テストやらなんやらが続いたせいで全然執筆できてなかったんです本当にごめんなさい…
さて、今回は前回出てきた新キャラ江口被方君の話です。
いままで会話に登場してこなかったあの子も登場しますよ!
それではどうぞ!
僕は警察官になるのが夢だった。誰かを助けることがかっこいいと思っていたからだ。
でもそれを成すにはあまりにも自分が非力過ぎた。
もともと母子家庭だった僕の家にそいつは急に現れた。
「今日から君の父親になる江口政孝だ。よろしくな、披方!」
第一印象は大胆で豪快。決して悪い印象は受けなかったが何せ急な話だったので酷く驚いたのを覚えている。
「う、うん…でもお母さん、再婚するなら一言あっても良かったのに」
母の再婚に関しては全然異論はない。むしろ僕が生まれてからずっと一人で寂しい思いをさせてしまっていたので賛成なくらいだ。
でも僕だって家族。話くらいは聞いておきたかった。
「……………」
「…お母さん?」
が、様子がおかしい。喋りかけたのに返事が無いのだ。よく見ると顔は真っ青で震えている。
「なんだ、母さんは体調が悪いのか…向こうの部屋で休ませてくるよ」
「…わかった。お母さんをよろしくね、“お父さん”」
思えばこの時既に気づくべきだった。お父さんがお母さんの肩を抱きながら部屋の向こうに消えていったその刹那。
ドゴッバギッ、というおおよそ介抱する上では出ないような音が聞こえたのだ。
お母さんが危ない!
咄嗟に僕は目の前の部屋に飛び込んだ。
そこで見た光景は凄惨を極めるものだった。
お母さんが無抵抗なのを良いことにお父さんは暴行を加えていたのだ。
殴る、蹴る、ビンタ、罵声、髪を掴む…
「てめえのせいで披方にバレるところだっただろ!この能無し!」
「ごめんなさい…ごめん、なさい…」
涙を流しながら謝罪を繰り返すお母さん。それを呆然と見る僕にお父さんは気づいた。
「な、にを……やって…いる、の…?」
「ちっ…予想より早く気付かれたか…まぁいい。これからこの家では俺に逆らうとこうなるからな」
そう吐き捨てるとお父さんは荒々しく家を出ていった。
「そんな…なん、で…?なんで…」
殴られ続けたせいかお母さんは気を失っていた。
それを見て今さら涙が出てきた。怖いから?お母さんがかわいそうだから?否、違う。
自分の非力さに泣いたのだ。
もしかしたらもっと早い段階でお母さんを助けれたかもしれないのに我が身可愛さからあそこに飛び込めなかった。
…あるいは僕もボコボコにされていたかもしれない。でもお母さんをにがすくらいの余裕は稼げただろう。
僕はそれすらも出来なかった。
「あぁ、僕はどうしてこうも無力なんだ…」
その日以来お父さんが帰ってくることはなかった。
当然学校の授業など右から左。もともと友達はほとんどいないから誰も僕を心配しない。でもそれでいい。今は誰にも話しかけて欲しくなかった。
昼休みになってもご飯など喉を通るわけなくただボーッと虚空を見つめる。
「こんなところでなにしてるのよ」
それは唐突だった。後ろから急にその娘は話しかけてきた。
「何って…こうやって空を見てるんだよ」
振り替えって見ると、そこには可憐な美少女が立っていた。
「そういうことじゃなくて…今の貴方、まさにguillty!」
「はいはい…ぶれないよねぇ善子ちゃん」
「なっ……!ヨシコ言うなぁー!私は堕天使ヨハネよ!ヨ・ハ・ネ!」
この娘は津島善子ちゃん。僕の幼なじみで唯一の友達だ。勉強はずば抜けてできるくせに自分のこと堕天使とか言っちゃう系の女の子。人生を常にロールプレイしていると言えば聞こえは良いがぶっちゃけただの厨二病。
「貴方、最近変じゃない?」
急に真面目な顔になって善子ちゃんは聞いてきた。
「…随分容赦無いね」
「いいから」
「別にこれといって変化は無いよ」
「ここ一週間府抜けた面してたヤツが言うセリフ?…身内になんかあったの?」
その言葉に一瞬ドキッとする。
「…どうして?」
「変な事で悩んでるようには見えないけどアンタ自分の事で悩まないし、かといって友人関係で悩むほど友達いないし…もしかしたらお母さんに何かあったんじゃないかって思ったのよ」
なるほど…流石善子ちゃん。敵わないなぁ。
「ふーん…じゃあそれがわかっててなんで話しかけてきたの?僕が一人でいたいってわかってるくせに」
だから少し腹が立った。多分善子ちゃんはわかってて声を掛けてきてる。実に性格悪い。
「あら、たった一人の親友が元気ないのを心配しちゃいけない?」
…性格悪いけど、そういうところもぶれない。
「まったく…君にはいつも言いくるめられちゃうなぁ」
「ヒナタがこのヨハネに勝てた事がかつてあったかしら?」
「…そうだったね」
そういえば幼稚園の頃から口喧嘩は結構やってたけど一度も勝てたことがなかった。ちなみに前に一度口喧嘩のコツを聞いたら
「それは貴方が私のリトルデーモンだからよっ!」
って言われてしまった。本人はドヤ顔ぶちまかしてたけど質問に答えていないことにまだ彼女は気付いていない。
見破られて尚しらばっくれる元気など無いので仕方なく事情をある程度かいつまんで話した。
「なにその男!?はぁー…見下げたクズね!」
「全面同意。異論の余地も無いね。」
「人の悪口言えないアンタをそこまで言わせるのも中々よね。とっとと勘当しちゃえばいいのに…」
「そううまくいかないよ。あの悪鬼はなに考えてるのかわからないし」
「くぅ~~~~~~イライラするぅ~~~~!!」
そう言って善子ちゃんは思い切り立ち上がった。その刹那。
「よ、善子ちゃん!?」
突然抱き締められたのだ。
「今のあんたにしてやれる事なんてこれくらいだもの。だから…」
「そりゃありがたいっちゃありがたいけど…」
「………あんたの辛そうな顔見てるとあたしまで辛くなるの。それなのに、解決に導くこともその助けすらも出来ない。ならせめて苦しみを和らげてあげたいじゃない」
…やっぱりこの子は本当に優しい。僕がうじうじしている間に自分のやれることを精一杯やっている。
僕は一体何をやっていたのだろう。
あるじゃないか、僕に出来ること。それが本当に出来るのかはわからない。でも、目の前のこの女の子がやっているのに、僕がやらない等愚の骨頂だ。
その昔、第二次世界大戦時のドイツではヒトラーによるユダヤ人差別が行われていた。しかし時代が進むにつれそれに不満や怒りを覚えた者達が抵抗運動を始めた。結果ヒトラーは自殺をし、差別は無くなった。
彼らは後に抵抗者―レジスタンスと呼ばれた。
僕はレジスタンスだ。抵抗者だ。必ずあの悪鬼を、倒す。
自分より少し小さな幼なじみの体を抱き締めながら、僕はひそかに決意するのだった。
反撃の狼煙は密かに煙を吐いた。
結構大それたこと言ってた割にはあまりながくなかったですねすいません…
さて、ここで一つ注意です。文中に出てきたレジスタンスは本来抵抗運動や、抵抗活動のことを指します。ここでは僕独自の解釈を混ぜて使わせていただいてるので本来の意味と違うことをご了承ください。
それでは、アディオス!