「よし!! 合格だ!!」
生き返ってからの事を考えれば高校受験をしっかりと受からなければならない。
期末試験を経て十分すぎる学力を得たタケルは私立中山台高等学校を受験、一発合格した。
そしてそんなタケルが勉強を教えていた倉橋も一発合格ができた。
「良かった~! これで高校も三年間一緒だね!」
「だな。まあ大学に行ったら別々だろうな。俺は社会、陽菜乃は理科だから」
「そうだね~。皆はどうだったのかな~」
「明日聞いてみようか」
結果的に聞ける雰囲気じゃなかった。
竹林がいつもしっかり整えている髪がくしゃくしゃ、眼鏡の位置を直すのも忘れて落ち込んでいる。
「第一志望落ちたんだって……?」
「仕方ねーよ。あいつ受けたの国内最難関の高校だぜ」
人形遊びをするほどにショックで落ち込んでいる竹林とそんな彼を必死に盛り上げようとしている殺せんせー。
「か、確率の問題でこういう不運もありますって!! 90%は受かっていたんです元気だして!!」
…………寧ろ傷を抉っている訳だが。
と、前原が立ち上がった所に岡野が声をかけた。
「前原、定期"落とした"よ」
ピクリとその単語に盛大に反応する。
「"落ちる"とか"滑る"って言っちゃダメ!!!」
「「「……………」」」
「竹林君が傷つくでしょう!! 今後一切禁止します!!」
「あんたが一番大声で言ってんでしょうが………」
「受験生は戦う場所が違えども助け合うべし!!! 以後受験生へのヘイト発現をする生徒は不良生徒と見なし全員ピッタリ七三に手入れします!!」
「「「理不尽だ!?」」」
特に前髪で常に目を隠している千葉の動揺が凄まじい。
「冗談じゃねーぞ!!」
「今時こんなベタな禁句問題にすんな!!」
「問答無用!! 先生の粘液でどんな髪でも"滑らか"に整えて………」
言い出しっぺが真っ先に被爆する法則。
ちゃんと七三のかつらを着ける殺せんせーだった。
「楽しい話で空気を明るく変えましょう。三村君!! 最近見て面白かったドラマは!?」
「………そーだなー。今年は大河ドラマが結構熱いよ。真田幸村の"浪人"時代から描かれてて………はっ!?」
浪人→受験に落ちた人。
三村、アウト。
「あ、似合ってんじゃん……」
「誰か他の人……倉橋さん天気の話で和ませて!!」
「ふえっ!? え、えーと…さ、最近よく"雪"降るけどさ。なかなか"積も"らなくてガッカリだよね~」
雪、積もる→滑る。
倉橋、アウト。だが、
「なんでタケルが七三になってるの!?」
「俺は幽霊。死んでる→地獄に"落ちた"」
「こじつけじゃ……」
「人に無理矢理されるよりは自分でやった方がマシだろが」
ゴーストの身体にすぐに慣れる程に元々自分の容姿やらにはあまり頓着しないタケルだからこその戦法である。
で、問題は何故此所で彼が出張ってきたかと言うと。
「陽菜乃の髪を触っていいのは俺だけだ!!」
「「「此所でノロケかよ!?」」」
「まあ、タケルなら良いかな……」
「「「いいの陽菜乃!?」」」
ということで甲斐甲斐しく倉橋を七三にするタケルという謎光景が出来ていた。
「じゃあ次は寺坂組!!」
「続けるのかよ!!」
「お、おう元気出せや竹林!! こっからじゃねーか!!」
「勝負はどう"転ぶ"か分からねー……」
寺坂、吉田、村松。アウト。
「ええいまだるっこしい!! 先生が見本を見せます!! とっておきの滑らない話で竹林君を笑わせます!!」
「…………嫌な予感するな……はい陽菜乃。終わったよ」
「ありがとー」
完全に二人だけの空間である。
「この前自販機にお釣り忘れてさぁ。後で気付いてスゲー慌ててぇ。で、急いで戻ったのよ。したらまだお釣りそこにあってぇ……超焦ったわぁ~~………」
………………………
「「「"オチ"は!?」」」
「こんなことだろうと思ったわ……はい千葉サングラス」
「悪い……」
此所でサングラスラッシャーを出さない辺りタケルの真面目さが分かる。
「さぁ皆さん!! 先生のようにどんどん元気付けて………」
「………もういい」
[ピタゴラス!]
ゾクッ、と殺せんせーすらも戦慄する殺気。
ぶちギレた竹林がピタゴラス魂を纏って立ち上がっていた。
「もう充分です。ありがとうございます。くどいほどNGワードブッ込んでくれて」
「たっ、竹林君落ちついて!! み、皆さん彼を止めて………はっ!?」
[ムサシ!]
「てゆーかさぁ……」
[ゴエモン!]
「殺せんせーがやりたかっただけだろ」
[グリム!]
「この古典的な受験NGワードごっこ」
[ガリレオ!]
