[1]ノーゲーム・ノーライフの世界にチート転生者がきたようです   作:型破 優位

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明けましておめでとうございます。
遅れて申し訳ありません。
今年もよろしくお願いします。

ゲーム内容も固まらず、新刊を買ってしまったことによりさらに時間がかかってしまいました。

ラフィール姉様、是非とも出したいところです。


記憶

 佑馬とジブリールがゲーム盤に移動する途中、頭の中にノイズと共にゲームのルールが流れ込んできた。

 

 1:ゲーム参加者には、己が『質量存在時間』を割合分割した十の『(サイコロ)』が与えられる。

 

 2:賽保有者は、保有する全ての賽を振った出目の数だけマスを進むことができる。

 

 3:賽は振った後にランダムに出目確定、その後使用された内から『一つ』失われる。

 

 4:『同行』する場合、宣言の後、同行者は代表者の出目の数だけ進める。

 

 5:二名超の同行では、使用された賽から『総同行者数×随伴者』分の賽が失われる。

 

 6:プレイヤーは、ゲーム開始時に各五十の『課題』を作成する権利を持つ。

 

 7:『課題』はマスに止まった賽保有者に対し、如何なる指示も強制できる。

 

 8:賽保有者は『課題』の達成、または七十二時間経過まで、マスを移動できない。

 

 9:『課題』達成で、賽保有者は賽を一つ出題者から奪えるが、不達成で一つ奪われる。

 

 10:各『課題』は立て札に記述され、順不同に盤上のマスに配置される。

 

 11:『課題』はその内容によって、当該のマスの環境を変化させ得る。

 

 12:ただし以下を含む『課題』は全て無効と見なされる。

 

 

 

 12a:『課題』の対象者を特定限定する文言。

 

 12b:出題者以外には達成不可能、またはどのプレイヤーにも不可能な指示。

 

 12c:賽保有者に対する、賽の出目に依らないマスの進退を指定する文言。

 

 12d:人類語以外の言語によって書かれた文言。

 

 

 

 13:このゲームは外からの途中参加を認める。

 

 14:途中参加の者もまた、そのゲーム開始前の二十四時間の記憶を徴収する。

 

 15:途中参加の者が増えるにあたるマスの数の増加は、課題の数に依存する。

 

 16:途中参加の者は最下位の人から二十マス離れたところとする。

 

 17:途中参加者は課題を好きな位置に配置することが出きる代わり、賽が『一つ』失われる。

 

 18:ゴールに到達した賽保有者を以て『勝者』とし、ゲーム終了とする。

 

 19:当該神霊種は『勝者』に対し、その権利及ぶ範囲の全ての要求履行の義務を負う。

 

 20 :全プレイヤーの賽喪失、或いは死亡を以て『続行不能』とし、ゲームを終了とする。

 

 21:当該神霊種は『続行不能』時、先頭者を除く全参加者の全てを徴収する権利を有す。

 

 0a:ゲーム盤は現実の構造だが、そこで起こる事象は死を含め全て現実である。

 

 0b::――賽保有者の中に一名、記憶を徴収されていない『裏切り者』がいる。

 

 全て予想の範囲内、そのための対策もしてある。

 最下位はいづなで[  ]とは三マスしか変わらない。

 

 つまり、[  ]から二十三マス後ろからが、佑馬達のスタートラインとなる。

 

 そして、追加百マスは佑馬達だけではなく、参加者全員に追加されなければいけないため、百マスの追加が出るのは、[  ]のいる場所以降となる。

 

 さらに、完全クリアを目指す[  ]にとって、賽を残すという行為は有り得ないことだ。

 

 [  ]の心理として、百マスも目の前で増やされたら、やる気を無くしたフリをして賽浪費目的で小さい数を出すのは明白。

 そのため、そこら一帯に『課題』をバラまいた。

 

 ここまでは順調、ただ、危惧することもいくつかある。

 

 しかし、それを今更どうこうすることも出来ないことで考えていても意味がない。

 

 ゲーム盤の姿がだんだんと明白になってくる視界を意識に入れながら、気持ちを切り替える。

 

 そして、辺りが鮮明に浮かび上がった。

 

「……よし、着いたな。まずはジブリールとの『同行』を宣言しとくか。さて、危惧していたことも含めてどんな感じかなーっと」

 

