「これで最後だ!!」
最後に残った眼魔ウルティマを斬り、眼魔軍団は壊滅。
と同時にムゲンゴーストがキャプテンゴーストに掴まって降りてきた。
「ふう………ただいま」
「おかえり。ガンマイザーは?」
「ちゃんと倒してきたよ。………全部倒したんだな」
と、倒れていた眼魔スペリオルが気絶から目覚めたのか動いた。
「ッ!?」
「動くな」
そんなスペリオルにノブナガイトナがガンガンハンドを目前に突きつける。
「何故お前達はロケットを狙った。その目的はなんだ」
「…………ククク……」
「!! イトナ!」
「うぉら!!」
異変に気づいたフーディーニ吉田が鎖でイトナを引き寄せ、ベンケイ寺坂がスペリオルをスイングで吹き飛ばす。
「アビス様………万歳ッ!!」
そして自爆するスペリオル。
幸いにして被害は誰にも及ばなかった。
「…………忠義心は本物か………」
「ただで答えてくれるとは思ってなかったけどこれはな………」
「…………………」
タケルはただただ、スペリオルの自爆した後を見つめていた。
その拳が激しく握りしめられているのを見たのは倉橋だけだった。
◎◎◎◎◎
数日後、帰還用カプセルが降下してきた。
それにマッハ20の殺せんせーが接近する。
「定刻通り!! 二人とも宇宙の旅お疲れ様です!!」
「! 殺せんせー!」
開いたパラシュートの絡まりを解して開かせた殺せんせーはカプセルを突っ張りで押して校舎まで運ぶ。
皆が迷って、悩んで、ぶれて、ぶつかった。そんな一ヶ月間。
とうとう最後は宇宙まで行った。
さっそく、コピーさせて貰ったデータを律が表示する。
とはいえ専門用語が大量に使われているので、奥田が分かりやすく説明する。
要約すると、彼らの研究は、件の超生物の反物質サイクルの暴走を防ぐ研究である。
魚や昆虫、小型のほ乳類や両生類など様々なタイプの反物質生物を製作し、それを宇宙空間へ放出、寿命死から暴走・爆発までを観測する。
宇宙空間では月面と違い、反物質連鎖を起こす物質が周囲に無いので、爆発の規模を最小限に抑えられるのだ。
実験の結果、爆発リスクは反物質生物のサイズと反比例する。大きいほど安定で、小さいほど高確率で爆発した。
また、強引に細胞を移植・株分けすると暴走リスクは情報。
従って、月の悲劇を起こす条件は、人間ベースでオリジナル細胞の殺せんせーにはほぼ該当せず、暴走・爆発の確率は思われていたより遥かに低い。
更に、ある薬品を投与し、定期的に全身のケイ素化合物の流動を促す。
分かりやすく言うと凝りを解すことでさらに飛躍的に暴走リスクが下がると判明。
以上の条件を満たす時、爆発の可能性は高くとも1%以下。
恐らくは、爆発より先に他の細胞が寿命を迎え、90年以内に穏やかに蒸発するだろう。
「………この薬品ってのは作れんのかよ?」
「割と簡単です。………ていうか、前に私……これと殆ど同じ薬を作った事が………」
十ヶ月前。
『………ヌルフフフ。ありがとう奥田さん。君の薬のおかげで………先生は新たなステージへ進めそうです』
『…………えっ、それってどういう……』
『……ふう』
『『『溶けた!!』』』
…………………
「「「アレかよ!!?」」」
流石に殺せんせーも予想外だったらしく驚愕している。
「……嘘でしょ? あんな所に解決の糸口があったっての?」
「いいのかよ……こんな簡単に見つかって……」
「……ううん。そんなに簡単な道じゃなかったと思う」
破壊生物になりかけた殺せんせーを、雪村あぐりが命をかけて止めたから。
殺せんせーが彼女の後を継ぎ、命をかけて授業をしてくれたから。
皆が命を懸けてなかったら薬も作られていなかったし、宇宙まで答えを探しに行けるクラスには育たなかっただろう。
「何にせよ、1%以下じゃ無いも同然だ!!」
「殺せなくても……地球が爆発しないで済むぞ!!」
ようやく見つけられた答えに歓声が沸く教室内。
しかし磯貝は一人、難しい顔をしていた。
「……じゃあ皆、暗殺は……」
「えっ?」
「一学期から続けてきた暗殺は………今日限りで終わりにしていいんだな?」
「「「…………………」」」
「おそらく、この実験結果を受けたとしても暗殺依頼はそう簡単に取り消されない。検証の必要もあるだろうし……こいつが危険生物であることに変わりはないのだから」
しばらく考えて、彼らが出した結論は、国からの依頼が消えない限り、3月まで全力で暗殺を続ける。
なぜならそれは、使命であり、絆であり、彼らを出会わせて育ててくれたE組の必修科目だから。
ただし、暗殺期限の3月までに殺せなかったら、暗殺を卒業し、あとの判断は国に任せて暗殺者と標的からただの生徒と恩師に戻る。
殺すとはなんなのか、本当に真面目に考えた一月。
