『スイッチ』を押させるな――ッ!   作:うにコーン

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流行れ……! 流行れ特殊タグ…ッ! めんどくさいなんて言わずに…ッ!



荒木先生「卑怯だったり、困難な状況に陥った理由がマヌケだからって理由だと、そのキャラクターは好かれないぞ」

成程、言われてみればって感じがする。
OVER LORDの、とあるキャラ。 マッチョで、正義感が強くて、優しくて、卑怯な手を使わないガゼフがイマイチ好かれず、2次作品とかの出番が
ガゼフ < ニグン
なのはこういう事だったんだと。
確かに、ガゼフがカルネ村でブチ殺されかけたのはマヌケさが原因と言えるね。
モロ悪徳キャラな貴族にやられっぱなし。 対策しないとマズイってわかってて放置、つまりウジウジ悩む。
んで装備ひん剥かれて、罠とわかってて部下を減らしてる。 最終的には無策にニグンヘ突撃して返り討ち。 主人公のモモンガに助けられる、つまり尻拭いされると。

さわやかキャラなのにもったいねえええええええ!

なので、INT増やして悩まないように改造したら人気出るんじゃあないだろうか?

出展は『荒木飛呂彦の漫画術』¥842だぜッ!
紙媒体と電子書籍両方あるけど、電子書籍の方が本文の検索が出来るからオススメだぜ。


異世界旅行者 の巻

「ハァ…… ハァ…… ハァ……」

 

 しん   と…… 静まり返った、物音ひとつしないしじまの空間で、痛みに耐える息遣いだけが……音を発していた。

 

 魔法の光が照らす部屋は薄暗い。 室内を快適な明るさに保つために作られた、魔法が掛かったシャンデリアは墜落し、その役目を果たしていない。 窓すら無いこの部屋は、太陽は決して照らしてなどくれない。

 

「ううっ…… くっ……」

 

 唯一…… その場で呼吸をしていた1つの影。 激痛に身を震わせ、口から出る悲鳴を噛み潰す。

 

 ゆっくり、ゆっくり……と。 長い時間を掛け、その人影はやっとの事で立ち上がった。

 

ビシャッ  ビシャシャッ

 

 床に叩き付けられる水音。 床には大量の血が流れていた。

 

 真っ暗な室内で人影は、肩口まで切り裂かれて力無く垂れ下がった右腕を押さえる。 歯を食いしばりながら痛みに耐え、首を回しキョロキョロと辺りを探す。

 

「生き残ったのは…… 私だけ……?」

 

 仲間の姿を。 同僚の姿を。

 

 やがて…… 人影は1人うな垂れると振り返り、足を引き摺りゆっくりと歩き出す。

 

 ……薄暗い室内を移動する人影が、崩れた壁に取り付けられた光源のそばを通り過ぎた。

 

 長い髪、細い腰。 形のよい乳房は血に濡れていた。 そう、『彼女』が負傷しているのは腕だけではなかった。 首筋を深く切り裂かれたためか…… 全身を、滝に打たれたかのように血に濡らしている。 左足の膝が()じ折られ、まともに歩くことすら出来ないだろう。 だから足を引き摺っていたのだ。

 

「どうして……? 一体、何が起きたのかも…… わからないけれど…… それでも……」

 

 ずっと俯きながら歩いていた彼女の視界に、無情にも階段が姿を現す。 燃え盛る炎のように美しかった、赤い絨毯。 しかし、今では見る影も無い。 粉々に粉砕された瓦礫と土埃が降り積もっていて、くすみ汚れていた。

 

  階段へ1歩踏み出す。

 

「んっ…… く、ああっ……ッ!」

 

 捻じ折られた膝を、力尽くで持ち上げる。 痛みに強い彼女も、想像以上の激痛に悲鳴を上げた。

 

コツ…

 

「ハァ、ハァ、ハァ…… んぐぅぅ……」

 