 まずは周りを見渡す。

 隣でジブリールがこちらを見ていること以外は、草原が広がっているだけだ。

 

 次いで、『賽』の数。

 ルールの通り、『賽』の数は九個。

 

 次は記憶の確認。

 たしかに二十四時間前からの記憶はないが、問題ない。

 この作戦は[  ]に勝つと決めた日からある程度考えていたものだから。

 

 ある程度確認を終えた佑馬に、ジブリールが話しかけてきた。

 

「大変申し訳ありませんが貴方様はどち」

 

「ストップ!それ以上言われたら傷つくから先にコレを受け取ってくださいジブリールサン!!」

 

 全力で叫びながら差し出したのは、賽。

 訳も分からずそれを受け取ったジブリールは、瞬間。

 

「あ……」

 

 失っていた記憶を、取り戻した。

 

 1:ゲーム参加者には、己が『質量存在時間』を割合分割した十の『賽』が与えられる。

 

 ジブリール、いや、天翼種は、生命だ。

 今回のゲーム、『質量存在時間』十に分割、つまり、『魂』と『器』を分けて、『器』のみを賭け皿に乗せた。

 生命と生物、違いは『器』と『魂』に明確な境界線がないこと。

 

 それ即ち、

 

「よぉ、ジブリール。記憶戻ったか?」

 

「……お手数を、おかけして、申し訳ございません」

 

 賽がゼロになれば、全ての記憶を初期化されるということに、ジブリールは今の一瞬で理解、そして、初めて実感した『恐怖』に、言葉を途切れ途切れに言うジブリール。

 

「……これが、恐怖というものでございますか……」

 

「俺との記憶を忘れたことに対して恐怖してくれるのは、それだけ大切にしてくれてるってことだから嬉しいけど……その……ごめん、本当に」

 

 佑馬が謝るのは、至極当然のこと。

 何が悲しくて大切な彼女に恐怖を植え付けることが出来るのだろうか。

 しかし、それをジブリールは、否定する。

 

「何故佑馬が謝るのでしょうか。『恐怖』これも感情の一つ。その感情を教えてくれた佑馬にこちらから感謝はすれど、佑馬から謝られることではございません。何より、佑馬はこれ以降私に賽を使わせる気はないのでございましょう?」

 

 暗に、これも大切な記憶だと。

 佑馬がくれたプレゼントだと言うジブリールに、最早佑馬から言うことも無く。

 

「……行こうか」

 

 前に進むことにした。

 

◆◆◆

 

 佑馬とジブリールがマスを進めようとした頃、空と白、ステフは佑馬の目論み通り、佑馬が来てからマスを進めていなかった。

 

「くそ……佑馬め、ただ俺たちをいじめたいだけなんじゃないのか!?」

 

「佑馬ならありえますね……」

 

「と、いうか……それが……本当、の……目的?」

 

 現在、二百十六マス。

 空が六個、白とステフが五個。

 ゴールまで三十四マスのところで、百マスを追加された空たちにとって、それは正しく拷問だった。

 

「でも、進まなければ終わりませんわよ!?」

 

「えー……佑馬達に連れていって貰ったり出来ないかな……」

 

「にぃ……ないす……あいでぃあ」

 

「明らかに敵ですわよねぇ!?」

 

 ステフの突っ込みと決まったところで、仕方ない、と空と白、ステフは賽を振る。

 

 ぶつぶつと佑馬に悪態をつきながら。

 

◆◆◆

 

 空達が悪態をついている頃、佑馬とジブリールは転移でマスを移動する。

 

「さて、空達のペースを見ると、少し待たないといけないな」

 

 佑馬達が参加したせいで、空達の進むスピードは著しく低下しているのはジブリールも承知の上だが、それよりも気になることがあった。

 

「そうでございますが……一つ聞いてもよろしいでしょうか」

 

「どうした?」

 

「佑馬は何故、体が小さくなることも、記憶が無くなることもないのでございましょうか?」

 

 そう、佑馬は賽を現在五個消費して三十の出目を出した。

 普通なら、空達みたいに体が小さくなるなり、ジブリールみたいに記憶がなくなるなりするはずだ。

 しかし、佑馬は前提として普通ではない。

 

「前にも言ったけど、俺は人類種でもある、そして、一度転生した身だ。つまり、|この世界の質量存在時間は数ヶ月で、現在人類種の俺はその数ヶ月分の成長分しか身長が減らないわけ」

