので上条は気持ちを落ち着かせる為に屋上で軽く風に当たった後、部屋に戻ると気分が明らかに落ち込んだ一夏が机に突っ伏していた。
「一夏大丈夫か?気分が悪そうだけど」
「大丈夫じゃない、急に楯無さんから一週間後に決闘をもうしこまれた。最善は尽くすけど勝てる気がしない」
「俺もだよ。面倒だから行かない、いつも通りの生活をするよ」
「上条は出来ても俺は出来ないかもな、とりあえずやるだけやってみる」
その次の日教室にはいると一夏と上条が楯無さんの試合のポスターだった。
「ちょっとのほほんさん」
生徒会室の場所を聞くため近寄ると聞かないほうがよかった情報が聞こえた。
「いや〜いっちーとかみやんが会長との試合か〜。楽しみだね〜ポスター作りにいそしんだ甲斐があったよ」
おい、何やってんののほほんさん、大体俺は出るつもりはないからな。まさか生徒会で勝手に進めてたのかよ。
「のほほんさん、少し聞きたいことがあるんだけどいいか?」
「あ、かみやん試合頑張ってね」
「そうじゃなくてね、生徒会室がどこにあるか教えてくれないか?」
「ほえ、生徒会室に?ん〜今は時間がないけど放課後なら大丈夫だよ〜」
「ありがとう、じゃあ後で案内してくれ」
約束どうり放課後になってからのほほんさんに案内してもらい、生徒会室前まで着いた。正直面倒くさいがここで言っておかないと後々余計に面倒な事に遭いそうなので先に言っておくことにした。
「失礼します、1年1組の上条当麻です。更識楯無いますか?」
「いるわよー。待ってたわ、で入る気になった上条当麻君?」
「俺は生徒会の副会長になるつもりも試合出るつもりもありませんからね!」
「あ、ごめんそれ無理。もうアリーナも抑えてあるし先生達にも了承してもらったから。もう私と戦うしかないわよ」
「そんなに人を引きずり回して楽しいですか会長」
「私はそんなつもりは無いけど」
「はぁ、そうですか分かりました。試合は出ますよ、ただし俺が勝ったら絶対に生徒会には入りませんからね。それと俺の戦い方に文句は付けないでください。何か余分な事を言ったら容赦はしません」
それだけいい上条は部屋をすぐに出て行ったが、中にいて書類整理をしていた簪とのほほんさんの姉である布仏嘘は少し気まずくなっていた。
「お姉ちゃん、やり過ぎだと思うんだけど」
「幾ら何でも無理矢理だと思いますよお嬢様」
「でもこれくらいでやらないとあの2人は入らないわよ。であの2人の情報は集まった?」
「はい、身辺調査のさいは正確な情報を得るために調査対象への感情移入はしないように心掛けているのですがこれは見ていて気分のいいものではないです。・・正直彼らの生い立ちは見ていて気分のいいものではありませんでした」
「確かに、上条君がここまで強くなるのもわかると思う。正直なんで私なんかに声を掛ける余裕があったのか気になる」
?と楯無は首を傾げながらプリントを見ると目を見開いた。
「何よこれ!?」
手に持っていた資料には織斑一夏に関する罵倒の数々が載せられたプリントを持っていた。『織斑家の出来損ない』『あれは何を考えて生まれてきたんだ』『姉弟の才能が奪われなくてよかった』存在を否定するような文まで罵倒雑言が並べられていた。
「欲に言うと学校の裏サイト裏サイトと呼ばれるものですね。また、学校の記録としても残っていませんたが、当時の同級生の話では彼を標的にして学校全体での虐めまであったそうです」
「学校全体で、・・?そんな事があったのに学校側に残ってないなんて……まさか」
生徒を守る立場である教師まで虐めの内容を容認していたであろう事実に楯無は怒りがこみ上げてきた。虚は彼女の心情を察したがらも得た情報を淡々と述べていく。
「街全体でも彼に対する風当たりは厳しく、その裏サイトに書かれているような言葉を直接投げかける者もいたという話です。ですがこちらはもったも酷かったようです」
上条当麻も一夏と同じように裏サイトで存在を否定するような罵倒の事がが書かれていたが、上条の場合はさらにその斜め上を行っていた。警官による冤罪や暴行、教師も加わり学校全体で見世物にし、町ではそこら中で上条が1人でいる時に暴行をする人もおり中には殺そうとするものまでいた。
「このサイトには集団暴行を企てた投稿がありますね、人数は5人から百数人単位で起こしているようです。どうやら、毎回全員が怪我をして戻ってきているようですけど。ん、これは」
「え、どうしたの虚ちゃん?」
「いえ、この時だけ全員が重体になってるんです。えっ」
「どれって、これは酷い。一体何があったの」
その資料には上条家を襲撃した10人の高校生達がそこから数キロ離れた工場に全員の手足の骨をへし折られ、なおかつ逆さ吊りにされた状態で発見されたと記載されていた。
「これを見る限り、町内で起こった上条当麻さんへの障害事件は警察も含め全ての人間が揉み消していたようですね」
「これじゃあ毎日刑務所の中で過ごしてるようなものじゃない。それにしても精神的に病気を持った人が随分多いわね」
「それについては分かりませんが誰かが暗示のようなものでもかけたんじゃないんでしょうか」
「迫害されてるなんて昔言ったけど、これと比べるとよくその言葉が出てきたなって思う。・・どうしてあんなに優しいんだろう、私なら絶対にグレてる」
「やめてかんちゃん、私もグレちゃうから!」
「お嬢様、とりあえず姉妹で仲良くするのは構いませんが先に仕事を終わらせてください」
虚の一言に一蹴されすぐに仕事に取りかかったが上条と一夏の過去の事が頭から離れず全員が仕事の効率が落ち終わる頃には夜になっていた。
次回は楯無さんとの試合になります。ISで相手をするとは限りません。