 それでも歩くのを止めなかった。

 

コツ…

 

 1段、また1段と…… シャンデリアの光を反射して、美しく濡れたような輝きを放っていた階段を上る。今では大部分が崩れてしまった階段を上って行く。 1歩踏み出す毎に血が噴き出す。 かなりの深手のようだ。

 

コツ…

 

 疲労と、出血と、痛みで…… 意識が朦朧としてきた彼女。 そんな彼女が近付く事を、拒むかのように高かった階段が唐突に途切れた。

 

  俯いていた頭を上げる。

 

「…………」

 

 彼女の目の前には、椅子に座って眠る…… 愛しき人。 

 

「……よかった。 お怪我は…… 無い様…です、ね……」

 

 彼女は安堵の吐息をつく。 苦痛に歪んでいた表情が、ふわりと綻ぶ。 そして、彼女が本来持っていた美貌を取り戻す。 優しさを感じさせる、白く透き通った、艶かしいまでに美しく整った顔。 (うる)んだ瞳から、一筋の雫が流れ落ちた。

 

 全てを投げ打ってでも、完璧に守り通した。 貴方のいない世界に、生きる意味など無いと。

 

 霞む眼は…… (すで)(ほとん)ど見えないが、彼女にはハッキリと見える。 この世の何よりも美しい、彼の姿が。

 

「ずっと、ずっと昔から…… 貴方様に…… 愛慕(あいぼ)を寄せておりました……」

 

グラリ      ドサッ

 

 よろよろと、崩れ落ちるように膝を折り、倒れる。 冷えた石畳が、火照った身体に心地よい。 燃えるように熱かった体温が、急激に下がっていく。

 

「やっと…… やっとお伝え出来ました……」

 

 身体をバラバラに砕かれてしまうのかと思えたほどの激痛は、もう無い。 むしろ身体が軽く感じる程だった。 

 

 眠る彼が座る椅子に、遠慮がちに寄りかかる。 そのまま膝元に、甘える猫のように頭を預け、眼を閉じる。

 

「1つだけでよいのです……… お願いを…聞いて頂けますか……? せめて…せめて最期(さいご)だけは…… 貴方のお側で……」

 

 溢れ出るように流れていた、暖かな血液は…… 今では緩やかになり。 苦しげに、喘ぐ様に激しかった呼吸も穏やかになった。

 

 喜色に満ちた、彼女の声は。 睡魔に負け、眠りに落ち…… 次第に小さくなっていく。

 

「心より…… 貴方様を…… お(した)い…して…… おります……」

 

 

 もう、血は流れていない。

 

 

    モモンガ様……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 質素な。 という言葉がよく似合う、石材と漆喰のようになめらかな質感の土壁で出来た家屋。 二階建てのその建築物は、ガラスやプラスチックなどは一切使われておらず、木材と土を焼いたセラミックス…… 原始的な瓦などの、自然からの恵みのみで建てられていた。

 

 二階に設けられた寝室に、これまた簡単な作りの寝台が、幾つかの部屋にわかれて置かれていた。 数は合わせて4つある。 そのうちの一つに、包帯を巻かれた少年が1人横たわっていた。 近づくと分かるが、その包帯からは、ハッカ油のような…… 湿布薬のような、目に沁みるほど強烈な薬草の臭いが放たれていた。

 

 うっすらと少年の眼が開かれた。

 

「ううっ…… ぐッ!……」

 

 起き上がろうと体に力を入れようとして、怪我による痛みが少年の全身に走った。 苦痛に満ちた声をあげる少年。 ひとまずは起き上がることを諦め、辺りを見渡す。 最初に目に付いたのは、くすんだ色をした古い木材で作られた天井だった。

 

(しらねー天井……)

 

 少年は、声には出さずにそう考えた。 全身に広がる、疲労によるものだろう倦怠感で、声を出す気力が沸かなかったのもある。 だが、それ以上に、なんだか言ったら負けのような、奇妙な感情があったためだ。

