そんな彼方にアザレアの花束を   作:ゐろり

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みなさん、おっはよーそろー!
今回は三年生が集結します。
彼方が彼女たちを呼んだ意図とは?
再び集まった彼女たちは答えを見いだせるのか?
それではどうぞ!


第二十一話~交渉の彼方に~

~前回のあらすじ~

絶対防衛線の準備のため彼方の家の倉庫で物色を始めた彼方、千歌、曜。その一方で彼方は果南、鞠莉、ダイヤを呼び出した。その用件とは一体・・・

 

 

「ちょっと待って彼方、話が見えない・・・というか、え?浦女を守る?一体どういうこと?」

「私も意味がわかりません・・・そもそも守られるようなことなんてないでしょう」

 ・・・おかしい。なぜ、事情を知らないんだ?ただの生徒である果南は仕方ないにしても生徒会長のダイヤさんは知っててもおかしくないだろう。というかなぜ知らない?

「なぜこの二人が知らないんだ?って顔してるわね、カナタ」

 マリーが呆れたように見つめてくる。なぜ、わからないの?そんな顔だ。

「・・・ヒント、なぜ私と彼方、それにちかっちと曜はあの事を知ってるの?」

「なんで、ってそりゃ俺達はその場にいたんだし、というか普通に当事者だから・・・・・・あっそういうことか」

 よく考えればそうだった。俺達はその場にいたから事情を知っている。だが他二人はそうじゃなかった。つまり・・・

「知ろうにも知りようがなかった、ってことか」

「勘の良い子は好きよ♪」

「・・・ねえ、そろそろ呼ばれた理由教えてくれない?」

 果南が不機嫌そうに聞いてきた。・・・本当、前に会った時と印象が違いすぎて困る。

「ああ、悪い。それじゃあ最初から説明する。まずは-」

 

 

 

 

 

「鞠莉さんっ!!」

 話を聞き終わって一番最初に声を上げた、いや荒げたのはダイヤさんだった。

「ダ、ダイヤ?」

「なぜそんな大事なこと黙ってたんですか!?」

「・・・黙ってた訳じゃないよ。だって、伝えようがないじゃない。」

「それにしたって・・・「ダイヤストップ。話が進まない」

 激昂するダイヤさんを果南が静かに制する。

「彼方、ひとつだけ質問させて」

「・・・なに?」

「こうなった事情はわかった。そして浦女を救おうとしてるのもわかった。それは素直に嬉しい。・・・・・・じゃあ、なんでそこまでするの?言い方悪くなっちゃうけどまだこっちに来てから一週間そこらでしょ?ここまでする義理がある?」

「ちょっと果南!」

「鞠莉は黙ってて」

 ・・・なんで、か。今考えると色々な理由が思い浮かぶな。

「たくさんあるよ。はじめて出来た友達が悲しむから。そんな友達の夢を応援したいから。お先真っ暗だった俺を救ってくれた恩人が大切にしている学校だから。父親に復讐したいから。・・・でも、たぶんそのどれもあっててどれも違うと思う。本当の理由は、ただ好きな子に笑顔でいてほしいからだと思う。」

 我ながらなんとも利己的な主張だと思う。でも、それが本心だった。

「・・・そっか。そういうことならわかったよ」

「え?」

「私だって自分の学校無くなるのはいやだもん。できることならなんだってする」

「・・・そうですわね。それに、今回の事と私たちの問題は本質的に関係ありませんし」

 どうにか落ち着きを取り戻したダイヤさんも賛同の意を示してくれた。

「私はもちろん最初からそのつもりよ。今さら聞くまでも無いでしょう?」

「・・・皆、本当にありがとう。」

 ただ、まずは話を聞いてもらう段階にいっただけだろう。手伝ってくれる、とはいったものの正直今から頼むことを快諾してくれるとは考えてない。ただ、それでも頼むしかない。

