そんな彼方にアザレアの花束を   作:ゐろり

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今回は花陽視点で彼方の過去を明かしていきます。


第五話~過去の彼方に~

~前回のあらすじ~

淡島ホテルに呼び出された彼方。戦々恐々としながら入ると金髪美少女小原鞠莉と遭遇。女装させられた。ざまぁ見やがれ!曜ちゃんのハグの代償はでかいんだよバーカ!

 

 

~彼方が内浦ですっとこどっこいしてる頃秋葉原では~

「うーん…彼方君大丈夫かなぁ…死んでないかな…」

「彼方くんに会わなかったら今のかよちんは見られなかったにゃ…」

私の名前は小泉花陽。今は普通の大学一年生ですが昔はスクールアイドルをやってました。

「それより絵里ちゃんには彼方くんが発った事は伝えたのかにゃ?」

「もちろん。なんだかんだで絵里ちゃんが一番彼方君のこと面倒見てたからね」

そうなんです。私たちの2つ上の先輩、大学三年生の絢瀬絵里ちゃんは彼方君の面倒をたくさん見てもらったのです。もちろんμ'sの皆も彼方君のことを気にかけてくれていました。

「あの頃はすごい大変だったよね…」

「本当に…」

あれは二年前、私達がアキバドームでのファイナルライブを終えた後のことです。

『花陽、疲れてるところ悪いけど明日姉さんのとこ行くわよ』

『別にいいけど…急だね?』

皆と打ち上げが終わって帰ってきたらどこか悲しげな表情のお母さんから言われた言葉です。

『姉さんが…癌で亡くなったわ』

『え…』

それは急でした。私のお母さんのお姉さん―私の伯母さんに当たる人が亡くなったと聞いたのは。

『まぁ私は前から事情も知ってたから驚きはしないけどね…』

お母さん、無理してる…多分私を不安にさせないためだと思う。なら指摘するのは野暮だよね…

『え、でも待って!なら彼方君は…』

『そうなの。あの子お父さんいないから家族がだれもいないのよ…それにうちは親戚も少ないからね。私達の母さん、父さんはとっくに他界してるし兄弟だって私だけ。このままじゃ彼方君児童相談所に預けられちゃうの…』

伯母さんの息子さん、つまり私の従兄弟にあたる江口彼方君にお父さんはいない。保護者がいないと児童相談所に預けられるのは当たり前――――だから彼方君を引き取るというわけでした。

『もちろん私は賛成だよ!』

『良かった…お父さんも賛成してたわ。息子ができるみたいでいいね!って』

なんともお父さんらしかったです。結局私達は彼方君のいるアパートに行くことになったのです。

 

~翌日~

『彼方君いる?花枝伯母さんだよー』

……反応無し。

『…でないね』

『んー…おかしいなぁ…彼方くーん?』

二回目を呼び掛けると流石に反応があった。しかし中から出てきた彼方君を見て私達は絶句を禁じを得ませんでした。なぜなら…

『あぁ花枝伯母さんにかよねぇ…どうぞ』

『どうぞってあなた…!ガリガリじゃない!』

そう、冗談抜きにガリガリだったのです。とてもまともに食事を取ってるようには見えませんでした…

『……まぁ立ち話もなんですからどうぞ中へ。その話は追々…』

『彼方君…』

とりあえず私達は彼方君の部屋へ入ることにしました。中は片付いていて余分な物が一切ありませんでした。

…そう、必要最低限の家具しか置いてなかったのです。小さめの冷蔵庫、棚が何個か、小さいテレビ、机。それ以外は何も。

『ああ二人ともこちらへ…小さい机ですみませんね』

『いいえ、今はお茶なんてどうでもいいわ。なんでそんな体なのか説明して頂戴』

『なんでって…食べる時間が勿体無くてつい…あ、でも水は飲んでますから安心してください』

『…いつから食べてないの?』

最初に来たときよりかは平静を保てていたのではないでしょうか。つとめて普通に聞けたと思います。

『母さんに腫瘍が見つかった時からかな…悪いけど食べる余裕なんかなかったよ。時間的にも金銭的にも』

『『…っ』』

伯母さん―彼方君のお母さんが倒れる前の生活は決して裕福などではなくむしろ貧乏のそれに近かったのではないでしょうか。そこに伯母さんの入院費ときたら間違いなく生活に影響が出る。だから彼方君は…

『まぁ簡単に言うと食べれなかったわけですね。もっとも余裕あったって食べる気はもうとう無かったけど』

そこまで苦しんでたのに…ならなんでお母さんは助けてあげなかったの…?

『お母さん、知ってたの…?』

『…姉さんからはこう言われていたわ。』

―私も彼方も強い。絶対に盲信なんかじゃないわ。だから、私達を助けないで―

『…でも今の彼方君を見ると私のとった行動は正しかったのかし『あの』』

お母さんが喋り終わる前に彼方君が口を開いた。

『今必要なのはifを考えることじゃないでしょう?todoを考えないと』

…なんて強い子なんだ、と思いました。きっと取り乱していないのもこの考えに基づくものなんでしょう。

『泣いて悲しむより前を向いて今日を必死に生きる事が今の俺のtodoなんですよ』

『本当に…姉さんの子だわ』

私も口にはしませんでしたが同じ事を考えました。伯母さんはいつも言っていたんです。

 

―あれこれ可能性考えるより今やるべきことを見つけなさい―

 

この親子は強いです。だからこそ心配になる。

『彼方君!』

『は、はい!』

『あなた今日からうちに来なさい!』

こうして彼方君がうちに来たのは二年前の夏の終わりでした。

 

 

「そういえば彼方君ガリガリだったにゃ」

「マッチ棒だよね、マッチ棒」

凛ちゃんと冗談言い合ってるとメールの通知が一本きました。

 

from:絵里ちゃん

花陽、久しぶり!そっちの大学はどうかしら?私は大学内でもまだたまに

「μ'sの絢瀬絵里さんですか!?」

って聞かれることに驚きを隠せません…(汗)

もし暇ならこれから会いたいのだけれどどうかしら?

 

「絵里ちゃんがこれから会いたいって」

「本当に!?行こう行こう!」

「もちろん♪彼方君の昔話の続きもしたいしね!」

どうやらこれから楽しくなりそうです!

 

~おまけ~

「はぁ…彼方君いないな…会いたいな…」

メールの文体とは裏腹に絵里は自宅でショボーンとしてた。




ショボーンえりち可愛いですね。
活動報告にて様々な情報を公開してるのでそちらもよろしくお願いします…

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