 

 すぐに天井から興味が失せ、少年は首を回し横を見る…… と同時に、突っつかれた猫のように肩を跳ねさせる。 顔のすぐ横、十数センチくらいの距離に、こちらを覗き込む子供の顔があったためだ。

 

「うおおおッ! びっくりしたぁッ!」

 

 急に動いたためにぶり返す痛み。 少年は、イデーイデーと言いながら、情けなく眉をハの字に曲げ傷を押さえる。 異臭を放つ包帯にグルグル巻きにされてはいるが、見た目より大丈夫そうだ。

 

 何呼吸かした所で、痛みが治まってきた少年は、もう一度横を見る。 5歳から…… 8歳くらいだろうか? ショートカットくらいの長さの髪を2つに分け、紐を使って左右に可愛らしく縛ってある。 髪の色は明るいが、染めてあるようには見えない。 目の瞳、虹彩もやや明るい。 幼さが目立つため、少女と言うより幼女と言った方が正しく思える。 全体的に丸みを帯びた顔が非常に可愛らしい女の子だった。

 

 しばらく無言で見つめ合う2人。 ドラマか映画のような状況だが、見つめ合う2人の内1人が幼女である事と、部屋中に異臭が充満している状況が、雰囲気を完全にブチ壊している。 人生はそう上手くはいかない。 現実は非情である。

 

 何か話しかけた方がいいのかと少年は考え、とりあえず自分の状況を訪ねようかと考えていた…… その時だった。 少年は幼女   いや女の子が、スゥ  ッっと息を吸うのに気が付いた。 少年の心に湧き上がる嫌な予感。

 

 

「お姉ちゃああああああん!!」

 

キィィン    

 

 鼓膜が破れるかと思うほどの強烈な空気の振動が、少年の耳を襲うッ!

 

 女の子は、少年の耳元でシャウトをした後、弾かれるように立ち上がると、姉の姿を探しに部屋から慌ただしく出て行ってしまった。 恐らく少女は姉の言いつけを守っただけだろう。 そう、『目を覚ましたらお姉ちゃんに教えてね……』と、言われていたために。

 

 …………そして部屋に再び静寂がもたらされた。 残されたのは、心臓の鼓動に合わせてガンガンと痛む、頭と耳を押さえて悶える少年。 ただ1人だけだった。

 

 

 

 

 

 トブの大森林。 直径45キロを優に超える、日本の四国(約1800平方キロメートル)に匹敵するほどの面積を持つ広大な森林。 その最南端に、少女たちの住まうカルネ村があった。

 

 村の真横に手付かずの大自然があるというのに、村には防壁どころか柵すらない。 カルネ村の真横の森林はトブの森の南側を支配する強大な『森の賢王』という魔獣の縄張りであり、めったにモンスターや猛獣は村へは来ないためだ。

 

 人口はおおよそ120人。 25家族からなる村の主な産業は、森から取れる薬草類の恵みと農産物だ。 100年ほど前に、トーマス・カルネという開拓者がこの場所に村を切り拓いた。

 

 森で採取される薬草類を、年に3回ほど商人が買い付けに来ることと、徴税にやってくる役人が年に1度来るだけの…… 時間が停止したような…… 『王国』に所属する小さな村である。

 

「お姉ちゃん! エンリお姉ちゃん! おきた! おきたよ!」

 

 2つのおさげを、馬の尻尾のようにぴょこぴょこと揺らしながら走る女の子。 騒がしく麦畑にやってきて、自身の姉の名を呼ぶ。

 

「どうしたのネム? おきたって何がおきたの? 落ち着いて話して?」

「すごい頭のおじちゃんがおきたの!」

 

 ああ、とエンリはそれだけの情報で納得した。 まあ、本人がソレを聞いたら「たしかによぉ~~ 叔父さんだけどよぉ~~……」と複雑な表情をするだろうが。

 

