「どうなった!?」
「…………痛み分け、ですねえ」
互いのライダーキックのぶつかり合いによる衝撃が収まると、二人は変身が解除されて倒れていた。
「………陽菜乃。生きてるか」
「なぁにそれ。まさか殺すつもりだったの?」
「そんなわけないだろ………正直、参ったよ」
「手加減してた癖によく言うよね」
「俺が本気で戦う相手は人々や仲間の命を脅かす眼魔だよ。………まあ、本気ではないけど全力ではやったからな」
「そうだね………」
と、立ち上がったタケルは倉橋に手を差し出した。
「今後もよろしくな。陽菜乃」
「うん。私も頑張るからね」
赤・神代タケル
青・倉橋陽菜乃
相討ちにより脱落。
二人の決着が着いた数秒後。
磯貝達が特攻を行い、速水とイトナを三人の犠牲を払って倒した。
その直前、青チームの旗を狙って奇襲を仕掛けた中村と寺坂達を烏間に紛れていた渚が一気に仕留めた。
「………陽菜乃が渚に施した秘策ってこういうことか」
「そ、烏間先生の自衛隊迷彩。皆のも含めて塗装したのは私だもん」
「へえ…………」
と、速水戦を生き抜いた前原をカルマが返り討ち。
これで生き残りは渚とカルマ、赤青共に一人ずつとなった。
「(天性の殺し屋のセンスを持つ渚………だからこそカルマは誰よりも渚を強敵だと認めてるんだな)」
実際、その渚ときっちり決着を着けるためにカルマは彼にナイフによるタイマンの決着を望んだ。
そして渚は殺せんせーを助けるためにクラスの意見をひとつに纏めたいなら彼の十八番の近接戦を受けるしかない。
「………俺達も近くで見に行くか」
「うん……あ、ごめんちょっと待って……動けないかも」
「あ、ダメージが溜まってるのか……よっと!!」
「ひゃっ!?」
「体力の問題はまだまだ未解決だな」
一先ず倉橋をお姫様抱っこで連れていくタケル。
改めてみるとこんな可愛らしい少女が自分と互角に戦ったという事実はかなり衝撃的なタケルであった。
「さて………此処からなら見えるかな」
渚とカルマの戦う場所に着いたタケルはまず倉橋を下ろす。
そして彼は、二人の目を見る。
「!!」
渚とカルマの目は、先程の自分達と同じだった。
共通の舞台に立ち、自分の意思を通すために、ずっと思っていた相手とぶつかり合う。
彼らも、先程のタケル達同様、殺せんせーの事などしばし忘れてしまっている。
それが、彼らに許された闘争心だから。
◎◎◎◎◎
まずはナイフ同士のぶつかり合い。
それをカルマが渚を蹴り飛ばすことで距離をとった。
渚はナイフを二本携えているので猫だましの準備はできている。
「………いくよ」
それに気づいているカルマはそんな隙を見せずに切りかかった。
それをうまくかわして反撃、受けた瞬間にインクが飛び散る。
「……下手に受けるとうっかりインクが着きかねないな」
こちらはインクが体に付着すれば敗北判定。
ゴースト同士の対決とは異なる。
故にカルマは容赦無く蹴りを叩きつける。
「!」
倒れた渚に振り下ろされたナイフはかわした彼に蹴り飛ばされた。
「ちっ……!」
「チャンス!」
しかし、カルマは頭突きで渚を押し返す。
その衝撃で渚のナイフも吹き飛ぶが、彼にはもう一本ある。
しかし、カルマはそんな暇を与えない。
「気絶させてから……ゆっくりトドメ刺してやるからさ!!」
肘鉄、膝蹴り、渚の反撃は顔面で受けて平手打ち。
返しの両足蹴りもカルマはかわさない。
「………体が避けようとかそういう反射を無理矢理押さえつけて、渚の攻撃を受けてるみたい」
「純粋な暗殺者の渚の攻撃を全て受け止めた上で勝つ。クラスのためにもカルマは完璧な形で勝ちたいんだ」
殴り飛ばした渚に踵落としを食らわせる。
徹底的にやるというのがカルマの揺るぎない信念なのだろう。
「……ケンカに持ち込まれたら勝ち目はないかな」
動かなくなった渚に自分の弾かれたナイフを拾ってゆっくり近づくカルマ。
そしてそれが振り下ろされようとしたその時、
パァン!!
カルマの油断をついて猫だましが炸裂。しかし舌を噛んで気絶を防ぐ。
「だあああああっ!!!」
一気に二本目のナイフを抜き、全ての殺意を込めたナイフを突き出す。
これを弾けば渚に武器は無くなり、カルマの勝ちは決まる。
筈だった。
「………え!?」
渚はナイフを放り投げて捨てた。
そのままカルマに生身で飛びかかる!
