死に損ないの海賊たち(ONE PIECE✖FAIRY TAIL)   作:アニッキーブラッザー

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第11話 火拳VS魔人

『火拳のエース』と『魔人ミラジェーン』

本来なら、『絶対』出会うことのない二人の会合。

 

「魔人か。だが、こっちは海の王者の息子だ!」

「関係ないわ。あなたを・・・消す!」

「へっ、怖いじゃねェか」

 

これもまた、新時代の幕開けの一つなのかもしれなかった。

 

「陽炎!!」

「させない!」

 

エースがミラジェーンに向けて炎を放つ。

だが、ミラジェーンは翼を広げて大空へと飛び出した。

逃がさず追撃の炎を放出させるエース。

しかし、ミラジェーンはただ翔んでいるだけではない。スピードも速く、動きも捉えられない。

 

「ちっ、速ェ! 動きを追うので精一杯だ!」

 

エースの炎は、夜の空を自由自在に飛行するミラジェーンには当たらない。

そしてミラジェーンも回避するだけではない。

その魔人の拳、魔人の魔力を、エースに一切の手心など加えずに存分に振るう。

 

「そんなもので私は捉えられないわ!」

「ッ!?」

 

エースの炎を掻い潜って接近してくるミラジェーン。

ついにエースの懐に飛び込んだ。

 

「デビルスパーク!!」

 

両手を重ねてエースの腹部に手を置くミラジェーン。

次の瞬間、彼女の手から黒い雷のようなものが発せられ、エースの全身に衝撃を与える。

 

「ぐおおおおおおッッッッ!?」

 

これまでくらったことのない衝撃。

打撃でもロギアの能力でもない。

 

(この女・・・一体何者だ!?)

 

エースは咄嗟にミラジェーンの手を払いのけて、間合いの外へと後退する。

だが、ミラジェーンも追撃してくる。

 

「逃がさないわ!」

 

手をかざす。

ミラジェーンの前方の何もない空間に奇妙な紋章が現れ、その紋章から深く重い闇の波動が放たれる。

 

「ダークネス・ストリーム!!」

 

暗黒の魔力で作られた腕。

その腕は触手のように幾多も放たれ、エースを捕らえようとする。

 

「へっ、炎戒・火柱ァァァ!!」

 

エースはミラジェーンの技をかき消すべく、自身を中心とした半径数メートルの炎の柱を天に向かって放つ。

だが・・・

 

「アアアアアアアッ!!」

「・・・なっ!?」

 

炎の壁を恐れずに、むしろ突き破る拳がエースの顔面を捉えた。

重い。

 

「ガ、ガハッ・・・」

 

ロギアの自分が殴られる。これは間違いない。覇気の力だ。

 

(クソ・・・いてーな、だが妙だな。覇気なんだろうが・・・今まで感じた覇気使いとは、何かが違ェ・・・)

 

だが、変なことに気を取られている場合ではなさそうだ。

文字通り魔人が冷酷な瞳で、殴り飛ばしたエースを攻め立てる。

 

「チッ、神火・不知火!」

 

カウンターで、向かってくるミラジェーンに二本の炎の槍を放つ。

しかしそれすら魔人には届かなかった。

 

「デビルクロウ!!」

「げっ!?」

 

ただの力ずくで、ミラジェーンはエースの炎を爪で引き裂いた。

 

(想像以上だ! だが、やっぱ妙だ! いくら幻獣種が少ないとはいえ、どうも何か違う気がする! 悪魔の実・・・いや、それ以前に何か根本的に違う力のような・・・)

 

何かが違う。

だが、そうやってエースが悩んでいる間にもミラジェーンは攻めてくる。

上空に飛び上がり、その両腕にエネルギーを凝縮させ、暗黒の球をミラジェーンは作り出し、それを一気に放出する。

 

 

「ソウルバスタァァァァ!!!!」

 

「火拳!!」

 

 

そして、ミラジェーンの力は、エースの炎をも飲み込んだ。

 

「ッ、マジかよ!?」

 

闇に飲み込まれているエースの炎。

 

(チッ・・・ツエーな、こいつ・・・ちょいと甘く見すぎたな・・・)

 

そして、炎と同時に自身の体も闇に飲み込まれていくエース。

相変わらず自分はまだまだだなと実感していく。

 

(いや、その油断がティーチとの戦いで身に染みたはずだったっつーのによ・・・まったく俺は・・・)

 

ティーチ。

赤犬。

アクノロギア。

そして魔人。

 