 エンリは麦畑の雑草取りを一時中断して、ぐぐ~っと腰を伸ばす。 ずっと中腰の姿勢で作業していたため、背中から腰にかけて筋肉がカチカチに固まってしまった。

 

 ネムは姉のエンリを急かしながら、元気いっぱいといった感じで村へ走っていく。 エンリは口では咎めるがいつもの事なので、歩いてネムの後を追った。 エンリは早歩きでネムを追っていたが、曲がり角でネムの姿が一瞬見えなくなる。 遅れてエンリが角を曲がると、ネムがなにやら地面に(うずくま)る男性に話しかけていた。

 

(ああっ!! なんてことッ! 走りながら余所見をしていたネムがぶつかって、怪我でもさせてしまったのかしらッ!)

 

 と思い、エンリは慌てて駆け寄ろうとする。

 

 

    だが

 

 

「うずくまって、おじちゃん。 オナカ痛いの?」

 

 聞こえてきたのは予想外な問い。 どうやら妹は体調が優れない男性を心配し、話しかけていただけのようであった。 エンリは真っ先に疑ってしまった妹に心の中で謝罪すると、(うずくま)る男性へ視線を移す。

 

 エンリが男性へ話しかけるよりも早く、男性はネムを見るやいなや、大きく肩を跳ね上げると、腕を振り回しながら逃げるように慌てて立ち去ってしまった。

 

 多少不審に思い眉を潜めるエンリ。 だが、その男は袋や鞄を持たず薄着であったため、物取りの類ではないだろう。 奇妙に思ったが、エンリはすぐに忘れてしまう事にした。

 

 エンリは、早く早くと急かすネムの手を取り、ネムに引っ張られ転びそうになりながら、仲良く自宅の方へと歩く。 手を繋いで村外れを歩いていると、エンリがある人影に気がついた。

 

「あら、お疲れ様です。 承太郎さん」

 

 承太郎と呼ばれた彼は、丸太を()()()()()()()()()()()()()()()薪を割っていた。 彼は、持っていた半月状に割られた丸太を、まるで蜜柑の房を毟るように手頃な大きさに割ると、大量に割られた薪の上に放り投げる。

 

「厄介になっているからな。 たいした礼は出来ないが……」

「あっ! おっきなおじちゃん、あのねっ! すごい頭のおじちゃんがおきたの!」

 

 彼と初めて会ったのは昨日の朝。 エンリが毎日の日課である水汲みをする為に、2斗(約36L(リットル))の水量が入る小型の水瓶を持って、井戸に向かおうとしていた時の事だ。 承太郎達3人が怪我をして意識の無い仗助を背中に担ぎ、トブの森方向からやってくるのをエンリ姉妹が見つけたのだ。

 

「ネム、それじゃわからないでしょ? ちゃんと言わなきゃ…… ごめんなさい承太郎さん、ネムが失礼な事を言って。 どうやら仗助さんの意識が戻ったようですので、皆さんに知らせようと思いまして」

「……そうか」

 

 短く返答をする承太郎。 億泰と康一に意識が戻ったことを伝えるため、一先ず作業を中断すると億泰達のいる場所へ歩き出した。

 

 ネムは、歯の生え変わりで隙間の空いた歯を見せて、機嫌良さそうに笑いながら2人の近くをクルクルと走り回る。 そんなネムの捲り上げた服の袖が、飛び散った草の汁で緑色に染まっていた。

 

「ムッ…… ネム、服の袖が汚れてしまっているな」

「あら本当。 仗助さんに使う薬草をすり潰した時に飛び散ったんだわ」

 

 そう、重傷の仗助を見て手当てをしなければと一番最初に言い出したのはネムだった。 大量の出血の跡に驚いて慌てている年上のエンリより、10歳のネムの判断の方が早かったのだ。

 