「いィ、やッ!!!」
肩固め。腕で頸動脈を締め上げる寝技。
「渚の奴……自分の最大の武器を捨て駒に使った!!」
加えて、カルマが渚にやったのと同じように、敗北を認めさせるためにカルマの一番得意な分野、すなわち格闘技での決着を選んだのだ。
自らの信念を貫くために。
「あ、が、ぐ………!」
もがくカルマ。
その手が彼のナイフを掴んだ。
渚はそれに気づいていない。今刺せばカルマの勝利は確定する。
が、
「………ギブ。降参」
カルマは、敗けを宣言した。
「!! そこまで!! 赤チーム降伏により青チーム……殺さない派の勝ち!!」
烏間の判定により、青チームの勝利が確定した。
「「「おおっしゃあああ!!」」」
青チームのメンバーが一斉に駆け寄り、赤チームはやれやれと言った風にため息を着いた。
「………素手でこれだけ戦った渚にナイフを使って勝っても誰もカルマを認めやしないか………結果的にどっちもクラスを一つに纏めたかったが故の結果だな」
「………良かったの? タケルはこれで」
「………まあ余計に後には退けなくなったかな。けどま、本当なら俺達も世界も殺せんせーも、全ての命を守りたかったんだから」
「これで決意が固まった………ってことだね」
「綺麗事じゃ世の中は回らない……けど綺麗事を叶えられたら最高……かな」
そう笑ってタケルと倉橋も皆の輪の中へ入っていった。
「……大きな選択を迫られた時、人は本心をさらけ出し、時として本気で争います。でも、本気で闘った者同士だからこそ、普段は相手に見えない部分まで理解しあうことができる。信念を貫くということは、皆と仲を深めるチャンスでもあるのです」
そんな彼らの信念を肌で感じたタケルの体がグリーンに輝く。
「………? なんか、風強くなってないか?」
と、突然風が強くなって木の葉が舞い始めた。
「天気が変わった……? ってあれ!!」
不破が空を指差すといつの間にか金色の紋様が浮かんでいる。
そこから群青のプレートが降りてくる。
「ガンマイザー………!」
「いつもいつも良いところでやってきやがって!」
群青のプレートは小さな竜巻に変化し、ガンマイザー・ウィンドの姿になった。
『標的を確認、排除開始』
「!! 皆、木や地面に掴まれ!!」
「「「!!」」」
ウィンドは正面に暴風を発生。生徒達は一斉に何かにしがみついた。
「う、うわあっ!?」
「渚!!」
しかし体の軽い渚は吹き飛ばされる。
そんな彼の手を掴んだのはカルマだった。
「カルマ!!」
「さっきの借りだよ」
「……ありがとう」
と、タケルが生身で召喚したガンガンセイバーガンモードでウィンドを撃って一度暴風を中断させる。
「皆は信念をぶつけ合った………今度は俺が、信念を貫く!!」
[無限進化!]
「変身ッ!!」
[チョーカイガン! 無限! keep in going! ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴッド・ゴースト!]
ムゲン魂に変身したタケルはガンモードを連射して接近。
そのままウィンドにパンチを叩きつけた。
『新たなエネルギーを確認、調査開始』
ウィンドが放つ強烈な空気弾。
ムゲンゴーストは生徒達を守るために∞形のエネルギーを発生させて全て防いだ。
『排除、排除!』
更にウィンドは竜巻を発生させ、ムゲンゴーストを飲み込む。
「タケル!!」
「く、これじゃあ近寄ることすらできない……なら!!」
と、ムゲンゴーストはバットクロックのガンモードをガンガンセイバーに合体させる。
「彼処が中心部……台風の目!」
[命! ダイカイガン!]
「人間の可能性は……無限大だ!」
[シンネンインパクト!]
ライフルモードから放たれたグリーンのビームが竜巻の中心部を正確に貫き、ウィンドを撃ち抜いた。
『膨大なエネルギーを確認、観測、不能………』
ウィンドは群青のプレートに戻ると、そのまま竜巻となって霧散。
跡形もなく消え去った。
◎◎◎◎◎
「…………またか…!!」
眼魔世界でアビスはギリッと歯軋りをした。
眼魔世界の守り神であり、完璧な力の照明である筈のガンマイザーが四体も破壊されたのだ。
「………神代タケル……! あの力はガンマイザーに匹敵するというのか………」
宙を睨むアビス。
それに答えて11枚のプレートが不気味に光った。
◎◎◎◎◎
ガンマイザーを撃退したタケルは改めて皆と共に「殺せんせーを助ける方法を探す」という方針を固めた。
「……やむをえんな。ただし条件がある。探す期限は今月一杯までだ」
タケルが言った通り、殺せんせーを殺そうとする勢力は未だに多い。
「俺もな、殺すのなら他の誰でもない。君らに殺してほしいんだ。だから約束してくれ。一月の結果がどうなろうと、二月から先を全力で暗殺に費やすと」
生かすも殺すも全力でやる。
それがこのクラスの信念なのだから。
「「「はい!!」」」
神代タケルの得た感情。
[喜][怒][?][楽][?][信][?]
シンネンインパクト炸裂!
出すなら此処しかないでしょう!
割とムゲン魂の技は何処で出すか決めやすい。
アニメでも渚とカルマの戦うシーンはかなり印象的でした。
ああいう表現出来たらなあ……