「まったく俺は・・・何度オヤジの名前に泥ぬりゃいいんだかよ」

 

ロギアの力で多少受け流せた。

だが、それでもダメージが全身に蓄積していく。

エースは片膝ついて、上空から見下ろしているミラジェーンに苦笑する。

 

「もう、気は済んだかしら?」

 

ゆっくりと翼を休めて降り立つミラジェーンは、魔人の姿に似つかわしくない、少し穏やかな声でエースに尋ねる。

 

「あなたの海賊人生をこれで終わらせるわ」

 

だが、その迫力は未だにビシビシとエースに伝わってくる。

 

「・・・・・・・へっ、言ってくれるじゃねェかよ」

「でも、最後にもう一度だけ聞くわ。あなたはそれほど酷い人だとは思えない。だから・・・」

「・・・ん?」

「だから・・・お願い。自首をして。そうすれば、罪は軽くなるはずよ」

 

魔人の瞳が悲しそうにエースを見ていた。

それは、憐れみか? ただの上から目線なのか? 

だが、結局はどちらでも別にエースには関係の無いことだった。

エースは温情の篭ったミラジェーンの最終通告に対して、徹底的に我を通して答えた。

 

 

「力に屈したら男に生まれた意味がねェだろう。俺は決して人生に悔いは残さない! 覚えとけ」

 

 

ミラジェーンが目を閉じた。

 

「ッ・・・・・・そう・・・悲しいわね・・・」

 

想いが届かず解り合えないことにやるせない気持ちが滲み出ていた。

だがその時・・・

 

(ん・・・そういや~・・・あん時も同じようなことを言ったっけな・・・)

 

エースの頭は、今とは関係ない少し前のことを思い返していた。

エースが思い出したのは、黒ひげ・ティーチと戦った時だ。

絶大なる能力を持って自分を圧倒したティーチは、最後の最後に仲間にならないかと説得してきた。

だが、自分は断った。今と全く同じ言葉を言って意地を見せた。

 

そしてその後はもう、捕らえられ、海軍に渡され、処刑を発表され、戦争が起こり、そして・・・

 

 

「だが・・・昔から変わらず押し通した意地でも・・・結果まで同じにしたんじゃ、オヤジも報われねーだろうな・・・」

 

 

あの時と同じ言葉を言ったのなら、同じ結果にするわけにはいかない。

背中に白ひげのマークを背負ったからには、もう二度と負けるわけにはいかない。

だから、エースは立ち上がった。

 

「・・・まだやると言うの?」

 

しつこい。

無駄な足掻き。

ミラジェーンには今のエースはそう写ったのかもしれない。

だが、エースにとっては重要なことだ。

まだ白ひげに、オヤジの魂に報いる方法は分からないが、ここで負けてはうかばれない。

 

「あん時に負けて思ったよ。自分の身一つ守れねェ俺は、たとえ生き延びたとしても大事なもんは守れねェ」

「・・・?」

「俺の無力が原因で、そんな俺を救うために家族が傷つくのは耐えられねェ。だから俺は誰よりも強くならなくちゃいけねェ」

 

だから勝つ。もう二度と負けるわけにはいかない。

相手がたとえ、魔人でもだ。

 

 

「・・・ロギアの能力者はあんま『これ』を使わねェ。何故なら戦闘になると『これ』を使わなくても勝てるからだ。新世界では戦うとまずそうな連中はたいていが友達だったしよ」

 

「何を言っているの?」

 

「ティーチの時は能力自体が封じられ、赤犬の時は体力の消耗と能力の上下が問題でやられた。まあ、どっちも俺の失態だがよ」

 

「・・・?」

 

「おめェはいい練習台だ。俺も生き延びたからには、もう一段階強くなる必要があるからよ」

 

 

エースの瞳が光を帯びて滾り出す。

この男、まだ微塵も心が折れていない。

ミラジェーンは、再び魔力を全身に纏い、エースに構える。

 

(この状況で何があるというの? もう、力の差は歴然のように思えるけど・・・)

 

だが、エースは笑みを浮かべる。

 

「見せてやるよ。本物の海賊の・・・高みをよ!」

 

そして決してハッタリではないと感じさせる雰囲気を纏い、ミラジェーンに告げる。

 

(ハッタリじゃないわ!? でも・・・何もさせない!)