「すまないな。 村の貴重な備蓄だろう。 有り難いことだが……」

「大丈夫ですよ、困った時はお互い様ですから。 それに承太郎さんが割ってくれた薪、すごい量でした。 薪割りは重労働なので助かります。 当分は薪に困らないほどの量なんですよ?」

 

 腰を曲げて少し前屈みになり、隣を歩く承太郎の顔を見上げるような、あざとい姿勢でエンリは微笑む。 しかし、彼の方は滅多に笑みを見せない。 だが、ネムに対してはうっすらと……   本当に僅かだが   笑みと、僅かな寂しさを浮かべて、頭を撫でる。 彼から聞いた、おそらく遠いであろう…… ニホンという、何処かにある彼の故郷に、娘か息子を遺して来てしまったからに違いないと、エンリは勝手に想像していた。

 

「それに、他の皆さんにも村の事を手伝って貰ってますし…… そんな気負わないで下さい」

 

 仗助を抱えた承太郎達を、エンリは治療のため自宅へと運び入れた。 傷を縫い、薬草で止血   あっという間に出血が止まって、承太郎達は非常に驚いた   し、エンリの御両親に寝台を貸してもらい、意識のない仗助をそこに寝かせたのだ。

 

 傷を縫ったのは承太郎だ。 承太郎の腕が二重にブレたかと思った時には、物凄いスピードで縫い上げられていた。 エンリの両親から借りた縫い針と糸で、顔色一つ変えずブスブスと躊躇なく傷を縫ったのだ。 その際、エンリが心配そうに近くで見ていたのだが、糸で傷を縫うのを初めて見たようで、顔が真っ青を通り越して真っ白になってしまっていた。

 

 ちなみに綿糸(めんし)で縫い合わせた。 金属やナイロン製の糸が手に入らなかったためだ。 抜糸する際に肉が引っ張られてかなり痛むだろうが…… 縫わずに放置して化膿させるよりはマシだろう。

 

 途中で、大量の洗濯物を洗う作業をしていた康一と億泰に合流し、エンリの自宅へと入る。 康一が洗うと大量の洗濯物が、短時間のうちにものすごく綺麗になるのでエンリは不思議に思っていた。 薬草の汁が染み付いた服でさえかなり綺麗になるのだ。

 

 『能力』とか言うヤツで洗うらしく、放っておくだけなので疲れないらしい。 康一は、今では村の殆どの洗濯物を引き受けていた。 どうやっているのか一度聞いてみたが、超音波の振動がどうとかで、エンリには少々難しく理解出来なかったので諦めることにした。

 

 家に入るとエンリの母親が出迎えてくれた。 丁度昼食を作っていたようで、良い香りが部屋中に充満している。

 

 軽く挨拶を交わし、2階へと階段を上る。 扉を開け室内に入ると、薬草の臭いがツンと鼻を刺激した。 寝台に寝ていた仗助が首だけを動かし承太郎達に気がつくと

 

「あっ…… 承太郎さん。 お久しぶり? ッスかね? 」

 

 と苦笑いを浮かべた。

 

「ああ、そうだな。 ……約1日半振りか」

「えっ! そんなに寝てたんスか!?」

 

 丸1日    正確には30時間以上意識が戻らなかったことを聞かされた仗助は、自分が怪我をしていることも忘れ、大声を出してしまう。 目元に涙を浮かべながらハラを抑えている仗助を見て、康一は安堵と呆れから、ほう、と溜息をついた。

 

「診たところ内臓はやられていなかった。 出血のショックで意識を持って行かれただけだろう」

「仗助よぉ~ ネムちゃんに御礼言っとけよ? 看病とその包帯の薬やったのネムちゃんなんだからよぉ~」

「ヘェ~ッ! こんなに小さいのにグレートッスねーッ! ありがとうよ~ネムちゃん、後で御礼させてくれよなぁ~~」

 

 隙間の空いた歯を見せてニカッとはにかむネムの頭を、仗助が撫でる。

 

