死に損ないの海賊たち(ONE PIECE✖FAIRY TAIL)   作:アニッキーブラッザー

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第6話 王の血筋

これは、アクノロギアによって消滅する直前、メガユニットでの男たちの物語。

 

「十字火!!」

「影革命!!」

 

王下七武海と白ヒゲ海賊団2番隊隊長の同時攻撃。

だが、その偉大なる二人の海賊の攻撃すら、アクノロギアという巨大な竜には無に等しかった。

 

 

「グガアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

「「ッ!?」」

 

 

咆吼だけで正に突風。エースとモリアは堪えきれずに吹き飛ばされる。

 

「ちっ・・・かてえ・・・やるじゃねえか、このトカゲ!」

「くそが、火拳! ちっとはマジメにやってんのかよ!?」

「うるせえ、お前だって奴の影をちゃんと押さえとけよ!」

「とっくにやってらア! だがあの竜、絶対に逆らえないはずの俺の影革命すら力づくでぶち破ってやがる!」

 

偉大なる航路で通じた自分たちの力が通用しない。さすがの二人の表情にも焦りが見える。

だが、モメている場合ではない。アクノロギアはジャンプしてエースたちを踏みつけようとした。

 

「うぉッ!?」

「くそっ、島そのものに亀裂が入りやがった! なんつう威力だ!?」

 

慌てて回避したエースたちだが、それでもその威力には驚愕せずにはいられなかった。

 

「ちっ、だが妙だぜ! こんだけ強ければ、俺らをもっと一気にやれるんじゃねえのか?」

「キシシシ、簡単なことだ。いたぶって遊ばれてるんだよ、俺らは!」

「なに!?」

「要するに舐められてるんだよ、俺らは! キシシシシ、俺らをここまで舐め腐る奴は新世界にも居なかったぜ! こいつは是が非でも・・・」

「モリア!?」

「その影か死体をもらいたくなったぜ!!」

 

駆け出すモリア。だがアクノロギアも反応する。反応されれば動きはアクノロギアの方が早い。

アクノロギアの振りかぶった爪が接近したモリアを一気に切り裂いた。

だが、その瞬間、モリアの肉体が形を変え、黒い蝙蝠となって四散した。

その無数の蝙蝠はやがて牙を出し、一斉にアクノロギアに襲いかかった。

 

「うめえ!」

 

思わずエースが漏らした。影で作った代わり身からのカウンター。

そしてこの一連で動きが一瞬だけ止まったアクノロギアの足下の影からモリアが姿を現した。

 

「キシシシシ、よこせえ! その影を俺によこせ!」

「グガアアア」

 

モリアがアクノロギアの影を地面から引き剥がしていく。ハサミをカチャカチャとさせ、モリアは高らかに笑っていく。

しかし・・・

 

「むっ・・・つうか・・・」

 

モリアの表情が変わった。

それは、アクノロギアの影を取り出そうとしているのだが、アクノロギアの図体がでかすぎて、影を全部すぐに引き剥がせなかった。

 

「モリア、早くしろ!」

「うるせえ! こ、この・・・いい加減全部出ろって・・・」

「グガアアアアアアアアア!!」

「げっ!?」

「モリア!?」

 

アクノロギアが足下へ顔を向け、自身の影を引き剥がそうとしているモリアを睨み・・・

 

「モリアッ!!??」

「ぐあああああああああ!」

 

その爪で一掃したのだった。

本日二度目となる攻撃で、モリアは激しく転倒し、血を大量に噴き出した。

 

「モリア、しっかりしろ!! モリア!!」

「い、いでえ・・・ごの・・・くそ・・・血が止まらねえ・・・」

 

二度目。言い換えればたった二度の攻撃で、王下七武海の一角であるモリアを瀕死にさせるほどの力であった。

 

「この・・・・・・テメエ!! 神火・不知火!!」

「ガアアアアアアア」

 

アクノロギアはそのまま巨大な口を大きく開ける。二人をそのままかみ砕くのか、それとも飲み込むのか。

だが、このままやられてたまるかよ。

エースが己の肉体を炎と変え、そのままアクノロギアに向かって突進しようとする。

しかし・・・

 

 

「七つの星に裁かれよ・・・」

 

「「ッ!?」」

 

「七星剣(グランシャリオ)!!」

 

 

