[1]ノーゲーム・ノーライフの世界にチート転生者がきたようです   作:型破 優位

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宣戦布告

三人称side

 

「・・・首、痛い・・・」

 

「ったく、無駄にデカいな・・・つかこんな建築技術人類種にはねぇよな?」

 

エルキア大使館を見上げてそれぞれに呟く空と白。

 

「当然。奪われた後、東部連合が改築に改築を重ねた結果でございます。」

 

「序列が自分より下の種族に意地になるなんて、なんだかんだで獣人種も間抜けだよな。」

 

空の問いに答えるジブリールと、獣人種の下らない見栄に苦笑する佑馬。

 

「ん?下の種族に意地になるってどういうことだ?」

 

唯一その言葉の意味を理解できなかった空。

 

「その・・・大使館が城より立派じゃ国の威信に関わると、エルキアは新たに城を建てましたの。」

 

「ふむ、今の城だな。」

 

「それを受けて、東部連合が当て付けのように大規模な改築を重ねて・・・「ああ、もういい、わかった。」そういうわけですの。」

 

思わず苦笑してしまった空。

 

確かに下らない見栄だ。

 

その苦笑に答えるようにジブリール。

 

「ただでさえ、序列十四位の獣人種は、十六位の人類種を過剰に見下す風潮がありますので。」

 

「あー、俺の苦手なめんどくさい系イベントだ・・・」

 

と、そこへ一人近づいてきた。

 

「ここは大使館前。話し合いをしにきた相手をバカにするなど、愚行にもほどがあります、と猿には難しいですかな?」

 

「本当のこと言われたからってそうキレんなよ、大人げないぞ?」

 

その佑馬の言葉に青筋を浮かべる獣人種の老人。

 

「わかりました・・・とりあえず中へどうぞ。」

 

------エルキア大使館-----

 

中に入り、エントランスを抜け、エレベーターに乗り込む。

 

八十まであるボタンのうち、六十を押して、エレベーターが上昇しだす。

 

「へっ!?なんですのこれ、床が動いているんですのっ!?」

 

驚いているステフ一人を無視して、いのが言う。

 

「そういえば、まだ名乗っておりませんでした。在エルキア次席大使、初瀬いのです。先程の続きですが、先の件からエルキアには過剰に敵対する者が多くおりますので、あのようなことはせめて聞こえないところで言うようにしてください。」

 

そう、いのが注意するが、

 

「ああ、悪かったよ。じゃあ、聞こえないように言うわ。」

 

そういって、

 

(なぁ、ジブリール)

 

(なんでございましょうか?)

 

(こいつ、先の件が自分達のせいってことわかってないよな?)

 

(それを駄犬に求めるのは厳しいことです。)

 

(にしても、見下しすぎだよな。たかが十四位が。)

 

「お二方、ちょっとよろしいかな!?」

 

ボソボソと耳打ちで悪態をつく佑馬とジブリールに、

 

いのが待ったをかける。

 

「ん?どうした爺さん、なんか問題でもあった?」

 

「せめて聞こえないように、と言ったのが聞こえませんでしたかな?」

 

「うん、だから、爺さん以外には聞こえないだろ。さっきの言葉通りなら、過剰に敵対してない者の前では言ってもいいってことだ。あんたは敵対視してることを肯定してないから言ってるんだよ。理解したか?」

 

また青筋を浮かべる獣人種の老人

 

・・・煽り耐性皆無だな。

 

「ハゲザルが。自分達の立場を弁えては?外交をしにきているならなおさら「え、俺に外交上の立場なんてないけど」・・・は?」

 

「俺がいつ外交官と名乗ったよ。俺はこう言ったはずだぜ。『人類種の異端者』と。」

 

そのまま黙るいの。

 

そう、つまりは、なんの立場もない。

 

空と白は王として。

 

ジブリール、ステフはその付き人。

 

だが、佑馬はただ暇だからいるだけ。

 