「先生っぽいイベントだから」
次々にパーカーゴーストを召喚して装着していく。
[イッキュウ!]
「もう皆七三にされた今………」
[ヒミコ!]
「言えない言葉は何もない」
[ノブナガ!]
「受験中は使うのを控えていた罠がある。今なら使える」
「ちょ、ちょっと皆さん………」
「死ね!!」
ノブナガイトナがスイッチを起動すると殺せんせーの足元の床が抜けた。
「テメーの苦手な落とし穴だぜ!!」
「地獄まで落ちてくださいよぉ!!」
「人の受験で楽しみやがって!!」
「………まさか最初の英雄を使った暗殺がこんな形になるとはなー」
「ねー」
[ダーウィン!]
「お前もか陽菜乃……」
ガンガンセイバーやらサングラスラッシャーやらの攻撃が殺せんせーに襲いかかる。
流石にやばくなったのか殺せんせーは天井に張り付く。
「ええそうですとも!! お祭りなんですよ受験なんて!!」
明らかに逆ギレである。
過去最高に我儘な殺せんせーだった。
「竹林君!! 落ちたっていいんです高校受験の第一志望ごとき!! 君のやいばは一本だけですか!? 二本目の刃でもちゃんと勝負が出きるでしょう!?」
「当然ですよ!! 滑り止めの高校だろうが僕の進路に影響はない!!」
未だに戦刃や縦断が飛び交う中、今まで以上に必死な殺せんせーの言葉が飛ぶ。
「なりたいのは医者ですか!? それとも爆発物取扱!?」
「医者ですよ!! 色々迷ったけどやっぱりなりたい!!」
「それがいい!! 君に合ってる!! 君の細やかな知識吸収力!! 弱者ゆえに身に付いた強さ!! 全て大事に弱い人の味方になって下さい!!」
「分かってますよ!! 考えてみればNGワードなんて余計なお世話だ!!」
滑るのも転ぶのも落ちるのも、全てこのクラスで慣れっこなのだから。
殺せんせーは実際は誰がどんな高校に進もうがあまり気にしてないのだろう。
進んだ先で何を学んだかを重んじる教育方針だから。
殺せんせーが過去最高に疲弊した所で皆も同じくらい疲れたのでようやく終わった。
と、そこにイリーナが入ってきた。
「ねえ。私のメイク"落とし"どっかに"転がって"ない?」
ピシッ
「ってなによこれ床メッチャ"滑る"じゃない。そんで何よアンタ達。皆七三で"転げ"回って」
ピクッ
「そんなことやってたら"落ちる"わよ受験」
ピシッと、落ち着きを取り戻しかけていた生徒達に再び青筋が浮かぶ。
「あーあ。同じ"落ちる"なら恋に"落ちたい"わ。あ、誰かこのバナナの皮捨てといて。"滑ってコケたら悲惨"だしね」
再び完全にキレた。
「「「……………ブッ殺せーーーー!!!」」」
「ヒィィッ!! 何よ急に殺気立って!!」
「なんかもう無意識に殺意沸くんだよ!!!」
ちなみにゲームマスターの神崎は唯一一切ボロを出さずに勝利した。
「嵐だわこれ………ってキュビ?」
教室の外から何かを見て筆を進ませていたキュビを見つけたタケルが近づく。
「!!」
書かれていたのは先程までの教室の喧騒の風景。
それが楽しげでホップな色調で描かれていた。
「………スゴいな」
『我輩、人間をこんなに楽しく描けたのは初めてなんだな! この学校に来て本当に良かったんだな!』
「……ああ。そう思えたのなら俺も嬉しいよ」
やはり眼魔が相手でも分かり合うことは出きる。そう確信したタケルだった。
と、
「皆。少しいいか」
と、丁度イリーナが七三にされたところで仙人もといイーゼルが現れた。
「おっちゃん」
「その呼び名は変わらぬか……まあいい。………いよいよアビスが動き始めたぞ」
「「「!!」」」
ガンマイザー五体の損失を経て、アビスは残る十体のガンマイザーとの同化を果たしたらしい。
加えてイレーザーを介してシロとも同盟を結んだそうだ。
「いよいよ奴も完璧な世界の創造に向けて動き始めたな……気を抜くでないぞ。奴は最早何をしでかすか分からん」
「………ありがとうおっちゃん。これからもアビスの動向をよろしく頼む。それと…………なんでおっちゃんまで七三なのさ」
「いやーこういうノリなのかと」
「ふざけが好きなのは相変わらずか………」
投稿を休んでいた数日間でアマゾンズを見てました
…………ヤベェ なんでもっと早く見なかったんだ
あれを見てると磯貝がオメガ 千葉がアルファで暗殺アマゾンズ書きたくなった俺氏
………番外編とかで書こうかな
通称七三回
好きな人のを触りたいと思うのは自然なことのはず
………割と独占欲強いのかな神代タケルは