アクノロギアに向かって上空から強大な光が降り注いだのだった。

正に隕石でも落ちてきたのかと思えるような光景に、さすがのエースもモリアも唖然とした。

するとそこに・・・

 

「エース、モリア、無事か!?」

「エースちゃん! まだ生きてるわようね!?」

 

上空からゆっくりとジェラールが、猛ダッシュでボンクレーがエースたちの前に現れたのだった。

 

「お、おめえら・・・」

「エース、お前たちが足止めしてくれたおかげで、何とか全員船に乗り込んだ」

「もう、この島にはあちしらしかいないわよう!」

「あっ・・・」

「それにしてもたった二人で足止めするとは、大したものだなお前たちは」

 

別にエースは誰かを守ろうとして戦っていたわけではない。ただ体が自然に動いただけだった。

だが、ジェラールとボンクレーがこの島にいた人間は全て船に乗り込んだと告げたことに、エースの心が僅かにホッとしていた。

 

「あとはこいつだが・・・船が安全地帯へ行くには、もう少し足止めが必要だ・・・」

「おお、そうか。まあ、ハナから倒すつもりだったがな。それよりジェラール、お前すげえ技だったな。何の実の能力だ?」

「ちょっとう!? 倒すって、何を当たり前のように言ってるのよう! さっきまで殺されるとこだったじゃないのよう! まったく兄弟揃って冗談じゃないわよう!」

「くそが・・・つうか、なんで雑魚どもを逃がす前提で話を進めてやがるんだよ・・・」

 

僅かな和み。助っ人が駆けつけてくれたことで、少しエースたちの間の空気が和らいだ。

 

「グガアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

しかし、状況は変わらない。

 

「やはりダメージは与えられないか・・・」

「ちっ、あんなもんを食らってもダメか」

「あいつが一番冗談じゃないわよう!」

「キシシシシ、あの皮膚ならホグバックの改造手術無しでも最強のゾンビ兵に使えるがな!」

 

ジェラールの技を受けたアクノロギアだが、傷一つつかずに粉塵の中から姿を出した。

 

「ったく、ところでジェラールよ。今更だが、あいつは何者なんだ。竜なんてこの世にいたのか?」

「ああ。既に滅んだとされているが・・・この世界には元々竜が居た・・・」

「そう・・・って、はあ? そんな話は新世界でも聞いたことねえぞ!?」

「強大な力と魔力を誇り、さらに竜は優れた知性を持っている。恐らく俺たちがこうして会話している内容も理解しているはずだ」

「な、なに!? あちしらの言葉を理解しているのん!?」

「ってことは・・・お前、俺の言葉分かるのか! だったら俺と友達になんねえ――」

「グガアアアアアアアアアアアアアア!!」

「無理か・・・」

 

「「「当たり前だ!!」」」

 

 

二人助っ人が来たとはいえ、あまり状況は変わらなそうだ。

いよいよ、自分たちも覚悟をする時が来たのかもしれないと、エースたちの頬に冷たい汗が流れた。

だが、苦笑するエースたちの前に、ジェラールが一歩前へ出る。

 

(エースたちは強い・・・だが、それでもアクノロギアには及ばない・・・このままでは全員死ぬだろう・・・)

 

振り返り自分たちの戦力をジェラールは冷静に分析する。

 

(俺は良い・・・だが・・・彼らは・・・)

 

エースたちは海賊。海の無法者たちだ。

きっとこれまで多くの罪無きものたちを襲い、略奪を繰り返してきたのだろう。

ならば、ここで彼らは死んだほうが世の為になるのかもしれない。

だが、どうもエースからはそういう印象を受けなかった。

海賊というより、冒険者。海を舞台に自由に生きる男に見えた。

そしてその姿に、かつて自分を救ってくれた陽気なギルドと重なった。

 

(ならば・・・)

 

ならば、ここで死なせるわけにはいかない。

未来を見据えているエースたちは、ここで死ぬべきではないとジェラールは判断した。

 

「エース、モリア、ボン、ここは俺に任せて皆は逃げてくれないか」

「は、はあ?」

「俺の魔力を全部出し切れば、倒せないまでも、お前たちが逃げる足止めぐらいにはなる」

 

なんとジェラールは、エースとモリア二人がかりでも仕留められなかったアクノロギアを、一人で請け負うと言い出した。

 