 

ミラジェーンはエースが何かをするかもしれないと直ぐに理解した。

そんなミラジェーンの出した答えは、何もさせずに今のうちに力ずくで倒すこと。

相手が奥の手を持っているのなら、出す前に倒す。

それは一つの正解だ。

だが・・・

 

「・・・・えっ!?」

 

エースは予想外のことをした。

 

「目・・・目を・・・」

 

エースは構えたまま目を瞑った。

なんのつもりだ? 観念? いや、もはやこの男はその言葉とは最も遠い存在だ。ならば何を?

結局、ミラジェーンはエースの意図が読めぬまま、そのまま爪でエースを引き裂こうとする。

しかし・・

 

「えっ!?」

 

ミラジェーンの爪は空を切った。

目を瞑っているはずのエースに難なく回避された。

 

(ま、まぐれ?)

 

いや、何かをやると思った直後にこれだ。まぐれではない。

ミラジェーンはそれを確かめるべく、エースの四方を縦横無尽に飛び回り、攻撃のタイミングを悟らせないように間を開け、再びエースを引き裂こうとする。

しかしそれでも、エースは躱す。

 

「な、いきなり当たらなくなった!?」

 

スピード、上下左右、完全な死角からの攻撃すら対処。

挙句の果てに・・・

 

 

(打撃が回避されるのなら・・・)

 

「ほ~う、離れたところから竜巻を出すのかい? 巻き込まれたら危なそうだ」

 

「!?」

 

 

かわすどころか、ミラジェーンが何をしようとしているのかを事前に分かっているのだ。

 

(一体何!? 気配? 流れ? それとも予知?)

 

エースは一体どうしてしまったのか? 

徐々に焦り出したミラジェーンに、エースは目を瞑りながら答える。

 

 

「見聞色の覇気・・・普段ロギアで攻撃を流す俺には必要ねェからまだ慣れねェが、お前さんの気配をより強く感じ、次の瞬間にあんたが何をやろうとしているのかが読み取れるぜ」

 

「えっ、なに? は・・・ハキ?」

 

 

覇気。その言葉をミラジェーンは知らない。

そして、動揺は隙を作る。

 

 

「火獣(びじゅう)!!」

 

「ッ!?」

 

 

炎を纏った獰猛な獣の群。

エースは炎を獣の形に模し、複数の火獣をミラジェーンに放つ。

 

「こんなもの!!」

 

だが、ミラジェーンとて負けてはいない。その強烈な魔人の爪で火獣を切り裂く。

しかしだからといって、ミラジェーンが落ち着きを取り戻すわけではない。

 

(それにしても信じられないわ。炎の威力がじゃない。まるで炎を自分の手足のように自在に操っていることが。グレイの造形魔法・・・それは形を留める氷だからこそ可能なもの・・・だけど彼は明確な形が定まっていない炎をここまで!? まるで彼自身が炎のように)

 

それに加えて、急に攻撃まで当たらなくなる。一体これはどういうことなのか。

 

(威力は別にして、炎を扱う技術はナツ以上!)

 

だが、知らなくてもどうやら今のエースがそう簡単に被弾しないことだけは理解した。

それならば・・・

 

「攻撃を予測されるのなら、数で補うわ!! たとえ相手の動きが先読みできても、避けられなければ意味がないわ!!」

 

ミラジェーンは上空に高く飛び、両手を下にいるエースにかざす。

 

「ダークネス・ストリーム!!」

 

闇の嵐。

先ほどエースを襲った無数の腕が伸び、襲いかかってくる。

確かに慣れない見聞色の覇気では全てを回避することは不可能だ。

周りは海に囲まれて、能力者のエースに逃げ場はない。

 

 

「おめェとここで会えてよかったよ」

 

「えっ?」

 

「俺もまだまだ強くなれる」

 

 

エースは逃げない。

右拳をおもいっきり握り締め、上空にいるミラジェーンを狙う。

 

 

「見えない鎧を纏うイメージ・・・強固であれば強固であるほど、攻撃力は更に増す」

 

「何をやろうとしても、もう遅いわ!」

 

「これが俺の武装色を纏った新たな力・・・いくぜ!」

 

 

エースの目の前まで迫った闇の触手。

 

 

「見てろよ、オヤジ! こいつが俺のォ――」

 

 

しかしエースはその触手ごと燃やし尽くす。

 

 

 

 

「火拳・火武威(かむい)!!!!」

 

 

 

「――――――ッ!!??」

 

 

 

エースの拳から生み出される、これまでに無い力を纏った炎が、ミラジェーンを襲った。

 

 


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