 

 そう、転生したということは、一度死んでいるということ。

 つまり、その時点で『質量存在時間』はなくなっている。

 この世界でまた一から始まった『質量存在時間』は、前世の年齢から再開される。

 

 つまり、そこがゼロなのだ。

 

「つまり、記憶も失わず、体も小さくならないと……確かにそれなら、佑馬が賽を使い続けても問題ありませんね」

 

「だろ?これでジブリールが賽を使わずに済む。それよりも、早く先回りして空達を待ってやろうぜ」

 

 それに頷きながら、転移を続け、空達を追い越す二人。

 

 佑馬の後ろについていっているジブリールの顔は、何処か嬉しそうだった。

 

◆◆◆

 

「お待ちしておりましたってか?」

 

「おう、大分待ったぜ」

 

 佑馬とジブリールが参加してから数日後、空と佑馬が同じマスで会話をする。

 

「俺が参加したのは、[  ]に挑むためだけだ。マスが増えたのは俺らには関係ないしな」

 

「ほぅ……[  ]にゲームを挑むのか」

 

「では、看板をご覧に頂こう」

 

 空、白、ステフは、その一言で佑馬の後ろにあった看板に書かれていたのは、

 

『課題対象者以外の提示ゲームに、二人以上で直ちに盟約に誓い応じ、勝利せよ』

 

 空達が最も警戒していた、このゲーム最高難易度の『課題』だった。

 

「さぁて、白、腹はくくってるよな……?」

 

「……ん……とっくに……くくって、ある……?」

 

「本当なのですね……佑馬とジブリールさん相手にゲームって……悪夢ですわ……」

 

 空は頬に汗を伝わせ苦笑し、白は唇を舐め、ステフは天を仰いだ。

 

「では、早速ゲームの内容を伝えよう。何、空達も知っている大戦を模倣した簡単な戦略シミュレーションゲームだ」

 

 佑馬がそう言った瞬間、世界が再構築されていく。

 そこは正しく、地獄だった。

 

「ゲームのルールを言わせていただきます」

 

 1,このゲームは大戦を模倣した十六対十六で行うものである。

 

 2,双方使える種族は、現在その駒を持っているか、傘下にある、同盟してある種族に限る。

 

 3,使える種族同士は友好的であるが、それ以外の種族はどちらにも属さない、『中立勢力』である。

 

 4,使える種族にはそれぞれ二人、その種族の中心人物として選ぶことが出来る。

 

 5,使える種族の中心人物は、『神の視点』で参加し、自分自身の分身を含む駒を動かすことが出来る。

 

 6,他方にいる人物は、もう片方では存在することはできない。

 

 7,どちらかがいなければ生きていけない、という場合は、その二組で一人と換算する。

 

 8,内応、裏切り行為は禁止とする。

 

 9,相手の首都を陥落させた方の勝ちとする。

 

 10,五回行い、三勝した方をゲームの勝者とする。

 

 11,ゲーム時間は現実時間で七時間とする。

 

 12,敗者側の首都は崩壊する。

 

 …………

 

「おい、12の敗者側の首都が崩壊するってどういうことだ!!」

 

 あまりルールの意味がわからなかったが、10個目のルールを聞いてそう叫ばずにはいられない空。

 それは、当然だ。

 なぜなら、

 

「そのまんまの意味だぜ?つまり、空達が負ければエルキアは消える」

 

 エルキア国民全員の死を意味しているわけだから。

 

「なッ!?そんなことさせませんわよ!!」

 

「なら、勝てばいいだけのことだ。勝てるなら……だけどな」

 

 勝てばいい、確かにその通りだろう。

 しかし、その勝率を考えると……なるほど、鬼畜もいいところだろう。

 

「『棄権』も『敗北』と見なすからよろしく。では、ゲームを始めようか」

 

 この時を持って、[  ]至上最強の敵と共に、『盤上の世界(ディス・ボード)』至上最大のゲームが始まった。




ちなみにですが、自分の予想ではラフィール姉様は大戦で戦死していると思いますね。

エクスマキナが攻めこんできたときです。

自分は一応そういう見解で話を作っていきます。

どういうゲームになるか、楽しみにしていてください。

追記
すみません、何故か長文のルビがふれないので、その部分のルビは無しにしました。

ご了承下さいませ。

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