「バッ、馬鹿野郎!」

「ちょっとジェラちゃん!? 何とんでも発言をしてんのよう!?」

 

当然そんな無謀なことはエースもボンクレーも止めた。

当たり前だ。

 

(エルザ・・・仲間を思い、どこまでも強くなれたお前のように・・・俺もこの瞬間だけでも・・・)

 

ジェラールの言っていることは、自分を犠牲にして逃げろと言っているようなものだ。

だが、ジェラールは儚げに微笑んだ。

 

「俺は・・・命懸けの償いをしたいんだ・・・」

「はっ?」

「死ぬ程度では許されない。だからこそただでは死ねない。俺は一人でも多くの人の命を救うことによって、少しでもこの罪を償い――」

 

ポカッ――

全部言い終わる前にジェラールの頭をエースが叩いた。

 

「なっ・・・」

「お前、馬鹿じゃねえか?」

 

ただ一言、エースがアッサリ言い切った。ジェラールは複雑な表情を浮かべて、歯ぎしりする。

 

「・・・・ッ・・・・お前には分からないさ、俺の罪は」

「はあ?」

「おい、お前らいつまで雑談してんだ!?」

「ちょっと来るわよう!?」

 

だが、アクノロギアも待っていてくれはしない。再びジャンプして島を思いっきり踏みつけた。

 

 

「グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

「来るぞ!」

 

 

衝撃で再びその場から飛ばされるエースたち。その最中、ジェラールは己の思いを語った。

 

 

「俺はかつて・・・事故で記憶を失ったが・・・記憶をなくす前、かつて評議院に潜入し破壊・・・エーテリオンを投下・・・そして・・・そして・・・かつての仲間も殺めたそうだ・・・」

 

「ああ? ワリッ、竜がうるさくて聞こえねえ!」

 

「死刑か終身刑は免れない・・・だが、死んで償おうとした俺に、ある人が言ってくれた・・・生きて贖えと」

 

「だから、聞こえねえって!」

 

「だが・・・俺はここで死んでも構わない! この最低な命で救える者があるのなら、俺は喜んで命を懸ける!」

 

 

衝撃波が巻き起こる方向へ向かって、ジェラールは決死の覚悟で飛び込んでいく。

 

 

「天体魔法・英雄たちの船(アルゴ・ナウティカ)!!」

 

「グガアアアアアアア!!」

 

「天体魔法・星夜(ファイノメイナ)!!」

 

 

まるで天空の星が降り注ぎ、ジェラールの力となっているように見える。

 

「うおおおお、すげ」

「キシシシ、あの野郎、強かったのか。しかしありゃあ、何の実の能力だ?」

「ジェジェジェ、ジェラちゃん!?」

 

温存など何も考えない。この戦いの後、一生動けなくなっても構わない。

一生涯分の魔力をこの場で放出しても構わない。

ただ守るため、ジェラールは記憶ではなく体が覚えている破壊の魔法を存分に振るう。

 

だが・・・

 

「グガアアアアアアアアアアアアア!」

「クソっ!?」

 

アクノロギアに致命的なダメージを与えるまでには至らない。

ジェラールめがけてアクノロギアが踏みつぶそうとする。

 

「ジェラール!? させるかよォ!」

「オカマ拳法・お控え・ナ・鞭打(フェッテ)!! ・・・・ぶへあっ!?」

 

割って入るエースとボンクレー。エースがジェラールを助け、ボンクレーの打撃がアクノロギアに当てられる。

だが、打撃でダメージがあるはずもなく、アクノロギアが身を捩らせただけでボンクレーは弾き飛ばされ、鮮血にまみれて上空に舞い上がった。

 

「ボンちゃん!?」

「ボンッ!?」

 

ボンクレーは落下して、受身も取れずに地面に背中から強く打ち付ける。

もはや既に虫の息だ。

 

「こ、このトカゲが・・・よくも・・・俺の・・・俺の友達をォ・・・」

 

ボンクレーが倒れた。その瞬間、エースの脳裏にマリンフォードでの光景がよみがえる。

 

(何やってんだよ・・・俺は!?)

 

仲間に手を出す奴は絶対に許さない。

 

(繰り返す気かよ! 二度と犯しちゃならねえ事を・・・もう一度!)