空や白の付き人でなければ、なんの地位もない。

 

そして、そこでやっと到着した六十階。

 

佑馬たちは客間に通され、ソファーに座った。

 

空は周囲をただ見回し、ジブリールは涎を垂らしている。

 

「では、初瀬いづなをお呼びしますので、少々お待ちください。」

 

初瀬いづな、在エルキア東部連合大使だ。

 

一礼して奥へ去っていくいのを見送って。

 

キョロキョロしていた空に倣って、ステフも部屋を見渡す。

 

「それにしても、豪華ですわね。文明力の格差を痛感しますわ。」

 

大理石や、一目で希少資源とわかるもので作られた部屋。

 

革のソファーにスプリングまで。

 

だが、空が探していたのは、そんなものではない。

 

「・・・にぃ、アレ」

 

「ああ、わかっている。」

 

「お、どうやら謎はしっかりと解いたようだな。」

 

「まぁな、仮説の状態ではあったが、今確証がとれたよ。」

 

そう話す空、白、佑馬。

 

そこへジブリール。

 

「佑馬、あれをご存知なのですか?」

 

ジブリールが指したのは。

 

テレビ。

 

「そう、それがゲームで使われるものだ。」

 

「なるほど。」

 

これが電子ゲームの核と理解したジブリール。

 

「お待たせしました。」

 

と、いのがドアをガチャリと開けて戻ってくる。

 

「東部連合・在エルキア大使、初瀬いづな、でございます。」

 

そう紹介され、扉をくぐって現れたのは。

 

黒目黒髪のボブヘアーに、フェネックのように大きく長い獣耳と尻尾。

 

そして、大きなリボンを腰につけた和服の、どう見ても年齢一桁台の幼女がいた。

 

「か・・・」

 

立場を忘れて、可愛いと思わずステフがこぼすより早く。

 

「「「キング・クリムゾン!!!」」」

 

「うふふ獣耳の麗しき幼女おにいさんと遊ぼうかなぁに怪しい人じゃないのですことよ。」

 

「・・・ぷにぷに・・・ふわふわ・・・さわさわ・・・ふふふふふふふふ・・・」

 

「これが本物!?すげぇ可愛いじゃん!!」

 

いつ移動したのか。

 

ジブリールの目をもってしても認識できなかった空、白、佑馬。

 

三人はとっくに少女の頭、尻尾、耳を的確に撫で回していた。

 

そんな三人に、獣人種の少女、いづなが。

 

コロコロと、かわいらしい声で、応じた。

 

「なに気安くさわってやがる、です。」

 

・・・・・・・。

 

「・・・え?」

 

「・・・かわい、さ・・・まいなす・・・五十、ポイン。」

 

と呟く空と白。

 

「あはは!確かにこれは違和感満載だな!」

 

いづなの言葉遣いを実際に聞いてあまりの違和感さに爆笑しながら撫で回すのをやめない佑馬がいた。

 

その光景を羨ましそうに見ている天使がいたとかいなかったとか。

 

閑話休題

 

「そこのハゲザル二人、勝手にやめんな、です。」

 

「え・・・と、はい?」

 

「はやく、続けろや、です。」

 

今は佑馬に尻尾を撫でられているので、首を差し出しながら言ういづな。

 

「えーと、あー、よろしいのデ?」

 

「いきなり触りやがったの、驚いただけだろ、です。イヤって言ってねぇ、です。」

 

言葉と表情の不一致に、だが早々に理解した様子の空。

 

「・・・あー。語尾に『です』ってつければ丁寧語になるわけじゃねぇですよ?」

 

「・・・っ!?そーなのか、です!?」

 

と、ここで気づいた空。

 

この世界では人の嫌がることはできないことに。

 

つまり、撫でることが出来た時点で、それはいづなが許可していたということで。

 

「・・・お気になさらず。孫はエルキアに来て一年、まだ人類語が苦手で。」

 

それと、と表情を変えて。

 