「痛みはどうだ、仗助」

「あ、大分良くなったっスね…… 動かさなければッスけど。 いやー、スゲー薬草っすね…… 効果も臭いも……」

 

 ふむ、と少し考えて承太郎が仗助の腕に巻かれた包帯を解く。 驚く事に、ほぼ傷が塞がっており、縫った糸も取れてしまっていた。 抜糸の痛みから解放された仗助は内心ガッツポーズをする。

 

 

    

 

                           ゴ ゴ ゴ

 ふと仗助が違和感に気がつく。

 

(ん? なんつーか…… 下半身に違和感があるぞ……)

 

 寝台に寝転がったまま、胸の辺りまで掛けられていた厚手の掛け布を少し持ち上げる。

 

「………?」

 

 腰のあたりに何か白いものが見える。 布だろうか。 仗助の腰の部分を広くカバーするように布が巻きつけられ、留め具で止められていた。

                           ゴ ゴ ゴ

「…………」

 

 足の付け根まで布がしっかりと隙間なく覆っている。 厳重に巻きつけられた布は、ちらっとみただけでは下着のようにも見えるが…… 下着にしては()()()()()()

 

(…………ゲッ! こ、これは! まさか!! )

 

 

                           ゴ ゴ ゴ

 

 

 

 

 

 

 

 

バァ    (オムツだとォォオオッ!?)    ン!!

 

 

 

 

 布オムツを履いていた。 いや、()()()()()()()

 

 いつ意識が戻るのかわからず、実際に1日半もの間意識を失っていた重傷患者に、オムツをつけるのは衛生的に考えても当然だ。 フツーの病院だったら、取り外す時に激痛を覚悟するアレ…… 尿道カテーテルを問答無用でブッ込まれていただろう。 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()が…… 最初から最後までこれだけを使っていた…… つまり…… ()()()使()()()()()か、どうかは…… 今の状況からは推測出来ない。

 

(ハッ! そ、そんなことより! 誰がやったんだ!? 俺は意識がなかった…… 俺に取り付けたヤツがいるハズだぜッ!)

 

 持ち上げていた掛け布をソロリソロリと慎重に戻すと、不自然に思われないように細心の注意を払って辺りを見回す。 最初に目についたのは、寝台の端に腰を降ろし談笑する億泰。

 

(キャラじゃあねえよな……)

 

 億泰の可能性を一瞬でバッサリと切り捨てる。 康一である可能性も、体格が小さいからと除外。 次に視界の端で騒ぐネムが目に入るが……

 

(いや流石にねーよ……)

 

 仗助はエンリを、目を動かさないように視界の端で見る。 仗助が無事に意識を取り戻したことが純粋に嬉しいのだろう。 ニコニコと機嫌がよさそうに微笑を浮かべていた。 だが、仗助には悪戯をしている子供が笑い声を出すのを我慢しているようにも見えた。

 

(い、いやそんなハズはねェ  ッ! だ、だが…… もしそうなら…… ヤベエぜ  ッ! 気になるけどよ  ッ! 知りたくねぇよォ  ッ!)

 

 と、くだらない不安に襲われる仗助。 その後の会話など全く耳に入らなかった。 ちなみに…… この室内に子持ちの男性が1人いることを仗助は知らない。

 

 まぁ、仗助が「なんで教えてくれなかったんスか!」 と言ったところで、「聞かれなかったからだ」と、返って来るであろうが。

 

 

 

 

to be continued・・・




――没ネタ――

~~もしジョジョオタな至高の御方がいたら~~


モモンガ「お久しぶりです。 ナンテコッタ・フーゴさん」

一々ジョジョ立ちするパンドラ

パンドラ「至高のウォン方にッ! 教えていただきましたァン!」ビシイ
モモンガ「やめろ」


すきなとこ:ギャグ色が強そうでおもしろい。だれか書いて

ボツりゆう:ギャグ書くのが苦手

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