「まず、果南。」

「うん?」

「短期間、多分あと二週間くらいで俺に体力をつけてほしい。」

「え、えぇ?」

「詳しいことは後々話すけど、どうしても手っ取り早く体力がほしいんだ。もちろん、どんな過酷なもんでもいい。」

「・・・わかった。考えておく」

 ここまでは順調だ。そもそも果南から断られる可能性は考えてない。問題はダイヤさんからだ。

「次にダイヤさん。」

「はい」

「ダイヤさんには浦の星の資料を洗いざらい調べてもらいたい。学校の構図、敷地面積、用具の備蓄量、とにかくたくさん、できるだけ多くの情報がほしい」

「それくらいなら生徒会室にあるでしょう。わかりました、用意しておきます。」

「それと、ダイヤさんの家ってここらへんじゃ有名な名家なんですよね?」

 マリーに問いかける。以前家を見てるので正直ほぼ確信してはいたが念のため確認をとっておく。

「ええ、それだけあってあちこちにパイプを持ってるわよ?」

「ちょ、ちょっとやめてください・・・居心地わるいですわ」

「でも事実でしょ?きっとカナタはそれを利用しているのだと思うけれど」

「・・・ご明察。このメモ用紙に書いてある商店と交渉させてほしいんだ。そのためにどうにか場を取り持ってほしい。」

「・・・呆れましたわ。町中巻き込んでまでイタズラしようなんてする人、あとにも先にもあなただけですわよ?」

 流石のダイヤさんも苦笑である。ただ、反応を見る限り好感触か?

「そちらも承知しましたわ。全てうまくいくと約束はできませんが精一杯交渉してみます。」

「ありがとうございます!」

「さーて、それじゃあ私の役割とやらを聞かせてただけるかしら?」

 さあ、あとはこの人に協力を要請できるかどうかだ。

「マリー、補給係になってほしい。」

「お財布、の間違いじゃなくて?」

「・・・嫌な言い方するなよ。この作戦でマリーに提供してもらった分は一生かかってでも返済する。必ずだ。」

「つまり借金ね?」

「・・・・・・ああ。保証人もいない、法的な意味をもつ借用書も残せない。それでも、協力してほしい!」

 これは、お願いじゃない。子供のくだらないわがままだ。まさに他力本願、これぞ外道。俺が一番嫌ったやり方だ。それでも、やるしかないんだ。

「・・・いいわ!ただし、あまりにも現実的じゃなかったら怒るからね?」

「ついでに言えば貸せるのは私の資産の中からだからあんまり期待しないでね?」

「わかった。」

 ・・・とりあえず、第一関門は突破した。俺がやるべきことはあと二つ。

「そういうわけでみんな、よろしく頼む!」

 

 

 

~おまけ~

「まーったく、とんでもないこと頼まれちゃったなぁ」

「本当ですわ。生徒会長の私をここまで働かせるなんて」

「私なんて金貸せだよ?もー嫌になっちゃう」

「「「あっはははははは!」」」

 彼方が帰ったあと、三人はしゃべっていた。

「ねぇ、鞠莉。」

「なぁに?果南。」

「・・・いや、なんでもない」

「・・・そう」

 この三人が抱えている闇は決して小さくなどない。むしろそれが柵になって三人の心を蝕んでいる。

「お二人とも、先ほども言いましたが私たちの問題と今回の事はベクトルが違いますわ。くれぐれも私情を挟まないように」

 遮るようにダイヤが口挟む。しかし、言葉とは裏腹にまるで納得などしていないような顔つきだった。

「・・・わかってる」

「・・・ええ」

「では、もう夜も遅いです。今日のところはお開きといたしましょう」

 それ以上なにも言わず、三人はそれぞれの帰路についた。ただそれでも。バラバラに見える三人は同じ想いを胸にこの作戦に挑むのだった。

 

 

 

 

『私たちの事に決着を付けるためにも、必ず浦女を守って見せる!!』

 

 

 

 

 想いよ、ひとつになれ。




どうでしたか?
そろそろ一話あたりの文字数を増やしたい今日この頃。
そして更新ペースもあげたいなぁ・・・
口八丁にならないように努力していきます。
それでは、アディオス!

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