信念と勇気を経て、彼らには本当の覚悟が芽生えたのだった。
◎◎◎◎◎
しかし、彼らにはもう一つの課題が残されていた。
翌日、長い間昏睡状態だった画材眼魔がついに目覚めたのだ。
「お前……本当に大丈夫なのか?」
『もう平気なんだな。ずっと眠ってたら怪我も治っちゃったんだな』
「そうか………良かった」
『じゃあ早速! 我輩は絵を描きに行くんだな!』
「ちょっと待った!!」
と、出掛けようとする画材眼魔をタケルは呼び止めた。
「あの………お前………とりあえず名前付けないか? コイツに」
「「「そっから!?」」」
まあ確かに[お前]やら[眼魔]やらでは微妙な雰囲気になってしまう。
「どーする茅野? 殺せんせーの名付け親の君なら」
「うーん………画材……ピカソ……キュビニズム………キュビ……[キュビ]っていうのはどう?」
連想ゲームの結果の中々安直な名前である。
が、画材眼魔は嬉しそうに頷いた。
『気に入ったんだな!! これから我輩はキュビって名前にするんだな!』
どうやら気に入ったようだ。
ということで画材眼魔改めキュビに本題を話すことに。
「キュビ………眼魔世界について知ってることを教えてくれないか」
『んう……?』
「アビスやイレーザー………あいつらが何を企んでいるのかでいいんだ。何か知ってることがあれば……教えて欲しい」
『………それは、出来ないんだな。我輩は眼魔の末端の一人でしかないんだな。作戦とかそういうのは我輩がやれと言われたことしか知らされてないんだな』
「……………そうか」
全てを期待していたわけではないが、何も分からないというのはやはり残念だった。
『知ってることと言えば………その超生物が何か鍵になるとか言ってたんだな』
「! 殺せんせーが!?」
確かにこの圧倒的な超生物は眼魔にとっても無視はできない存在だろう。
「………なんなんだ。アビスの目的は……」
「そこからは私達が話そう」
「!! 父さん!? それにおっちゃん!!」
教室の扉を開けて入ってきたのは神代竜と仙人だった。
しかし、仙人の服装はイレーザーの普段着ているものと同じだった。
「!? おっちゃん……その姿は……?」
「彼は本来は………眼魔世界の幹部、イーゼルだ」
「「「!!?」」」
イーゼルは、以前ジャックの口から聞かされた前大帝、アストラの友人である。
「ワシは嘗て、アビスが反旗を翻した際、人間世界に飛ばされた。そこで傷を負ったワシは竜に助けられたのじゃ」
「そして私はイーゼルから眼魔世界の事を知った。そしてアビスを止める為に私とイーゼルは眼魔及びガンマイザーに対抗できる手段の模索を始めた」
そしてイーゼルからもたらされた技術で作られたのがゴーストドライバーとゼロ眼魂である。
同時期にガンマイザーの十五体それぞれの特性に対応する英雄の魂を入れる眼魂も用意していたのだが此方は未完成だった。
ドライバーとゼロ眼魂はアビスに最も影響があるであろう人物、アイギスに渡されたが、彼はその力を全存在のゴースト化の為に使うようになった。
「竜は彼を止める為に個別で動くようになり、ワシはアイギスに代わり、アビスを止められる存在を探していた。しかし、中々見つからぬまま眼魔による侵攻が始まった………だがそんな時、ある人物が眼魔に殺され、凄まじい魂を発現させたんじゃ」
それが神代タケルである。
そして同時に彼の魂には十五英雄のうちの一人。宮本武蔵に対する強い思いがあった。
それをヒントにイーゼルは人間の英雄に対する強い思いで英雄眼魂を完成させる方法を思い付いたのだ。
イーゼルはコアとなるブランク眼魂を残る十四人の英雄に関わる人物に放ち、同時にタケルの魂を眼魂に入れ、オレ眼魂とすることで彼を現世に顕現。
仮面ライダーゴーストとして変身する力を授けたのだ。
「………それが俺だったのか…………」
「父親として私もタケルの死は認めたくなかった。だから私もイーゼルの案に賛成したのだ」
「……………」
「身勝手を許して欲しいとは言わない。ワシらの都合でまだ若いタケルを巻き込んだのは身勝手だからな………すまなかった」
頭を下げる仙人もといイーゼル。
そんな彼にタケルはゆっくり近づいた。
「……………タケル?」
「俺はおっちゃんを糾弾するつもりはないよ。おっちゃんが俺に仮面ライダーに変身する力をくれたおかげで俺は生き返るチャンスも、人を守るための力も、この教室の皆と出会う機会も、陽菜乃を好きになることも無かったから。寧ろ本当に感謝してるんだよ」
「タケル…………」
「だから…………その恩も返したい。必ず俺がアビスを倒してみせるよ」
「……………ありがとう」
数日程休んでいました
今回ようやく画材眼魔が復活 名前も貰いました
仙人の正体も明かしました
正直本編並みにしっかりした物は作れませんハイ