「おいゴラ、ハゲザル。こっちが礼儀正しくしてりゃチョーシくれてんじゃねぇぞクソが。なにカワイイ孫を薄汚ねぇ手でペタクリさわってくれてんだよ死なすゾ」

 

と、再び礼儀正しい笑顔に戻って。

 

「と、言われるような行動は、お控え願いますでしょうか。」

 

それに半眼で空がこぼす。

 

「ジジイ、人類語どうこうじゃねぇ、テメーの影響だよ。」

 

「はて、何のことか理解しかねますな。」

 

と、そこでまた佑馬とジブリールがコソコソと話始める。

 

(ジブリール、今のきいたか?)

 

(はい、全くもってありえません。)

 

(だよなー。自分のせいなのを時間の、もっと広げれば孫のせいにしてるんだぜ?)

 

(情操教育という言葉をご存知ないようですね。)

 

(しかも、こっちが礼儀正しくだってさ。俺エレベーターでハゲザルって言われたんだけど。これは外交上礼儀としてはダメだよね。)

 

(そこを駄犬に求めるのはいかがなものかと。)

 

(てかさ、それ以前に撫でれたことで盟約からも本人からも許可とれてんのに、何様のつもりかね。)

 

「おいゴラ、バッチリ聞こえてんゾ!」

 

「バカかよ。聞こえるように言ってるんだよ。」

 

いのの顔に青筋がビキビキと浮かび上がる。

 

「いいか?いづな。こんな人のせいばかりする大人には絶対になるなよ?あ、俺佑馬な。」

 

「俺は空だ。こっちは妹の白。よろしくな。」

 

「がってん、です。よろしくな、です。空、白、佑馬」

 

さわさわさわさわ・・・

 

「いづな、嫌なら断ってもよいのですよ?」

 

「かまわねぇです。気持ちぃーし続けろ、です。」

 

「「「ドャァ!」」」

 

「くっ、じーじには触らせてくれないのに、ハゲザルはいいのかいづな!」

 

「じぃじ・・・ヘタクソだし、爪いてぇ、です。」

 

即答したいづなに、凹んだ様子のいのに。

 

「爺さん、強く生きていればいいことあるよ。」

 

「あなたに言われるとは思いもしませんでした。」

 

「ジブリール、こいつチョロいわ」

 

「ジジイにチョロイン属性とは、誰得なんでしょうか。」

 

「てめぇらだけは絶対に許さねええええぇぇぇぇ!」

 

慰める(煽る)佑馬、ジブリールとキレるいの。

 

「あの、そろそろ始めませんの?」

 

唯一ステフだけがおいてけぼりをくらっていた。

 

 

 

 

ソファーに座り、恍惚の表情で天井を眺めるいづなと、こめかみをひきつらせるいの。

 

机を挟んだ対面に、空をはじめ、五人が座り、向かい合う。

 

「では、そろそろクソザルどものご用件、伺っても宜しいですかな?」

 

「思考読めてんだろ、言うまでもないっしょ。」

 

「おい、爺さんのその言葉、よく覚えておけよ。」

「ここは外交の場です、口頭や書面を交わす場だと、サルには難しすぎますかな?それと、佑馬殿。別に間違ったことは言ってはないのですが。」

 

「孫の扱いで負けたからってキレんなよ爺さん。大人気ねぇな。」

 

「空もやっぱりそう思うよな!」

 

いのの笑顔にヒビが入っていくなか、更にジブリールのとびきりの笑顔で。

 

「マスター、佑馬、獣人種のコンプレックスの塊の如き精神は、ガラス細工のように傷つきやすく脆いのでございます。あまり刺激しないであげて頂けませんか。哀れでございます。」

 

いい加減、笑顔を保つのも限界ないの。

 

何もかも爽やかに忘れ、こいらを叩きだそう、そう決め考え空の目を覗き込んだ。

 

瞬間。不覚にも背筋に悪寒が走るのを、いのは感じた。

 