 

それが白ひげ海賊団の掟。エースもそれを己の誇りとして心がけてきた。

そして仲間たちもそれを誇りと掟とし、海軍に捕まり処刑されそうになった自分を、仲間たちは命を惜しまずに救いに来てくれた。

 

(俺の仲間は・・・もう・・・二度と、絶対に!)

 

自分のために次々と傷ついていく仲間たち。ボンクレーがやられたことにより、エースの中で何かが弾けた。

 

「くそ・・・ボン! くそっ、俺がついていながら! 何をやっているんだ、俺は!?」

 

そしてジェラール・・・

 

「ジェラール」

「もう、誰も死なせない・・・救ってみせる・・・守ってみせる・・・それがあのギルドの者たちのように無限の力になると思っていた・・・しかし俺では無理なのか!?」

 

ジェラールは口から血がでるほど悔しそうに歯を噛み締めて地面を叩く。

 

「俺の命程度と引き換えでは・・・何も守れないのかッ!?」

 

横たわって痙攣するボンクレーを支えながら、ジェラールは俯く。

アクノロギアはモリアの抵抗を受けているために追撃には来ないが、戦いの最中というのに既にジェラールに力が入っていない。

だが、そこにエースが近づき、声を掛ける。

 

「ジェラール・・・オメエさっきからゴチャゴチャと罪だの償いだの犠牲だの言ってるが・・・」

「エース・・・・」

「誰かの犠牲になることが、お前の償いたい人の魂に報いることなのかよ」

 

弱々しいジェラールの瞳をエースの強い瞳が射抜く。ジェラールはその視線に耐え切れず、思わず顔をそらした。

 

 

「大きなお世話だ・・・お前のような海賊には言われたくない・・・お前に俺の何が分かる」

 

「ジェラール!」

 

「俺は生きていてはいけない人間なんだ! だからこそ、この命で誰かを救いたい・・・せめて死ぬ前にそれだけはと思っていた・・・だが・・・俺は・・・弱い!」

 

 

己の無力さと愚かさを嘆くジェラール。

その姿、どこかの誰かの泣き言に似ていた気がした。

 

――じじい・・・俺は・・・生まれてきて良かったのかな

 

幼き日の自分の言葉。

エースはモリアと戦っているアクノロギアに視線を向けたまま、足元にいるジェラールに語りかける。

 

「俺が自由を求めて海に出たのは・・・答えを知りたかったからだ・・・」

「・・・・・・?」

「俺は生まれてきて良かったのか・・・その答えをな・・・」

「ッ!? お前が・・・・・・生まれてきて良かったのか・・・だと?」

 

何をいきなり? ジェラールが戸惑った表情で、前を向くエースを見上げた。

 

 

「サボとルフィ・・・いや、兄弟・・・その二人がいなければ、俺は生きようともしなかった。誰も俺が生まれてくることも・・・生きることも望まなかったから・・・仕方のねえことだ」

 

 

海賊王・ゴールド・ロジャーの血。

 

「俺が生まれてきて良かったのか・・・生きていれば分かる・・・そう昔に言われた。だから俺は答えを求めて海へ出た」

 

たとえどれほど自分の父親が「白ひげ」と宣おうとも、その血の事実は変えられなかった。

 

「・・・それで・・・お前は答えを見つけたのか?」

 

今でも鮮明にエースは思い出せる。

 

「海に出て、多くの仲間や冒険、笑えることや苦しいこと、スゲー奴らとの出会い、自分の小ささを何度も知った・・・・けど・・・」

 

自分を愛してくれた人たちを。

 

「俺は世界中から白い目で見られるはみだし者。鬼の血を引くろくでもねえ男。でもな・・・こんな俺を・・・命を懸けて愛してくれる奴らと出会えた」

 

だからこそ悔いはなかった。

エースは拳を握り、徐々に燃え上がる炎を拳に纏わせて叫ぶ。

 

 

「ジェラールよ。お前さんが過去に何をしたかは別に知る気もねえし、俺たちは人の泣き言や懺悔を聞く連中でもねえ! 俺たちは坊主でも神父でもねえ、海賊だからな。だからよ、あえて言うとしたら・・・」

 

「・・・エース・・・」

 

「ここで終わることが、お前さん自身も、お前の周りにいた人たちにも納得できる答えだったんだなってことだよ!」

 

 

気づけばジェラールの瞳には涙がたまっていた。

 

――そいつは仲間だ、連れて帰るんだ!