そこに、一瞬前までのふざけた、おちゃらけた男はいなかった。

 

そこにいたのは、傲慢不遜なまでの自信に満ち、途方もない打算を行っている。

 

紛れもない『一種族の王』だった。

 

「単刀直入に言おう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺達人類種は『大陸にあるてめぇらの全て』を要求する。じゃあ、あとは佑馬頼んだ。」

 

「おっけーい。」

 

そして慣れた手つきでエレベーターを操作して降りていく空たち。

 

今ここにいるのは佑馬、ジブリール、いづな、いのの四人だ。

 

「それで、そちらが賭けるものはなんでしょうか?」

 

そこで佑馬が答える。

 

「はぁ?なんも賭けねーよ。」

 

「まさかクソザルもここまで頭が「バカかてめぇは。」そろそろこちらもキレますが。」

 

そう青筋を浮かべるいの。

 

「てめぇらに元々、逃げ道はねーんだよ。」

 

「どういうことですかな?」

 

「じゃあ、こう言ったらどうだ。『てめぇらがこのゲームを受けなければ、電子ゲームというゲームとその内容、また嘘は見破れるが心は読めないことをディスボード中に言いふらす』これでどうだ?」

 

そこでジブリールに目で合図を送る。

 

その瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジブリールから佑馬に向かって質量を帯びた濃い殺気が放たれた。

 

それを見たときに一気に飛び退く獣人種二人。

 

全身から冷や汗がダラダラと流れ出て、目の前の存在からは逃げられないことを本能がつげる。

 

「あれれー?クソザルがこの殺気程度で動じないのに、十四位様(笑)がなんでそんなに焦ってんのー?俺に向けられた殺気だよー?」

 

そう、これは佑馬に向けられた殺気。

 

その余波でしかない。

 

「・・・っ!」

 

あまりの状況の悪さに悪態付くいの。

 

「どうだよ、てめぇがクソザルとか言って見下していた相手に遊ばれる気持ちはよ。もっと遊んでやろうか?例えば、そうだなぁ。」

 

そして、口元をニヤリと吊り上げて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この殺気を直に受けてみたりするか?」

 

ケタケタと笑う佑馬に青ざめていくいの。

 

「嘘だよ、他の国に情報流すだけにするよ。」

 

「・・・っ!」

 

何も言い返せない。

 

圧倒的圧力の中、佑馬だけが淡々と喋っている。

 

いづなは足をガクガクさせ、泣きそうになりながら辛うじて立っている状態だ。

 

「なんだよ、怖くてなんも言えねーのか、つまんねぇ。」

 

と、心底つまらないものをみるようにしていのといづなを見下す佑馬。

 

「まぁ、いいや。賭けるものは伝言で聞いている。それはだな。」

 

 

 

 

少し間をあけて、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『人類種の『種の駒』だ!」

 

 

「「!?!?」」

 

「さて、用件は終わりだ。ジブリールご苦労さん。」

 

「いえいえ、駄犬が怖がっているところはなかなか面白いものでしたので。」

 

「今度一つだけ言うこときいてあげるよ」

 

「ほ、本当でございますか!?」

 

と、普通に会話しているジブリールと佑馬

 

そこで思い出したように、

 

「あ、ゲームの内容知ってるかどうかの信憑性だけど、『精神没入電子ゲーム』とだけ、それでわかるだろ?日時はそっちで決めてくれ。決まり次第連絡よろしくー」

 

「あ、最後にひとつ。クソザルどものご用件、どうだった?後、君たちにもチャンスをあげるよ。ゲームを受けてくれたら、俺達はその内容を口にすることはできないという文言も追加していいよ」

 

と言って、ジブリールと手を繋ぎながら帰っていった。

 

いのといづなは、その姿を震えながら後ろから見ていた。




能力よりも原作知識の方がチートと思うようになってきた今日この頃。

今回はこんなもんでいいのかな。

一応ドs発揮の佑馬

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