 

「・・・ナツ・・・」

 

――俺たちがついてる、お前はエルザのそばにいなくちゃいけねえ! だから来い、仲間だろ!

 

――その人がいなくなるとエルザさんが悲しむ!

 

――気にくわねえんだよ。ニルヴァーナを止めたやつに労いの言葉もねーのかよ!

 

――お願い、ジェラールを連れて行かないで!

 

「エルザ・・・」

 

――生きてあがなえ! ジェラール! 

 

「エルザ・・・ッ!」

 

――私がついている

 

「ッ!?」

 

 

今までに無い何かが、ジェラールの心を満たした。

ジェラールが欲しかったのは、罪の償い方。それは死ぬことでしかありえないと思っていた。

だが、自分には生きて贖えと言ってくれた人がいた。

自分のために身を挺してくれた人がいた。

そんな人たちがいた。そう思うだけで、ジェラールの瞳は今までとは違った風景を映し出したのだった。

 

「ぐぎゃああああ」

「モリア!?」

「くぞ・・・だ、だめだ・・・こ、こいつ・・・か、かてね・・・」

 

モリアまでやられた。撥ね飛ばされ、地面を転がった。

 

「モリア・・・」

 

エースにとってモリアは味方ではない。むしろ敵としての割合が大きい。

マリンフォードでの戦いでは、政府側としてエースの仲間を何人も傷つけた。

だが、この時のエースには、その出来事が頭から抜けていた。

それどころか、エースの心に火を付けた。

エースは倒れるモリアを庇うように、アクノロギアの前に仁王立ちする。

 

「ひ、ひげ・・・ん・・・なんの・・・マネだ」

 

モリアは薄れ意識の中、エースの背中の白ヒゲのマークが怒っているように見えた。

 

「グガアア」

 

アクノロギアは一気に攻めることはしない。一歩一歩近づいてくる。

だが、そのアクノロギアに対してエースは・・・

 

 

「逃げねえよ」

 

「グルウウ」

 

「俺は力には屈っしねえ!!」

 

 

エースは逃げない。

 

 

「俺は悔いのないように生きる。そしてまた海へ出て、思いのまま生きる! 誰よりも自由にな!」

 

「グガアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

それどころかこれほどの力を見せつけられたというのに、意地でもそこから動かない。

 

 

「そして、俺たちの海では誰もが知っている!」

 

「グルッ!?」

 

 

そして次の瞬間・・・・

 

 

 

「俺の仲間に手を出す奴は、誰だろうと許さねえんだよォォォォ!!!!」

 

 

 

――――――――――ッ!!!!!!

 

 

「「「ッ!?」」」

 

 

その時初めてドラゴンが動きを止めた。

 

「ぬっ・・・ひけ・・・ん」

 

モリアも気づいた。

その時、エースから発せられた目に見えぬ力。一瞬だけ『何か』が駆け巡った感じがした。

 

(なん・・・なのう!? 一瞬・・・息苦しくて意識が飛びそうに・・・)

(エース・・・お前は・・・)

 

アクノロギアもその『何か』を感じ取ったのかもしれない。

だからこそ、突然動きを止めたのだ。

まるで獰猛な獣が危機を察知して慎重になるかのように。

 

(こ、これは・・・覇王色の覇気かッ!?)

 

エースと同じ海を生きてきたモリアにはその『何か』の正体を察した。

 

(キシシシ、そういやあ、こいつは海賊王・ゴールド・ロジャーの実の息子!! その資質があって当然だ! あの竜も動きが止まって、いきなり警戒し出しやがった!)

 

竜が動きを止めた。

 

(キシシシシ、海と時代の頂点に立つ海賊王・・・こういうやつが・・・新たな時代を・・・)

 

半死のモリアと守るように睨むエースを仕留めることが出来ずにいる。

そして、竜が止まったその僅かな一瞬で・・・

 

「今だ!!」

 

「グルッ!?」

 

「七星剣(グランシャリオ)!!」

 

 

アクノロギアに向かって上空から強大な光が降り注いだのだった。

 

「ジェラール!」

「エース、一気にたたき込むぞ!」

「おうッ!」

 

ジェラールも立ち上がる。その瞳は、先程までのように死んだ瞳ではない。

未来を見据えた輝きが宿っていた。

 


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